ビジネスパーソンインタビュー
「自分の市場価値を上げる方法」もきいた!
Tinderがマーケティングに使える!? えとみほが語るR25世代向けマーケティング入門講座
新R25編集部
写真素材のプラットフォーム「Snapmart」を創業し、昨年からは、なんとスポーツ業界に転身し、J2のサッカークラブ「栃木SC」のマーケティング戦略部長に就任したというえとみほさん。
「マネジメント」の極意を教わった前回に続いて、今回は、えとみほさんの“本業”である「マーケティング」について教えていただこうと思います!
最近「マーケティング」「マーケター」という言葉をよく聞くけど、具体的にどういうことなのかよくわかっていなかった…という人には、最適な入門編となること間違いなしですよ!
〈聞き手=天野俊吉(新R25副編集長)〉
【えとみほ】テクニカルライターとして活動したのち、2004年にコンテンツライセンス管理会社を創業。「禁煙セラピー」の普及などを手がける。その後Googleなど複数社を経てオプトに入社。Webメディア『kakeru』編集長に。2015年には、写真素材のプラットフォーム「Snapmart」を立ち上げる。2018年から、サッカークラブ「栃木SC」へジョイン。現在マーケティング戦略部長を務める
有名な「○○してくるヤツはクソ」理論も、常識ではない
天野
最近、優秀な学生と話していると「Webマーケターになりたい」という人がけっこう多い気がするんですよね…
えとみほさん
そうですね。今までは割と表に出てこない職業だったんですけど、田端信太郎さん(株式会社ZOZO)、森岡毅さん(株式会社刀)、飯髙悠太さん(株式会社ホットリンク)、など、マーケティングを語る、存在感ある大人が増えてますからね。
天野
ざっくりいうと、どういう仕事だと考えればいいですか?
えとみほさん
市場調査からはじまって、流通、宣伝、広報などを駆使してサービスを広める仕事なんですが…マーケティングって、かなり「経営」に近い部分があるんですよ。「モノの値段を決める」「モノの仕様を決める」とか。
本業のマーケティングの話になり、イキイキ話すえとみほさん
えとみほさん
だからこそ、マーケティングの仕事って、ネットだけじゃなく「リアルな生活」を見ていないとできない。
私は“ネットの人”として認知されてるとおもうんですけど、都心に住んでた頃は定期的に「イオンのある街」に出向くようにしてたんですよ。
やっぱりずっと「港区と渋谷区を往復するような生活」をしていると、感覚がズレてきてしまうんですよ。ツイッターでフォローしてる人たちも、気づいたら“業界人”に偏ってしまったりするので。
天野
そうすると、どんなことに気付きますか?
えとみほさん
「みんなが知っている」と思ってることでも、ツイッターだけの“常識”だったりするんですよね。
たとえば「今どき電話かけてくるヤツはクソ」みたいな話とか…
これは…あの方の主張
天野
堀江貴文さんが提唱している「電話は人の時間を奪う行為」理論ですね…
えとみほさん
そうそう。私もIT業界にいたころは「そのとおりだ!」思ってたんですが、地方でそんなこと言ってたらまったく仕事にならないですよ(笑)。
この“常識のズレ”を押さえておくのってすごく大事です。
えとみほさん流の市場調査方法が驚きだった
天野
マーケティングといえば、「市場調査」が大事なイメージがありますが、えとみほさん流の“調査の視点”などもあるんでしょうか?
えとみほさん
そうですね。私、出張に行ったときは、私のことを知らない人と飲みに行くようにしてるんですよ。
天野
そこでヒアリングするってことですね。「今日仕事で会った初対面の人」とかですか?
えとみほさん
いや、それだと私のことを知ってるから、ホンネでは話してくれない。まったく知らない人がいいんです。
天野
まったくの他人と? どうやって飲みにいくんですか?
えとみほさん
マッチングアプリです。
天野
え?
えとみほさん
アプリです。「Tinder」とか「JOIN US」とか。
「ほら」
天野
ええええええ
えとみほさん
『kakeru』というWebメディアの編集長やってたことがあって、そのとき会社の若い子たちに使い方を教えてもらったんですよ。
地方は難しいですけど、都会だと変わった職業の人とか、面白い人と会えますよ。SNSアカウントを連動させてる人なら身元もわかりますし。
そういう人とサクっと飲みに行って、忖度なしのホンネを聞くんです。「休みの日何してますか?」「サッカーって観にいきますか?」「なんで行かないんですか?」とか。
【覆面座談会】平成生まれ女子はフツーに「マッチングアプリ」で出会ってるって本当ですか?
