ビジネスパーソンインタビュー
収益はサラリーマンの月収の2倍!
昼間は会社役員!? 謎の仮面YouTuberが半年で登録者数20万人を達成した戦略に圧倒された
新R25編集部
ここ数年で過熱しているYouTuber市場。
年収は億単位だったり、いまや芸能人よりも認知されていたりと、トップYouTuberたちは一攫千金の夢をつかんでいます。
ただ、そこにいたるまでには泥臭い努力が必要なのも事実。動画の撮影・編集を自分で行い、ほぼ毎日投稿する。夢があるようで、普通の会社員には簡単にマネできません。
そんななか、短期間でとんでもなく成長しているYouTuberを見つけました。
その名も「仮メンタリストえる」。2018年10月にチャンネルを開設し、半年を待たずしてチャンネル登録者数は約20万人。しかも昼間はベンチャー企業の執行役員としてバリバリ働いているんだとか。
会社員として活躍するかたわら、どうやってYouTubeで成果を出すことができたのか? そのノウハウを聞けば、自分もYouTuberになれるかも?
…ということで新R25編集部は本人に交渉し、直接話を聞いてきました。貴重なノウハウ満載の初出インタビュー記事をどうぞ!
〈聞き手=福田啄也(新R25編集部)〉
【仮メンタリストえる】2018年10月にチャンネルを開設。恋愛心理学をもとにした、ハウツー動画を公開している。現在のチャンネル登録者数は20万人超え(2019年3月19日現在)
福田
(取材でも仮面付けるんだ…)
えるさんの本業は会社役員だと伺いました。なぜYouTubeを?
えるさん
発信力を身につけたかったんですよ。
ボクは、自分自身の欲が一切なく、「まわりの人がいかに幸せを得られるか」にしか興味がないんです。
だから、自分が発信力を持てれば、社会にいい影響を与えられるだろうと確信していました。
別にYouTubeじゃなくてもよかったんですけど、発信の市場はTwitterやFacebookからInstagram、そしてYouTubeに移っていて、今もっとも過熱しているかなと思って。
福田
なるほど…YouTuberとして食べていくというのが目的ではないんですね。
ちなみに現在のYouTubeからの収入はいくらなんですか?
えるさん
今月のYouTubeからの収入は、平均的なサラリーマンの月収の2倍くらいですね。
YouTubeにはやはり夢がある(確信)
YouTubeハック術1「今からはじめる人はハウツー系を狙え」
福田
YouTubeを始めたのが最近なのに、なぜそこまで成長できたのでしょうか?
えるさん
ビジネス視点を持って、YouTubeに参入したからですね。
「好きなことで生きていく」というYouTubeのキャッチコピーがありますが、あれって「自分がやりたいことをひたすら発信していくと、いつかそれがお金になるよ」というメッセージなんです。
これまではプレイヤーが少なかったので、多くの人がそれで成功をしました。
福田
HIKAKINさんやヒカルさんがまさにそれだと思います。
えるさん
しかし、今から参入するのは、いわゆる後発組です。
後発組が最速で勝つためには、マーケットインの発想が必要だと考えました。
これまでとは逆の発想で、「今、市場でどんな動画だったらYouTubeに受け入れられるだろうか」という目線からYouTubeに参入したんですよ。
福田
なるほど…どんな動画だったら、YouTubeで人気が出ると考えたんでしょう?
えるさん
ハウツー系ですね。
YouTubeでは、まだまだハウツー動画ってブルーオーシャンなんですよ。
厳密に言うと、ユーザーが求めるレベルで参入できている人がいないんです。
えるさん
これまでのYouTuberはとにかく過激で面白いことをやるスタイルでした。
しかし、過激系は視聴者の期待値がどんどん上がっていき、最終的には法律に違反するくらいじゃないと再生数が伸びなくなるんじゃないかなと思っています。
さらに、そういった動画は“良質でないコンテンツ”にカテゴライズされるので、広告単価は確実に低く、企業案件も受けづらいです。
今からやるメリットは限りなく少ないですね。
福田
そうなんですね…
えるさん
そしてこの先、YouTubeは視聴者の年齢層も上がり、上品なユーザーが増えると考えました。
そういった人は知的好奇心も強いと読んで、まずはハウツー系でいこうと決めたんです。
ハウツー系は、再生維持率も広告単価も高く、企業案件も受けやすい。
ビジネスとしては最高のジャンルだと思いましたね。
ヒントはDaiGo。YouTubeを始めようと思ってから心理学を学んだ
福田
えるさんは現在、「好きな人の『特別な存在』になる方法」や「モテLINEテクニック」など恋愛心理学をテーマにした動画をアップされています。
これはどうしてなのでしょう?
