ビジネスパーソンインタビュー

セキュリティの専門家に聞く「スマホのウイルス感染対策」。感染をチェックする方法は?

典型的な被害例も紹介

セキュリティの専門家に聞く「スマホのウイルス感染対策」。感染をチェックする方法は?

新R25編集部

2019/09/29

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おそらくほとんどの人が、自分のスマホがウイルスに感染するなんて考えたこともないでしょう。

しかしセキュリティソフトを提供するカスペルスキー社の調査によると、ウイルスの感染源となりうる不正アプリの侵入が、3カ月で75万件近く発生していたといいます。(2019年第2四半期)

感染によりさまざまな被害が想定できるため、決して他人事として無視できないリスクです。

今回はスマホをウイルス感染から守るための方法について専門家に取材をしました。その専門家とは、情報セキュリティ対策に関するメディア「Security NEXT」の編集長を務める武山知裕さん。

そもそもウイルスとは何なのか、ウイルス対策として何ができるのか、おすすめの対策アプリなど「スマホのウイルス対策の基礎」について伺ってきました。

【武山知裕(たけやま・ともひろ)】國學院大学文学部哲学科卒業。パソコン専門誌の編集、ニュースサイトのディレクターを務めた後、企業向けIT関連保険の啓発活動をおこなう。現在は情報セキュリティ関連のニュースを配信する「Security NEXT」の編集長兼、運営会社であるニュースガイア株式会社代表取締役。著書に『個人情報 そのやり方では守れません』(青春出版社)がある

ウイルスって何? 感染するとどうなる?

松本

初歩的な質問ですが、そもそもウイルスって何ですか?

武山さん

端的にいうと「すごく悪いプログラム」です。

本来は「すごく悪いプログラム」の1種がウイルスなんですが、一般的にはそれらをひっくるめて、ウイルスと呼ばれてしまっていますね。

松本

そうだったんですね。

武山さん

一般的に言われているウイルスにあたるのが「マルウェア」です。このマルウェアが上位概念としてあり、ウイルスや「トロイの木馬」などの悪質なプログラムに分類できます。

ただ、今回は一般的な用法に合わせて、ウイルスと言い換えてマルウェアの説明をしますね。

感染事例①クレジットカードや銀行口座の情報を抜かれる

松本

スマホがウイルスに感染すると、どんな被害を受けるんですか?

武山さん

多い事例のひとつは、クレジットカードなどの個人情報が取られてしまうこと

もし身に覚えのない請求がきた場合は、感染による情報漏洩の可能性もあります。

松本

あー、代表例って感じしますね。

武山さん

ウイルスに感染させる側の目的は大半がお金なので、クレジットカードのほかにもオンラインバンキングのパスワードが盗まれ、勝手に送金されてしまうケースもあります。

身に覚えのない支払いに気づくため、自分のお金事情は細かく把握しておきましょう。

感染事例② 勝手に撮影・録音されてプライバシーが侵害される

武山さん

ほかにも勝手に撮影・録音がされることもあります。保存された写真や音声がほかの誰かのところへ自動送信されてしまうんです。

松本

盗撮・盗聴じゃないですか。

武山さん

そうですね。ただ、見知らぬ人の写真や音声ではあまりお金にならないので、不特定多数が狙われることはそれほど多くありません。

相手がストーカーのような目的の場合、このような被害を受ける恐れがあります。

ストーカーだけでなく、恋人をはじめ、身近な人によって勝手にアプリを入れられてしまうケースにも注意が必要ですね。

感染事例③ 連絡先が漏洩し、知り合いが被害に合う

武山さん

あと、連絡先が漏洩することによる二次被害もありえます。

自分のスマホがウイルスに感染し、連絡先が漏洩したとします。そして連絡先に登録されている友だちに、あたかも自分が送ったかのような文面で「面白いアプリ見つけたからダウンロードしてみてよ」などとURLつきのメッセージが送られてしまうことがあります。

松本

いわゆる乗っ取りみたいですね。

武山さん

はい。その文言を信じた友だちが悪質なアプリをダウンロードしてしまって、そこからさらに情報が漏洩してしまうかもしれません。

こうしてどんどん被害が拡大していくわけです。

スマホはウイルスに感染しないってほんと?

松本

でも「スマホはウイルスに感染しない」って聞いたことがあるんですが…

武山さん

たしかに、PCに比べれば比較的安全とは言えます。

理由は2つ。まずひとつは、アプリを配信しているプラットフォーム「App Store」「Google Play」で審査をしていること。

iPhoneの場合、アプリはAppleが運営しているApp Storeからじゃないと入手できないですよね。

松本

はい。

武山さん

つまりAppleの審査を通過したものだけが私たちの手に届く。だから比較的安心してもらっていいと思います。

松本

Androidはどうなんですか?

