ビジネスパーソンインタビュー
時代を生き抜く新しい羅針盤
【無料試し読み】西野亮廣『新・魔法のコンパス』
新R25編集部
目次
- 自分へのバッシングは積極的に拡散しろ。ボクが実践する、逆境を“利用する”方法
- 「負け」の無い物語なんて売り物にならない
- 競合を減らしたければ、自分の活動へのバッシングを拡散しろ
- 風が吹けばヨットは進む
- 1000万稼げる力があっても、700万程度に抑えておく。ボクが考える「収入の増やしかた」
- そもそも、収入が高い人と低い人の違いは何?
- 専業は「希少価値を上げにくい争い」
- じゃあ、どうやって効率良く「希少価値」を上げるの?
- 自分の信用面積を広げろ
- 職業の掛け合わせで「クレジット」を大きくしたら、次は…
- 本業を収入源にしてはいけない。ボクが「複業」をすすめる理由
- 「本業=メイン収入」「副業=サブ収入」の常識を疑え
- メインの収入源を別に用意して、ライバルと差をつけろ
- 収入源をどこに置くか?
- 「専業」か「兼業」か、「複業」か
- 転機となった「25歳」
- 複業家に許された「無限の時間」
- 集客とは、人の不安を取りのぞいてあげる作業だ。ボクがたどり着いた「集客の本質」
- 集客したければ、「お客さんの1日」をコーディネートしろ
- 人は「確認作業」でしか動かない
- 「インスタ映え」で客が増えるとは限らない
- リピーター獲得の方程式は「満足度−期待値」
- 西野さんの経験が詰まった『新・魔法のコンパス』で“時代の歩き方”を学ぼう
「僕たち人間は“知らないものを嫌う性質”を持っている」
現代の革命家・キングコングの西野さんはそう話します。しかし、「なんかよく分からないけど、怪しい」と蓋をしてしまったモノのなかに未来は眠っています。
今回は、激動の現代にあっても変わらない「お金」や「広告」のルールについて、自身の経験をもとにわかりやすく書かれた西野さんの著書『新・魔法のコンパス』のなかから、しなやかに時代を歩くための羅針盤となる記事をお届けします。
自分へのバッシングは積極的に拡散しろ。ボクが実践する、逆境を“利用する”方法
「負け」の無い物語なんて売り物にならない
『西野亮廣エンタメ研究所』では毎日「入会者数」が出るんだけど、なんとも興味深いのが、絵本やビジネス書でコンスタントにヒットを飛ばしているときというのは、あまり入会者が伸びない。
数字が伸びるときというのは明確で、成功しようが失敗しようが「挑戦しているとき」だ。
なるほど、こっちのほうが『物語』として面白いわけだ。「一体どうなっちゃうの?」に人が集まっているわけだね。
これは連載漫画とまったく同じで、海賊王を目指すルフィが第1話から圧勝を続けてしまうと誰も『ワンピース』を読まなくなるわけじゃない?
勝ちがあって、負けがあって、リベンジがあって、『物語』になるわけで、読者の感情曲線をキチンと上下に振ってあげなきゃいけない。
皆、「負け」を避けたがるけど、「負け」のない物語なんて売り物にならない。これは、とっても大切なことなので、覚えておくといいと思うよ。
競合を減らしたければ、自分の活動へのバッシングを拡散しろ
「負け」を挟むことがいかに大切かご理解いただけたと思うので、ここからはもう少し踏み込んだ話をするね。
たとえばキミが今いるコミュニティーに限界を感じて、外に飛び出したら、もれなく「村八分」か「魔女狩り」か「理不尽なバッシング」に遭う。
ボクもそうだった。25歳のころにテレビ村を飛び出して、今日のような活動を始めたころにゃ、そりゃあもう、ありったけの石を投げつけられたよ。
「ひな壇に出ろや!」
「なんで、芸人が絵本なんか描いとんねん!」
「ビジネスにまで手を出したか!ヨゴレだな!」
ボクはもう村からいなくなったわけだから、わざわざボクに時間を割かなくてもいいのに、村からはそんな声が延々と届いてくる。
そんな、孤独な荒れ地開拓と、バッシングの日々を過ごしていたある日、ふと、あるコトに気がついた。
「あら? いつまでたっても競合が出てこないぞ」
ビジネスの世界では「レッドオーシャン(血で血を洗う競争の激しい領域)」「ブルーオーシャン(競合相手のいない領域)」という言い方をするんだけれど、ボクのいる場所が、いつまで経ってもブルーオーシャンなんだ。
じゃあ、そのブルーオーシャンに「魚がいないか?」というとそんなことはなくて、
