

自慢話を聞くのは有料です!
昭和の魂は忘れずに、“やり方”をアップデートしよう。「自慢話おじさん病」への処方箋
新R25編集部
「寝てない自慢をする先輩」「飲み会で昔話をする上司」「すぐに折れてしまう新入社員」…などなど、職場にはたくさんの“はたらく問題”があふれかえっています。
そんな職場の問題や働き方改革に切り込んだ、新木曜ドラマ『ハケン占い師アタル』(テレビ朝日)が2019年1月よりスタート。
杉咲花さん演じる派遣社員の的場中(アタル)が、占いの力を使ってまわりの正社員たちが抱える悩みを解決していくお仕事コメディードラマです。
今回は新R25の期間限定連載として、同ドラマとVoicyで配信中の番組「職場の治療室」のコラボ企画が実現!
カリスマ産業医の大室正志さんと組織人事コンサルタントの麻野耕司さんが、『ハケン占い師アタル』を観ながら、ドラマに登場するビジネスパーソンの悩みに効く処方箋を見出していきます。
第4話で語っていただいたのは、「自慢話おじさん病」について。
小澤征悦さん演じる上野誠治は、イベント会社に勤めるベテラン社員。10年前に“伝説のイベント”を手がけて才能が認められ、一気に管理職に上りつめるも、パワハラやアルハラであっという間に降格。
40代なかばになった今、出世の見込みはほとんどありません。
そんなとき、上野を指名した仕事が舞い込みます。張りきるあまりにまわりが見えなくなり、チームのメンバーをこき使ったり、悪態をついたりと、傍若無人ぶりを加速させる上野。チームには、上野に対する不満が蓄積していき…。
新しい文化に馴染めないおじさんたち
小澤征悦さん演じる上野誠治

大室さん
今回の第4話にみられる職場の病、「自慢話おじさん」という病に対して処方箋を考えていきたいと思います。
麻野さん、「幸島のサル」って知ってますか? 宮崎県にある無人島・幸島に生息している野生のサルなんですけど。

麻野さん
いや、知らないですね。それが今回の病とどんな関係が?

大室さん
京都大学がこの「幸島のサル」を使ってある研究を行ったんですよ。
島にいた野生のサルにイモを餌づけしたら、1歳半のメスの子がもらったイモを海水で洗いはじめたんです。それを食べてみたら、塩味があってちょっとおいしいことに気づきました。
するとまわりのサルも、どんどんマネしてイモを洗いだした。この行為は、世代を超えて広がっていき、しまいには子孫まで受けつがれたそうです。

麻野さん
サルの社会でもスキルシェアがあるんですね(笑)。

大室さん
そう。これは「人間以外も文化がある」ということを証明した有名な実験なんですが、この実験の面白いところは、「ヒエラルキーのトップにいたおじさんサル」は最後までマネしなかったということです。

麻野さん
へえ〜。

大室さん
集団のボスであるおじさんサルは、新しい文化を受け入れられなかったんですよ。
第4話でフィーチャーされる上野さんって、そのおじさんサルに近い状況かなと。
なぜおじさんは変われないのか?

麻野さん
上野さんのような人って古い考え方で成功してきたから、その成功体験が邪魔してなかなか新しい考え方に切りかえられないんですよね。

大室さん
そうですね。
おじさんサルと同じで、長年の経験とその成功体験があると、価値観が固まってしまうんですよ。なかなか自分を変えるのが難しい。
上野さんも、「ダメだ」って言われてるのに会社のソファで寝泊まりしちゃっているじゃないですか。

麻野さん
上野さんは、最近の働き方改革で掲げられているNG項目をすべて無視していますもんね(笑)。

大室さん
気持ちいいくらい全部破ってる(笑)。
残業、パワハラ、アルハラ、あとは悪気ないセクハラ。「妊娠なんかしてんじゃねーよ」とか、絶対言っちゃダメですよね。
ただ、こういうおじさんたちもバカじゃないから、気づいてはいるんですよ。昔だったらスイスイ決まっていたことが、全部ちょっとずつ上手くいかなくなってきていることに。

麻野さん
気づいているのに変わるのは難しいんですよね。

大室さん
そうですね。
とんねるずの石橋貴明さんも、昔はすごく頼りがいのある兄貴分として見られたでしょう? ただ、今はその振る舞いがなんとなくパワハラに見えてしまうケースもあるんだよね。
でも、「そういう芸風で成功してきた」というだけで、石橋さん自身はきっと悪い人じゃないはず。
ただ、石橋さんが急にウッチャン(内村光良さん)みたいなキャラクターにはなれないでしょう。

