ビジネスパーソンインタビュー

「ブランド人」になりたければ、自分の“商品”とそれを伝える“パッケージ”を考えよ

トム・ピーターズ著『ブランド人になれ!』より

「ブランド人」になりたければ、自分の“商品”とそれを伝える“パッケージ”を考えよ

新R25編集部

2019/09/11

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世の中に流通しているビジネス本は数知れず。

日々たくさんの本を読んでなんとなく学びになっている気もするけど、せっかくだから確実に僕らの資産になる「珠玉の1冊」が知りたい。

そこで新R25では、ビジネスの最前線で活躍する先輩たちに「20代がいいキャリアを積むために読むべき本」をピックアップしてもらいました。

それがこの連載「20代の課題図書」。

第1回の推薦者は株式会社ZOZO コミュニケーションデザイン室長の田端信太郎さん!

選んだのは、自身の書籍『ブランド人になれ!』と同名タイトルの『トム・ピーターズのサラリーマン大逆襲作戦1:ブランド人になれ!』。

アメリカの経営コンサルタントであるトム・ピーターズさんが執筆し、日本では2000年に出版された同書に対し、田端さんは「俺の人生を変えた一冊」とコメントしています。

まだSNSも存在していない時代に「自分の看板を持て」と予言の書のように主張していた同書から、3記事を連日公開。田端さんの人生に影響を与えた思想を学びましょう!

自分の名前をブランドにする

ブランド人の時代にようこそ(あなたが、わかってる人なら…)。

職の保障は灰塵に帰した。世の中はこれからどうなるのか。

私の答え──また、職の保障が戻ってくる。

と言っても、みなさんが考えているようなものではない。新しい職の保障だ。いや、新しいと言っても、しばらく忘れていただけで、実はふるーいものなんだ。

大企業なんてものが生まれるまえ、いやそのはるか昔、社会保障も失業保険もなかった頃、図らずも、ホワイトカラー労働者から元気と気骨と勇気を奪った「セーフティーネット」なるものがまだ存在しない頃、職を保障するものは、《抜きんでた技量》と《ネットワーキングの力》だった。

世間(市場)で通用する技量、ひとを感動させ、ひとから感謝される技量をもたなければ生きていけなかった。世間の評判と仲間の支援(これが当時のネットワーク)がなければ生きていけなかった。

その頃にまた戻ると思えばいい。

村の鍛冶屋のように古いといえば古いし、ハリウッドのように、あるいは世界のどこかのアパートの一室で、インターネットを使って仕事をしている人のように、新しいといえば新しい。

仕事には丹精を込め、自分が仕上げた仕事にはきちんと責任を取らなければならない(あなたの仕事を、社会は必要としているのだから)。

この点については、昔も今も変わらない。ただ、評判が伝わる速度が、昔と今ではくらべものにならないだけだ。

昔の職人は、仲間づきあいと世間の評判を大切にし、修練研鑽を怠らず、誇り高く、自分の腕一本を頼りに生きていた。これを現代の言葉になおすと、要するに、自分の名前をブランドにしていたのだ

私はブランド信者である。

ブランドが、マーケティングのペテンだとは思わない。消費者はそれほど馬鹿ではない。玉石を見分ける目をもっている。いいものは売れる。ブランドとして認知されたものは売れる。ジップロックやiMacやスターバックスをみればわかるだろう。

ブランドは「信頼のマーク」である。名前やロゴを見ただけで、消費者は安心する。ブランドかどうかで、あらゆる商品とサービスがふるいにかけられる。

ナイキやスターバックスのブランド確立に一役買ったスコット・ベッドベリーは、ブランドについてこう語っている。

「偉大なるブランドは感情に訴える。すべてとは言わないまでも、私たちが下す決断の多くは、感情に左右される。ブランドは、人の心を強く揺さぶる。製品の機能より大切なもの、それは心の接点なのだ…。

偉大なるブランドは、結末のわからないストーリー、はてしなく展開していく隠喩的なストーリー…。

そのストーリーが、深い感動の中に身をおくために人々が必要とする感情の流れを創りだす」

人間がブランドになるなんて、そんなひどい話はない。非人間的だ。人間の尊厳はどうなる。

そう言って怒る人もいるかもしれない。みなさんはどうか知らないが、私はすこしもそうは思わない。

ブランドになった人間をイメージしようとして、私の頭にまっさきに浮かぶのは、ベンジャミン・フランクリンスティーブ・ジョブズといった人たちだ。

私は会社人間(ましてや会社奴隷)よりも、そういう血筋の人たちのほうが好きなのだ。

私の友人に、アニエット・ルミューというアーティストがいる。私の家の壁には、彼女のすばらしい作品『I AM』の横に、雑誌から切り取ったモノクロのフルページ広告が飾ってある。

その広告いわく──「あなたは、あなたの人生のCEO」。

それで、あなたの商品は?

どんなに立派なマーケティング・プランを立てても、肝心の商品がなければどうにもならない。

ウィリアム・ブリッジズ『自分という名の企業を創れ』の中に、クライアント企業の社員とのこんな会話が紹介されている(一部省略)。

ブリッジズ「ところで、あなたの商品は?

クライアント「わが社の商品のことですか?

ブ「いえ、あなたのとお聞きしたのです

ク「えーと、私は人事部にいるんですが…

ブ「立派なお仕事ですね。それで、あなたの商品は?

ク「給与や手当ての算定を専門にやっています

ブ「おもしろそうなお仕事ですね。それで、あなたの商品は?