自身4作目となる『えんとつ町のプペル』というメガヒット作品が出る前だったんだけど、絵本は確実に支持者を獲得していたし、ビジネスマン層からの支持も集め始めていて、講演依頼は日に日に増えていた。
『ひな壇』に出なくても、食える身体になっていた。
このブルーオーシャンには、たくさんの魚がいたんだけれど、世間はまだ気がついていない。
相変わらずバッシングを続けていて、世間的には、キングコング西野の身体からは血が流れている。
つまり、「あそこに行くと、自分もバッシングの対象になって、血を流す」と思われていたんだよね。
こうなったら、こっちのもの。
世間のバッシングを拡散して、ブルーオーシャンに行ったキングコング西野を、もっともっと八つ裂きにしちゃう。
八つ裂きにされている姿をメディアで流せば流すほど、こっちの海に来る人がいなくなる。
『荒れ地』と喩えたり、『海』と喩えたり、ややこしくて申し訳ないんだけど、もう一度『荒れ地』に話を戻すと、
村からのバッシングを拡散して、演出の血をひけらかして、競合の足を止めている間に、畑を耕し、水道を通し、電気を通し、ガスを通し、街を作る。
村の人達が気がついたころには、なんだか住みやすそうな街ができていて、さすがにバッシングは止む。
まもなく村から出てきた人達が、コチラの街に住もうとしたら、「もちろんオッケーですよ。その代わり、家賃を払ってくださいね」で一丁上がり。
風が吹けばヨットは進む
これからキミの人生には、「追い風」「向かい風」「無風」の3つの「風」が入れ替わり立ち替わりやってくる。
今のキミにも、いずれかの風が吹いていると思う。
そしてキミは、なるべく「追い風」が吹くことを願っていて、それが無理なら「無風」であることを願い、「向かい風」だけは避けたいと考えているんじゃないかな?
だけど、その順番で「風」を捉えていると、少しもったいない。何が「もったいない」のかを説明するために、先に具体例を挙げるね。
2015年の話だ。インスタグラムの後押しもあって、日本にも、いよいよ本格的にハロウィン祭りの波がきた。
あの夜の渋谷スクランブル交差点が大変な騒ぎになっている映像を、キミもニュースで一度は見たことがあるだろう?
まぁ、映像そのまま、現場もあの調子だったよ。
盛り上がるのは結構だけど、困ったことがあった。ハロウィンのオバケにふんした連中が排出する大量のゴミだ。
行政が「ゴミは持ち帰ってください!」と何度も呼び掛けたけど、まるで効果なし。ハロウィンの翌朝の渋谷には、投げ捨てられた大量のゴミが溢れ、その酷さは年々増していく。
そして迎えた2015年のハロウィン。状況でいうと、『向かい風』だよね。
渋谷の街を守りたい人達が皆、頭を悩ませていたので、渋谷区に、こんな提案をしてみた。
「『ゴミを出すな』と何度言ってもゴミを出されてしまうので、ハロウィン当日に『ゴミを出すな』と力で押しつけるのではなくて、ハロウィン翌朝に『ゴミがないと成立しないイベント』を企画しましょう」
ハロウィンのゴミを「オバケのカス」に見立てて、そのオバケのカスを掃除するのは、ご存知『ゴーストバスターズ』。
ハロウィン翌朝に、皆で、『ゴーストバスターズ』の仮装をして、ゴミを拾っちゃう作戦。
ダメもとで、『ゴーストバスターズ』に許可を取りにいったら、「喜んで!」の一言。なんと『ゴーストバスターズ』の公式ロゴを貸していただけることとなった。
このアイデアをツイッターに投稿したところ、500人のボランティアスタッフが数分で集まった。
『アンチ西野』達が「西野に手柄をあげさせるな! 西野達よりも先に渋谷に入って、渋谷を綺麗にして、邪魔してやろう!」というオマケつき。ありがとうアンチ西野。
集めたゴミは別の場所に移動させて、そのゴミを使って皆で巨大なオブジェを作る。ゴールを「オブジェ作り」に設定すると、『ゴミ拾い』が『材料集め』になり、皆、競ってゴミを集め始めたんだ。
結果、2015年のハロウィンの翌朝は、一年で一番渋谷が綺麗な日となった。
これから大切なことを話すから、よく聞いてね。
ヨットは『追い風』だと前に進むし、『向かい風』でも帆の傾け具合で前に進む。
一番やっかいなのは『無風』で、このとき、ヨットはピクリとも動かない。
2015年の渋谷は、帆を正しい角度に傾け、ハロウィンの夜に吹いた『向かい風』を利用して、前に進んだ。
キミの人生もそうだ。
今、どの角度から風が吹いている?
