ビジネスパーソンインタビュー
「挑戦したこと全部に『リターン』があるわけじゃない」
芸歴30年でも、「弁当を温めるだけ」の仕事を断らない。フジモンの“選ばない”仕事論
新R25編集部
「お笑い界を代表する愛され男」こと、お笑いコンビFUJIWARAの藤本敏史さん。今回語っていただいたのは、「仕事との向き合い方」について。
というのも、FUJIWARAのお二人は「仕事を断らない」で有名なんです。
後輩芸人たちから、「そんな若手みたいな仕事断ってください!」と止められることもあるとか。
芸歴30年になった今でも、仕事を選ばないスタンスを貫いているのはなぜなのか…お話を伺ってきました。
〈聞き手=ほしゆき〉
【藤本敏史(ふじもと・としふみ)】1970年生まれ。お笑いコンビFUJIWARAのツッコミ担当。コンビ結成は1989年で、今年で結成からちょうど30年。雨上がり決死隊、ナインティナイン、バッファロー吾郎とともにお笑い第四世代として数えられている。2010年に結婚。現在は二児の父
後輩から止められても、「お客さんと近い仕事」をしつづけていたい
ほし
フジモンさん、後輩芸人から「FUJIWARAさんがまだ新人みたいな仕事も受けるから、僕らが仕事断りにくいです!」ってクレームを受けることもあるとか?
フジモンさん
あ~、ありますねぇ!
それはもう知らんがな、好きに断れって感じですけど(笑)。
ほし
新人みたいな仕事って、具体的にどんな内容なんですか?
フジモンさん
コンビニのオープン祝いで、お客さんに弁当をチンして配るとか。
後輩が断った、炎天下でエイサー(沖縄の伝統芸能)踊りつづけるイベント出演とか…
最近は、片道3時間かけて地方の温泉旅館に行って、おばあちゃんたち20人の前で漫才するのがありましたね。
ほし
えっ…
想像以上でした
ほし
お弁当チンして渡すって、正直プライドが傷つくというか…抵抗はまったくないんですか?
フジモンさん
いや、「何してんやろ」って思うことはよくありますよ!!
あるんだ
ほし
素直さ200%の即答きた…
フジモンさん
でもお客さんの前に立ったら、ただ笑わせたいだけ。全力でやります。
これは「全力」を表すポーズらしい。かわいい
フジモンさん
まったくお客さんのいない旅館の宴会場で、原西が全力でゴリラの真似をしながら所狭しと歩きまわったりね(笑)。
そういう僕らの姿を見て、お客さんが笑ってくれるだけじゃなく、後輩たちが「あそこまで全力ですごいです」って、声をかけてくれたりするんですよ。やっぱりうれしいじゃないですか。
優先するのはいつでも「やりたいこと」より「求められていること」
ほし
仕事を断らないのにはどんなポリシーがあるんですか?
フジモンさん
ポリシーなんてかっこええもんちゃうけど…
「自分がやりたいこと」より、「求められてること」に応えつづけようって思いはずっとありますね。
テレビで見るのとは違う表情だ
ほし
ビジネスマンも若手のころは「やりたいことより、求められてることをしろ」って言われがちですが…
なぜ今でも「求められてること」を指針にしているんですか?
フジモンさん
「なんで俺が?」って思う仕事を受けてきた過去の自分に、今めちゃくちゃ助けられているからです。
たとえば僕、20代のとき「吉本印天然素材」っていう吉本興業所属の若手芸人で結成されたユニットで、ダンスしてたんですよ。
ほし
「天素(てんそ)」ですね! 90年代前半にアイドル芸人と呼ばれていた。
フジモンさん
そうそう(笑)。
最初「ダンスユニットを組む」と言われたときは、なんで芸人なのに踊りの稽古せなあかんねん!!って、不満しかなかったんです。
自分の目指す芸人像とかけ離れていたし、まわりからも「芸人が何やってんねん」って白い目で見られて。
「ネタ作りよりダンスの稽古してる若手芸人が、どう売れるねんって」
ほし
そんな裏話が…
フジモンさん
だけど、「藤本さんは踊れるから」って呼んでくれる番組が今でもあるんですよ。解散したの20年前なのにですよ!?
