ビジネスパーソンインタビュー

「身体性」のあるインプットをすれば、脳みそに電流が走る。田端信太郎の情報収集力

田端信太郎著『これからの会社員の教科書』より

「身体性」のあるインプットをすれば、脳みそに電流が走る。田端信太郎の情報収集力

新R25編集部

2019/12/22

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NTTデータ、リクルート、ライブドア、コンデナスト・デジタル、NHN JAPAN、LINEそしてZOZO

最強のサラリーマン・田端信太郎さんの経歴です。

時代を動かす企業を渡り歩いた経験と、圧倒的な発信力をあわせ持つ田端さんは、新R25のインタビューでも必ず新しい学びを届けてくれます。

そんな田端さんが上梓したのが『これからの会社員の教科書』。

田端さんが経験から導き出した「仕事の基本」をまとめた同書より、「仕事の基礎」「ビジネスの常識」「情報収集」「会議の立ち振るまい」を4記事にわたってご紹介します。

「現地・現場・現物」に価値がある

情報収集が大切だと言われます。

しかし、ただ漫然と日経新聞やツイッターやニューズピックスを眺めていても、時間がいくらあっても足りません

インプットを完璧にしようと思っていても、情報は日々どんどん増えていきます。

情報収集するときには、なんらかの仮説なり、目的意識を持っていないと無駄な時間を過ごすことになります。

逆説的ですが、新入社員であれば下手に新聞を読むよりも、「現地・現場・現物」に触れること。身体感覚をともなった情報のほうがよっぽど大切です。

新聞やネットを漫然と見るのではなく、現場に足を運んでみることです。参院選で山本太郎さんの陣営が盛り上がっているなら、演説を聞きに行ってみる。

エンタメ事業への新規参入を検討していて、吉本のヤミ営業の件が気になるなら、売れない不人気な芸人のパチンコ屋の新装開店の営業仕事を観に行ってみる。

そこでパチンコ屋の担当と立ち話をすれば「あの芸人には10万円出てるのに、あの芸人は300円らしい」といった生の情報が手に入るかもしれません。

ドローンに興味が出たら、休日にドローンを組み立て、操縦してみてもいいでしょう。それが何かにつながるかもしれません。

たとえば、あるベンチャー企業が「ドローン物流」の提案を持ってきたとします。

そこで、もしドローンを操縦した実感があれば「あんなもの、ちょっと風が吹いたら不安定だし、シビアな物流に使うにはリスクが高すぎます。常識的に考えてムリ! でも、速達で届けたい書類のような軽いもののやりとりを、バイク便から置き換えるのならアリかも!」と思えるかもしれない。

実感、体感が積み重なっていくと、直観的にものごとがわかるようになってきます。

ぼくは高城剛さんが好きなのですが、それは徹底的な「現地主義」だからです。彼は世界中を飛び回っています。だから、この人しか言えないことを言えるわけです。

たとえば「リーマンショックがあったあと、FRBが金融緩和しまくった。ニューヨークでお金をおろしたらATMから真新しいピン札しか出てこなかった。アメリカのジャブジャブ金融緩和は本物だ!」というようなことを、彼は朗々と語るわけです。

よく考えてみれば、そこに因果関係が本当にあるかどうかはわからないですが「現地を見てきたぞ」「体験してきたぞ」という事実はやはり強いのです。

司馬遼太郎の『坂の上の雲』にこんな話が出てきます。

日露戦争中、旅順の攻略を巡って日本軍は大苦戦の中、参謀たちが地図を見ながら会議をしていました。会議の場所は最前線から遠く離れたところです。

「現場のXX隊は、A地点を占領したとのことです!」と若い参謀が言います。それに対し、参謀総長が「そうは言うけど、オマエは、現場を見たのか?」「弾が飛ぶところに行って、ちゃんと戦場の状況を自分の目で確認したのか?」と問うと黙り込んでしまいました。

報告が全体的に上滑りだと感じていた参謀総長は「そもそも、この地図は、その上の部隊の位置を示すコマは本当に実際の戦場の現状を写し取ってるのか?作戦を立てるうえで、前提となる正しい戦況の把握が、ぜんぜんできていないじゃないか!」と若い参謀たちを一喝するシーンがあります。

その後、参謀本部自体を弾が飛んでくるくらいの場所に移動して、確かな情報を得られるようになり、最終的には日本軍がロシアに辛くも勝利しました。

現場にこそ、価値のある情報が埋もれています。若いうちはとにかくフットワークを軽くして、現場に足を運んだほうがいい。

それは偉くなるとなかなかできなくなることです。若手だからこそのアドバンテージです。

ポケモンGOを語るよりポケモンGOをやれ

「いかに情報収集するか」も大切ですが、一方で「生活者」として、普通に生きるということも大切です。

若い人であれば、ポケモンGOをやったことがある人が多いでしょうか。

ビジネスとしてではなく、生活の中で当たり前にインストールしたかもしれませんが、実はその感性が強みになることもあるのです。

以前、グロービスの「G1サミット」に行きました。

わざわざ土日の昼間に集まって勉強するような意識の高い大手企業の経営幹部が100人ほど集まっていました。ちょうどポケモンGOが流行っているときでした。

ぼくはスマートフォンマーケティングのセッションで話したのですが、冒頭こんな質問をしました。「ポケモンGOが流行ってますけど、やったことある人どれくらいいますか?」と。予備知識のレベルを測ろうと思って聞いたのですが、ほとんど手が挙がりませんでした

椅子から落ちそうなくらい、衝撃を受けました。そして、ぼくはこう言いました。

「こんなセミナーで私の話を聞くよりも、まず手元のスマホでポケモンGOをやってください。そのほうがよっぽど大事です」と。

なぜポケモンGOすらやらずに、スマホのマーケティングセミナーなんかに来ているのか? ぼくには不思議でなりませんでした。なぜ手元のスマホを使って10分でできることをやらないのか?