えるさん
まず、元々その分野が得意だったんです。
大学生のころに起業してめちゃくちゃ稼いでて、時間とお金はあったんですよ。
それでもともと「モテ」に関心があったので、ひたすらデートを繰り返したり、女の子と連絡をとったりして、「どうやったらモテるのか?」というのを2年間くらい研究していました(笑)。
福田
えっ、もともと心理学を専攻されていたわけではないんですか?
えるさん
いえ。大学時代は理系でしたし、別に心理学を学んだことはありません。
そもそも、YouTubeを始めるときは、プログラミングを教えるチャンネルを作ろうと思っていたんですよ。
でも、プログラミングの動画を見る人の母数がめちゃくちゃ小さくて、正直自分自身でも「誰が見るの?」っていう疑問があったんです。
そんなとき、DaiGoさんのコンテンツに出会いました。
やはりメンタリスト・DaiGoが関係していたのか…
えるさん
DaiGoさんの本を読んで「心理学の分野って、誰にでも当てはまる話だな」って思ったんですよ。これはきっとプログラミングよりも圧倒的に需要があると確信しました。
それで試しにDaiGoさんのYouTube動画を見てみたんですよ。
DaiGoさんの動画ってかなり面白いんですけど、基本的に10分以上もあるんです。
これを見るのは明確に「勉強を目的とした人」だな、と思いました。
福田
えるさんが狙っているユーザーは違ったんですね。
えるさん
はい。YouTubeの視聴者層のほとんどは、動画を「暇つぶし」として見ています。
つまり、勉強目的のユーザーはDaiGoさんが取りきったとしても、それ以外のほとんどの視聴者層はがら空きだと思ったんです。
福田
DaiGoさんの動画が届いてない大多数を狙ったと。
えるさん
そうです。心理学の需要があることはDaiGoさんのチャンネルの伸び率が証明してくれています。
そこで、暇つぶし目的のユーザーに刺さるよう「THE YouTuberな魅せ方で、3分くらいでまとめたら絶対に需要があるじゃん」って思ったんですよね。
福田
でもそれってパクりなんじゃ…
えるさん
そうです。だから、パクリにならないように、ボクも心理学を勉強しはじめました。
DaiGoさんの書籍を全部買って読み、さらにその本の最後に書いてある参考文献も全部買ってすべて目を通したんです。
半年くらいは心理学の勉強に費やしましたね。
今ボクが発信しているのは、自分の経験と本で勉強したことを踏まえて、確実に実践できるものだけになります。
福田
でも、それだけでYouTubeで話せるようになるものなのでしょうか?
えるさん
それは、勉強期間にインプットと同時に、アウトプットもしっかりやったからですね。
DaiGoさんの本や心理学の専門書を読んだ翌日に、必ず会社の同僚に話すようにしていたんです。
それだけではなく、自分で勉強会を企画して興味のある社員を募って一緒にワークショップをやることもありました。
外部のスクールでも何度かセミナーを開いたことがあるんですけど、すべて最高満足度を叩き出しましたんですよ。
多分ニヤッとしました
えるさん
そこで心理学の内容をどう話せば相手に伝わるのか、どんなテーマなら興味を持ってもらえるのかなどテストすることができました。
福田
なるほど…「仮メンタリスト」という肩書きで活動されている理由がわかりました。
ちなみに「える」という名前は『DEATH NOTE』のLが好きだったからだそう
YouTubeハック術2「YouTube以外からファンをかき集めよう」
福田
2018年10月にチャンネルを開設して、約半年で登録者が20万人。
これだけの伸び率ってかなり驚異的ですよね。
えるさん
一般人が始めたにしては、かなり伸びたほうだと思います。
ただ、1本目の動画をアップしたときは、全然見られなかったんですよ。チャンネル登録者数が0人だったし、YouTubeのトップに表示もされませんでした。
これはYouTubeのビジネスモデルを考えると当然で、登録者0人の信頼がないチャンネルを露出させるメリットはないんです。
福田
たしかにYouTubeのトップに表示される動画は、基本的にバズっているものが多いですね。
えるさん
