ビジネスパーソンインタビュー

「この3つのゲームをクリアすれば、すごい若手になれるって保証します」曽山哲人の成長論

仕事で“スタートダッシュ”を切れる方法とは?

「この3つのゲームをクリアすれば、すごい若手になれるって保証します」曽山哲人の成長論

新R25編集部

2019/11/17

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多くの企業で内定式がおこなわれたとのニュースが流れています。

実際に働く現場でのイベントを通じて「働く」ことがリアルになったぶん、期待と同時に不安も抱いている内定者も多いのではないでしょうか?

希望の配属先じゃなかったらどうしよう」「就職先の給料が安そう」「先輩社員たちの働き方がブラック」…。

新R25では、そんな悩みをビジネス賢者に相談し、キレイさっぱり解消してもらおうと、特集を行います!

その名も「さらば!就職ブルー」…!!

今回話を聞いたのは、サイバーエージェント人事統括・曽山哲人さん

サイバーエージェントにて15年間人事を担当し、のべ数千人以上の新卒採用をおこなってきた、業界で知らない人はいないといわれる“人事のプロ”です。

そんな曽山さんに、新R25編集部の新卒1年目・森久保が、「新卒1年目でスタートダッシュを切るためにはどうすればいいの?」という悩みを相談してきました!

〈聞き手=森久保発万(新R25編集部)〉

【曽山哲人(そやま・てつひと)】サイバーエージェント取締役、人事統括。1974年神奈川県横浜市生まれ。1999年、20人程度だったサイバーエージェントにインターネット広告の営業担当として入社し、後に営業部門統括に就任。2005年に人事本部長に就任。2008年から取締役を6年務め、2014年より執行役員、2016年から取締役に再任。著書に『最強のNo.2』『強みを活かす』など

森久保

今日は、数多くの新卒採用を担当してきた曽山さんに、「スタートダッシュを切る方法」を聞きにきました! よろしくお願いします!(←緊張でめっちゃ噛んだ)

「できることなら新卒のときから活躍したい!」と考える人は多いと思うんですが、そのためには何をすればいいですか?

曽山さん

うん、すごくいいテーマだね!

優秀になる方法については、僕のなかで明確な答えがある。

 めちゃくちゃハッキリ言い切るじゃないですか…

曽山さん

仕事を「3つのゲーム」だと捉えて、それぞれクリアしていけばいいんだよ。

森久保

3つのゲーム…?

曽山さん

自分のレベルに応じて、3段階のゲームにチャレンジしてほしい。全部クリアできたらすごいヤツになれることは、僕が保証する

レベル1は、「満額回答ゲーム」って言ってね…

レベル1「満額回答ゲーム」:ゲーム化してプライドを超えろ!

曽山さん

満額回答ゲームのルールはシンプル。

どんな仕事を振られても、とにかく“満額回答”するってことなんだ。

※満額回答=賃金交渉で、労働組合が要求した金額を、会社側が
そのまま受け入れて支払うこと
。要求に対して、100%で応えること

森久保

「文句言わずになんでもやれ」みたいな話ですか…

でも、「これやる意味ある?」って思っちゃう仕事もありますよね。「こんな雑用したくないな」みたいな…

曽山さん

森久保くん、実はそこが成長の分かれ目なんだよ。

そういう考えじゃあ、全然成長しない。

森久保、一瞬でゲームオーバーです

曽山さん

人間の成長を一番妨げるのって、「プライドの高さ」なんだよ。「プライドなんてないよ」と思ってても、ある。

誰もが心のどこかで「自分はそこそこできる」と思ってて、事務作業や雑用を振られたら「こんな仕事…」と萎えている。

森久保

正直、僕もそう思うことはあります。

じゃあ、プライドをなくすしかないんですかね…?

曽山さん

いや、人間がプライドをなくすことはほぼ不可能。

だからこそ「ゲーム化」する必要があるんだよ。

曽山さん

頼まれた雑用を、仕事じゃなくて「満額回答をするゲーム」だと思ってみるの。

「はい、1満額回答できた!」「はい、2満額回答クリア!」って、ゲームをクリアする感覚でこなしていくわけ。余計な感情をはさまず、機械的に消化していくクセをつける。

仕事を選ばずトライすれば、いつのまにか“会社に蓄積されてきたノウハウ”が身についている状態になれる。

森久保

なるほど…!

曽山さん

満額回答ゲームには「信頼を稼げる」っていう大きなメリットもあって。

ゲームだと思ってパッとやれば、余った時間でアドバイスをもらって修正できるから、「アウトプットのクオリティが高いやつ」になれる。

やるかやらないかで、その後の伸びが全然違うよ。

レベル2「決断の再生産ゲーム」:“仕事の意味づけ”を習得しろ!

森久保

でも、満額回答ゲームってぶっちゃけ思考停止ですよね…?