もし『向かい風』が吹いているのなら、そいつはキミの身体を大きく前に進めてくれるエネルギーとなるから、その風は避けずに、正しい帆の角度を探るといい。
キミが本当に避けなきゃいけないのは『無風』だ。
定位置にいるようだけど、実際のところはジリジリと後退している。だって、周りが前に進んでいるんだもん。
嫌なことがあったときに、このヨットの話を思い出してみて。
少しだけ光が見えると思う。
1000万稼げる力があっても、700万程度に抑えておく。ボクが考える「収入の増やしかた」
そもそも、収入が高い人と低い人の違いは何?
世の中には、給料の安い人と、給料の高い人がいる。その分かれ目は何だと思う?
「仕事の大変さ」かな?
いやいや。仕事の大変さでいうと、深夜のコンビニのアルバイトや、真冬の警備員なんて、メチャクチャ大変だ。でも、いわゆる「高給取り」じゃない。
「技術力」かな?
たしかにひとつの分野のなかで考えれば、技術力が高いほうが給料も上がりそうなものだけど、「スーパーのレジ打ちの技術と、野球選手の送りバントの技術はどっちが上?」なんて比べられないよね?
どうやら「技術力が高ければ、給料が高い」とは言い切れなそうだ。
答えを言っちゃうと、収入の大きさを決めているのは、「大変さ」でも「技術力」でもない。
「希少価値」だ。
キミの収入を増やすには、キミの「希少価値」を高める必要がある。
キミが「100人に一人の人材」になるか、「100万人に一人の人材」になるかで、キミの収入は変わってくる。
当然、替えが効かない人材になったほうが収入は増える。
コンビニのアルバイトさんよりも、ホリエモンのほうが収入が多い理由はそこ。
早い話、収入を増やしたければ、キミが「100万人に一人」の人材になっちゃえばいいんだけど、「100万人に一人」というのは、確率でいうと「オリンピックのメダリスト級」で、そこに辿りつくのは、なかなかどうして難しい。
でも、大丈夫。キミが「100万人に一人」の人材になる方法は、ある。
これから、お話しするね。
専業は「希少価値を上げにくい争い」
「1万時間の法則」という法則があるんだけど、これがなかなか面白い。
内容をザックリ説明すると、「ひとつの分野に『1万時間』費やせば、100人に一人の人材になれますよー」って話。あくまで目安ね。
1万時間というと、毎日9時間頑張って…3年くらいかな。
たとえばキミが3年間毎日9時間「お笑い」の学習を続けていれば、キミは「100人に一人」の人材にはなれる。
ただ、厳しい話、「100人に一人」って、そこまで大したことじゃないんだよね。
吉本興業には現在6000人の芸人が在籍しているんだけど、皆、お笑いに1万時間を費やした「100人に一人」の人材ばかりなんだもん。
そして、多くの芸人がこのなかで競争を始める。
だけど、このなかでの勝敗は、自分の中のプライドや、自分の半径30メートル以内の人達の評判には反映されるけれど、収入には、それほど反映されない。
希少価値がそれほど上がらないからだ。
もちろん「100人に一人」の人が集まった集団のトップになれば希少価値も上がるけど、「100人に一人」の人はそれなりのレベルに達している人なので、その中で勝ち上がっていくことは極めて難しい。
事実、吉本興業の芸人で、「お笑い」だけで食えているのは、1割にも満たない。
残り9割は、アルバイトで食いつないでいるのが現状だ。
ひとつの分野で戦い続ける(専業)という選択は、「希少価値を上げにくい争いに参加している」と考えたほうがいい。
じゃあ、どうやって効率良く「希少価値」を上げるの?
