ビジネスパーソンインタビュー
藤田晋著『仕事が麻雀で麻雀が仕事』より
イケメンを抜擢するのには理由がある。ビジネスを有利に運ぶキャラを確立する方法
新R25編集部
ここぞというところで、大胆な勝負に打って出られる「勝負強さ」。
ビジネスマンならぜひとも身につけたいスキルですが、そもそも「勝負強さ」を磨くことは可能なのでしょうか?
その質問に対し、最高の教材になるのは「麻雀」だと断言するのは、サイバーエージェントの藤田晋社長。
藤田社長は、2014年にはプロも参加する「麻雀最強戦」で優勝するほどの雀士としても知られています。
2015年に『近代麻雀』で開始した連載コラム『仕事が麻雀で麻雀が仕事』では、麻雀で培った自身のビジネス観を伝えています。
今回はそのなかから、「勝負」「ビジネス」「成長」「人生」というテーマで抜粋した4記事を特別公開。麻雀に興味がない方もぜひご一読ください。
人生は配牌だと思え
人生は自分に配られた配牌のようなものです。
最初からドラ暗刻レベルの容姿で生まれてくる人もいれば、倍満イーシャテンみたいな大金持ちの家に生まれてくる人もいます。
そうかと思えば、なんの取り柄もなく、ひどい家庭環境の貧乏な家で生まれ育つ人もいます。
親からの遺伝で譲り受けた容姿、頭脳、体格、性格なども含めて配牌の見どころは人それぞれで、誰一人として全く同じ人はいません。
そして、誰もが死ぬまで自分の手牌で勝負していかなければならないのです。
私も24歳で起業するとき、自分の人生を配牌のように考えていました。会社が成功し始めると、「藤田には有力なバックがついてる」「親の跡を継いだんだ」などと噂されましたが、そうではありません。
私は福井県の中途半端な田舎街で、普通のサラリーマン家庭の長男として生まれました。
配牌の良いところを探せば、学級委員にいつも選ばれるくらいのリーダーシップがあったのと、将棋や麻雀などの勝負事は得意でした。
配牌としてはまぁまぁ普通。うまくいって3900、育って満貫かなという感じです。でも、起業する時の自分は三倍満、役満クラスの成功を思い描いていました。
そこで冷静に自分の手牌の材料を見ると、中流家庭に育ったので反骨精神が足りないとか、コネがないので泥臭くいくしかないとか、足りない分を努力で埋めるしかない現実が見えてきました。
それを必死に頑張ったから今があるのです。
私のこの話を聞いてどう感じたでしょう。もしあなたが「自分の配牌よりマシだ!」と思ったとしたら要注意です。
麻雀でも、人の配牌を羨んだり、自分の配牌を嘆いたりしてる人って勝てる訳ないと思いませんか? 腐った気分で見る配牌は、実際よりも悪く見えるものです。それでは配牌に大物手に育つ種があったとしても見落としてしまいます。
麻雀でも、クソ配牌だと思っていたら、何巡かツモってるうちに、見違えるような手牌に変化したり、何の取り柄もなかったはずの配牌が、ハイテイ近くなって大物手に化けたという経験があると思います。
反対に、願ってもない好配牌を手にしたのに、一向に手が進まず、アガれなかった経験も何度もあるでしょう。
麻雀も人生も、配牌の良し悪しで決まるとは限らないのです。人生は配牌を手にした日から、どこまで行けるか、死ぬまでの戦いなのです。
見た目問題について
「なんであいつなんですか? 納得がいきません!」
以前、イケメンの若手社員を新規事業の責任者に抜擢した際に、同年代の若手に詰め寄られたことがあります。
確かにこれといった実績もまだなく、他にも能力が高い人はいました。
正直、私の心の中では(イケメンだから)と答えがあったのですが、声に出しては言えませんでした。
容姿の話はデリケートな上、普段は努力するよう社員に発破をかけているのに、親から授かった顔が理由ではやる気をなくすでしょう。
もちろん仕事と顔は直接関係ありません。でも、現実的な話としてイケメンが事業を成功させるとメディアの取り上げ方が違うのでそれだけで有利です。
またトップの見た目は製品のブランドにも影響します。納得いかない人も多いと思いますが、世の中を見渡してみてください。
例えば選挙に出馬する候補者は、若くてイケメンなら清廉潔白、誠実そうに見えて票を集めますが、悪そうな人相だと政治手腕が優れていてもイメージで落選したりします。
政治の仕事と顔は関係ないにもかかわらず、です。
先の平昌五輪の羽生結弦選手の金メダルも、イケメンでなければ大フィーバーにはならなかったでしょう。
我々は女子プロゴルフツアーのスポンサーもしていますが、美人ゴルファーが優勝すると、夜のスポーツニュースで大々的に取り上げられ、そうでない日は見事に扱いが少なくなります。
どちらがスポンサーにとって良いかは明らかです。
麻雀プロも、見た目が良いプロは大会に呼ばれやすく、有利であることは間違いありません。自分の方が実力は上なのにと納得がいかないプロも多いと思います。
しかしその一方で、見た目と関係なく結果を残して人気が出るプロもいます。
世知辛い世の中ですが、見た目問題も「全部現実で受け止める」ことが出来る人はそれを乗り越えていきます。
前にこの連載で生まれ持った容姿は配牌で貰ったドラのようなものと書いたことがありますが、仕事も麻雀も、誰もが最初に手にした不公平な配牌で勝負するしかないのです。
麻雀界1のイケメン滝沢和典プロは、RTDリーグで2年連続最下位という悪夢のような成績で、今季はRTDを外れました。
