ビジネスパーソンインタビュー

「ボツになりそうなアイデアこそ事業化する」型破りな新規事業を生むパナソニックの取り組みとは

「未来のカデン」って、どういうこと!?

「ボツになりそうなアイデアこそ事業化する」型破りな新規事業を生むパナソニックの取り組みとは

新R25編集部

Sponsored by パナソニック株式会社 アプライアンス社

2020/03/27

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若いうちから裁量権を持って働きたい」「自分のアイデアを0から形にしたい」と考えたとき、ベンチャーや起業など、大企業ではない道でチャレンジしようとする人もいるのではないでしょうか。

そんなイメージを覆す取り組みを行なっているのが、パナソニックの中でもテレビ、冷蔵庫、エアコンなど家電の商品開発や製造、販売を担っているパナソニック株式会社 アプライアンス社(以下:アプライアンス社)。

同社は新規事業を生み出すための仕組みとして「ゲームチェンジャー・カタパルト」を発足し、社内のビジネスコンテストを毎年開催しているそうなんです。

実際に、ここからどんな事業アイデアが生まれているのかというと…

…いわゆる“家電”とは言えないものばかり…。それに、なかなかユニークです

なぜアプライアンス社が大企業らしくない(?)事業を展開しようとしているのでしょうか。型破りな新規事業を生み出せる背景と合わせて取材してきました。

〈聞き手=宮内麻希(新R25編集部)〉

「未来のカデン」を生み出す「ゲームチェンジャー・カタパルト」とは?

宮内

今日はよろしくお願いします。

アプライアンス社には新規事業を生み出すユニークな取り組みがあると伺いました。

最初に話を聞いたのは、新規事業の創出を担うプロジェクト「Game Changer Catapult(ゲームチェンジャー・カタパルト)」の運営事務局の向奥(むかおく)さん

向奥さん

はい、それが「ゲームチェンジャー・カタパルト」(以下:GCカタパルト)です。

これは、アプライアンス社の社員であれば誰もが挑戦できる社内公募型のビジネスコンテスト。「この事業をやりたい」という想いやアイデアがあれば、事業化するチャンスがあります

宮内

社内起業のようなイメージですね。GCカタパルトはいつから開催されているのですか?

向奥さん

2016年から取り組みをスタートして、現在4期目です。

価値観の多様化や技術の革新にともなって、ビジネスも変化しつづけています。この激動の時代を生き残るには、会社そのものが柔軟に変化していかなくてはいけないという想いから立ち上がったプロジェクトです。

パナソニックから「家電」ではなく、「未来のカデン」を生み出す目的で活動しています。

宮内

あの、「カデン」って…? 「家電」のことですよね

向奥さん

モノをつくる「製造業」というよりも、モノとともに新しいサービスを提供する「サービス業」に近い考え方です

いま、「自動車」は広く移動を支える「モビリティ」という概念にアップデートされていますよね。

一つひとつの新しい「家電製品」の創出ではなく、「暮らしにまつわる新たな価値やソリューションを生活者へ届ける」概念として捉えるという意味で「カデン」と表記しています。

宮内

なるほど!

Webサイトを見ると、かなりユニークなアイデアが多いですよね。

向奥さん

はい。実際、「これなら売れそう」という市場価値の予測よりも、社員個人の身近なテーマや課題感をもとにした事業アイデアを採用することが多いんです。

宮内

それはどうしてなんですか?

向奥さん

これまでの大企業の商品企画は「大量生産・大量消費」を前提としていたため、“マス”をターゲットとするのが基本でした。

ターゲットが限定されてしまう特定の課題解決に向けた商品は、ニーズがあったとしても「うちがつくる規模感のものではない」と判断されてしまい、企画が通らないことも多かったんです。

向奥さん

でも当初は小さな市場でも拡大していく可能性は無限大にありますし、機能や性能で大きな差別化が難しいこれからの時代は、一人ひとりが心から「これをやりたい」と情熱を持てるプロダクトやサービスこそ価値があるはずです。

想いのあるアイデアをムダにしないためにも、GCカタパルトは「上司に言ってもボツになりそう」なアイデアこそ事業化するようにしています

宮内

「上司に言ってもボツになりそう」なカデン…気になります!

個人の情熱から誕生した“社会課題を解決する”アイデア

ここからは、実際にGCカタパルトの審査を通過し、事業化に向けてプロジェクトを進めている(写真右から)原田さん、山中さん、甘利さん、勝山さんの4人も交えて、その実態を詳しく聞いていきます!

一体、どんな事業が誕生しようとしているのでしょうか?