別にぼくは、スマホ・ゲームが好きというわけではありません。でもポケモンGOは「やっておかないとやばいな」と思って、やっていました。

実際にやってみることで「ポケストップ」の意味がわかり、マクドナルド全店がポケストップになった! というニュースの意味合いがよく分かったり、人がなぜポケモンGOに夢中になるのか、よくわかりました。

このような場合で、30分でもやったことがあるのか、0と1の差はとても大きいのです。

前澤さんやぼくみたいな暇なおっさんがツイッターをやりまくっていて、若手社員のほうがパソコンとにらめっこで、提案書を作るのに明け暮れていたりします。

どちらが「現場」をわかっているかといえば、ずっとスマホをいじっている人のほうだったりします。

デジタル・ネイティブとしての普通の感覚を大事にしてみてください。

単純作業の積み重ねが「信頼」に変わる

単純作業といえば、すごく覚えている仕事があります。

リクルート時代、フリーマガジンの「R25」を立ち上げたときのこと。

上司から「とにかく紙媒体の広告を徹底的にリサーチしろ」と命じられました。

そこでぼくは広告費の構造を知るため、まず雑誌がどんな特集を組んでいるかを調査することにしました。

まず本屋に行って「東京ウォーカー」「ブルータス」「週刊プレイボーイ」など、若い男性が読んでいる雑誌を買いこんできます。

さらに過去1年分くらいのバックナンバーも入手して、どういう広告の銘柄が出ているかを全部一つひとつ、手でページをめくりながら、エクセルの表に書き出していきました。

何月何日号の特集テーマはこれ」「背表紙に入っているクライアントは、トヨタ」というように表を埋めていく。

いわゆる「単純作業」ですが、それをやっているうちに特集記事のテーマ設定と、広告内容の関連性が見えてきたのです。

たとえば「ブルータス」という雑誌は、なんとなく気ままに特集を組んでいるように見えます。「今回は歌舞伎特集でいこう」「次はハワイかな」といったノリでつくられているように見える。

しかし、3月15日号と9月15日号はかならず「ファッション特集」なのです。

その号の広告のクライアントを見るとアパレルの会社ばかりです。

これはのちに現編集長の西田さんに聞いたことなのですが、ブルータスは「広告をとるための号」と「読者の幅を広げるための号」と「既存読者を盛り上げるための号」の3パターンに分けているそうです。

この3つでメリハリを利かせている。それで言うと、3月15日と9月15日は「広告をとるための号」です。

だから正直、おもしろくはない。その代わり、広告はいいクライアントが目白押しです。

実はこの2つの号は、広告代理店およびマガジンハウスの広告局ではあたりまえの「年中行事」だったのです。

ファッション特集のタイミングが決まっていると、広告代理店を含めて業界全体で動きやすくなります。

特集のテーマなんて、編集長が世の中の空気を読んで雰囲気で決めている印象ですが、裏ではそういう「お約束」があったのです。

大切なのは、単純作業をしながら、自分の手を動かしながら、そういったことに気づくことです。

かつてのぼくは、雑誌をペラペラめくりながら手作業で打ち込んでいくときにビビッと脳みそに電流が走りました

3月15日と9月15日はいつもファッションの特集じゃないか!」と自分の手を動かして気づくと、そのインパクトが違います。

これがもしマーケティングリサーチ会社やコンサルティング会社に頼んでいたら、僕の頭の中に電流は走らなかったでしょう。

「雑誌の広告マーケティングにおける季節ごとの周期性」という資料を読むのと、自分で本屋に行って手を動かして調べたのとでは、感動と人を説得するときの迫力がまったく違うのです。

自ら体を動かせば、発言の説得力、迫力が違ってきます。「ぼくはやるべきことをやってきました」と堂々と言える。

ぼく自身、単純作業は大嫌いですが、「身体性」を宿らせながら知識を獲得していくうえで、現場での単純作業はものすごく大切なものだと思うのです。

ぼくは飽きっぽい人間だから、単純作業が嫌いな「生産性重視」の人間だと思われがちです。確かに面倒くさがりです。

しかし、特に若いうちは単純作業は絶対に必要です。「これは単純作業だから」といって無駄を排除していくと、残るものは食べ物でいうと「サプリメント」や「流動食」みたいなものしか残らない。

仕事の効率だけを重視していくと、魂の宿らないつまらないアウトプットになってしまうのです。

こういうことを言うと「おっさんの説教」だと思われがちですが、本当にそうなのです。

若いうちは「何が無駄か、無駄じゃないか」すらわかりません。

そういうなかで「現場体験」というものが身体性と暗黙知になっていく。これがものすごく大切です。

21世紀のビジネスパーソンのあり方を考えさせてくれる一冊

ビジネスマン同士の「ルール」「マナー」を教えてくれる『これからの会社員の教科書』。

同書には「ロジックで勝てると思ってるやつは0点」「おっさんはメンツが8割」など、田端さんの経験から得た学びがユニークな切り口で落とし込まれています。

年末年始に同書を読むことで、これまでの自分の働き方を振り返るきっかけになるはずです!

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