ビジネスパーソンインタビュー

決断コストはゼロにする。東大卒プロゲーマーが教える“無駄な努力を避ける”3つの方法

ときど著『努力2.0』より

決断コストはゼロにする。東大卒プロゲーマーが教える“無駄な努力を避ける”3つの方法

新R25編集部

2019/12/22

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東大卒のプロゲーマーであり、国内のみならず海外で圧倒的な知名度を誇るときどさん

2019年には2つの世界大会で優勝しましたが、一時期まったくと言っていいほど勝てない時代があったそうです

eスポーツの市場がどんどん大きくなり、つねに新しい勝ち方が確立されていく環境に、対応しきれなかったと言います。

しかし、そこでは今までのやり方を見直し、復活を遂げたノウハウを、著書『世界一のプロゲーマーがやっている 努力2.0』にまとめました。

同書より、ときどさんが導き出した新しい「努力」の形を、3記事にわたって抜粋して紹介します。

無駄な努力を避ける方法①行動を「ルーティン化」せよ

東大卒というだけで「勉強を頑張ったんですね!」「意志力がありますね!」と言われるのですが、残念ながら僕の場合はそうした言葉はまったく当てはまりません。

実は、僕は極度の面倒くさがりで、物事を続けたり、継続したりするのが本当に苦手です

週1回のインターネット配信のために移動するのがダルいので、会社(配信の撮影場所)に住んでいたくらいです。

そういう人が何かを本気で継続したい、やり遂げたいときに意志の力に頼っていると、何も実現しません

大事なのはダメな自分を前提にして、それでもなんとか努力が続く「仕組み」を作ってしまうこと。

自分が「動く」のではなく仕組みに「動かされる」ようにするのです。

有効なのが、あらゆる行動を「ルーティン化」してしまうことです。

ルーティンとは、「決まった手順」「日課」などを指す英語です。

毎日同じ作業を繰り返す仕事を「ルーティンワーク」といって少しマイナスの意味で捉えられることも多いようですが、僕はこれを逆手にとって利用しています。

決めてしまっても差し支えないことは決めておく。そうすることで、決断するコスト(時間、労力)をゼロにすることができます

決断というとなにか重大な判断を思い浮かべるかもしれませんが、日常生活は常に決断の連続です。

ご飯かパンか。

お茶にするかコーヒーにするか。

今日は何を着て出かけるのか。

どちらのコンビニに行くのか。

無意識であっても意外に気力を消費させられるものです。それらが積み重なるとあなどれません。

ルーティンを設定するときの3つのポイント

1日の時間割をルーティン化するときには、3つのポイントがあります。

1つ目は、1日の中に種類の違う行動を入れておくこと。

僕が受験生時代に勉強とゲームを両立していたのは、ゲームをやりたかったのはもちろんですが、それぞれにいい影響があるからでした。

今も、ゲームの対戦会だけに通うのではなく、同じ1日の時間割に、筋トレや空手を取り入れています。

2つ目は、ルーティンにしばられないこと。

事前に行動を決めておいても、予定外のことは次から次へと起こります。その度に自己嫌悪になったりイライラしていては、かえって逆効果。目的に応じて、柔軟に変化させます。