あの稽古が、いまだに仕事の幅を広げてくれてる。
大好きな嵐の曲を『VS嵐』(フジテレビ)で踊らせてもらったり、その姿がYouTubeにアップされてウケてたり。
ほし
キレッキレですよね。ほんとすごいです。
フジモンさん
『アメトーーク!』(テレビ朝日)の、「パクリたい-1グランプリ」も同じです。
ほし
「パクリたい-1グランプリ」大好きです!!!!(全力)
「あらほんとぉ!」
フジモンさん
あれもね、最初聞いたとき「パクリを公然とやっちゃう仕事ってどうなん!?」って思いましたよ。ふつう芸人ってパクリご法度じゃないですか。
ほし
た、たしかにそうですね。
フジモンさん
「人のふんどしで相撲とってるだけやろ」って叩かれることもあったし。
でも、まわりの人たちの「パクリ面白いからやってよ」っていう声に応えてみようと。期待に応えることだけ考えて続けてみたら…
ほし
「パクリたい-1グランプリ」だけで番組がつくられるくらい、超人気になりましたよね。
フジモンさん
いやもう、ほんまうれしいですよ。ほんっまうれしいんですよ!!
フジモンさん
ビジネスマンも一緒やと思いますけど、挑戦したこと全部に「リターン」があるわけじゃない。
でも、誰かの期待に応えて「パクリネタ」みたいなものも続けてきたから、今の自分があるんやなって思います。
ほし
だから自分が好きなことや、挑戦しやすいことよりも、「求められてることを」優先しつづけているんですね。
フジモンさん
そうです。あと、はやい段階で「仕事を断らない=仕事を頼みやすい」ってイメージを持ってもらうことで、降ってくるチャンスの数が増えていきましたね。
「ガヤ」はテレビでは2割しか使われてない。頼まれなくてもサービスしたい
ほし
フジモンさんの代名詞といえば「ガヤ芸人」ですが、ガヤで戦おうっていう意識はずっとあったんですか?
フジモンさん
戦おうっていうか…それもサービス精神かな。
ガヤがサービス?
フジモンさん
正直、ガヤなんてあってもなくてもいいんですよ。メインで取り上げられるポジションじゃないし。
ほし
ですよね。頑張っても脚光を浴びにくいし…
フジモンさん
でもね、なんか、勝手に使命感をもってしまうんですよ。
ほし
使命感…
フジモンさん
お客さんだけじゃなくて、共演者やAD、メイクさん。自分と触れあう人を、楽しませなきゃ!っていう(笑)。
フジモンさん
自分と関わる人には、たとえ仕事であっても「今日の仕事楽しかったな」って思いながら帰ってほしい。
場を盛り上げてくださいなんて、ほんと誰からも頼まれてないんだけど…
実際、テレビで使われてる僕のガヤって、全体の2割くらいなんですよ。もっとめちゃくちゃ喋ってる(笑)。
ほし
カメラ回ってなくてもガヤしてるんですね(笑)。
フジモンさん
視聴者さんからは「うるさい」って嫌われることもあったので、「元祖ガヤ芸人」なんて呼ばれる日が来ると思ってなかったですよ。
ほし
今では『ウチのガヤがすみません!』(日本テレビ)も人気番組ですし、ガヤ芸人がすごく注目されるようになりましたよね。
フジモンさん
「ガヤ芸人」が市民権を得ましたね!
あの、この場を借りて最後に一言いいですか?
ほし
なんでしょう?
フジモンさん
僕も『ウチガヤ』呼ばれたいんですよ!! フレッシュ感ないけど!!
インタビュー内で逆オファーしないでください
ほし
「元祖ガヤ芸人」が若手だらけのあのひな壇に…! その絵も見てみたいです(笑)。
フジモンさん、ありがとうございました!
フジモンさん
こちらこそ、ありがとうございました。
読者の皆さんにもよろしくお伝えください!
取材中は終始笑顔で、私たちのこともツッコミや顔芸で笑わせてくださっていたフジモンさん。
同じ場にいたカメラマン、スタッフさんも含め「今日の仕事楽しかったって思いながら帰ってもらいたい」という心配りを、まさに今していただいているなぁと感じていました。
あぐらをかかず、求められていることに全力で応えつづける。
これが、「お笑い界を代表する愛され男」を生んだ仕事論でした。
〈取材・文=ほしゆき(@yknk_st)/編集=天野俊吉(@amanop)/撮影=中澤真央(@_maonakazawa_)〉
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