キミの希少価値を効率良く上げる方法がある。
たとえば、キミが最初に1万時間を費やしたポイントを「A」とする。
キングコング西野の場合だと「A」は「お笑い」だね。
「A」に1万時間を投下して、「100人に一人」の人材になったならば、次は、まったく違う分野「B」に乗りこんで、そこで1万時間を費やす。
「B」でも「100人に一人」の人材になるわけだ。
キングコング西野の場合だと「B」は「絵本」かな。
この「A」と「B」の両方を兼ねている人間は、「100人に一人×100人に一人」なので、1万人に一人。
この瞬間に希少価値が一気に上がる。
漫才ができる絵本作家は「1万人に一人」しかいないわけだ。
絵本業界の話を面白おかしく語れる人材も「1万人に一人」。
今、日本で「芸人×絵本」の仕事は、大体「キングコング西野」に転がってくる。わかるよね?
ここでのポイントは、「A」と「B」は、なるべく離しておくこと。
「A」と「B」を結ぶ線上が仕事の需要だから、たとえば「サッカー」に1万時間を費やして、「フットサル」に1万時間を費やしても、細かく見れば、「1万人に一人」の人材には違いないけど、仕事の幅は狭い。
目安としては「◯◯のクセに」と揶揄されるぐらいが丁度イイ。
「芸人のクセに絵本を描きやがって…」
「タクシードライバーのクセに英会話講師をしやがって…」
こんな感じで、掛け合わせる職業はなるべく離しておいたほうがいい。
「移動中に英会話レッスンができる個人タクシー」なんてメチャクチャ重宝されると思うよ。
さて、本題はココからだ。
自分の信用面積を広げろ
「A」に1万時間を投下し、「B」に1万時間を投下して、キミが「1万人に一人」の人材になったら、次は、まったく別の分野の「C」に乗り出して、今度は、そこに1万時間を投下してみよう。
「C」でも「100人に一人」の人材になるんだ。
キングコング西野の場合だと「C」は「オンラインサロンオーナー」だね。
「A」と「B」と「C」の3つを押さえた人間は、「1/100×1/100×1/100」なので、「100万人に一人」となる。
「A」に3万時間を費やすのなら、「A」「B」「C」にそれぞれ1万時間ずつ費やしたほうが希少価値を上げやすい。
さて。「A」「B」「C」の3点を結ぶと、三角形ができるよね?
さっきまでは「A」と「B」を結ぶ“線上”が「需要」だったけど、今度は「A」と「B」と「C」を結んだ三角形の“面積”がキミの「需要」になり、仕事の幅は一気に広がる。
ちなみに。キングコング西野が、つい最近、TOYOTAさんからいただいたお仕事の依頼内容は、
「『新型クラウン』のラッピングカーのデザインを、絵本作家でもある西野さんに、西野さんが運営する2万人を超えるオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』のメンバーと共に作り上げて欲しい」
といったもの。
TOYOTAさんが純粋に「デザイン」だけを求めていれば、キングコング西野ではなくて、プロのデザイナーにオファーを出したはずだ。
プロのデザイナーではなく、「2万人を超えるオンラインサロンを運営しているキングコング西野」にオファーを出した理由は「デザイン」ではなく、「デザイン+広告効果」に期待を持たれたからだろう。
「A(芸人)」と「B(絵本作家)」と「C(オンラインサロンオーナー)」の3つの仕事を掛け合わせて、「面積」を作ったから舞い込んできたお仕事だ。
この三角形の“面積”のことを「クレジット(信用)」と呼ぶんだけれど、当然、クレジットが大きければ大きいほど、その分、需要が増える。
収入を増やすには、このクレジットを大きくすればいいわけだ。
職業の掛け合わせで「クレジット」を大きくしたら、次は…
でね。たとえば、キミが手に入れた「A」と「B」と「C」を結んだクレジットの大きさが「1年365日、毎日のように需要に応えつづけたら、1000万円のお金がキミのもとに入ってくる」というサイズになったとするじゃない?
その時、そこで、キミがさらに収入を増やしたければ、そのクレジットをフルに使って1000万円のお金を生むのではなく、お金にするのは700万円程度に抑えておく。
すると、「残りの300万円を生むハズだった時間」がキミに生まれるよね?
