ビジネスパーソンインタビュー
「社会はもう不可逆的に変化している」
キャッチコピーよりも大事なものがある。GO三浦崇宏が語る、「ソーシャルディスタンス」の広め方
新R25編集部
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、7都道府県を対象に「緊急事態宣言」が発令されました。
そんな状況下で、人から人への感染を防ぐために重要だと言われているのが、他者との距離を1m~2m以上空ける「ソーシャルディスタンス」です。
ただ、実際に外に出てみると、近距離で会話している人がまだまだ多く見受けられます。
世の中の人に、この「ソーシャルディスタンス」を浸透させるためにはどうすればいいのか?
そこで新R25は、メッセージを伝えるプロであるThe Breakthrough Company GOの代表で、クリエイティブディレクターの三浦崇宏さんに「ソーシャルディスタンス」を浸透させるためのアイデアを聞いてみました。
【三浦崇宏(みうら・たかひろ)】The Breakthrough Company GO代表取締役兼PR/CreativeDirector。早稲田大学第一文学部を卒業後、博報堂入社。マーケティング、PR、クリエイティブ部門を経て独立、2017年にTheBreakthrough Company GOを設立。ヒット作『言語化力』(SBクリエイティブ)に続き、『人脈なんてクソだ』(ダイヤモンド社)を上梓
三浦さんが語る「人にメッセージを伝える方法」は、ビジネスパーソンなら知っておいて損はないはず…。ぜひご覧ください!
〈聞き手=福田啄也(新R25編集部)〉
GO三浦のアイデア①「視覚で理解できる“行動”でメッセージを伝えよう!」
今回はオンラインで取材しています。モニター越しでもすごい圧だな…
福田
「三密」「不要不急の外出」を避けようというメッセージが出ているのに、いまだ危機感が薄く、気軽に外出している人もいます。
どうしてメッセージが浸透しないんでしょうか?
三浦さん
いろいろあるけど…やっぱり、視覚的にメッセージが伝えられていないことは大きいと思う。
福田
視覚的?
三浦さん
「外出しないでください」というメッセージを発表してるのに、政府が記者会見をリモートでやっていないとか…
「不要不急の外出は控えましょう」と伝えたいのに、わざわざ人を外出させていることに矛盾を感じるよね。
福田
ああ、それは思いました。
Twitterでもそんな声がたくさん上がってましたね。
三浦さん
広告の世界でもよく言うんだけど、企業が社会に対してメッセージを届けるのには、CMやキャッチコピーよりも大事なものがあるんだよね。
福田
えっ、カッコいいキャッチコピーが大事なんじゃないんですか?
三浦さん
違うのよ。
メッセージを伝えるための一番いい方法は、「行動で証明すること」。
企業のメッセージングであれば、企業活動で証明するのが一番なんだよ。
「たとえば…」
三浦さん
すしざんまいの社長が、お正月にいつも何億円も出してマグロを仕入れてインタビューされてるじゃん。
あれは、「うちはいいマグロを提供しています!」というメッセージを伝えるために数億円出してるわけ。
さらに、テレビのワイドショーや報道番組でニュースとして紹介されることで、普通にCMを出すよりもはるかに多くの人に届いているよね。
福田
なるほど!
なんであんなことしてるんだろうと思ってました…
三浦さん
ほかにも、ルイ・ヴィトンがアーティスティックディレクターにヴァージル・アブローという黒人のクリエイターを起用したんだけど、それは“多様性”を体現することになっている。
どんなポスターやCMよりも雄弁だよね。
福田
ほう…
三浦さん
これを「ブランドアクション」って呼んでるんだけど。
人の行動を変えるほど強いメッセージを届けるのは、実は言葉ではなく、行動なんだよ。
言葉は、その行動の意味を説明したり、これからの行動に対する期待を作ったりすることはできるけど、まずは行動がないと切実なメッセージは伝わらない。
福田
つまり「外出を控えるように」と伝える記者会見こそリモートで行わないと、そのメッセージは真に伝わらないということですね。
三浦さん
そうそう。
政府も無理やりコラボ動画を出すんじゃなくて、オレらみたいなコミュニケーションのプロに相談してほしいんだけどなぁ…
ちょっと切なそうな表情でした
GO三浦のアイデア②「“損得”を意識して、直接的に人の行動を変えよう」
福田
ほかにもアイデアがありますか?