そうです。でも、コンテンツにはかなり自信がありました。とにかく人の目に触れる事さえすれば、確実に伸びると。
だから、まずは一定のチャンネル登録者数が必要だと考えました。
そこでボクが利用したのは、TikTokです。
えるさん
TikTokはYouTubeと真逆で、とにかく新規で投稿された動画をトップに表示してくれるんですよ。
だから、どんなコンテンツでも多くのユーザーの目に触れる機会があるんです。
そこで「キスに導くためのメンタリズム」をアップしたら、100万再生くらいいきました。
福田
おお…
えるさん
TikTokは1度でもバズるとオススメ欄に載りやすくなって、そこから出す動画はどれも100万再生以上。
2カ月でTikTokのチャンネル登録者数が10万人を突破したんです。
これがそのTikTok画面。たしかに13万人のファンがついています。今は飽きて一切投稿をしていないそうです
えるさん
TikTokでフォロワー数が増えてきたので、今度はそこから「続きを知りたい人はYouTubeへ」という誘導をかけました。
TikTokは15秒の動画なのでざっくりとしたノウハウの共有のみ、さらに詳しいシーンでの使い方や根拠などはYouTubeにアップする仕組みにしたんです。いわゆるフロント商材ですね。
そしたらYouTubeのチャンネル登録者数もあっという間に1万人を超えたんですよ。
福田
TikTokでファンをかき集めて、YouTubeへと誘導…これはひとつのビジネスモデルになりそうですね。
えるさん
そうかもしれません。
YouTubeでチャンネル登録者数が1万人を超えたら、トップのオススメ欄にも表示されるようになりました。
そこからは、動画を上げたら自然と登録者数と視聴回数が伸びていって、今にいたります。
戦略的にYouTubeを攻略していますね…
YouTubeハック術3「一目でチャンネルがわかるようなブランディングをしろ」
福田
では、実際にYouTube上でどんな工夫をしているのか、という点を伺いたいです。
えるさん
まずはブランディングですね。
ボクの名前は「仮メンタリストえる」。この名前を見たら、ユーザーは「心理学系の動画を流す人だな」と思うでしょう。
福田
もしかして、その仮面をつけているのもブランディングですか?
えるさん
はい。ボクの顔はよくもわるくも特徴がないので、YouTubeやTikTokでバズっても、覚えてもらえないんですよ。
でも、仮面をつけているだけで、覚えてもらえる可能性がぐっと上がるんです。
福田
仮面YouTuberといえば、ラファエルさんくらいしか思いつきませんもんね。
えるさん
そうです。ユーザーに覚えてもらうには、見た目にも特徴が必要です。
パーカーを被った仮面の男って、いかにもな中二病っていう感じでしょう?でもアニメに出てくる人気のキャラもそんな感じです。
つまり、みんなそういう雰囲気が好きなんですよ。
ちなみに、このモニターも実家にあったものも持ってきて、アングラ感を演出しているんだとか
YouTubeハック術4「テーマはユーザー目線で、タイトル・サムネイルで解像度を上げる」
福田
動画のテーマを選ぶときは、何を基準にしているんですか?
えるさん
基本的にユーザ―が恋愛で抱えそうな悩みを洗い出しています。
とにかくユーザーの立場になって、その人が欲しい情報を引き出すこと。
福田
それって個人の経験では限界がくると思うんですけど、どうやって探しているんですか?
えるさん
グーグルの検索機能を使ってますね。
「出会い」や「デート」と入力したあとにスペースを押すと、そこに付随するワードが出てくるじゃないですか。「告白」だったら、「告白 いつ」「告白 場所」とか。
そこで、みんながどんな悩みを抱えているのか、というのをひたすら調べて書き出しました。
福田
あの便利な検索機能を逆手に取ったんですね!
えるさん
そして、一番大事なのが、とにかくテーマを抽象化させないこと。たとえば「モテる男の特徴」とかはダメです。
「こういうときにモテる男の仕草」というように具体的にすると、動画を見られる確率がグッとあがるんですよ。
福田
タイトルやサムネイルで工夫していることはありますか?
