ビジネスパーソンインタビュー
小巻亜矢著『逆境に克つ!』より
たったひとつのマインドチェンジで自分も部下も成長できる。正しい信頼関係を築けるリーダーの姿勢
新R25編集部
サンリオキャラクターのテーマパーク「サンリオピューロランド」が、2018年度に過去最高の来場者数を更新。
平日の来場者数は2014年度にくらべて4倍以上の成長を遂げています。
この成長の立役者となったのが、2014年にサンリオピューロランドに赴任し、2016年にサンリオピューロランドの館長に就任した小巻亜矢さん。
株式会社サンリオで社内ベンチャーを立ち上げていた小巻さんは、低迷状態だったサンリオピューロランドをみて、「底知れない可能性を秘めている」と見抜き、みごとに復活に導きました。
小巻さんの新著『逆境に克つ!』には、当時どんなことをおこなったのか、小巻さんはどんな思考で仕事に取り組んでいるのか、ということを25の質問から引き出しています。
そのなかで、「若手ビジネスマンが抱えてやすい悩み」「新たにリーダーになった人が持つ不安」についての小巻さんの回答を2記事からお届けします。
Q1. 教育に悩んでいます。方法もさることながら、時間が足りません。どうしたらいいでしょうか
正社員としてここで働こうと思って志願をしてくる方たちは、サンリオピューロランドのエンターテイメントが大好きな人ばかりだからです。
この部分がぶれることがないので、みんな、入社後もお客様をいかに喜ばせるかを一生懸命考えてくれます。
実は一時期、そうしたエンターテイメントへの情熱よりも、一般的な能力の高さを優先させて採用をした方がいいのではと考えたこともあったのですが、やはり、サンリオピューロランドへの熱量を上回るものはないという結論に至りました。
サンリオピューロランドにもいろいろな仕事がありますから、配属先が希望の部署ではないこともあるでしょう。
しかし、エンターテイメントへの熱い思いがあれば、どこの部署でもモチベーション高く仕事ができます。裏を返せば、熱量が低いと、なかなかうまくいかないこともある、ということです。
サンリオエンターテイメントの社員は、変わっている人が多いです(笑)。
正確に言うと、周りから「変わっているね」と言われる人が多い、ということです。これはもしかすると、エンターテインメントへの情熱の高さを表現する別の言葉なのか もしれません。
取材などで、社員が「小巻さんって、どんな館長ですか?」と聞かれることもありますが、よく言われます。「小巻さんって変わっているんです」と。
熱量は伝染する
社員の熱量が高いと、それは、アルバイトスタッフにも伝染します。
アルバイトスタッフがサンリオピューロランドを職場に選ぶ理由はさまざまです。
ここでアルバイトをするためにわざわざ近所の大学に進学してきてくれたという人もいれば、かわいいコスチュームを着て働いてみたかったという人もいます。
きっと、家の近くにある中から選んだという子もいるでしょう。
働く頻度も人それぞれなので、職場との関わり方も人それぞれです。
でも、アルバイトであっても、お客様から見れば社員と同じ「サンリオピューロランドのスタッフ」ですから、サンリオピューロランドの顔であり、代表です。
ただ、「顔ですよ」と言うだけでは、アルバイトスタッフたちは緊張してしまうでしょう。
お客様に喜んでいただくための接客とはどのようなものか、その方法に迷ってしまう子もいるでしょう。ですから、年に何度かアルバイトスタッフだけを対象にした研修を設けています。
あとは熱量が解決します。 新しい商品がショップに入ってきたときなどは、大変です。
もとから熱量が高かったスタッフは「かわいい」「ほしい」と大騒ぎ。もちろん、お客様も喜んで下さいます。
すると、それほど熱量が高くなかったスタッフも「やっぱりかわいいな」と思うようになります。
ショーも同じで、さほどショーに興味がなかったスタッフも、ショーを頻繁に目にして、それを見て喜んでいるお客様と接していれば、少なくとも、嫌いにはなりません。
他の人が「かわいい」と感じたり、喜んでいる様子を目の当たりにして、自然とそこへ取り込まれていくのです。
その変化は、見ているとわかります。まだ慣れないアルバイトスタッフはどこか遠慮がちですが、徐々に、ヘアピンや時計など、数ある中から自分がいいなと思ったサンリオグッズを身につけて出勤するようになっていきます。
すると、そのグッズやキャラクターに、愛着が湧いて、サンリオピューロランドにも日増しに馴染んでいきます。
こうした変化は研修だけで期待できるものではありません。
教育と情熱、その両輪が、新しい仲間の成長には必要で、情熱に関しては、リーダーが頑張って伝えるよりも、ほかの熱量の高い人から、自然と伝わっていくものです。
ですから、リーダーにできることがあるとすれば、その熱量の発露を妨げないことではないでしょうか。
A. 教育だけでは人は育ちません。情熱は、持っている人からじんわり伝わるもの。熱い環境にいれば、熱い人になります。
Q2. 私もそれなりにメンバーを指導をしています。しかし、成長の気配すらありません
