ビジネスパーソンインタビュー
孫社長も認めた最強の話し方『1分で話せ』より
右脳と左脳を刺激すれば人は動く。相手の頭のなかに「イメージ」を生み出す2つの方法
新R25編集部
「ロジカルに話すだけでは、話は伝わらない」
Yahoo!アカデミア学長・伊藤羊一さんはそう主張します。「90%の人は、話し方で損をしている」と。
今回は、2019年に読むべきビジネス書第1位(BookLive!調べ)に輝いた伊藤さんの著書『1分で話せ』より、2つの記事をお届け。
ソフトバンクの孫社長も認めた「シンプルに伝える最強の話し方」をご紹介します。
※画像提供:リクナビNEXTジャーナル
正しいことを言うだけでは、 人は動かない
わかりやすければいいのか。理解できればいいのか。自分が賛成する内容であれば人は動くのか。
それは違います。
もちろん、ロジカルに考えられたストーリーがないと、聞き手は、あなたの言うことを理解できません。
しかし、ロジカルに考えられた正しいことを聞いて理解するだけでは、人は動きません。
それは皆さんが、何か高価なものを買うときのことを考えてみてください。
たとえば、マイホームがほしい。マンションを買おうかなと思ったとします。
マンションの販売サイトに行き、ある物件を調べてみたところ、色々な説明がありました。あなたはこれをどんどん読んでいきます。
都心から近く、さらに駅から近くて閑静な住宅街にある。
うんうん、いいね。
間取りは、夫婦で小さな子ども1人という家族にうってつけのつくりになっている。
うんうん、これは住みやすそうだ。
そして、値段もちょうどお手頃の価格帯だ。
うんうん、これならなんとか出せそうだ。
でも、これだけでマンションを購入するかということです。
「すべて条件に合う、だから買う」だけではないものがあるはずです。
マンションほどの高価なものでなくとも、自分の条件に合うから買おう…ということだけではなく、何か一歩、えいやと踏み出す何かが必要でしょう。
人はイメージが膨らむと感情を揺さぶられる
買いたい、買おう、失敗するリスクがゼロではないかもしれないが、それでも踏み出したい、どうしても買いたい、ああ、たまらなくなってきた、買おう!
…と思って、私たちは購入の意思を固めていきます。
では、話を理解したあと、「ほしい、ほしい!」と人に思わせるのは何でしょうか。
これがわかれば、プレゼンにおいても、その要素を注入すればいいのです。
ロジカルに考えられたストーリーは理解した。自分も賛成だ。
その状態で、あと一歩、「うん、いいねいいね!」と心を動かすのは何か。
それは、「頭の中に生まれたイメージ」です。
先ほどのマンションの例でいえば、
自分自身が、朝、はつらつと自宅から出て、駅に向かうイメージ、
奥さんが子どもと、敷地内にある公園で、笑顔で遊んでいるイメージ、
共通の友達をパーティルームに呼んで、みんなで談笑しているイメージなど。
こうしたイメージが頭の中に生まれてきて、「ああ、このマンション、買いたいな」と思っていきます。
このイメージは、どのように聞き手に生まれてくるのか。
まずは、ちゃんとロジカルに事実を認識してもらう必要があります。
聞き手が、
「つまり、駅からマンションへの道のりはこんな感じか」
「敷地の中の公園は自由に遊べるんだ」
「部屋はこんな間取りか」
「パーティルームはこういうつくりなのだね」
ということを認識したうえで、そこに自分をあてはめて考えるようになるかどうかです。
そこができれば、もうあとは、聞き手の頭の中でどんどん想像が膨らんでいきます。
伝える側は、その想像が広がるのをサポートすればいいのです。
では、どうしたら自分にあてはめて考えてもらえるか。
それには、2つのアプローチがあります。
1つは、聞き手の頭の中に、ビジュアルなイメージを直接的に描いてもらうアプローチ。
もう1つは、そこに、聞き手をあてはめていく、聞き手にそのイメージの中に入っていってもらうアプローチです。
では、それぞれについて説明していきましょう。
イメージを描いてもらうためにおこなうべき2つのこと
まずは、言葉で理解してもらうだけではなく、イメージを描いてもらう必要があります。
こちらも2つの手法があります。
1つめは、当たり前ですが、ビジュアルでイメージしてもらうために、「ビジュアルを見せる」ということです。
言葉で説明するだけではなく、写真や絵、動画を使えるのであれば、 どんどん使いましょう。
たとえば、「未来都市」について説明しようとします。
こちらの上のように表現するとどうでしょうか。
文字ばかりで、全然イメージが湧きません。
これを、絵で説明すると下のようになります。
断然、絵で説明したほうがわかりやすいですよね。
ですので、写真や絵、動画などで、しっかりと説明しましょう、ということです。
なお、まったく関係ない写真や絵を入れてしまうと、逆にノイズになって理解を妨げるのでやめましょう。
あくまで、「このイメージを聞き手に湧かせたい!」と思うことに関する写真・絵・動画を入れましょう。
先ほどのマンションの例でいえば、ちらしやホームページで、そのマンションの外観や施設などのビジュアルがない、ということはありえません。
プレゼンにおいても、 あなたが理解してほしいと思うことがあれば、さぼらず、資料上に表現しましょう。
もう1つ、ビジュアルで説明できるものがない場合は、言葉で、聞き手にイメージを湧かせる必要があります。これはどうすればよいか。
この時は「たとえば」と言って、具体的な事例を示すことです。
「私は、自分が勤めている会社が大好きだ」という例で考えてみましょう。
「私は、自分が勤めている会社が大好きです。理由は3つあります。
1点めは、働きやすい職場だからです。
2点めは、一緒に働いている人たちが素敵だからです。
そして3点めは、仕事にやりがいがあるからです」
