ビジネスパーソンインタビュー
「くびれスト」のキャッチフレーズで人気誌の表紙を総ナメ
「終わらせることだけは正解なんです」川崎あやが“先を決めずに”電撃引退する理由
新R25編集部
今年7月、人気絶頂のなか、来年3月にグラビアアイドル引退を表明した川崎あやさん。
多くのグラビアアイドルが歌手や女優、タレントへと転身していくなか、川崎さんは「私にとってグラビアアイドルは通過点ではなく、ゴールだった」と引退を表明。
『週刊プレイボーイ』『週刊ヤングジャンプ』など人気青年誌の表紙を飾るなどトップグラビアアイドルにのぼりつめた川崎さんは、なぜ“王道ルート”を選ばなかったのか。
そこには「グラビアアイドルを取り巻く偏見」に敢然と立ち向かった歴史と、弱い心に寄り添う優しい哲学が秘められていました。
〈聞き手=サノトモキ〉
【川崎あや(かわさき・あや)】神奈川県出身。O型。身長167cm、B80/W52/H88。趣味:ガンプラ、『名探偵コナン』、競馬。驚異のウエスト52センチというスタイルから「くびれスト」と呼ばれている。2018年、表紙を飾った『週刊ヤングジャンプ』が記録的な売上を達成し、その後数々の雑誌の表紙を飾る人気のグラビアモデル。 Twitter:@kawasaki_aya Instagram:@kawasaki_aya
サノ
今日はよろしくお願いします!
…ちょっとこの部屋暑いな、すみません。
川崎さん
たしかに…(ゴソゴソ)
スッ…「はい、どぞ!」
サノ
えっ僕にですか!?
川崎さん
だって私より汗かいてるから!(笑)
人類のみなさん、天使は実在しました
グラビアアイドルは「ファンありき」の仕事。人生ではじめて夢中になった
サノ
川崎さんはもともと、グラビアアイドルになるのが夢だったのでしょうか?
川崎さん
あっ、それは全然違います。
違うんだ…
川崎さん
私は昔から何かに打ち込めたことがなくて、大学卒業後はただ自宅から親が経営する会社に通うだけの「徒歩3分圏内の人生」だったんです。
なんとかそこを抜け出したくて、親の会社で事務仕事をしつつアルバイト感覚で土日にサロンモデルをはじめてみたら、水着の撮影会のお仕事もちょっとずつ入るようになって。
サノ
アルバイト感覚…
正直今「グラビアアイドルがゴール」と言ってる人のエピソードだとは思えないですね。
川崎さん
ファンの応援の数でグランプリを目指す「ミスフラッシュ」のオーディションで劇的にスイッチが入ったんです。
毎日SHOWROOM配信したり、撮影会でファンの方と密にコミュニケーションをとっていったりするうちに、みんながかけてくれた時間やお金を無駄にしたくないという責任感がどんどん大きくなっていって。
川崎さん
それからは、「ファンのみんなと一緒に一つひとつの目標を叶えていく」というグラビアアイドルの楽しさに、どんどんのめり込んでいきました。
「写真集を出すこと」「DVDを出すこと」「雑誌の表紙を飾ること」みたいにファンのみんなと目標を決めて、一緒に頑張ろうねって。
サノ
すごい、グラビアアイドルって、本当に「アイドル」なんだな…!
人にやっかむのも、それを気にしてしまうのも、「ヒマだから」
サノ
でも、とはいえグラビアアイドルって職業柄いろいろ言われたりしませんか…?
川崎さん
たしかに、ファンに支えられるアイドル性の側面よりは…
「ただ性的に搾取されてるだけ」ととらえられる偏見があったり、「水着になるだけの簡単なお仕事」みたいにナメられたりすることのほうが多いかも。
サノ
そういうのって、SNSで直接言われたりすることもあるんですか?
川崎さん
あります!
「海で水着着るだけてタダで海外行けて金ももらえていい仕事だな」みたいに職業を蔑視するものもあるし、「ロリ顔巨乳の時代に胸ないやつがグラビアやってんじゃねーぞ」みたいに容姿のことも平気で言われます。
「脱いでるし簡単にヤれそう」みたいな声も普通にあるし。
サノ
もはやセクハラの域を越えてるというか…ひどいですね。
川崎さん
ただ…正直まったく気にしてないです(笑)。
えっ? なんで!?
川崎さん
「人のことあれこれ言う人はヒマだからだ」ってよく言いますけど…
そういう声が気になっちゃうのも、それはそれで「ヒマだから」なんですよ。
サノ
どういうことですか?
川崎さん
私も、駆け出しのころは撮影会くらいしかグラビアの仕事がなくてわりとヒマだったんですけど、そういうときって偏見の声とか、攻撃的な声がものすごく気になるんです。
自分自身の内側に「考えるべきこと」がないから、自分のことじゃなくて他人のことを考える時間が増えてしまうんですよね。空っぽの自分を、他人のことで埋めようとしちゃうというか。
それ、他人に嫉妬して攻撃してしまう人も同じ構造かもな…
サノ
実際、グラビアアイドルって大変なお仕事なんですか?
川崎さん
当たり前です!
