ビジネスパーソンインタビュー
「SNSは、メンタルに来ちゃうから…」
「気分転換なんてしたら、それ自体が不安材料」武尊が語るプレッシャーとの向き合い方
新R25編集部
R25世代、新卒時から続いた会社での“お客様扱い”は終わり、リーダーポジションに就くなど、新たなステージに立つころです。
そんなとき、何がツライって「プレッシャー」。自分が評価されてるのはうれしいけど、内心“実力以上の仕事が来てしまった”と焦ることはよくあるはず。
…というようなことを考えていたところ、ある大物への取材が決まってしまいました。
その人の名はK-1ファイター・武尊(たける)さん。
K-1 WORLD GPで三階級制覇を成し遂げ、37勝1敗という圧倒的な勝負強さを誇るR25世代のスーパースターです。
「勝って当たり前」「負けたら自分の恥ずかしいところを全国にさらされる」。
そんな想像を絶する状況のなか、闘いつづける武尊さんは、どうやってプレッシャーを乗り越えているのでしょうか?
〈聞き手=天野俊吉(新R25副編集長)〉
【武尊(たける)】1991年生まれ、鳥取県出身。2011年に「Krush.12」でプロデビュー。2013年5月に「Krush -58kg」の王座獲得。2015年4月に「K-1 WORLD GP」王座獲得。以降、フェザー級、スーパー・フェザー級も制覇し、K-1史上初の三階級制覇を達成した。通算戦績は37勝1敗
プレッシャーの乗り越え方をききにきたが…「試合前の2、3週間はずっと不眠症」
天野
今日は「プレッシャーの乗り越え方」を教えてもらいにきました!
新世代の選手が台頭してきて、“新・格闘技ブームが始まる”という声をよく聞きます。そんな人気をつくった武尊さんに、ぜひ聞いてみたいなと。
武尊さん
僕がですか…
すいません、それ教えられないかもしれないです。
天野
え?
え?
武尊さん
僕、プレッシャーを全然乗り越えられてなくて…めちゃくちゃ感じてるんですよ。
天野
そうなんですか!?
武尊さん
です。僕、試合前の2、3週間はずっと不眠症になるんですよ。
試合のことがプレッシャーでいろいろ考えちゃうんですよね…
「ナチュラル・ボーン・クラッシャー」と呼ばれるチャンピオンが不眠症に?
天野
よく「トレーニングに行き詰まったら、遊んだり音楽を聴いたりして気分転換する」というアスリートもいますが、そういうことはしないんですか?
武尊さん
気分転換って、簡単なことじゃないですよね。強い思いがあればあるほど、何をやってても本番のことを考えちゃう。
それに僕は、気分転換しようとすると、そうやって気を緩めさせてること自体が不安材料になるんです。
そういう人、多いんじゃないですかね?
天野
それはちょっとわかります…
武尊さんがそんなにプレッシャーを感じるのは、やっぱり「負けたらどうしよう」と思うからなんでしょうか。
武尊さん
それもありますし、自分が組織(K-1)を背負ってると思ってるから。
僕は子どものころから、ずっとK-1のリングに上がることを目指してきたんですけど、僕がプロデビューしたのとほぼ同じタイミングで当時のK-1が財政難になって活動休止。
そのころには、生活のために居酒屋で夜中までバイトしたり、クレープ屋さんでもバイトしたり、K-1を広めたい気持ちでテレビ番組のオーディションを受けたりしてました。
天野
ええ…!
武尊さん
2014年にK-1が新体制で活動を再開して、僕はそこから今日まで必死に盛り上げてきたという実感がある。
そんな今のK-1がかつての全盛期ぐらいに人気になるには、僕が勝って、もっともっと多くの人に見てもらわなきゃいけない。
「僕の負けイコールK-1の負け」だから、プレッシャーを感じるんです。
天野
めちゃくちゃ背負っている…
武尊さん
SNSもプレッシャーになるので、ツイッターとかYouTubeのコメント欄とか、一時期は絶対見ないようにしてました。メンタルに来ちゃうんで。
最近は見られるようになったんですけど…
天野
ちなみにどんなこと書かれてたんですか?