もしかして、メンバーのことを「なんだこいつら」って、思っていませんか。
自分より年が下で、キャリアもなく、自分ほどの成果を上げられないくせに、自分の言うことを聞かないなんて、「なんだこいつら」って。
その思いは、たとえ口に出していなくても、“こいつら”に伝わってしまっています。
でも、その“こいつら”の方が、優れている面もあるはずです。
私の秘書は20代後半で、人生経験は私の半分以下です。でも、天才です。
伝えにくいこと、難しいことも、相手に嫌な思いをさせることなくさらっと伝えるメールを書く、天才なのです。
心の底から「私にはできない」と思うので、それを彼女にはよく話します。彼女だけでなく誰もが、私にはできない才能、強さを持っています。
そういう人たちが、数ある職場の中からサンリオピューロランドを選び、そこで働き続けてくれているのですから、私としては尊敬と感謝しかありません。
それに、「何回言ったらわかるんだ」というときがあるかもしれませんが、それは何回言っても伝わる伝え方ができていない、ということなのです。
相手にとって、会社にとっていいことであっても、伝わる伝え方を工夫する必要があります。
まずは相手の言いたいことを聞いてあげることで、聞く余裕が生まれる場合もあります。相手が例え話が必要そうなら事例をいくつか話します。
言葉より図表が伝わりやすいならそうすることでお互いのストレスがなくなります。
ぜひ、成長しない、などと思わずに、相手もそして自分も、このことを工夫することで得られる気づきを楽しみに、取り組んでください。
信じること、伝えること
教育心理学の分野で有名なピグマリオン効果は、信じることの大切さを私たちに教えてくれます。
教育者が、アトランダムに選んだ子どものリストを担任に渡し、1年たった時に調べると、その子どもたちの成績は上がっている、という実験です。
子どもたちに対する接し方の中に「君は伸びる子どもだ」という何らかの期待が、言葉かけや指導に反映する結果だというのです。
そして「君たちはダメな子です」と声をかけ続けると、想像しただけでも残念な結果が目に浮かびます。
ダメだと思って関わるのではなく、まだまだ、ここからだ、大丈夫、成長するぞと思って関わっていくほうがお互いの成長につながります。
もちろん、完璧な人間はいないので「この人との対応は困ったな」と思うこともあります。この人とはわかり合えないままなのかなと思うこともありました。
その時に私が大切にしてきたのは、避けるのではなく、さらにコミュニケーションを取ること、対話をすることでした。
話をしてみると、私には思いもよらなかったような愛や情熱を、会社に対して抱いてくれているのに、それまで私がそれを知らなかっただけだった、ということもありました。
もしも対話をしなければそうした思いに気づけなかったのかと思うと、本当に体が震えるほどゾッとしますが、話して良かったなと思いますし、そうやって一度話し合えば、信頼関係が生まれます。
よく、「最近の若い奴は何も考えてない」なんて言いますが、でも、本当はよく考えているし、問題があるとすれば、その若い子たちの考えを聞く耳を持たない側、話しやすい雰囲気をつくれない側にあります。
聞こうとして、話してもらい、分かり合う。そうした経験を積むときっと“こいつら”は“ダメなところもあるけれど素晴らしいところもある我が子たち”に変わります。
A. 見下す気持ちは伝わってしまいます。一緒に頑張る仲間には、尊敬と感謝の気持ちを持ってコミュニケーションをはかれば、自分も相手も成長できます。
サンリオピューロランドの復活秘話を知ろう
『逆境に克つ!』「逆境だけが人を強くする。教訓を学んだときに苦痛は消え失せる」
これは私の大好きな『人生は廻る輪のように』(エリザベス・キューブラー・ロス/角川書店)という本の冒頭にある言葉です。
逆境に立たされたサンリオピューロランドを救った小巻さんの根底にある哲学です。
今回はビジネスマンの悩みについてを抜粋しましたが、書籍のなかでは「いかにしてサンリオピューロランドは復活したのか」ということが書かれているので、興味のある方は手に取ってみてください。
ビジネスパーソンインタビュー
またスゴいことを始めた前澤さんに「スケールの大きい人になる方法」を聞いたら、重たい宿題を出されてしまいました
新R25編集部
【不満も希望もないから燃えられない…】“悟っちゃってる”Z世代の悩みに共感する箕輪厚介さんが「幸せになる3つの方法」を伝授してくれた
新R25編集部
「実家のお店がなくなるのは悲しい… 家業を継ぐか迷ってます」実家のスーパーを全国区にした大山皓生さんに相談したら、感動的なアドバイスをいただきました
新R25編集部
「俯瞰するって、むしろ大人ではない」“エンタメ鑑賞タスク化してる問題”に佐渡島庸平が一石
新R25編集部
社内にたった一人で“違和感”を口にできるか?「BPaaS」推進するkubell桐谷豪が語るコミットの本質
新R25編集部
【仕事なくなる?そんなにすごい?】“AIがずっとしっくりこない”悩みへのけんすうさんの回答が超ハラオチ
新R25編集部