ビジネスパーソンインタビュー
「前職よりも休めてますよ」
自衛隊ってどんな毎日を過ごしてるの? 元営業マンの自衛官に根掘り葉掘り聞いてきた
新R25編集部
平和な日本において謎多き職業のひとつ、自衛隊。
超体育会系で、毎日訓練しかしていないのでは…?という偏見を持っていましたが、実際は我々のイメージよりはるかに働きやすくなっているそう。
…と言われてもふだん何をしているか、全然想像できませんよね。
そう思っていたところ、なんと現役の自衛隊員の方にインタビューする機会をいただけることに!
今回取材を引き受けてくれた片山亮也さんは、自動車メーカーの営業職から3年前に陸上自衛隊に転職したという異色の経歴の持ち主。これは気になる…!
〈聞き手=宮内麻希(新R25編集部)〉
宮内
あの…ふだんは迷彩服ではないんですね!
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宮内のイメージはこんな感じでした
片山さん
ふだん訓練をするときは迷彩服なんですけど、今日は「制服がいい」とのオーダーがあったと聞きまして!
完全に「制服=迷彩服」だと思っていた編集担当
宮内
し、失礼しました…
ちなみに、片山さんのことはなんとお呼びしたらいいのでしょう?
片山さん
自衛官流でいうと、名字+階級で呼び合うのが一般的で、僕は今“士長”なので…
宮内
片山士長…!
“日本の顔”として海外から要人を迎え入れる「特別儀仗」
宮内
片山士長は現在、陸上自衛官としてどんなお仕事をされているんでしょうか?
片山さん
陸上自衛隊の第302保安警務中隊で、特別儀仗(ぎじょう)隊という役割を担っています。
宮内
ぎじょう…?
片山さん
海外から国賓(こくひん)を迎えるときに行う式典のことを「特別儀仗」と呼んでいるんです。
皇居や首相官邸、防衛省などで銃を持って整列して出迎えるのが我々の仕事です。
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片山さん
多いときで、月に10回ほど特別儀仗を行います。トランプ大統領が来日した際も参加していました。
宮内
ああ〜! ニュースでみたことがあります。これも自衛官の仕事だったんですね!
片山さん
そのほか、自然災害の有事の際には被災地への支援に向かいます。これは全部隊共通のミッションですね。
“戦闘部隊”だけじゃない。実は仕事の幅がたくさんある自衛官
宮内
ちなみに、片山士長は3年前まで自動車メーカーで営業の仕事をしていたとお伺いしました。
そこからどうして自衛官に転職しようと思ったんですか?
片山さん
大学時代、東日本大震災があって、ボランティアで気仙沼に行ったんです。そこで現地の人に直接「ありがとう」と言ってもらえたことがずっと自分のなかに残っていて。
転職を考えたときにその経験が頭をよぎり、自衛官を志望しました。
宮内
民間からの転職ということで、不安はありませんでした?
片山さん
もちろん最初は不安だらけで、そもそもなにをしている人たちなのかもよくわからなかったので。
毎日、匍匐(ほふく)前進ばかりしているのかなとか(笑)。
片山さん
ただ、ちゃんと調べてみると、自分が考えていたよりいろいろな職種があることを知ったんです。
みなさんがイメージするのはいわゆる“戦闘職種”ですが、実際にはほかにも警務科、音楽科、会計科などさまざまあるので、自分にあったところに行けるだろうと。
宮内
自衛官はみんな“戦いに行く人”かと思っていましたが、それだけじゃないんですね。
ちなみに配属はどうやって決まるんですか?
片山さん
入隊してから3カ月間、教育隊と呼ばれる訓練生になるのですが、その期間で適性を見られるのと、自ら希望の科を書くことができます。それらをふまえて最終的に配属が決まります。
宮内
おお! 本人の希望と適性を見て配属。一般の企業と同じような感じなんですね。
片山さん
はい。ちなみに、人気なのは陸上自衛隊のエリート集団と呼ばれる第一空挺団ですね。いわゆるヘリコプターに乗って空から降りていく人たちです。
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片山さん
自衛官のなかでも「困ったら空挺さんがなんとかしてくれる」と一目置かれてるんですよ。
自衛官の1日って、やはり訓練ばかりなの?
宮内
これはイメージなんですけど…自衛官の1日って、やはり訓練ばかりなんですか?