宮内

GCカタパルトを通して事業化を目指す、みなさんのアイデアについて教えてください。

原田さん

私は、病気や加齢によって飲み込む機能が低下してしまう嚥下(えんげ)障害のかたをサポートする「Swallowee(スワロウィー)」という商品とサービスを開発しています。

原田さん

嚥下障害を持つかたは、飲料を摂取する際に誤嚥を防ぐため、飲料に“とろみ”をつける必要があるんです。

ただ、適切なとろみ具合の飲料をつくるのは難しく、失敗すると誤嚥のリスクが高まるだけでなく、飲み心地を損ねて飲料の摂取拒否につながってしまうこともあります。

「Swallowee」は、とろみ付け作業をシンプルにすることで、とろみ飲料調理の負担を小さく、飲む喜びを大きくするソリューションを提供しています。

山中さん

私は、「AiryTail(エアリーテール)」という、ベトナムなどの東南アジアを中心としたバイクユーザー向けのパーソナル空気清浄マスクを開発しています。

宮内

パーソナル空気清浄マスクって初めて聞きました…!

山中さん

マスク内部にフィルターをつけることで、外部から取り込んだ空気が浄化される仕組みになっています。

特徴的なのは、走行中の風を利用して電気を使わずフィルターで周囲の空気を浄化する風路を持っている点です。浄化された空気の一部は首元を通って周囲へと放出されるので、使っている人に涼しさを提供するだけでなく、環境にも優しいマスクなんです。

山中さん

私たちは個人の豊かさと同時に、積極的に環境問題を改善する機能を搭載した“地球家電(皆の家である地球の家電)”を世に出すことを目指しています。

甘利さん

私の事業は、ジェルネイルの除去に関するソリューションを提供する「nafeee(ネイフィー)」です。

これまでジェルネイルをオフするのにかかっていた40分ほどの時間を、特殊なベースコート材とランプを使うことで、5分まで短縮することができる事業です。

勝山さん

僕は、お絵描きを通じて子供たちのクリエイティビティの育みに貢献する「DrawNet(ドローネット)」という教育サービスをつくっています。

勝山さん

専用アプリを通じてオンライン上で開催されるワークショップに親子で参加して、実際に絵を描くのですが、インストラクターからコメントがもらえたり、ほかの子どもたちが描いた絵もチェックできたりするのが特徴です。

僕自身、小さい頃から絵を描くのが大好きで、描いた絵を両親に褒められたことがきっかけで、ものづくりに携われる現在の仕事を選んだという原体験からアイデアを提案しました

通常業務と二足のわらじ。アイデアが生まれたきっかけとは?

宮内

山中さんはまさにご自身の原体験がアイデアになっているとのことですが、どんなきっかけでそれぞれのアイデアが生まれたのでしょうか?

山中さん

私は普段、エアコンの開発をしているのですが、もっと環境を配慮した機能を加えたいと思っていたんです

既存製品の追加機能として何度か提案していたんですが、顧客にとってあまりメリットに感じづらいので、社内で提案してもなかなか通らなくて…

環境目線でなく「人目線」での開発になってしまうことにモヤモヤしていたときに、GCカタパルトの存在を知って応募しました。

宮内

みなさん、アプライアンス社の各部署でお仕事されながら、GCカタパルトのプロジェクトも進めてるんですもんね。

原田さん

そうなんです。私は、業務用の空調を扱う事業部で、生産管理を担当しているんですけど…

宮内

普段は、まったく違うお仕事をされていたんですね…!

「Swallowee」と空調って、あまり関係ないように思うのですが、なぜこのアイデアを思いついたのですか?

原田さん

実は、大学時代から介護領域に興味があったのですが、仕事としてやるのはムリかもしれないと諦めていました。

そんなとき、社内に有志の介護サークルがあることを知って参加したんです。その仲間たちと話しているなかで生まれたアイデアを応募したのがきっかけでした

宮内

長年やりたかったことを、GCカタパルトで実現されたんですね。

個人的な想いや原体験からアイデアが生まれている印象ですが、甘利さんの「nafeee」は何がきっかけなのか気になります…(笑)。

甘利さん

僕はジェルネイルなんて当然やったことがなかったのでちょっと違うんですけど…

検証のために黒のジェルネイルをしているという甘利さん

甘利さん

海外向けの美容家電のマーケティングを担当しているのですが、米国に出張したとき、現地の駐在員の奥さんに、「私たちは3週間に1回ネイルアートに7000円も使ってる。美容ならネイルは絶対儲かる! やるべきよ!」と力説されて、このジャンルはイケるんじゃないかと(笑)。

宮内

マーケティングを担当していた甘利さんらしいきっかけですね。

甘利さん

実際、このまま働き続けていいのかという漠然とした危機感もあったんです

日々の業務をこなす中で、「今日、自分はどんな新しい価値を生み出せたんだろう?」と考えることも多くって。

自分自身で、パナソニックの目玉商品となるような美容カデンを生み出したいという想いがあったので、GCカタパルトに応募しました。

勝山さん

僕も近いですね。普段の仕事ももちろんやりがいはありますが、大きな仕事をするための一部を極めるプロフェッショナルという関わり方なんです。

でも、「小さくてもいいから自分が考えたものを形にしたい」という思いがあって、それならチャレンジしてみようと。

山中さん

目の前の仕事に追われていると、本来自分がやりたかったことや目指したかったものをだんだん置き去りにしてしまうと思うんですよね。

そうやって、自分を押し殺しながら働いている人って結構多いと思うんです

グサっとくる人が多そうな発言

山中さん

でも、当たり前なんですけど、仕事ってやりたいことをやるのが一番効率いいんですよ。そのほうがやる気も出るし情熱を持てるから、何倍もいい仕事ができる。

GCカタパルトの認知が上がることで、「個性を企業に活かしていく」という考え方が広まっていけばいいなと思ってます。

ゲームチェンジャー・カタパルトによって起こった“良い変化”