その時間を使って、まったく違う分野の「D」に乗り出す。
そして、「D」にも1万時間を投下する。
クレジットは三角形から、四角形になり、クレジットのサイズは一気に大きくなる。
キミは「1/100万×1/100」の人材となる。
複数の職業を掛け持つ「複業家」になることで、お金を生む力がグンと膨れ上がるわけだ。
もちろん、こんなに簡単には事は進まない。クレジットを拡大していく途中でつまづくこともあると思う。
ただ、この話から学べることはひとつ。
収入を増やすということは、クレジット…つまり「信用の面積」を大きくするということだ。
本業を収入源にしてはいけない。ボクが「複業」をすすめる理由
「本業=メイン収入」「副業=サブ収入」の常識を疑え
ここらで「本業」について一緒に考えたいと思う。
キミは「本業」について真剣に考えたことがあるかな?
「本業」って、なんだろう?
多くの人は、「本業=メイン収入」「副業=サブ収入」みたいな感じで決着をつけているけど、キミはどうだ?
もしキミがこの感じで「本業」と「副業」を捉えていると、この先、結構厳しい戦いになってくると思うよ。
どういうことか説明するね。
メインの収入源を別に用意して、ライバルと差をつけろ
「ノベルティー」って知ってる?
あまり聞きなじみのない言葉だよね。
ザックリ説明すると、企業が自社商品の宣伝を目的として、それらの名称を入れて無料配布する記念品のこと。
ラジオのリスナープレゼントで貰える番組のタイトルロゴが入ったステッカーがあるじゃない? あれが「ノベルティー」だね。
あのステッカーは、パソコンに貼ってもらったり、車に貼ってもらうことを目的としていて、ステッカーを見る度にラジオのことを思い出してもらって、番組の試聴につなげているわけだ。
あのステッカーは番組の「宣伝装置」なんだよ。
起業家さん達が出しているビジネス書も、それ。
自社のサービスにつながるようなビジネス書を書き、その本の印税をすべて「広告費」に回し、ひとりでも多くの人に本を読んでもらい、自社の顧客獲得につなげている。
厳密に言うとビジネス書を無料配布しているわけではないので、「ノベルティー」とは言い切れないんだけど、起業家は皆「無料配布しても構わない」と考えている。ボクもそうだよ。
事実、ボクの前作『新世界』(KADOKAWA)はネットで全ページ無料公開している。
印税が目的ではなく、「認知を拡げて、顧客を増やすこと」が目的だからだ。
ボクやビジネス書を書く起業家さん達は「作家」ではなく、「ノベルティー作家」と言える。
世の中には本の印税で生きている「作家」と、自社のサービスを書いた本の印税を宣伝費に回して、自社のサービスのお客さんを増やしている「ノベルティー作家」がいる。
こうなってくると、「本業=メイン収入」としてしまっている「作家」さんは、かなり分が悪い(※作品の内容は個人の好みなので、それは一旦横に置いておいて、ここでは収入面の話)。
別に収入源を持っている「ノベルティー作家」は、印税から、自身の作品に「広告費」を出すことができる。
印税が収入源になっている「作家」は、自身の作品に「広告費」を出すことができない。
当然、世の中に広まりやすいのは、「ノベルティー作家」の作品だ。
皮肉にも、ここが、本業をメイン収入にしている人間の弱点となるわけだ。
収入源をどこに置くか?
これは何も作家さんに限った話じゃないよ。
たとえば、テレビギャラをメインの収入源にした「テレビに出なきゃ食っていけないタレント」と、「○○の宣伝になるのであればテレビギャラなんて1円も要らないですよ」と言えちゃう「テレビに出なくても食っていけるタレント」は、どっちが強いかな?
「より良い条件でテレビに出られるのはどっちか?」を考えると、おのずと答えは出てくる。
もうキミの中で答えは出てるよね?
キミの収入源はどこだ?
キミの目的に対して、キミの収入源は今の場所で合っているか?