ク「給与や手当て…

ブ「それは商品とは言えません。商品とは、誰かが買ってくれるものです。買い手に利便を与え、買い手のニーズを満たすものです。給与システムは、会社の都合でつくっている会社のためのものです

『自分という名の企業を創れ』

ブリッジズのその本には、さらにこういう記述がある。

ポスト雇用世界では、雇用を忘れ、社会が必要としている仕事を探さなければならない…あなたの市場は「雇用市場」ではない。

あなたのまわりには、ニーズを満たされていない人たちがいる。その人たちが、あなたの市場だ。「雇用」を見つけるのではなく、「機会」を見つけるのだ。

雇われ人根性を捨て、機をみるに敏な商売人のように行動しなければならない…会社で働く人はすべて、社外の商売人と直接競合する。

いま社内でやっているどんな仕事も、商魂たくましく取り組まなければ、この競争にはかならず負ける。

変化は、雇用にしがみつく人の敵であり、商才がある人の味方である…したがって、個人がキャリア計画を立てるときには、新興企業が戦略的に事業計画を立てるときと、ほぼ同じ考え方が必要になる

商品なくして、ブランドはなく、マーケティングなくして、ブランドはない。

あなたの商品は何か?

あなたが提供する商品は、ほんとうに、お客さんにお金を払ってもらえるだけの価値があるか?

さて、どうパッケージしようか

自分をブランドに仕立てあげるコツは、自分をどうパッケージすれば、メッセージを的確に伝えられるかを考えることだ。

さっそく、近所のスーパーに行ってみよう。どんなパッケージが、ぱっと輝いてみえるだろう。

元気いっぱいのもの、きらめいているもの、みずみずしいもの、おトクなもの、ぎょっとするもの、信頼感があるもの、きれいなもの、デザインがおもしろいものに思わず目が行くはずだ。

自分をブランドにしようと思うとき、大いに参考になるとは思わないか。

パッケージングは誘惑だ。パッケージされていれば、決断が簡単になり、速くなる。

一見するとパッケージには見えないが、実はパッケージになっているものは多い(マクドナルドがそうだ)。

トーマス・ハインズ著『トータル・パッケージ』

私がなぜ、パッケージと言うかといえば、パッケージングとは個性の表現にほかならないからだ。

フォードも、フィデリティも、ハーバード大学も、ブラウンも、マクドナルドも、みんなそうしている。だから、あなたも…。

かりに、会社を今日クビになって、明日から、職探しか独立の準備を始めなければならなくなったとしよう。さて、あなたは自分をどう売り込むのか

自分にはどういう能力があるのか。自分はどういう性格なのか。自分の得意技は何か。その他大勢と自分がはっきり違うものは何か。

自分が経営者で、自分を雇うとすれば、年に7万ドルも払う気がするだろうか。

あるいは自分がお客さんで、自分にサービスを頼むとすれば、一日800ドル払っても安いと思うかどうか。

問題は、パッケージだ。

自分を世間にどう伝えるか

自分はいったい何者なのか。

精神科医の問診を受けるときのように、口から出まかせを言ってはいけない。

私、トム・ピーターズの場合を考えてみよう。

講演をしたり、セミナーをしたり、ときには本も書く

これでは、私の顔が見えてこない。

経営者・管理職を対象にセミナーを行っている

すこしはよくなったが、それでもまだ漠然としている。

新しい世紀に向け、職場の激変にどう対応すべきかをテーマに、経営者・管理職を対象にセミナーを行っている

陳腐な言葉が並んでいるが、すこしは私の顔が見えてきた。

みなさんの場合はどうだろう。

たとえば「セクハラ訴訟を避けるエキスパート。私の名前は、25の新聞・雑誌に取り上げられた」。たとえば「金融サービスと小売業に豊富な経験あり」。

はっきりと正確に伝えることが大切だ(若干、見栄が入っても…)。

○ 自分はいったいどういう人間か

○ 自分の商品うりものは何か

○ それは何がスペシャルなのか

○ 類似商品とどこがどう違うのか

○ その信頼性をどう表現すればいいのか

○ 自分がすすんでることをどう伝えればいいのか

○ 自分がカッコいいことをどう伝えればいいのか

『ブランド人になれ!』

ブランドとは、一皮剝けば中はからっぽというものではなく、もっと重層的なものだ。

味わいのあるものが幾重にも折り重なって、一回限りではなく、いつまでもみんなに愛される商品が生まれる。

1. 日々磨き上げていく腕(これだけは誰にも負けないという技能)

2. 過去の実績(自慢できるプロジェクトがいくつあるか)

3. 世間の評判(口コミはおそろしい)

4. 見た目(身だしなみは大切だ、そして名刺も…)

5. 話術(説得力、表現力)

6. ひとがら・個性(いちばん大切なのは、あなたらしさ)

『ブランド人になれ!』

このうち1つさえあれば十分というわけにはいかない。何かを説明するときのセオリーに反して、私は話を複雑にしようとしている。

実際、世の中は複雑なんだからしようがない。

ブランドとは、さわれるもの、さわれないもの、見えるもの、見えないものの複合体である。

たとえば、コカ・コーラが売っているのは、不思議な味がするドリンクだけではない。

安心感、爽快感、疲れたときのひとやすみ、仲間と談笑する楽しさ…いろいろなものを売っている。この「プラスα」がなければ、あれだけのブランドにはならない。

これが田端信太郎の原点。「個人の時代」を生き抜くためのブランド人思考

「労働ではなく投資の時代に、個人が持ち得る最大の資本は自分の『名前』だ」

田端さんが同書のリニューアルの際に、本の帯に残したコメントです。

2000年以前に書かれた本だと侮るなかれ。

会社員として限界が見えつつある現代に必須のスキルがここに残されています!

〈著者画像撮影=Allison Shirreffs〉

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