Tinder、JOIN US、Pairsなどのマッチングアプリで実際に知らない人に会っている人が若い世代を中心に増えているという話について、
えとみほさんがマッチングアプリを知った座談会
天野
そこまでして、「リアルなホンネ」を自ら取りに行ってるんですね…! お見それしました。
皆さんも今すぐTinderをDLしよう(?)
マーケティングという仕事の一番難しいところは「やってる場合か」
天野
えとみほさんは栃木SCにジョインしてから、どんなマーケティング施策を実施したんですか? 成功事例などがあれば教えてください。
えとみほさん
うーん、明確な「成功」とか「失敗」を挙げるのはまだ難しいですね…
昨年末に「シーズンパスポート(年間チケット)購入を継続すると、パスポートといっしょに選手の直筆サインが届く」っていうサプライズ施策をやったんです。サインを撮影してSNSに投稿する人がたくさん出る…と見込んでたんですが、フタを開けてみたらいつも投稿してくれてる人と顔ぶれがほぼ同じだった。
前々から「北関東はデジタルが効かない」って言われてたんですが、本当にそうなんだなと。栃木県なら、SNSより新聞記事やポスティングのほうが情報が届くんですよね。
ほかにも「名古屋で成功したら、どの地方でも成功する」という地方×マーケティングの格言がいろいろあるそう
えとみほさん
そんなふうに難易度はいろいろあるんですけど、マーケティングの仕事の一番難しいところは、「やってる場合か」って言われることなんですね。
サッカーだったら、「戦績がよくないのにやってる場合か!」。会社だったら「まずは売上を上げてからだろ!」って。
SNSマーケなんかはその極みですね。ツイッターの企業アカウントの「中の人」なんてだいたい遊んでるだけだと思われてますし。
天野
ありそうですね…
えとみほさん
でも、それは逆なんです。うまくいってないときに局面を変えられる可能性があるのが、マーケティングなんですよ。
「やってる場合じゃない」からこそ「やらなければいけない」という。
天野
なるほど…! ちなみにこれからやろうとしてるのはどんなことなんでしょうか?
えとみほさん
実はこれから、新しいチーム名を公募しようと思ってるんです。
えとみほさん
いまJリーグのチケットやグッズをオンラインで買うときに使う「JリーグID」があって、そこで「お気に入りクラブ」を登録できるんです。
各クラブからデータが見られるんですけど、宇都宮市在住者の「お気に入り」の半分以上が、栃木SCじゃないクラブだったんですね。これには衝撃を受けまして…。
それで、チーム名に「宇都宮」って入っていれば、もう少し「おらが街のクラブ」ということで地元の方々に応援してもらえるかな、と。ほかにも、“名称に市の名前が入っているほうが自治体のバックアップを得やすい可能性がある”とかいろんな理由があるんですが、非常にインパクトの大きな話なので、一度は真剣に検討してみるべきことなんじゃないかと考えています。
R25世代が「マーケットで存在感ある人材」になる方法って?
天野
「存在感」という話が出ましたが、個人や会社が「存在感」を出すためのマーケター視点のアドバイスなどはありますか?
僕らも、「いつでも転職できるために、マーケットで存在感のある人材になれ」って言われることがあるんですよ…
えとみほさん
存在感っていうと、多くの人が「SNSやらなきゃ」とか「ブログやらなきゃ」とか考えるんですけど、そういう方法論だけじゃあんまり意味ないんですよね。
私は、結局「個」を確立することしかないと思うんです。
天野
個を確立ですか。
えとみほさん
その方法は人によるはずなんですよ。
本田圭佑選手やダルビッシュ有選手も独特の存在感がありますけど、あれを見て「SNSをやってるから人気」とは誰も思わないじゃないですか。「自分はこう思う」って強く主張できる「個」があるから支持されてるんです。
なので、何かを始める前に、自分のなかにどういう「個」があるかを考えるといいと思います!
天野
おおお、考えてみます!
学びあるお話をありがとうございました!!
…というわけで、えとみほさんが贈る、R25世代向けのマーケティング入門講座でした。
「自分の存在感を出す方法」などは、どんな業界にいても意識すべき内容だと思うので、ぜひ取り入れてみてください。
そしてツイッターばかり見ているそこのアナタ!(自分のことです)
少し広い世界にも目を向けて、「世間とのズレ」を認識すると、いつもとはちがった仕事のアイデアが浮かんでくるかもしれませんよ!
〈取材・文=天野俊吉(@amanop)/撮影=長谷英史(@hasehidephoto)〉
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