麻野さん
そこまでの大きな変化はなかなかできないと思います。

大室さん
若い人と違って、長年積み上げてきたものがあるから、おじさんのほうが変化するのが難しいですよねえ。
あれ?ボクはどっちの味方なんだろう(笑)。
おじさんにとって、働き方改革は“黒船”。「和魂洋才」のバランス感を大切に

麻野さん
でも、この上野さんのキャラが深いのは、言ってることはたしかにウザいんだけど、悪役ではないってところですよね。
仕事も一生懸命やってるし、言ってることもあながち間違ってない。「たしかに仕事って、そうやって本気でやることって大事だよな」って思うし。
だから、今回は難しいですね…

大室さん
変化を受け入れるといえば、日本に西洋の黒船がきたとき、ルールがガンガン変わったじゃない? ちょんまげだったのが急に散切り頭になったり。
そのとき、岡倉天心が「和魂洋才」という言葉を使いましたよね。

麻野さん
「日本古来の精神を大切にしつつ、西洋からの優れた知識や技術を活用し、両者を調和・発展させていく」という意味の言葉ですよね。

大室さん
「働き方改革」も西洋の黒船みたいなものだと思うんですよ。
だから、「和魂洋才」でいうと、上野さんが持っているスピリッツは素晴らしいんだけど、才の部分がハマってないんだよ。

麻野さん
つまり、アウトプットが適応できてないと。

大室さん
そう。だから、和魂洋才じゃないけども、上野さんのようなおじさんは、仕事に対する素晴らしい姿勢や情熱はそのまま大切にしつつ、アウトプットの部分だけ今に合わせて変えていけるといいのかなと。
上野さん、たぶん、ラストサムライですよ(笑)。

麻野さん
いろんな職場にいるんでしょうね〜、ラストサムライ!(笑)
自慢話を聞いてもらうのは有料だという意識を持とう

麻野さん
上野さんって、いっつも仕事終わりに部下を連れて飲みに行くじゃないですか。
そこで、めっちゃ自慢話をする。これも今の時代ではあまり受け入れられないでしょうね。 結構ウザいじゃないですか。

大室さん
自慢話を聞かされるのはウザいよね。
ボクも仕事では9割が聞き役なんですけど、本来は自分の話聞いてもらうのって有料なんですよね。
カウンセラーもそうだし、ホステスさんとかもそうじゃない?

麻野さん
たしかに!(笑)

大室さん
この感覚を理解していない人が多いよね。「自慢話聞いてもらうんだったら金払え」っていう。
昭和のおじさんは若い人に自慢話をするけど、飯代くらいはおごってたでしょ。
でも最近のおじさんは、「はい、ひとり4,000円でいいよ〜」とか言いだすじゃないですか。

麻野さん
(笑)
なるほど。「自慢話を聞いてもらうのは有料だぞ」という感覚は持ち合わせていないでしょうねえ。

大室さん
麻野さんは…大丈夫ですよね?(笑)

麻野さん
うーん、思い当たるところはあります。
「オレの3年目のときはさあ」とか言っちゃってますもん。みんな言えないけど、めっちゃウザがってるんだろうなあ…(遠い目)。
上野さんの立ち位置も自分と重なるところがあるんですよね。だからこのドラマ見ながら、改めようと思いました。
「自慢話おじさん病」に対する処方箋

麻野さん
それでは、「自慢話おじさん」という病に処方箋を出していきたいと思います。大室さん、お願いします!

大室さん
ボクからの処方箋は、かの岡倉天心さんの「和魂洋才」にならって「昭魂平才」です。
「昭和の魂は忘れずに、平成の才を使っていきましょう」ということですね。
たぶん、過去のスピリッツまで否定されてしまうのは辛いんですよ。やり方を否定されたときに、思いを否定された気分になると人間は意固地にもなるので。
「思いはわかる!ただ、やり方は今のものに変えていこう!」とお伝えしたいです。

麻野さん
すばらしい。今回の処方箋はこちらで決まりですね!
〈構成・文=小野瀬わかな(@wakana522)/編集=福田啄也(@fkd1111)〉
次回の放送は2019年2月14日(木)よる9時から!
「職場の治療室 大室正志×麻野耕司」はVoicyでも配信中!

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