それをずっとやってても、ただの下っ端で終わっちゃう気がします。

曽山さん

よく気づいたね。

そこで出てくるのが、レベル2の「決断の再生産ゲーム」だよ。

“満額回答”から一歩進んで、「与えられた仕事にどんな意味があるのか」自分なりに考えてみること。もらった決断を、自分で決断しなおしてみる

曽山さん

たとえば、AとBの商品があったときに、先輩から「Bを売ってこい」と言われた。そこで、Bを売る理由を自分なりに考えて意味づけする

お客さんから「なんでBがオススメなんですか?」ってきかれたときに、自分の考えを語れるようになってほしいわけ。

「安いからです」「性能がいいからです」「お似合いだからです」…理由は何でもいいから、自分なりに説明できるようになったら、クリアだよ。

森久保

うーん、わかったようなわからないような…

決断の再生産ゲームをやると、どうなれるんですか?

曽山さん

圧倒的なマネジメント力”が身につく。

森久保くんは、マネジメント力ってどういう能力だと思う?

森久保

えっと…部下たちをまとめる能力ですかね…

え、違うのか?

曽山さん

惜しい! マネジメント力って「チームのメンバーに成果をあげさせる能力」のことなんだよ。

そのためには、「なぜその仕事をしてほしいのか」「なぜあなたにお願いするのか」の意味づけが重要。

“その仕事をする意味”を説明することって、意外にやってない管理職が多いんだよね

森久保

意味づけして説明…!

さっき出てきたワードだ…

曽山さん

自分で仕事の意味を考える訓練を続けていけば、他人をマネジメントする立場になったときも、上手な仕事の依頼ができるようになってるよ。

レベル3「宣言ゲーム」:“想い”を口に出す場数を増やせ!

曽山さん

そして、最後は「宣言ゲーム」だよ。ルールは、「自分の考えを口に出して表明する」こと。

先輩から「Bを売ってこい」と言われたとき、「僕はAを売ったほうがいいと思います!」って根拠を持って言ってみる。「僕は今期Aをいくら売ってみせます!」っていうのもいいね。

森久保

おお! ついに自分の意見を言うわけですね!

でも…先輩の意見に反論することにどんなメリットが…?

曽山さん

「意思表明すること」をゲーム化してクセ付けたほうがいい理由は、「自分の想いを口に出す場数」が、ビジネスパーソンにとって非常に重要だからだよ。

曽山さん

「私はこうしたい」って言うことって、社会人にとっては難しいことだよね。自分より何十年も経験があったり、立場が上の人がいたりするわけだから。

失礼になっちゃう場合もあるから、ロジックとしては“想い”を飲み込んで言わないほうが正しくなってしまう。

森久保

はい…

曽山さん

だからこそ、最初は気が引けてもとにかく口に出してみるのが大事

自分で言えば「本当の責任感」が芽生えるし、先輩や上司が「たしかにお前の言う通りだね」って言ってくれたときの自信のつきかたも半端じゃない。

重要なのは「宣言」。自分なりのビジョンを表明しよう

曽山さん

若手時代にスタートダッシュを決められる人は、この3つのゲームをしっかりクリアしてる。

なかでも特に重要なのが、レベル3の「宣言ゲーム」。宣言することって、仕事をするうえですごく大事なことなんだよ

森久保

そうなんですね。

曽山さん

僕がこれまでに見てきたきわめて優秀な人は、面接の段階ですでに「僕は、25歳で経営者になります」「○○○○な世界をつくりたい」「○○なアプリで世界を変えたい」とか、宣言をしてた。

その後、どんなフェーズにいても、自分なりの“ビジョン”を宣言してる人が多いね。

森久保

あ~、たしかにそういう20代もよくいますけど…

ただビッグマウスのヤツ」もいるじゃないですか。

自分としては、いきなりデカすぎる夢を語るんじゃなくて、もっと粛々と仕事をこなすほうがカッコいいかなと思っちゃいます。

曽山さん

たしかに「有言実行」と「不言実行」、どっちがカッコいいかっていう話はあるよね(笑)。

ただし、僕がこれまでいろんな人を見てきた経験から言わせてもらえば…

曽山さん

「不言実行」で社会的に大成功した人って、ほとんどいないと思うよ

いたら教えてほしいくらい。

森久保

え~、そうなんですか?

なんででしょう…?

曽山さん

理由はふたつあって、ひとつは、不言実行だとまわりに人が集まらないから

「私はこれをやりたい!」って宣言していれば、夢が大きすぎて笑われることやバカにされることもあるかもしれないけど、その一方で応援してくれる人も出てくる。まわりの仲間や力のある先輩がいろいろと教えてくれるかもしれない。

でも、誰にも想いを言わずにこっそりと目指してても、応援してくれる人は現れるわけもない。だってまわりの人はあなたが何をやりたいか、知らないわけだからね

なるほど…

曽山さん

もうひとつは、自分なりの“ビジョン”を宣言してないと、軸がブレてしまうから

「自分はこうする」という宣言をしていれば、悩んだときにすぐ、「宣言したんだからこれをやろう」と立ち戻れる原点になるんだよ。

「自分のビジョン」なんてないけど…どうやって考えれば?