武尊さん
「お前なんか格闘技やめちまえ」「見たくねえよ」とか。
それを書いてたヤツに伝えたい。本人目の前にしたら絶対言えないよ…
武尊さん
僕は、とにかく格闘技に興味を持ってもらいたくて、ファンサービスもできるだけするし、テレビ番組にも積極的に出ます。
バラエティ番組とか、女優さんとデートするような番組とか…
でも、一部の人はそれを見て、SNSでバッシングしてくる。今は「テレビに出てこういう言葉を話すと、こういう反応があるんだな」って参考にできるようになりましたけどね。
本番は“趣味”だと思う。具体的に「見えてくる」まで成功をイメージする
天野
武尊さんがめちゃくちゃプレッシャーに苦しんでることはよくわかりました…。「乗り越える」はムリでも、プレッシャーに「向き合う」方法があれば教えてください。
武尊さん
プレッシャーに向き合いつつ成果を上げるために、僕が心がけてるのは「楽しむこと」。
試合本番までの期間は“仕事”だと思ってるんです。でも、本番になったら“趣味”だと思う。
天野
あんなに激しい試合を“趣味”感覚でやってるのか…!
武尊さん
あとは、成功をイメージすること。ただイメージするだけじゃなくて、具体的に「見えてくる」まで向き合って考えるんです。
「見えてくる」って…?
武尊さん
試合前にリングチェックの時間があるんですね。
そのときに、自分がどう動いて、どう闘って、どう勝つのかを想像するんですよ。
相手が倒れて、ダウンカウントが数えられて…そして勝ったときのリングの光景、お客さんの歓声までイメージする。イメージできるまでは、リングから降りません。
天野
そんなに細かく! イメージできるまでに何分ぐらいかかるんですか?
武尊さん
はやいときは1、2分でできます。でも、時間がかかると10分経っても15分経ってもイメージできない。
天野
イメージできなかったらどうするんですか…?
「え~~、たしかにそうッスよね…」
武尊さん
無理やり想像して終わるようにしてますけど…
でもそうやって時間がかかるときは、だいたいあまりうまくいかないというか、苦戦しますね…
根性論は必要だが、「休みどき」は数字でチェックしよう
武尊さん
試合本番前に自分の成功がイメージできないって、結局自分のなかで「努力が足りないんじゃないか」っていう不安があるからなんですよ。
天野
努力が足りない…
武尊さん
だからこそ僕は、「根性論って必要だ」と思ってます。
努力こそが一番の安心材料なんです。
武尊さん
今って会社でも、どんどん厳しい働き方ができないようになってるじゃないですか。
「5時になったら全部終わり」で、自分が納得いく努力をできてないなら、それは不安ですよね。
不安なら逆にもっとチャレンジしたらいい。もちろん疲労がたまってるならムリにやらないほうがいいですけど。
天野
そこの判断が難しいですよね。「今日はもう疲れてるから帰ろう」と思って帰宅しても、「本当はまだできたのに折れちゃったな…」って思うこともあるし。
武尊さん
根性で頑張るか、休むべきかの判断には、何かしらの数字的な基準をつくったほうがいいですね。
僕も練習をしすぎてケガしちゃうほうなので、魔裟斗さんにアドバイスしてもらったのは「自分の疲労は、数値化して客観的に見たほうがいい」ってことなんです。
天野
たしかに、客観的には見にくいですもんね。
武尊さん
格闘技のジムなら、最近は疲労を数値化できるマシンがあります。会社ではそんな機械はないでしょうけど、時間とか、自分なりの基準を置くと、根性論とのバランスが取れると思います。
…こんな感じで大丈夫ですかね?
プレッシャーを乗り越えられないなんてカッコわるいこと言っちゃいましたけど、K-1に興味を持ってくれる人が増えるように、カッコよくお願いします(笑)。
一般的な“K-1ファイター”のイメージとは異なり、終始柔和で、飾らない対応をしてくれた武尊さん。
芸能人たちとも交友関係が広いということなので、最後に「他ジャンルのスターを見て、何か参考にすることはありますか?」ときいてみたところ、「試合を観にきてさえもらえば、楽しんでもらう自信はある。K-1人気をもっと高めるために、試合の見せ方とか試合後の言葉とか…思いや言葉を人に伝えるプロの方(ミュージシャンや俳優)たちの表現を参考にしてる部分もあります」とのことでした。
最後まで「K-1を背負う姿勢」を見せる、まさにK-1新世代の旗手。
これからも、乗り越えることのできないプレッシャーを存分に感じていただいて、シビれるファイトを見せてくれることを期待したいと思います。
〈取材・文=天野俊吉(@amanop)/撮影=長谷英史(@hasehidephoto)〉
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