片山さん
基本はそうなります。
朝6時半に起床して、寮生活なので朝イチで部屋の掃除を全員で行います。その後朝食を食べて8時半から17時15分まで訓練です。
部隊によっては事務作業や、武器をつかった演習、体力トレーニングなどありますが、儀仗隊は特別儀仗の予行練習や立ち姿勢の訓練、銃の動作練習などで1日が終わりますね。
宮内
あの…でも立ち姿勢って、ぶっちゃけそんなに訓練することあるんですか?
すみません、すみません…
片山さん
たしかに、不動の姿勢と言ってまっすぐに「気をつけ」をしているだけなんですけど(笑)、これが結構難しいんです。
本番は1時間ほど立っていることもあるので、自分ではまっすぐ立っているつもりでも、微妙に首が曲がっていたり。
訓練では自分の目の前にロープを張るんです。ロープが少しでも動いたら自分がブレているということなので、怒られます。これを、時間をかけて練習しますね。
宮内
冷静に考えると、炎天下のなか重い銃を持ってまっすぐ立つって、なかなかハードですね…
日本の顔として立っているわけなので、銃を落とすわけにもいかないですし。
片山さん
そうなんです。ほかにも銃を持ったときの姿勢や、顔の角度など細かいところまで立ち姿に気をくばります。
この立ち姿がキレイな人は、特別儀仗の際、最前列で儀仗を行うんですよ。
宮内
儀仗のうまさで並びが決まってくるんですね。。
片山さん
全部で3列になるんですが、最前列は1班と呼ばれていて、約130人ほどの隊員のなかから27人しか選ばれない、名誉ある立ち位置なんです。
さらにそのなかでも優秀な立ち姿の人が、国旗を持つ4人に選ばれるんですよ。
片山さん
みんなこの1班に入ることを目指して、鏡を見ながら立ち姿を自主練したり、先輩に見てもらったりするんです。
宮内
なんか…AKB48の選抜争いみたいですね(笑)。
片山さん
まさにそんな感じですね(笑)。
特別儀仗の前に紙で都度編成表が発表されるのですが、はじめて自分の名前が1班に載っていたときは興奮しましたね。
海外旅行も楽しめる!? 想像以上にホワイトな自衛官のプライベート
宮内
寮生活で1日訓練ということで、気になるのが自衛官にプライベートはあるのかという点なんですが…
片山さん
たしかに、寮生活なので訓練中に1人になれるのはぶっちゃけトイレのときくらいしかないですね(笑)。
宮内
やはり…休みも少ないんじゃないですか?
片山さん
いや、勘違いされやすいんですけど、自衛官ってホワイトな職業で、休みはしっかりと取れます。僕は前職より休めてますね。
「こういうところで“公務員いいな〜”と思います」
片山さん
平日も訓練が終われば、外へご飯を食べに行くのも自由だし、土日休みも守られている。華金はよく同期とご飯へ行きますね。
まとまった有給も取りやすいので、しょっちゅう海外旅行に行く先輩もいます。
宮内
あっ、平日に外食したりもするんですね。
片山さん
しますします。
一方で、平日集団行動している分、土日は1人で出かけたくなって、僕はふらっと映画を観に行くことが多いです。
宮内
なんか…私の日常と変わりませんね。
ちなみに、PCやスマートフォンも普通に使えるんですか?
片山さん
入隊後3カ月の研修期間中は忙しくて昼休みや寝る前しか使用できないのですが、それが終われば普通に使えますよ。
寮内への電化製品の持ち込みはすべて申請が必要なのですが、基本的に許可されないことはないですね。
宮内
そうなんですね。
プライベートでも筋トレを強要されるとかはないですか…?
片山さん
もちろん体力勝負な部分もあるので、トレーニングはしますけど訓練以外にノルマがあったり強要されることはないですね。
文化部出身の自衛官も結構いるので…!
宮内
なるほど…
あっ、でもさすがにSNSは禁止なんじゃないですか?