えるさん
一番意識しているのは、行動心理学の「プロスペクト理論」です。
福田
えっ、プ、プロスペ…?
えるさん
簡単に言うと、「人は何かを得るよりも、失うことのほうが怖い」ということです。
だからタイトルだったら、「モテる男は○○をしている」「これはNG!モテない男の行動○つ」の2つだったら、後者のほうが圧倒的にクリックされる確率が高いんです。
福田
あー「大丈夫かな? もしかしてオレはこれをやっちゃってないかな?」って不安になるから見ちゃうってことですね。
たしかにこれはクリックしたくなるかも…
えるさん
そしてサムネイル。これはタイトルの内容を過不足なく伝えられるように、デカくドンと載せています。
タイトルは省略される可能性がありますが、サムネイルが消えることはないので、この部分で「この動画はどんな情報を得られるのか?」ということがわかるようにしています。
えるさん
基本的にはサムネイルが命です。
タイトルはどちらかというとSEO目的。実際にYouTubeの動画見るとき、タイトルなんて見ないものなんですよ。
YouTubeハック術5「動画の編集では、声の波長が高い部分のみを使う」
えるさん
あとボクの動画は、事前にすべて台本を作っているんですよ。
言葉遣いにすごく意識していて。
福田
どんなことを気をつけているのでしょう?
えるさん
基本的にボクは言い切らないように意識しています。
もし「これはダメだ」って言い切ってしまった場合、それに当てはまってしまった人を傷つけてしまう恐れがあります。
だから、「~~してしまう人もいると思うんだけど、でも実はよくなくて…」というようにかなり丁寧に言葉を使うことにしていますね。
福田
なるほど…
えるさんの動画を拝見していると、間がないなって思っていて。ひたすら話している印象なのですが、それもあえてなのでしょうか?
えるさん
あえてです。
ボクが動画の編集をするとき、基本的には“音声波形”だけを見ています。
話し終わったときの、抑揚が下がったところをすべてカットしているんです。
そうすると、基本的にトーンがアップテンポのところだけが残るので、ずっとユーザーの耳には勢いよく情報が流れ込みます。
福田
それって何の意味があるんですか?
えるさん
人を説得するときは、まくしたてるように、一気に話すのがいいんですよ。
早口で情報をひたすら話していると、聞いている人が自分で考える時間がなくなるんですよ。
つまり、集中して話を聞く状態にもなります。
これは誰かを説得するときにも使えると思いますね。
すっげ…メモっとこう
YouTuberとして今成功するには、ユーザーが欲しい情報を届けるのが最短距離
福田
正直、ここまでYouTubeを戦略的に攻略しているとは思いませんでした。
なんだったらYouTuberで成功するのも簡単な気もします。
えるさん
ビジネスと一緒ですよ。
市場を調べて、ユーザーの関心がありそうなものを調べて参入する。そして、ユーザーが欲しているものを適切に届けてあげる。
事業を立ち上げる上では、基本的なことだと思っています。
福田
まずYouTubeに対して、その目線がなかったです…
えるさん
逆に伸びてないYouTuberは、自分のやりたいことを優先させているんでしょうね。
今ってHIKAKINさんやはじめしゃちょーさんみたいに、タレント化しているYouTuberってめったに生まれないですよ。
なぜなら彼らは圧倒的な先行者利益があるからです。誰もやっていない時に始めてるので。
福田
そうか、今から彼らのようになるのは、時間がかかるってことですね。
えるさん
そう。だったらボクみたいに、まずはユーザー目線で「このチャンネルは見る意義がある」と思わせて、ファンを増やしていくのが手っ取り早いと思います。
まずは「与えること」ですね。好きなことをやるのは、そのあとでいいんですよ。
どの質問に対しても、「これには理由があって…」と説明してくれたえるさん。
彼がここまでYouTuberとして成果を出せたのは、徹底したブランディングとユーザー視点にありました。
でもそれって、多くのビジネスマンが仕事を通して学んでいくことであり、必ず求められるスキルでもあります。
つまり、ビジネスマンとして成長すれば、クリエーターが群雄割拠するYouTube市場でも生きていけるということ。
YouTube攻略のヒントは、思わぬところに落ちていたんですね。
〈取材・文=福田啄也(@fkd1111)/撮影=いしかわゆき(@milkprincess17)〉
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