「専業」か「兼業」か、「複業」か
働き方には3つの選択肢がある。
「専業」か「兼業」か「複業」のどれかだ。
キミの人生は、どこまでいってもキミのものだから、
職業をひとつに絞る「専業家」になるべきか、
メインの職業とサブの職業を持つ「兼業家」になるべきか、
それとも複数の職業を掛け持つ「複業家」になるべきか、
その答えを決めるのはキミ自身だ。
キミの人生の責任を取ることができないキミ以外の人間が、キミの決断に口を挟むべきではないとボクは考えている。
ただ、もしアドバイスを求められたら、今の時代なら、ボクは「複業」をオススメするかな。
それはボク自身が、これまで複業の恩恵をたくさん受けてきたからだと思う。
転機となった「25歳」
ボクの人生の転機は忘れもしない。
『はねるのトびら』(フジテレビ系)というレギュラー番組がゴールデンタイムに進出して、日本で一番視聴率をとっていた25歳か26歳のころ(忘れた)。
そのころに限界を見て、テレビから軸足を抜いて、絵本を描き始めた。
ま、その辺の詳しい話は『新世界』という本に書いたので、そっちを読んでね。
さて。何のアテもなく突然絵本作家になっちゃったわけだけど、絵を描くのが得意だったワケでもないし、出版のノウハウもコネもツテもない。
世界に目を向ければ、同世代で、すでに圧倒的な結果を出している絵本作家もいる。
ここからどうすれば、この糞ド素人が世界中の絵本作家をゴボウ抜きできるか考えるわけだけれど、考えて間もなく、「皆と同じやり方をしてしまうと、とても世界の頂点にはたどりつけないな」と結論した。
「位置について、ヨーイ、ドン!」の戦いは早々に捨てて、すでに世界中の絵本作家さんに自分が勝っている部分を探して、そこで戦うことにしたんだ。
とは言っても、こちとら、ど素人だ。画力も負けているし、出版のノウハウもコネもツテもない。
当たり前の話だけど、素人のボクは、プロの絵本作家さんに負けているところだらけだったんだよね。
でも、ただひとつだけ勝っている部分があった。
「時間」だ。
ここでいう「時間」というのは、「ひとつの作品にかけることができる制作時間」のことね。
複業家に許された「無限の時間」
プロの作家さんは、その作品の売り上げで生計を立てているので、短いスパンで作品を発表し続けなければいけない。
一方、食うには困らない程度に売れている芸人だったボクは、絵本の売り上げがなくてもギリギリ生きていけるので、極端な話、ひとつの作品に10年かけることだってできる。
専業家は、ひとつの作品に制作時間をかけることはできなくて、複業家は、ひとつの作品に極端な制作時間をかけることができるわけだ。
すぐに文房具屋さんに走って、市販されているなかで最も細いボールペンを購入して、絵本のストーリーも、「20ページ」ほどで完結する絵本が多いなか、ボクの絵本は「40ページ」。
つまり、制作時間が「かかるように、かかるように」作り方をデザインしたわけだ。
「この作り方をしてしまったら、3~4年かかっちゃうよね」というコスパの悪い作り方を選んだ。
専業の絵本作家さんには、こういった作品を作ることができない。
収入が3~4年止まってしまうことになるからだ。
こうして、ボクは一冊完成させるまでに3年もかかってしまう『えんとつ町のプペル』のような作品を作れる切符をいただいたわけだけれど、
それはボクに「才能」や「センス」があったわけじゃなくて、ボクが「複業家」で、収入源を上手く整理して、時間を作れたからだ。
そろそろ、まとめるね。
もし、今のキミの挑戦が上手くいっていないのであれば、それはキミの「努力不足」などではなく、キミの仕事のシステムにエラーがある可能性が高い。
たとえば、「制作に3年をかける超大作絵本を作りたいのに、絵本の印税をメイン収入源にしてしまっている」といったシステムのエラー。
この場合、システムを改善しない限り、「超大作絵本を作りたい」という夢は一生叶わない。
お金と真摯に向き合い、お金の常識を疑い、キミの目的に対して正しいアプローチをするんだ。
時にそれは「非常識」だと揶揄されてしまうかもしれないけど、キミの人生はキミのものだ。
キミの姿形や、キミが背負い込んでいるものは、ほかの誰とも違っていて、そもそも世間のルールとピッタリ合うわけがないんだよ。
常識なんて明日には変わるんだから、非常識で結構。
キミのルールで動くんだ。
そのルールに悪意がなければ、少し時間はかかるかもしれないけど、世間は必ずキミを理解してくれるよ。
大丈夫。
集客とは、人の不安を取りのぞいてあげる作業だ。ボクがたどり着いた「集客の本質」
集客したければ、「お客さんの1日」をコーディネートしろ
吉本興業は全国に10個近く劇場を持っている。
だけど、1年間を通して安定してお客さんが入っているのは大阪にある「なんばグランド花月」ぐらいで、あとの劇場は、お客さんが入っている日があったり、入っていない日があったり。
お客さんが有名人(強いコンテンツ)に釣られてやってくるのであれば、東京の劇場は常に満席のハズだ。
だって、テレビの人気者達が出ているんだもん。
しかし、東京の劇場が毎日満席ということはない。
どうやら「有名人をブッキングすれば、お客さんが集まる」というわけでもないらしい。
だとしたら、「なんばグランド花月」と他の劇場は、どこで集客力の差が生まれているのだろう?