こうしたプレゼンをするとしましょう。
これだけで、理解はできます。
聞いている人が、「話し手は、こういうことを言いたいんだな」という枠組みを作り、理解することができます。
ただ、これでは、どのくらい働きやすいか、そして、働いている人がどのくらい素敵か、よくわからない。
イメージが湧かないのです。
ですから、聞き手にイメージを湧かせるために、「たとえば、〜です」といって、補足するのです。
具体例をあげると、 次のような感じです。
1点めは、働きやすい職場だからです。
たとえば、フレックスタイムで自由に働け、また、リモートで自宅でも働くこともできます。
2点めは、一緒に働いている人たちが素敵だからです。
たとえば、人の足を引っ張るような人は、1人もいません。
3点めは、仕事にやりがいがあるからです。
たとえば、会社は常に新規事業に積極的で、チャレンジする機会に恵まれています。
といった感じになると、かなり具体的になります。
もちろん、「たとえば」という言葉を入れるかどうかは文脈次第で、必要であれば入れるし、そうでなければ入れる必要はありません。
結論に対し根拠を3点あげる、しかも短めにとなると、どうしてもその根拠は抽象的になります。
そこで、それをもう少し具体的な言葉で説明するわけです。
そうすると、聞いている人にはわかりやすくなります。
加えて、聞き手は具体的なイメージが湧きやすくなります。
「たとえば」を入れないと、「働きやすい」といっても、具体的にどう働きやすいのかわからない。
それが、例を入れると、「ああ、働きやすいというのは、時間とか場所が自由ということだな」 とわかるわけです。
そうすると聞き手は、相手がフレックスを活用していたり、リモートワークで、オフィスでないところで働いているイメージを、想像するようになります。
聞き手に、イメージの中に入り込んできてもらうために
写真や絵、動画を使えるのであれば、さぼらず使うこと。
また、「たとえば」と言って実例を述べること。
ピラミッドストラクチャーは3段でつくること。
ここまでやると、 聞き手は、大分、具体的なイメージが湧くと思います。
あとは、聞き手に、この自分でつくったイメージに入り込んできてもらえればよいのです。
たとえ1分間の話でも、聞き手がイメージの中で自分の想像を膨らませはじめれば、内容は無限大に広がり、あとは放置していても、勝手にどんどん想像していきます。
ではどのように、聞き手に想像を膨らませてもらうか。
これは、聞き手の色々な経験を、自分が伝えたいイメージと組み合わせてもらい、想像を膨らませるのです。
そのためには、直接、そのイメージに入ってくれるように、お願いするのが一番です。
具体的には、
「想像してみてください」
「あなたがもしこの世界を経験するとしたらどうでしょう」
と促す。
そして、「素晴らしいと思いませんか」と方向感を伝える。
これだけでよいのです。
あとは勝手に、聞き手が自分の頭の中で想像を始めてくれるようになります。
たとえば、牛丼の話をするとします。
ファストフードとして牛丼がオススメだと。
あのチェーンの牛丼屋さんが特に素晴らしい。なにせ美味しい。
空腹時にあの牛丼を食べたら、幸せな気分になる。
そんな感じを聞き手に伝えたい。
とはいえ、その牛丼の美味しさは、いくらロジカルに説明してもわかりません。
ですので、想像してもらう。
「想像してみてください。空腹のときに牛丼屋さんに入ったときのことを」
と言い、写真でも見せてみましょう。
聞き手は、その牛丼を食べた経験がなくても、限られた情報から、
「ご飯が美味しそうで、つい、よだれが出てきてしまった体験」
「空腹のときに、ほかほかのご飯をかきこんだ経験」
「食べ終わって満足しながらお茶を飲んだ経験」
などを思い出し、そこからこの牛丼のことを想像してくれることでしょう。
つまり、その牛丼そのものの話ではなく、相手は自分の記憶の中にある「その牛丼的な要素」から勝手に、その牛丼のことを想像してくれるわけです。
自分の説明を超えて、想像でイメージを膨らませてくれる。
つまり、聞き手にイメージを想像してもらうことで、こちらが伝えていること以上に、説得力を持つことになるのです。
さて、前回の記事とあわせて、ここまでで1分で伝える内容を説明してきました。
実はここまでで、すでに相手の左脳と右脳を動かしています。
たとえば、吉野家の例で考えてみましょう。
結論は、「吉野家が好き」です。
理由として、「早い」「安い」「うまい」がある。
ここまでが、ピラミッドの2段めですが、これで左脳を動かしています。
そして、次に「早い」の理由をあげます。
たとえば、「座ったかどうかのタイミングで店員さんが出してくれる」ということだとします。
この「たとえば」の3段めで右脳(イメージ)を動かします。
1つの文章にまとめてみると、こんな感じでしょうか。
吉野家が好きです。
まず、早い。
座ったかどうかのタイミングで、店員さんが牛丼を出してくれますね。
次に、安い。
今時どこで食べても大抵500円はかかります。
最後に、うまい。
想像してみてください。おなかがすいた時に牛丼をかきこんだことを。
だから、僕は吉野家が好きなんです。
これで、1分もかからないでしょう。
でも、「吉野家はおいしいんだな」ということは、伝わってきませんか。
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「1分で話せないような話は、どんなに長くても伝わらない」と主張する伊藤さん。逆に、1分で話すプレゼン術は、会議・交渉・報告・会話、すべてに応用できると言います。
詳しくは、「1分で記憶に残すノウハウ」から「話すときのメンタルセット」まで書かれた伊藤さんの著書『1分で話せ』にて。
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