3つ目は「一番大事なポイント」だけは、きっちり押さえること。

僕の現在のスケジュールでいえば、「15時に、ゲームの対戦会に行く」だけは、あらゆる予定に優先させています。

無駄な努力を避ける方法②「一点集中主義」でいく

何かを成し遂げたいと思ったとき「分散するか、集中するか」という結構大きな問題があります。

集中すればリソースは分散しませんが、オプションがないリスクがあります。逆に分散すればリスクを回避できますが、集中はできません。

僕は基本的に「一点集中主義」を選択してきました。

大学受験における僕の目的は、東大合格というシンプルなものでした。ここがはっきりしていたので、かなりのムダを減らすことができたと思います。

浪人が決まってもそれほど焦ることもなく、計画を立てて時間を捻出することができました。

東大以外眼中にない」ことと、「第1志望は東大に行きたい」。

これはまったく異なります。

僕は東大だけでしたから、他のことを考える必要がありませんでした。

もしも「できれば」東大に行きたいのであれば、併願や志望校の変更の可能性が考えられます。

大学進学という目的はいいのですが、そこから選択に含みを持たせたままにすると、場合によっては2次、3次の備えが必要になる可能性も出てくることにもなります。

僕の場合、「東大以外眼中にない」状況だったので、それ以外のことはバッサリと切り捨てることができました。

受からなかったら2浪してもいいという覚悟でした。

これが滑り止めその他、何らかの事情で併願すると、色々やることが増えてしまいます。二兎を追うことを考えると、それなりの準備が必要になるものです。

ですから僕なら狙いはひとつに絞ります。もし複数の大学を受験するとしても、ほとんどの場合は第1志望は東大、第2志望は○○大と優劣がつくはずです。

そして優劣があるのなら、行きたい方にリソースをつぎ込んだ方が、圧倒的に効率は上がります

どちらかに決めてしまえばピークも1回でいいので、本番における精神的な負担もまるで違います。

ちなみに受験は一発勝負ですから、当日に力を出し切れるように仕上げることは、実力と同じくらい大切です。

この回数を増やすのは、ボクサーが短い期間にタイトルマッチを何度もやるのと同じ。調整が難しいのはいうまでもありません。

併願してリスクを分散するやり方は、たとえるなら大人数のパーティによる大掛かりな登山のイメージです。

潤沢な資金と時間をかけて入念に計画し、拠点を何カ所も用意して、エース級の人材を何人も揃え頂上を狙う。

二の矢三の矢を繰り出すだけの準備ができている。時間と根気がある人向けです。

僕はゲームをしたいこともあり、あまり時間をかける余裕もなかったので、軽装かつ単独行、スピード登山といった感じでした。

ルートも自分が最も登りやすい最短距離です。なぜなら東大の合格だけが目的だからです。

登頂さえすればかまわないので、記録を作ったり難関ルートを攻略する理由がありません。

無駄な努力を避ける方法③徹底的にアウトソーシングする

努力する目的がはっきりしていると、ムダなこともはっきりします。

目的にとって不要なことを切り捨てると、意外とやることは少ないな、と気づき、優先順位もつくようになります。

頭の中の整理整頓です。

整理整頓ができると、今度は自分以外に肩代わりさせられるものが見えてきます。これを使わない手はありません。いわゆるアウトソーシングです。

典型的なものが、受験対策における予備校です。僕も利用させてもらいました。彼らには大量のデータと実績がありますので、今やることできることを提示してくれます。

合否判定や、対策すべき科目などの分析はまるっと肩代わりしてもらいました。集中できる自習室は、ほとんど毎日使っていたくらいお気に入りでした。

登山でいうなら熟練のシェルパに先導してもらい、荷物も持ってもらう。僕は正しいペースで歩くことだけに専心できるわけです。

そこまで指導を丸呑みして失敗したらどうするのか、と心配な人もいるかもしれません。

確かに、合格するかどうかは選んだこちらの責任ですので、そこは慎重にやりました。

そして、任せたからには異論は差し挟まずに、アドバイス通りに受験対策を進めていきました。

アウトソーシングで大事なのは、「頼む範囲をしっかり決めて、相手の領域には絶対に口出ししない」ことだと思います。

勉強しながら「自分の感じ方と違うなあ」と思うことがあっても、プロがいうのならそうだろうと素直に受け取っていました。

実際、予備校は受験のプロ。初心者の僕より経験も実績も豊富なのだから、文句をいう筋合いもありません。

ただし、これで万が一不合格なら、それこそ訴えるくらいの気持ちでいました(というのは冗談ですが、そのくらいの気持ちで、お任せしたのです)。

何をアウトソーシング「しない」のか

一方、プロゲーマーになったばかりのころは、どんな小さな雑務も何から何まで一人でやっていました。

スポンサードして欲しくて手当たり次第に営業のメールをし、初めて自分で取ったスポンサーは、アメリカの小さなTシャツ屋さんでした。

うれしかったですね。その他にも渡航のためのチケットの手配や確定申告、契約書の作成など、やらなければいけないことはたくさんありました。

現在の僕は、筋力トレーニングはトレーナーに、納税については税理士に、契約関係はマネージャーに全て丸投げしています。

反対に、ゲームに関わること=どの試合に出るか、どのスポンサーと一緒にやるかなどは全部自分で決めます

もし、そのような内容をマネージャーに丸投げしてしまうと、「お金のために、この仕事を受けよう」ということも出てくるかもしれません。

これは僕のマネージャーが悪いのではなく、立場の違いなので仕方のないことです。

こうした自分の「価値観」に関わる部分までアウトソーシングしてしまうと、「何のために働くのか」の目的がブレてしまう。

アウトソーシング「する」「しない」の境目を決めることで、自然に自分の仕事の本当に大事なことが見えてくるのです。

東大卒で世界一のプロゲーマーのときどさんの努力法を学ぼう

ときどさんの努力は、地道な一面を持ちつつも、今までの「根性で歯をくいしばってやり抜く」的な努力とはまるで違います。

努力って、もっと柔軟で理性的で、かっこいいもの。同書には、これからの時代で磨くべき努力の方向性を、ひしひしと感じられました。

〈撮影=飯本貴子(@tako_i)〉

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