ビジネスパーソンインタビュー
アイデンティティを分散投資しよう
出世を目的に頑張るのはなぜ危険⁉「上司の顔色ばかり伺ってしまう病」への処方箋
新R25編集部
「寝てない自慢をする先輩」「飲み会で昔話をする上司」「すぐに折れてしまう新入社員」…などなど、職場にはたくさんの“はたらく問題”があふれかえっています。
そんな職場の問題や働き方改革に切り込んだ、新木曜ドラマ『ハケン占い師アタル』(テレビ朝日)が2019年1月よりスタート。
杉咲花さん演じる派遣社員の的場中(アタル)が、占いの力を使ってまわりの正社員たちが抱える悩みを解決していくお仕事コメディードラマです。
今回は新R25の期間限定連載として、同ドラマとVoicyで配信中の番組「職場の治療室」のコラボ企画が実現!
カリスマ産業医の大室正志さんと組織人事コンサルタントの麻野耕司さんが、『ハケン占い師アタル』を観ながら、ドラマに登場するビジネスパーソンの悩みに効く処方箋を見出していきます。
第7話で語っていただいたのは、「上司の顔色ばかり伺ってしまう病」について。
今回フィーチャーされるのは、及川光博演じる代々木匠。出向先のイベント会社で部長を務める代々木は、親会社へ戻る華々しい出世を夢見て、日々上司をアテンドしまくっています。
ところが、自分の手柄となるはずだったリストラ計画を課長・大崎に潰されて逆恨み。大崎率いるDチームに、過去最大の難題を押し付けます。お手上げと言わざるを得ない案件を、何とかしようと奮起するDチーム。
そんな矢先、代々木が親会社へ戻る出世コースを突如絶たれ、Dチームの専任部長に任命されてしまい…!?
出世はあくまで「手段」であるべき
及川光博演じる代々木匠
麻野さん
今回の第7話から取り上げる病は、「上司の顔色ばかり伺ってしまう病」でございます。
大室さん
麻野さんの会社には、そういう人いますか?
麻野さん
どうかな〜。うち(リンクアンドモチベーション)はほとんどいないかもしれないですね。
リンクアンドモチベーションでは「モチベーションクラウド」という組織診断ツールを開発しているんですけど、自分たちもそれを使っていて。
上司が部下の評価をつけて、部下も上司の評価をつける。それをさらに経営側が評価するっていうシステムになっているんです。
大室さん
評価制度が上司から部下、というだけでなく、いろんな角度から評価されているんだ。すごいミルフィーユシステムになっているんですね(笑)。
麻野さん
そう(笑)。だから、上司の顔色だけを伺う人はあんまりいないかなと。
大室さん
出世するとできることが増えるし、見える景色も変わるので、いいことはたくさんあると思います。
ただ一方で、出世って自分のやりたいことに対する「手段」じゃないですか。
だから、手段である出世が「目的」になってしまうと、ダークサイドに落ちてしまう気がします。
麻野さん
目的と手段の逆転ですよね。
まあ、昔は「出世すること」が目的になる時代もありましたよ。出世すれば給料が増えて、生活が豊かになる…みたいな。
でもそれは社会が貧しかったからで、今はそうじゃない人も増えています。
大室さん
人によっては、「自分がやりたいのは現場だから、はじめから出世コースには興味がない」という人もいますよね。
麻野さん
それって今の若い人に多い気がする。
ただ、みんなが出世以外の仕事の目的を考えだしたのって最近ですよね。
大室さん
うん。昔は「なんで出世しないといけないの?」なんてことを聞く人はあまりいなかった。
出世欲がないメンバーを束ねることは難しい⁉
麻野さん
でも、「出世したい欲」を一切持っていない人たちを束ねるのって、結構難しいと思います。
最近は「出世したくない」っていう社員がめちゃくちゃ多くて、何を目的にして組織を束ねればいいのかを考えるのが難しいんですよ。
大室さん
昔は「人参ぶら下げて走ってもらう」じゃないけど、部下のモチベーションの攻略方法が単純だったということだよね。
麻野さん
そうそう。一人ひとり個別に対応しなくても、「頑張ったらエラくしてやる。だからオレについてこい!」のひと言で組織を束ねられていましたから。
今は一人ひとり違う願望があって、それぞれに向き合わないといけません。
大室さん
なるほど。そういう組織に今回の代々木部長みたいな「出世がすべて」というタイプの管理職がいたら、部下は引くよね。
麻野さん