武山さん

Androidのアプリストア「Google Play」も審査をしているので、やはりPCに比べれば安全性は高いです。

でもAndroidは、Google Play以外のWebサイトで個人が公開しているアプリもダウンロードできるようになってます。

その場合、ダウンロード前に「提供元不明のアプリ」ダウンロードを許可したり、「このアプリはGoogle Play以外から公開されているものです」といった警告は出てきます。

しかし許可してしまったら、その先は自己責任。悪質アプリが入り込んでしまう可能性はぬぐえません

武山さん

スマホが比較的安全な理由のふたつ目は、「ほかのアプリやスマホ自体を操作できる仕組み」をかなり制限していることにあります。

松本

どういうことですか?

武山さん

すごくカンタンにいうと、スマホの中にはアプリを動かすのに専用の場所が用意されてるんです。その仕組みを「サンドボックス(砂場)」と呼びます。

このサンドボックス内だと、ほかのアプリに干渉することや、サンドボックスの外にあるOS(スマホを動かす基礎になるシステム)自体への干渉はユーザーの許可なしにできません。

松本

そんな風になってるんですね!

武山さん

おかげで、仮に悪質なアプリをダウンロードしてしまったとしても、影響が及ぶ範囲が限定されているんです。だからスマホは比較的安全と言えます。

スマホがウイルスに感染しているかどうかを確認する方法

武山さん

ただし感染事例で紹介した通り、完全に安全というわけではありません。

松本

ですよね…しかも被害を受けてるかどうかすら、わからなさそう。

自分のスマホが感染しているかチェックする方法ってあるんでしょうか?

武山さん

悪い人はできるだけ「悪さ」に気づかれないように工夫しています。

そのため目に見えるものだけで断定するのは難しいんですが、以下の場合は感染を疑ったほうがいいです。

〈ウイルス感染のチェックリスト〉
・電池の減りがやたら早い
・スマホの動作が重い
・カメラが勝手に起動する
・見慣れないアプリのアイコンがある
・身に覚えのないアプリで通信が発生している
・身に覚えのないメッセージが届いた
・身に覚えのないメッセージが送られている

松本

裏側で意図してないプログラムが動くせいで、電池の減りが早くなったり、動作が遅くなったりする可能性があるんですね。

武山さん

そうです。あとはAndroidなら、Googleが出しているGoogle Play プロテクトというスキャンサービスを使うのもいいですね。

ウイルスが悪さをしていないか、怪しいアプリがないか定期的にチェックしてくれます。

ウイルス感染を防ぐための予防法

松本

仮に不審な様子が見られなかったとして、感染を予防するためにできることって何があるんでしょうか。

ウイルス感染予防①:公式サイト以外からはダウンロードしない

武山さん

まずアプリをダウンロードする際は、「App Store」「Google Play」といった公式のプラットフォームだけを使いましょう。

松本

これは簡単ですね!

武山さん

もちろん誰もが知っており、信頼できる企業のサイトで配布されているアプリであれば、公式プラットフォームを経由しなくてもそれほど危険は大きくないです。

しかし、著名企業のサイトに見せかけて犯罪者が悪意あるアプリを配布していることもあります

宅配便事業者など装ってメッセージを送りつけ、言葉巧みにアプリを入れさせようとする手口は常套手段です。

見た目だけで「偽サイト」を見分けるのは困難です。公式プラットフォーム以外は審査も入っていないですし、あくまで自己責任だということは忘れないでください。

松本

気を付けます。

武山さん

特に注意してほしいのは、「偽バッテリー節約アプリ」や「偽セキュリティ対策アプリ」などですね。

無料で便利だからと安易にダウンロードすると、それが感染の原因になってしまうことがよくあります。

本来は有料で提供されているゲームアプリが、悪意あるアプリに改造され、「今だけ無料!」といった文句とともに配られていることもあります。「オイシイ言葉」には裏があります。