三浦さん
あとは、みんなが自分から動きたくなるような“仕組み”をつくることだよね。
福田
仕組み?
三浦さん
たとえば今だったら、外に出ないことに対して、“いい意味のゲーム性”を持たせるとか。
「スマホのGPSをONにして、1週間でもっとも動かなかった人たちはクーポンがもらえる」とかどうかな。
福田
おお、なるほどゲーム性か…
キャッチコピーとかではないんですね。
三浦さん
だから違うんだって!コピーはその後なの!
今は…そんなことはどうでもいいんだよ!!
急に口調が荒くなった
福田
す、すみません…(オンラインでも声がデカいな…)
三浦さん
そりゃ、「大切な人のために距離を取りましょう」とか、「人と距離を取ることが優しさです」みたいな綺麗な言葉を並べたコピーはたくさん書ける。
でも、感動的なキャッチコピーを打ち出すことはプロモーション活動の後半でいいのよ。
今必要なのは、“人々の行動を直接的に変化させられるようなアイデア”なの。
福田
直接的に…
三浦さん
たとえば先日、ドイツの広告系専門学校の学生が勝手にNetflixの広告をつくったんだけど、それはみんなを外出させないようにしたポスターになってたんだ。
街中に、『ストレンジャー・シングス』や『ナルコス』といったNetflixの人気ドラマのネタバレを書いて、駅や街頭に張り出したんだよ。
福田
面白い!
外に出るとドラマの楽しみがなくなってしまうってことですね!
三浦さん
そう。外に出ることで直接的に“損得”に影響してしまうというアイデア。
今だったらテクノロジーを駆使してそういうことができるでしょ。
GPSを使って、外出しない人にメリットがあるような施策を打っていくといいと思うね。
GO三浦のアイデア③「“ビジュアル”と“シーン別”で、マナーをアップデートしよう」
三浦さん
あと、落合陽一が「これから先は、アフターコロナではなく、ウィズコロナの時代だ」と言ってて。
パンデミックは収束しても、こういう病原菌との戦いはずっと続いていくだろうっていう話なんだよね。
だから、感染症を避ける生き方を全人類がライフスタイルに取り込まないといけなくなってくる。
福田
生活自体を変える必要があると。
三浦さん
そう。
だから、「人と距離を取ることがこれからの時代の礼儀・マナーですよ」ということを打ち出していくべきだと思う。
たとえば、これまでクライアントと大事な話をするときは、電話やメールではなく直接お会いするっていうのが礼儀だったじゃん。
福田
「今日は大事な打ち合わせだからおうかがいします」みたいなこと、よくありますもんね。
三浦さん
それを変えるプロモーションをする。
つまり、「あなたのことを大事に思っているので、リモートでお話しましょう」という態度が“新しい礼儀”である、と浸透させるべきだね。
「距離を取るのは、人として常識ですよね」っていう意識がみんなの頭の中にある状態にする。
福田
その新しいマナーはどうやって啓蒙するんですか?
三浦さん
JTの「大人たばこ養成講座」ってあるでしょ。
あれがけっこう理想的なんだよね。
Think “OTONA”,Think MANNERS.大人たばこ養成講座
大人たばこ養成講座は、大人として立ち振る舞うべきお作法や、喫煙マナーを発信しています。
みんな一度は見たことがあるであろうアレです
三浦さん
「大人たばこ養成講座」の優れている点は2つあって。
1つはいろんなシチュエーションごとに「こういうときはタバコを控えよう」といったマナーを教えてくれるところ。
もう1つはビジュアルで伝えてるところだよね。
福田
たしかに、あのイラストはすごく印象に残ってますね…
三浦さん
「ソーシャルディスタンス」って言葉だけ伝えられても、どうしたらいいのかピンときづらいし、人とメシ行ったときに具体的にどうしていいのかもわからなくない?