そうですね。出世に対する価値観は世代によって変化しているんですよ。
昔だったら、上司が出世すると部下も出世する、みたいなのあったじゃないですか。
大室さん
お祭りの連鎖みたいにね(笑)。
麻野さん
そうそう(笑)。だからこんな上司がいても気にならなかったんだけど、この代々木部長の部下は今、誰もそこまで出世したいと思っていない。
だから余計に鼻についちゃうっていうのはあるかもしれないですね。
大室さん
世代間の断絶でいうと、昔はゴマすりもお作法のひとつとして学んでいたよね。
麻野さん
そうそう。うちの会社でも、10年ぐらい前は社内でクラスアップするのがモチベーションのメンバーがいましたけど、ずいぶん減った気がします。
今の若手社員にゴマすりの作法なんて教えたらめっちゃ引きますよ、多分。
大室さん
全員が「出世したいと思っている」という前提で話されても困るんですよね。今はそこから確認しなきゃいけない時代。
麻野さん
ボク、漫画の『課長 島耕作』(講談社)がめっちゃ好きなんですよ。
この作品では、主人公の島耕作以外の全員が社内での出世を目的にしていて、島耕作だけがちょっと違う、インディペンデントな存在として描かれてるんです。
大室さん
島耕作は「出世のため」とかではなく、その場のコトに向き合っている人だからね。
麻野さん
このドラマでは逆で、出世したい人が代々木部長しかいないっていう。このチームをマネジメントするの、絶対大変ですよ。
でも、一人ひとりの違ったニーズに対応していかないといけないケースって、今いろんな職場で起きてるんじゃないですかね。
大室さん
難しいですね。今どきのチームは。
出世だけを目的に頑張ることのリスク
大室さん
今の人たちにとって、「出世」って数ある選択肢の中のひとつじゃないですか。「何を持って勝ち負けとするか」というゲームに参加していない印象。
たとえばサラリーマンを辞めてブロガーとして成功したりとか、南の島に行ってのんびりペンションを営んだりとか、いろんなキャリアがある。
要するに、キャリアの描き方が「一生同じ会社で働いて、社内での出世を目指す」みたいな直線じゃないんだよね。
麻野さん
そうですね。今って、会社がずっと安定しているかどうかわからない時代じゃないですか。
だから、「出世」だけを目的にしていると悲惨なキャリアが待っている可能性もありますから。
大室さん
人生のプランBがないからね。一生懸命やるのは大事なんだけど、出世だけを目的にするより、もう少し分散投資したほうがいいよ。
「社内出世」だけに自分のアイデンティティを全額投資するのはよくないと思います。
「上司の顔色ばかり伺ってしまう病」への処方箋
麻野さん
それでは、今回の「上司の顔色ばかり伺ってしまう病」に対して、大室さんから処方箋をお願いします。
大室さん
はい。「自分のアイデンティティを、出世に全額投資するのはやめましょう」と言いたいですね。
今は大企業もどうなるかわからない時代ですし、取引先から誘われるかもしれないし、自分で何か新しいことに挑戦したくなるかもしれない。社内で上に出世していくことだけがキャリアのすべてではないんです。
なので、出世だけにアイデンティティのすべてを投資すると、変化に適応できない人間になってしまい、それがかえってリスクになります。分散投資をしていきましょう。
麻野さん
ありがとうございます。「分散投資」と聞いて、ボク自身は真逆だなと思いました(笑)。
ボクほど一点投資してるヤツいないなって(笑)。だって、ボクの資産は全部自社株ですもん。
大室さん
確かに! ハイリスク人材だ(笑)。ラスト昭和世代。
麻野さん
今は転職してキャリアを伸ばしていく思考のほうがよく聞きますよね。
ワンキャリアという会社の執行役員をしている北野唯我さんが『転職の思考法』(ダイヤモンド社)という本を書いたのですが、これはオススメです。
会社に依存して生きたらダメな理由をわかりやすく説いています。
大室さん
今どきのキャリアに臨むための構えとしての「転職道」が学べる本ですよね。この本も処方箋としてオススメします!
〈構成・文=小野瀬わかな(@wakana522)/編集=福田啄也(@fkd1111)〉
次回の放送は2019年3月7日(木)よる9時から!
「職場の治療室 大室正志×麻野耕司」はVoicyでも配信中!
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