宮内

GCカタパルトでの挑戦を通して、みなさんの本職にも変化があったんでしょうか?

原田さん

私は、GCカタパルトでの活動が加わったことによって、仕事に対する時間の使い方が変わりました

本業に割ける時間の有限性をより意識するようになって、働き方が変わりました。ムダな業務は省いて、メリハリを大事にできるようになったと感じています。

甘利さん

私は、仕事を相対して見られるようになりましたね。

新規事業に挑戦したことで、“本業”のみでは知り得ない新しい仕事の視点を体験できたんです。本業の進め方の良い所・悪い所の両方を俯瞰して見られるようになり、視野が広がった感覚があります。

宮内

ちなみに、やりたいことを実現するなら転職副業といった方法もありますよね。

それをアプライアンス社内の新規事業として、GCカタパルトに応募したのはなにか理由があるのでしょうか?

山中さん

パナソニックはじめ、日本の大手メーカーはこれまでの家電ブームを牽引してきた存在です。

そのブランドが、一見“ニッチ”に見える領域に積極的にチャレンジすることで、それぞれの市場を広げられる可能性があると思いました

甘利さん

それなりの事業規模がある会社でもあり、さまざまな知見に基づいた慣習や勝ちパターンもいくつかあります。

それはそれで恵まれた環境なのですが、逆にいうと“変えること”に慎重になりすぎている気もしていました。

甘利さん

でも、GCカタパルトでの活動で得た知見を、既存事業に掛け合わせることで “新しいやりかた”を生み出せるかもしれない

これが、すでにリソースは潤沢にあるパナソニックで新しいことに取り組む大きな意義だと思っています。

宮内

既存事業のリソースとGCカタパルトのアイデアがシナジーを生んでいると。

向奥さん

そうですね。

受け身にならず、パナソニックという大企業をハックできる人材を増やしていきたいというのも、GCカタパルトの狙いです。

挑戦の場を提供するプラットフォームとして、情熱を持つ人を応援したい

宮内

最後に、みなさんの今後の展望について聞かせていただきたいです。

原田さん

私は、「Swallowee」を商品化して、嚥下障害で介護が必要なご家族にお届けするのが目標です。

介護を“お茶を注いで渡してあげる”くらいカンタンで日常的な行動にする手助けをすることで、「介護する・される」という関係性自体を変えていきたいです。

山中さん

まずは、お客さんに本当に喜んでいただけるものをつくって、事業を成功させること。

そして地球家電を通して、“地球を自分の家のように大事にする文化”をつくっていくことがゴールです。

甘利さん

「nafeee」はネイルの“オフ”に特化したサービスですが、いずれはオフに限らず、よりネイルアートを楽しくするサービスにも取り組んでいきたいと考えています。

長期的には、海外展開も含め、グローバルのネイルアート市場の就労環境改善につなげられればと考えています。

勝山さん

僕は「DrawNet」 を通して「子どもに自信を持ってもらいたい」という想いが根底にあります。

クリエイティビティの根源が子どもの表現欲求にあると考えているので、それを惜しみなく開放することで子どもの自信にもつながると思っています

今はそのファーストステップとして“描いた絵を見せるハードルを低くする”ということに取り組んでいるのですが、工作や音楽など、芸術全般にも挑戦したいです。

宮内

みなさんが考えたカデンがどのような形で進化していくのか今から楽しみです。

向奥さん

「カタパルト」とは、英語で「発射台」を意味する言葉でもあります。

「やりたいこと」を実現できずにモヤモヤしている人や、情熱はあるけれど提案の場がない人の心に火をつけて、挑戦の場を提供するプラットフォームとして広めていきたいですね。

その結果として、パナソニック内にとどまらず、世界や地球を良くするようなイノベーションを、GCカタパルトから生み出していきたいです

「ゲームチェンジャー・カタパルト」のように、社内で新しいアイデアを実現させる取り組みはすべての企業にあるわけではありません。

でも、制度のあるなしにかかわらず「自分が本当にやりたいこと」を大切にする生き方は今からでもできるはず。

今回取材した社員のみなさんが事業アイデアを語る熱さと想いに、仕事に自分なりの意義を持って取り組むことの大切さを感じました

〈取材・編集=宮内麻希(@haribo1126)/文=市川あかね/撮影=三浦希衣子〉

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