森久保

せっかくなので「宣言」についてもうちょっとききたいんですが、「自分のビジョンを考える」って難しくないですか?

みんながみんな経営者になりたいわけじゃないし…「普通に給料もらえて、楽しく暮らせればいいわ~」みたいな人はどうしたらいいんでしょう?

怒られますかこれ…?

曽山さん

まあそうだね(笑)。

実は、ビジョンにもいくつか段階がある。「モヤモヤゾーン」→「個人ビジョン(自分はこうなりたい)」→「組織ビジョン(こういう組織をつくりたい)」→「社会ビジョン(こういう社会をつくりたい)」って感じかな。

森久保

最初は「モヤモヤ」なんですね。

曽山さん

そう。仕事をしててモヤモヤすることってあるでしょう。「俺はなんでこれができないんだろう…」とか「業界のこの慣習って何なんだろう…」とか。

そのモヤモヤが「こうしたい」っていうビジョンの出発点になること、多いんだよね

森久保

それならすぐ出てくる気がします。

曽山さん

でも、別にムリに最上位の「社会ビジョン」を目指さなくていいんだよ

この前、吉野彰さんがノーベル賞を受賞したけど、研究者の多くは「自分のやりたい研究=個人ビジョン」を追求した結果、社会を変えるような成果につながったりするわけだしね。

そうかそうか…だいぶわかってきました

飲み会など、“業務外”でスタートダッシュを切るには…?

森久保

もうちょっとだけ教えてください!

「スタートダッシュを切る方法」って、業務外にもありますか?

僕は正直会社の人との飲み会が苦手なんですけど、断ったら仕事の評価も下がるのかなとか考えてて…

曽山さん

業務外でも、さっきと同じ「3つのゲーム」を考えてみればいい。

曽山さん

まずは満額回答ゲームだと思って、飲み会に顔を出してみる。

そのあと、決断の再生産ゲームに移って「自分が飲み会に呼ばれた理由」を意味づけしてみる。親睦を深めたくて呼ばれたのか、先輩がまわりにええカッコしたかっただけなのか、とかね(笑)。

最後に、宣言ゲームをする。「飲み会は必ず行きます!」「こういう飲み会なら行く」「飲み会は行きません」って自分で決めて口に出しちゃっていい。

森久保

ここでも3つのゲーム…!

曽山さん

自分が上司という立場になって、飲み会を開くようになったときに役に立つよ。

親睦を深める目的なら、飲み会じゃなくてもいい」「今日の目的はこれだから、○○くんがいたほうがいいな」とか、自分で論理立てて考えられるようになる。

どんな年齢でも、フェーズでも、3つのゲームを忘れてはならない

森久保

いや~、すごい…!

若手社員にとって、これ以上ためになる内容はないと思います!

曽山さん

ありがとう!ただ、「若手社員にとって」っていうのは厳密には違う

今日話した「3つのゲーム」は、年齢やステージを問わず、すべてのビジネスパーソンが意識すべき考え方なんだよ。

ん?

曽山さん

働いてると、部署異動したり昇進したり転職したり、仕事のフェーズが変わるときが必ずやってくる。

そのときにどうしたらいいかは…もうわかるよね?

森久保

もしかして…また満額回答ゲームを?

曽山さん

その通り!

すげえ…「きっちり伏線回収感」がすげえ

曽山さん

新しい部署に配属されたりしたら、「満額回答ゲーム」から始めないと、何も吸収できない。

25歳とか30歳とかで成長が止まっちゃう人ってよくいるんだけど、それって、年齢や実績のせいで「満額回答ゲーム」ができなくなってる人なんだよね。

森久保

こわすぎる…

曽山さん

組織で働くビジネスパーソンである以上、どんなフェーズにいても、そのときの年齢、そのときの地位なりの「3つのゲーム」を繰り返すことからは逃れられない。

そのことを本能的に理解できてる人こそが、「いつどんなときでもスタートダッシュしている、優秀な人」なんだよね。

曽山さん

僕だってそうだよ。誰かに乱暴に指示されたり、何か言われたりして「イラッ」とすることがある。でもそれは「満額回答」できてないサインだからね。

そのときは意識的に、「3つのゲーム」に立ち返ってみると、どんなステージでも成長できるだろうね!

森久保

ビジネスパーソンでいる限り、今日教えていただいたことは覚えておきます…!

最後は『新R25』オリジナルパーカーを来てもらい記念撮影! ありがとうございました!

ビジネスは、「3つのゲーム」の繰り返し

新卒や内定者に向けたインタビューでしたが、すべてのビジネスパーソンに役立つ、期待を超えたスケールの話をお聞きすることができました!

個人的に一番勇気づけられたのは、曽山さんのようなポジションの方でさえ、日々「満額回答ゲーム」に挑んでいるということ

僕も、素直にイチから頑張ろうと思いました!

〈取材・文=森久保発万(@vneck_now)/編集・撮影=天野俊吉(@amanop)〉

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