答えは、「お客さんの1日がコーディネートできているか否か」だ。
当たり前の話だけど、大阪にある「なんばグランド花月」に来てもらうには、大阪に来てもらわないといけない。
「なんばグランド花月」のためだけに大阪に来てもらうのは難しいけど、USJに行って、たこ焼きを食べて、なんばグランド花月で「吉本新喜劇」を観て、お好み焼きを食べて、夜はミナミで吞むことができるのであれば、「大阪に行こう」となるわけじゃない?
多くの人が大分県の「湯布院」にイイ感じの温泉があることは知っていて、「いつかは行ってみたい」と思っているけど、多くの人が「湯布院」に行ったことがない。
でも、「湯布院で友人の結婚式がある」となったら、前泊して、前々から行ってみたかった湯布院に行く。
答えが見えてきたかな?
お客さんは時間を持てあますことを極端に嫌う。
裏を返せば、参加理由を複数個用意して、時間を持てあまさないことを担保してあげれば、参加ハードルがグンと下がる。
以前、こんな実験をしてみた。
1日目は、「ライブのチケット」だけを売り、2日目は、「ライブのチケット」+「終演後の交流会の参加チケット」を売ってみたんだ。
すると面白い。チケットが売れるスピードがまるで違ったんだ。
お客さんが支払う金額は2日目の「ライブ+交流会」のほうが高いのに、お客さんは問答無用で2日目を選んだ。
「なんばグランド花月」や「湯布院の温泉」も、これと同じ理屈だ。
キミがお店を出す時やイベントを開催する時は、キミのお店やイベントの力だけでお客さんを呼ぶのではなく、「ここに来たら、前後の時間にこんなコトができますよ」と案内して、1日をコーディネートしてあげるといいと思うよ。
人は「確認作業」でしか動かない
「集客」の根幹にあるのは「人間は確認作業でしか動かない」という現実だ。
ボクらは、すでに知っているものにしか、反応しないんだ。
旅行先を決める時だってそうだよね。
「20万円を払ってくれれば、とっても素敵な場所に連れてってあげる」という誘いには誰も乗らない。
ボクらは、テレビやネットやパンフレットで、“一度見た場所”を旅行先として選ぶ。
「モナリザ」を観る時だってそう。
教科書で「モナリザ」を見たから、「本物を観てみたい」という“確認作業”で、ルーヴル美術館に展示されている「モナリザ」を観に行く。
「ルーヴル美術館の奥に、何かよく分からないけど有名な絵があるよ」という誘い文句では、ボクらはルーヴル美術館には行かない。
つまり、ボクらはネタバレしているものにしか足を伸ばさない。
ときどき、「ネットで(無料で)見られたら、会場に来てもらえない」という理由からスマホの撮影やSNSの投稿を禁止しているイベントがあるけど、「集客」のことを考えるとまったく逆だね。
当たるかハズレるか分からない場所には誰も足を運ばない。
人は冒険に憧れて、冒険を避ける生き物だ。
ネタバレを恐れちゃダメだよ。
ネタバレから始まるから。
「インスタ映え」で客が増えるとは限らない
「インスタ映え」という言葉が生まれてから、お店の内装をとにかくオシャレにしたがる人が増えた。
「お客さんのインスタに、自分のお店の写真が並ベば宣伝になるから」といった広告的な狙いだろう。
気持ちは分かるけど、それが「集客」に繫がるかどうかは、時と場合による。
何かにつけて、「オシャレ」を追い求めてしまうボクらだけど、
たとえば、店内をオシャレにしすぎたり、ホームページをオシャレにしすぎたり、ポスターをオシャレにしすぎたりしてしまうと、
「私なんかが中に入っても大丈夫なのだろうか?笑われないだろうか?」という、「自分のセンスに自信がない人」を不安にさせてしまうということを忘れちゃいけない。
そして、そういう人達のほうが多数派だ。
「集客」というのは、「楽しめるかな?」「置いてきぼりにならないかな?」といった“不安を取り除いてあげる作業”だ。
「お客さんの安心を担保する作業」と言ってもいい。
たとえば、突如として、田舎に「インスタ映えするオシャレ店」を出しても、そこに生まれるのは「私なんかが店に入ったら、恥をかかないかしら?」という不安で、集客に繫がらない。