炎天下のなか、ジムで身体鍛えてても筋肉痛になるくらい無茶なポーズで何時間も撮らなくちゃいけないし、撮影日を見据えて日々の食事制限から体形管理しなくちゃいけないし…
圧倒的な努力をつづけなければプロとしてつづけることはできない世界なので、経験を重ねていくうちに「的外れな悪口」を相手にするほどヒマじゃなくなっていくんです。
サノ
言葉の節々に川崎さんがグラビアに抱いてきた情熱を感じる…
川崎さん
だから、たぶんみんなが思ってるほど、グラビアアイドルは自分の職業に負い目を感じたりとか、まわりの目を気にしたりしてないと思います。
そんな次元で悩まないくらい、毎日頑張ってる子たちばっかりなんで。
「川崎あやが唯一足を止めた“偏見”」とは
サノ
そうした偏見にも打ち勝って、今や川崎さんは写真集もDVDもリリースして、名だたる雑誌の表紙も飾って、「10秒グラビア」をツイートすれば瞬く間に拡散されるトップグラビアアイドルになったと思うんですが…
人気絶頂の状況のなか、どうして引退を決断したのでしょうか?
川崎さん
きっかけは、グラビアアイドルとして成功を重ねた結果、ファンのみんなからいただく応援の内容が変わってきたことで。
サノ
どう変わったんですか?
川崎さん
「グラビアアイドルの次」を求める応援が増えてきたんです。
「じゃあ次はテレビだね」「いよいよ女優さんに挑戦だね」って。
私はグラビアアイドルとしての夢をみんなと一緒に目標を追いかけてるつもりだったけど、みんなは私が「グラビアアイドルの次」のステップに進むことを望んで応援してくれてたんですよ。
川崎さん
そこではじめて、「グラビアアイドルという職業は、女優とかタレントになるための通過点としてしかとらえられていないんだなあ」って気づきました。
それがとにかく辛かった。
サノ
応援してくれてる人も、一切悪意はありませんもんね…
一番の味方からの、“罪のない偏見”というか。
川崎さん
応援してくれてる方々が、テレビタレントとか女優さんになってほしいって思うのも一般的な感覚だと思うし、それがこの職業の“王道ルート”なんだなってこともよくわかるんです。
だから、2018年の1年間は、「その先」と言われるような仕事をやってみたんですよ。ドラマやバラエティみたいなテレビのお仕事とか、映画のお仕事とか。
でも、どれだけ「これがグラドルの王道だ、そう思えない自分がおかしいんだ」って思おうとしても、私には頑張れなかった。しっくりこなかった。グラビアのときみたいに、「やりたい!」って感情がわきあがってこなかったんです。
川崎さん
だけど、ファンも事務所も私が王道を進むことを願って全力で応援してくれてるし、事務所で一番先輩の私が後輩の子たちにそういう道を示すべきだという責任感もあったから、「仕事行きたくないです」ってマネージャーに弱音吐きながらも仕事してました(笑)。
サノ
想像するだけでもめちゃくちゃ苦しい…
川崎さん
でも結局、何回も体調を崩して、精神的につらくなってしまって。
それで、「ああ、ダメだ」って。自分はここまでなんだなって覚悟が決まりました。私に「グラビアアイドルの先」はない。グラビアアイドルとして駆け抜けて終わろうと。
2カ月の休養後、川崎さんが発表した引退声明
「終わらせることだけは“正解”だとわかっているときがある」
サノ
でも、先が何も決まってないなか辞めるって相当勇気がいると思うんですけど…
川崎さん
うーんでも逆に…先を決めないからこそ前を向けることって、あると思いません?
川崎さん
「次のキャリアに進む」ときって、“次にどんなキャリアを選ぶか”から考えがちですけど、ほんとうは、“今のキャリアを終わらせると本気で決めること”から始まったりするとも思うんです。
サノ
あああーー! これは真理だ!!!(筆者、前職の営業職を辞めるとき数カ月決断できなかった経験あり)
川崎さん
将来のことって、なにもわからないからいくらでも悩めるじゃないですか。どの選択肢取ってもリスクはあるし。
でも、この先何をすれば自分にとって「正解か」なんてまるでわからないけど、終わらせることだけは「正解」だってわかってるときって、あると思うんですよ。
サノ
ダメだ…わかりすぎて語彙力が消失した…
川崎さん
私も、この先何をすればいいかはわからないけど、これ以上グラビアアイドルを頑張った先にグラビアアイドル以外の選択肢しかないなら、「終わらせること」だけは正解だと思えたんです。
だから、せめて大好きだったグラビアアイドルの仕事を楽しく、全力で「終わらせる」ことだけ決めた。
その先は何も決まってないけど、だからこそ今、前を向けてるんだと思います。
サノ
ミスチルも「何かが終わりまた何かが始まるんだ」って言ってました。
川崎さん
そ、そうなんだ…(笑)。
でも、ホントに心がダメなときって、「今がしんどい」って感覚より、「未来に希望がもてない絶望感」のほうが心にキてたりするじゃないですか。そういうときは、未来を一回白紙にしちゃうのも、一つの選択肢としてはありだと思います。
前さえ向けたら、なんとかなる!
今日は素直な気持ちをお話ししてくださって、ありがとうございました!
王道と呼ばれるキャリアは確かに存在していて、多くの人はそっちに引っ張られそうになりがち。
でも、自分がそこに違和感を覚えたとしても、王道以外の何を選べばいいかなんて、新卒で入った大企業を辞めるか迷っていたときの僕もわかりませんでした。
だからこそ、今回川崎さんが語ってくれた「終わらせる決意」の大切さは当時の自分に聞かせてやりたいし、今いろんな選択肢のなかでキャリアに迷って苦しくなっている方々が、この記事を読んで少し気持ちが楽になったらうれしいです。
〈取材・文=サノトモキ(@mlby_sns)/編集=天野俊吉(@amanop)/撮影=長谷英史(@hasehidephoto)〉
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