ウイルス感染予防②:メールの添付ファイルや載ってるURLは疑う

武山さん

メールの添付ファイルや本文に記載されてるURLは、基本的には疑いましょう。それらがウイルスかもしれません。

松本

さっきの話だと、仮に送信元が知り合いでも本人かどうかはわからないんですもんね。

武山さん

そうです。だから予想外の連絡で添付ファイルやURLの記載があったら、一旦は何もしないのが安全です。

ウイルス感染予防③:パスワードは正規アプリ以外に入力しない

武山さん

各種サービスで利用するパスワードを本来のアプリ以外に入力するのは危険です。

たとえばSNSの投稿を便利にするアプリを使うためにアカウント情報が求められ、入力したとしますよね。

でも、そのアプリの裏の目的はアカウント情報を盗み取ることかもしれません。

松本

怖い。便利な機能でおびき寄せている可能性があるってことか…

武山さん

それに、悪意がなくとも運営側が意図せず漏洩してしまう恐れもあります。その会社が不正アクセスを受けてしまうとか。本人以外がパスワードを保有するのは危険なのです。

最近は、パスワードを入力しなくても連携できるサービスが増えています。たとえば、「Twitter」などSNSとの連携をよく見かけると思います。

その場合も一定の許可を与えることになります。悪意あるサービスと連携すると、身に覚えのない投稿をされてしまったり、個人情報を抜かれてしまうかもしれません。

松本

そう言われればですよね…新しいサービスなんか特に注意が必要かも。

ウイルス感染予防④:アプリのアクセス権限は安易に許可しない

武山さん

ダウンロードしたアプリのアクセス権限を、安易に承認するのもやめましょう。

松本

「GPSと連携しますか? 」「写真へのアクセスを許可しますか? 」みたいな項目のことですよね。

武山さん

そうです。アプリの機能と関係ないものまでアクセスするような項目があるかもしれません。

システムへのアクセスを許可してしまうとスマホが乗っ取られてしまいます。

信頼できないと判断したら拒否しましょう。すでにダウンロードしているアプリのアクセス権限も、再度チェックしてみてください。

ウイルス感染予防⑤:OSのアップデートをこまめにおこなう

武山さん

OS(iOS、Android)のアップデートはなるべくこまめにやっておきましょう。

松本

めんどくさくてやらないこともあるんですが…意味あるんですか?

武山さん

大事ですよ!盤石に見えるOSも、実は弱い部分がけっこう頻繁に見つかっているんです。

いくらアプリの管理をしっかりやっていても、OSの管理が甘いと弱点を突いてウイルスが突破してくる可能性があります。

アップデートはOSの「ウイルスが入り込む隙間」を埋めてくれるものなので、お知らせがきたらためらわずにやってください。

おすすめのウイルス対策アプリ(ソフト)

武山さん

ウイルス対策をするなら、これまで話したことにプラスして、ウイルス(セキュリティ)対策アプリも併用するとさらに安心です。

松本

きっといろいろありますよね。特におすすめのものを教えてください。まずはiOSから!

武山さん

実はiOSは対策アプリがないんですよ。

松本

…え?

武山さん

なぜなら先ほど説明したサンドボックスが厳格で、ウイルス対策のアプリすらもiPhoneの中をくまなく見る権利がないんです。

松本

徹底ぶりがすごい…

武山さん

ただし不正に情報を抜き取ろうとするサイトへのアクセスを防いだり、フリーWi-Fiへの接続時に安全性をチェックしてくれたりするアプリはあります。

なので万全の対策をしたいなら、シマンテック社の「ノートン モバイルセキュリティ」やトレンドマイクロ社の「ウイルスバスター モバイル」をはじめ、大手のものを検討してみてもいいと思います。

松本

そうなんですね。ではAndroidは?

武山さん

こちらも基本的には大手の出しているアプリなら、サポートなども提供されていますし、どれも安心して利用できるでしょう。

〈おすすめアプリ〉

カスペルスキー インターネット セキュリティ
(カスペルスキー)

ノートン モバイルセキュリティ
(シマンテック)

Mobile Security
(マカフィー)

武山さん

有料のものが多いですが、アプリへの対策だけでなく、悪意あるサイトへのアクセスをブロックするなど、さまざまなセキュリティ機能が提供されています。

スマホ全般のセキュリティを高める点からもぜひ検討してみてください。

一部機能が制限された無料で利用できるアプリもあります。もちろん、安心して利用できるアプリもありますが、なかには偽物でアプリそのものがウイルスの場合もあります。

「ウイルス対策をしようとしてウイルスに感染する」ことも起きうるので気を付けましょう。

松本

うわぁ…! 知らなかったらついやってしまいそう。

大手のサービスにお金を払って対策したらだいぶ安心できますね。

武山さん

はい。ただ、あらかじめ理解しておいてほしいのは、100%の安全なんてないこと。

いろんなサービスを利用し、他人とやりとりしている以上、個人の努力だけで守りきることはできません。

だから「リスクを最小限に抑えるんだ」という意識で、多面的に対策をしていきましょう。

消費者の1人として「確実に安全な方法」を教えてもらいたいと思っていたので、「ウイルス感染を100%防ぐ方法はない」という言葉にハッとしました。

ウイルスをまく悪質な発信源は、あの手この手で攻めてきます。そのことを常に頭の隅に置いておき、地道な対策を怠らないようにしましょう。

ちょっとしたことでも、やるのとやらないのではきっと大きな差になりますよ。

〈取材・文=松本紋芽(@Sta_iM)/撮影・編集=葛上洋平(@s1greg0k0t1)〉

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