先日、愛知県豊橋市にある青果店「一期家一笑(いちごやいちえ)」のオーナーさんから相談を受けたんだけど、2000万円をかけて店内をオシャレに改装したのに、その後、客数が40%減少したそうだ。
地元の方にインタビューをとってみると、「オシャレで素敵」という若いお母さん方の声もあった一方で、「私なんかが中に入ってもいいのだろうか?」という声もあった。
素敵なお店なので、是非、遊びに行ってみてください。
集客活動をするオーナーに迫られている選択は「オシャレをとるか?集客をとるか?」で、「オシャレ」を選んでしまうとオシャレ感度の高いお客さんは呼べるけど、一方で、自分のセンスに自信が持てないお客さんが離れてしまう。
オシャレには「排除」の力学が働くわけだ。一方、「集客」を選ぶのであれば、「少しダサイ」は受け入れなきゃいけない。
たとえばコチラは、ボクがやっているオンラインサロン「西野亮廣エンタメ研究所」のチラシ。1枚目が東京で配っているチラシで、2枚目が地方で配っているチラシ。
東京にはオシャレじゃない場所を避ける人も多いので、東京で配るチラシは、ダサ過ぎないように。
一方、地方で配るチラシは「私が入っても大丈夫」と思ってもらえるようなデザイン。デザイナーには「近所のスーパーに貼られているレベルのデザインで」と発注した。
地域や年代によって、デザインレベルはコントロールしなくちゃいけない。
リピーター獲得の方程式は「満足度−期待値」
ボクの活動の本丸は国内最大のオンラインサロン「西野亮廣エンタメ研究所」で、絵本にしても、WEBサービスにしても、美術館建設にしても、ここからすべてが始まっている。
サロンメンバーの入退会は毎日おこなわれていて、その数字(グラフ)に引っ張られてボクが活動内容を変えることは滅多にないんだけれど、
「◯◯をしたとき、人はこう動く」ということを把握した上で活動したいので、ボクは「西野亮廣エンタメ研究所」の入退会の数字を毎日見ている。
なんだか、新しい匂いのする「オンラインサロン」だけど、抱えている問題はさて「リピーター」はどう作る?
この問いには明確な答え(計算式)があって、次のとおり。
「満足度」−「期待度」=リピート度
満足度というのは「行ったあとの実感値」のことで、期待度というのは「行く前の期待値」のことね。
リピーターを作るには、この計算式の答えを「プラス」で終わらせなきゃいけないわけだ。
なので、集客に焦るあまり、
「ウチのオンラインサロンに入れば、人生が変わりまーす!」
「大学に行くぐらいなら、ウチのサロンに!」
みたいな誇大広告は、上げすぎた期待度を、満足度が超えられないので、一度お客さんが来てくれたとしても、「一見さん」で終わる。
そして、ここが大事。
一度離れたお客さんは簡単には帰ってこない。
誇大広告は、「簡単には帰ってこないお客さんを増やす作業」と捉えておいたほうがいい。
話を「オンラインサロン」から、お店に置き換えてみるね。
たとえば観光地のパンフレット。パンフレットに掲載する写真に、「奇跡の一枚(超絶景)」を使っちゃダメ。
足を運んでくれたお客さんが期待した超絶景を、現地の景色が超えないから、「来年、また来ますね」とはならない。
でも、だからといって、見映えの悪い写真を掲載してしまうと、そもそも現地に足を運んでもらえない。
足を運んでもらって、かつ、計算式がプラスで終わるような、ちょうどいいラインの期待度(宣伝)を狙わないといけないわけだ。
リピーター作りの要は一にも二にも「期待値コントロール」で、くれぐれも、「広告効果があるから!」といって、満足度を超えてしまうような広告は出しちゃいけない。
西野さんの経験が詰まった『新・魔法のコンパス』で“時代の歩き方”を学ぼう
「発見だらけ。おそるべき具体性。なにより、『今日からなんかやってみよう』という活力がみなぎった(又吉直樹)」
昨日までの常識が、今日非常識になる。
そんな激動の現代における「時代の歩き方」について西野亮廣さんが書いた『新・魔法のコンパス』。
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