福田
言われてみれば…
外出できるようになったとき、「これやっていいんだっけ?」ってわからなくなるシーンが多そうですね。
三浦さん
だからこそ、「ソーシャルディスタンス×会議」「ソーシャルディスタンス×デート」「ソーシャルディスタンス×旅行」みたいに、いろんなシーン別に見せないといけない。
「ソーシャルディスタンス」って言葉だけ突きつけるだけじゃなくて、具体的なアクションまで見せないと、人は動くことができないんだよ。
そこまで落とし込まないと、社会にいるいろいろな人たち全員にマナーを浸透させられないよね。
あとは、ツイッターでは「2メートルマナー」っていう言い方があったけど、これも具体的だからすごくわかりやすいと思うな。
時代は不可逆的に変化している。抗おうとすることはムダ
三浦さん
今、人類はすごい無理を強いられているんだよ。
三密を避けよう、外出を控えようという“変化の要求”に対して、「不可能だ」って言う人もいる。
ただ、不可能だと思う状況でも、人類が団結して変わっていかないといけないんだ。
福田
人類の戦い…そう思うと、使命感が湧いてくる気がします。
三浦さん
多くの人は「一時的な災難だ」って思ってるかもしれない。
でもそれは勘違いで、もう社会のルールは不可逆的に変化してるんだよ。
それこそ、ガラケーがスマホに変わって、スマホ中心の社会になったように。
その前提をちゃんと認識していないと、どんどん社会から取り残されていくよね。
三浦さん
だったら、変化に対してポジティブに考えられるようになるべきだよね。
自分の仕事でも、「ソーシャルディスタンス」を実践できているヤツはかっこいい、みたいな風潮をつくれるような仕事をしていきたいな。
福田
そうですね…!
この記事を通して、そんな風潮を少しでも広められるよう頑張ります!
今回の記事は、コロナウイルスの感染拡大で激しく揺れ動いている社会情勢を鑑みて、「新R25は何をすべきか?」と考えて企画したものです。
社会が抱えている問題の構造をしっかり理解し、変化に対応していく。
三浦さんのアイデアや考え方を通して、一人でも多くの読者が、「ソーシャルディスタンス」に対する意識を高めてくれたら幸いです!
The Breakthrough Company GOとONEmediaとLINEが国連のオープンブリーフに応じて制作したYouTubeチャンネル『#想像力で世界を救え』では、インフルエンサーによる正しい手洗いの仕方をはじめ、新型コロナウィルス感染予防に有効な方法を動画でわかりやすく、楽しく紹介しています。
こちらもぜひご覧ください!
〈取材・文=福田啄也(@fkd1111)/撮影=中澤真央(@_maonakazawa_)〉
ビジネスパーソンインタビュー
またスゴいことを始めた前澤さんに「スケールの大きい人になる方法」を聞いたら、重たい宿題を出されてしまいました
新R25編集部
【不満も希望もないから燃えられない…】“悟っちゃってる”Z世代の悩みに共感する箕輪厚介さんが「幸せになる3つの方法」を伝授してくれた
新R25編集部
「実家のお店がなくなるのは悲しい… 家業を継ぐか迷ってます」実家のスーパーを全国区にした大山皓生さんに相談したら、感動的なアドバイスをいただきました
新R25編集部
「俯瞰するって、むしろ大人ではない」“エンタメ鑑賞タスク化してる問題”に佐渡島庸平が一石
新R25編集部
社内にたった一人で“違和感”を口にできるか?「BPaaS」推進するkubell桐谷豪が語るコミットの本質
新R25編集部
【仕事なくなる?そんなにすごい?】“AIがずっとしっくりこない”悩みへのけんすうさんの回答が超ハラオチ
新R25編集部