粗探し(?)に必死ですみません
片山さん
仕事に関係することを書かなければ問題ないです。僕もよく同期飲みの写真をアップしてます。
初めて迷彩服を着たときはアップしたくてウズウズしたんですけどね(笑)。
宮内
想像していたよりも普通で逆にビビってます。
「迷彩柄の服が着づらい」「時計の読み方が独特」など…自衛官あるある
片山さん
僕はふつうに迷彩柄の服が結構好きなんですけど、自衛官になってからはプライベートで着づらくなったので、その点はちょっと悲しいです。
同期と飲みに行くときとかに迷彩を着ると、「お前、本当に仕事好きだな〜」っていじられるんですよ(笑)。
片山さん
あと、独特の文化はおもしろいなと思いました。
たとえば宮内さん、先輩に「会議の資料持ってる?」と聞かれて、持っていなかった場合なんて答えます?
宮内
「すみません、持ってないです」って答えますね。
片山さん
自衛官は「ないです」じゃなくて、「なし!」って答えるんですよ。
宮内
なんか、急に冷たい感じに聞こえますね(笑)。
じゃあ、「あります」は、「あり!」なんですか?
片山さん
それは、「あります」です(笑)。
そっちは普通だった…
片山さん
あとは、時計の読み方も独特ですね。たとえば、今が14時40分だとしたら…「ひと・よん・よん・まる」って伝えるんです。15時なら「ひと・ご・まる・まる」。
プライベートで「何時?」と聞かれたときに、この読み方が出てしまって恥ずかしくなるときがあります(笑)。
宮内
それはさすがに戸惑います(笑)。
自衛官は「国を守っている」と胸を張って言える稀有な仕事
宮内
自衛官として任務にあたるなかで、ツライと思ったことはないんでしょうか?
片山さん
最初は集団行動に慣れなくてツライ時期もありました。これまで自由に生きていたところから、規律を重んじる世界に入るわけなので。
最初の訓練期間はとくに厳しくて、ベッドメイキングがキレイにできていないと教官にものすごい怒られるんです。掃除も「それで本当に、自分の手でトイレの便器を触れるか!」と言われて「ああ…」ってなりましたね(笑)。
片山さん
でも、当初不安に思っていた自衛官の厳しさに耐えられたのは、一緒に暮らす同期の存在が大きかったですね。
宮内
逆に集団だからこそ乗り越えられる部分があったんですね。
片山さん
はい。それに、自衛官になる前は「友人と連絡取れなくなるんじゃないか」とか「これまでのように頻繁に遊べなくなるんじゃないか」と思ってたんですけど、全然逆で。
むしろ、働くときは働く、休むときはしっかり休んでメリハリのある生活を送れるようになりましたね。
宮内
ほかにも、転職してよかったと思う部分はありますか?
片山さん
自衛官になって、応援されたり、感謝されたりすることがものすごい増えて、それって単純にうれしいですよね。
「国を守っている」と胸を張って言える仕事って、ほとんどないんじゃないかなと思うので。
片山さん
自衛官は選ばれし人がなるものだとか、運動神経がよくないとなれないと思われがちなんですけど、幅広い職種がありますし、休みもしっかり取ることができます。
少しでも興味を持ってもらえたら、ぜひ次のキャリアとして検討してほしいですね。
宮内
私も、今日お話を聞くまでは自衛官の仕事を勘違いしていたかもしれません。
片山さん
僕、初対面の人に職業を聞かれると「会社員です」って答えてるんですよ(笑)。
「自衛官って想像されているものと違うよ」と言いたいんですけど、なかなか説明するのが大変で。
なので、この記事をきっかけに少しでも多くの人に自衛官について知ってもらえたらうれしいです。
私たちには想像もつかないほどスケールの大きい自衛官の仕事。
大きな使命を背負う片山さんの、取材中に丁寧に言葉を選ぶ姿勢。そして取材中何度も出てきた「自衛隊にしかできない」「国を守る」という発言の重さに、仕事はまったく違えど、同じ働く者として仕事への向き合いかたを考えさせられた取材でした。
陸・海・空自衛隊では、20年入隊の自衛官を募集しています!
自衛隊では2019年7月1日(月)から9月6日(金)まで、2020年4月入隊の自衛官の募集を受け付けています。
職種や選考の詳細など、今回の記事で気になった方は採用HPをチェックしてみてください!
自衛官募集チャンネル
自衛官募集に関する情報を分かりやすく映像でお伝えしております。
海上自衛隊、航空自衛隊の情報もこちらからチェックできます!
〈取材・文=宮内麻希(@haribo1126)/撮影=中澤真央(@_maonakazawa_)〉
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