でも、もしここから復活を遂げて優勝を果たせば、劇的な感動を与えるでしょう。しかしその難易度は尋常ではありません。
結局イケメンもまた、孤独に苦悩しているのです。
キャラを確立する方法
攻めダルマと呼ばれる佐々木寿人プロの特攻スタイル、リーチ超人村上淳プロの長打狙い、ロボットと言われる小林剛プロのデジタル打法など、麻雀が強い人は皆キャラクターも際立っています。
逆に言えば、麻雀はキャラ立ちしてる人が有利なゲームと言えるかも知れません。
これは会社も同じで、まずキャラが立っている人はそれが理由で採用されることがあります。
また、働いても大勢いる中で目立ちやすく、仕事で抜擢されることが増えます。
キャラが強いことで、競争相手が勝手にビビってくれて、戦わずして勝つこともあるでしょう。
漫画の世界もキャラ立ちした人が活躍します。「キングダム」や「アカギ」を思い出してみてください。キャラの立った登場人物は丁寧に描かれていますが、そうでない人は脇役扱いです。
しかしこれは漫画の中だけの話ではありません。現実社会でも、麻雀でも、キャラがない人は目立たない脇役として姿を潜めたまま終わる可能性の方が高いです。
では何故キャラを確立させると有利なのでしょう。
その理由は、まず周囲の人が忖度してくれます。何をやりたいか分かりやすいので、協力者が配慮してくれて、説明する手間が省けます。
また、敵対者に対しては実力以上の脅威を与えるでしょう。
真剣勝負の場では相手に対するイメージが膨らみやすいものです。つまりキャラが立ってると、周囲の人たちが勝手に妄想を膨らませてくれるからそれだけで有利なのです。
ではどうすればキャラを確立出来るでしょうか? 自分の経験からお話しすると、私は上場企業の社長ですが、AbemaTVに年間200億円もの先行投資を行っているにもかかわらず、株価は最高値圏にあります。
これは「藤田ならなんとかするだろう」というキャラを株式市場に対して確立したからです。駆け出しの経営者ならこうはいきません。
でも私も一朝一夕にこうなった訳ではありません。長く一貫して同じことを言い続け、批判されたり痛い目にあっても忍耐強く我慢したからです。
つまりキャラの確立には「先に代償を支払う必要がある」ということです。
鈴木たろうプロがブラフ仕掛けを多用していた頃、アガれないのに丹念に河を作っていたり、多少振り込んでも手の内を読まれないようにしていたことを「宣伝広告費」と説明していました。
キャラを確立させるため、先に経費を払っていたということです。
個性を光らせ1ハンアップを目指せ
サイバーエージェントには200名を超える新入社員が入社してきました。厳しい選考基準をクリアした前途有望な人材の今後の活躍がとても楽しみです。
一方で、グループ4000名を超える会社の社長として心配もあります。大勢の中で埋もれないかということです。
名前が変わってるとか、際立ってイケメンであるとか、甲子園球児だったとか、分かりやすい個性があれば良いのですが、よくある大学を卒業し、よくある名前で、うちの会社によくいる見た目だと、私の立場から見れば覚え辛く、忘れてしまいがちです。
もちろん仕事ができることと、変わった名前、イケメン、甲子園球児などは全く関係ありません。しかし、ひとたび仕事で成果を上げた時の印象は鮮烈です。
「あの高校球児、仕事もやるな!」と役が1ハンアップしたような効果があります。1ハンアップは馬鹿にしたものではありません。
2000点は3900点、3900点は1ハン上がれば8000点です。成果に個性が足されると、注目を浴びて次々に仕事が舞い込んでくるので1ハンアップはあながち外れてないのではないでしょうか。
現在、RTDリーグで激しく競い合っている白鳥翔プロが、ある日の収録で突然髪を金髪にして来ました。私はそれを見て、流石センスがあるなと唸りました。
白鳥翔プロは若手の中でもピカイチの実力を持つ有望株です。
それに加えてタレント性のある名前(本名だそうです)、皆が真面目なスーツを着込んでる中、ひとり金髪の若者が勝てば鮮烈な印象を残すことでしょう。
数年前、私が競技麻雀の世界に初めて足を踏み入れて麻雀プロを見たとき、正直に言えば、大勢のプロが皆、同じようなスーツを着ていて見分けがつきませんでした。
詳しくなると、個性的な選手がたくさんいることに気づくのですが、それでもやはり「忍者」とか「ロボット」とか、個性がはっきりしている選手は勝った時の印象が鮮烈で、その後も多くの対局チャンスを得ています。
もちろん、個性を磨けば誰でもチャンスを得られるという訳ではありません。
「イチロー」という名前は結果が伴って大正解でしたが、同じように名前を変えても結果が伴わず、埋もれていったプロ野球選手もたくさんいます。
個性はドラと同じで、それだけで役になるわけではないのです。
麻雀には、ビジネスの世界で活かせる気づきがある
「麻雀はビジネスに似ている」と言いますが、実際、不平等な配牌から早く大きくアガりを目指す麻雀は、「ビジネスの世界の縮図」のようだという藤田社長。
『仕事が麻雀で麻雀が仕事』には、全82回のコラムが一冊に収められています。
藤田社長が麻雀から学んだビジネスの本質。
麻雀を知らない方もぜひ、手に取って見てください!
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