ビジネスパーソンインタビュー
「メルカリのユーザー増」どう実現する?
「インプットのために本を読むのはダサい」GO三浦崇宏が語るアイデアを生む“3つの方法”
新R25編集部
商品開発や新しいプロモーション施策…あらゆるビジネスマンが新しいアイデアを求めています。
でも、アイデアを出すって簡単じゃないし、ひねり出したアイデアがイケてないこともしょっちゅうですよね。
優秀なアイデアマンはどうやって“アイデア”を生み出しているんだろう…
そんな疑問を解決してもらうため、CAMPFIREの「#夢を諦めてはいけない」広告など話題のプロジェクトを数多く手がける The Breakthrough Company GOのPR/CreativeDirectorである三浦崇宏さんのもとを訪れました。
新R25がお届けする「GO三浦ゼミ」(仮称)、ここに開講です。
〈聞き手=福田啄也(新R25編集部)〉
【三浦崇宏(みうら・たかひろ)】TheBreakthrough Company GO代表取締役兼PR/CreativeDirector。早稲田大学第一文学部を卒業後、博報堂入社。マーケティング、PR、クリエイティブ部門を経て独立、2017年にThe Breakthrough Company GOを設立
福田
日々あらゆる広告やプロモーションを考える三浦さんに、アイデアを生むためのノウハウを教えてもらいにきました。
やっぱりインプットしている量が違うんですかね?
三浦さん
インプット…
福田君は具体的に何をしているの?
福田
なるべくたくさんの情報を得ようと、毎日いろんなニュースには目を通していますね。
あとは、ベストセラー書籍とかバズっている記事とか、結構アンテナ張ってチェックしてますよ。
三浦さん
うん、ダサい。
のっけから否定されるのは、もう慣れっこです
インプット意識をつくる「カラーバス」思考
福田
ダサいって…何が問題なんですか?
三浦さん
「インプットしよう」と思って、漠然と本を読んでいるのがダサいんだよ。
インプットって、視点のセットから始まるの。「カラーバス」って知ってる?
福田
いえ、初めて聞きました。
三浦さん
これはあるひとつの色に着目する思考法なんだけど、たとえば「今日は“黄色いもの”を見かけたら全部メモしよう」と決めるとする。
福田
黄色のもの…「看板」とか「駅のホームの点字ブロック」とかですかね。
三浦さん
そう。それを1日やってみると、3つのことに気づくんだよ。
ひとつ目は「世の中には意外と黄色のものが多いな」ってこと。
「信号」とか「駅前にある広告」とかたくさんの黄色が目につく。
三浦さんの腕時計も黄色
三浦さん
そしてふたつ目が「黄色の法則性」。
黄色って「注意してほしいもの」「明るいもの」のほかに、「お金系のサービス」が多くない? そういう普段気づかないようなルールが見えるようになる。
福田
言われてみれば…たしかに!
三浦さん
そして最後には「なんでこれは黄色じゃないんだろう?」ってものに視点が移る。
なんで「メガバンクはお金系サービスなのに黄色がないんだろう」とか。
福田
おお…黄色に着目しただけで、思考が何層も深くなりましたね。
三浦さん
そう。これは博報堂の先輩である加藤昌治さんが『考具』っていう本で紹介しているから、興味があったら読んでみなよ。
【三浦流・アイデアを生む方法①】課題意識を持って世の中を見よ
福田
なるほど…でも、この「カラーバス」って具体的にビジネスでどう生きるんですか?
さては「こいつわかってねえ~」って思ってるな…
三浦さん
「カラーバス」をビジネスに応用するなら、色に注目するように、自分が向き合っている課題に対して意識を集中させるんだよ。
たとえば「女性がもっと活躍する社会を作りたい」っていう課題に向き合うとする。
そういう意識を持つと、電車に乗っていると「女性専用車両に乗り切れてない女性もいるな」とか、選挙のポスターを見ていると「なんで女性が少ないんだろう」とか気がつく。
そもそも「女性の社会進出」っていう言葉が微妙だよな、とかね。
これって「女性がもっと活躍する社会を作りたい」という課題意識を持っていないと見逃しちゃうでしょ?
福田
本当だ…! 自分の視点を定めるだけで、すべてのことにヒントがあるように感じますね!!
三浦さん
俺の話をすると、三井不動産の「WORKSTYLING」っていうシェアオフィスの新規事業をプロデュースするとき、「働き方改革」のムーブメントそのものに課題意識を持ったんだよ。
福田
「働き方改革」…いろんなところにヒントがありそうですね。
三浦さん
そうでしょ? それで、たまたま商社で働いている友人とお茶する機会があったの。
彼と深夜のスタバで合流したとき、俺がPC開いて仕事してたら「ええ! 社外で仕事して大丈夫なの!?」って驚かれたんだよ。
福田
その人の会社では、社外での作業はしちゃダメだったんですね。
三浦さん
そう。彼は「スタバで仕事するって危なくない?俺の会社だったら絶対許してくれないよ」って言ってた。
俺の仕事では普通なことだったんだけど、彼の会社では社外でパソコンを開くなんてありえないわけよ。
でも、その瞬間に「働き方改革」として頭ごなしに「リモートワーク」っていうのが間違っているなって思ったんだ。
三浦さん
「働き方改革」の本質的な課題は、シェアオフィスの数でも、労働時間の短縮でもなく、「上司が認めてくれるかどうか」という、ひとつひとつの会社の制度の問題だって気づいたんだよ。
つまり、「社外でも安心して作業できるスペース」だったら、きっとかたい会社の上司も許してくれて、「シェアオフィス」を使う人口が増えるはずだって考えた。
普通の会社の、普通の人が使えるシェアオフィスがあって、はじめて日本社会にほんとうの「働き方改革」ができるじゃん。
だから三井不動産の「WORKSTYLING」はBtoB向けつまり法人契約で、しかも多拠点型のシェアオフィスにしようってビジネスモデルになったんだよね。
福田
商社マンとの何気ない会話が、そんなヒントになっていたとは…
三浦さん
「働き方改革」に課題意識がなかったら、「商社って大変だね」って話で終わってたと思うね。
【三浦流・アイデアを生む方法②】詰まったら課題を再定義しろ
福田
アイデアを出すとき、もうたくさんのアイデアが出尽くしちゃって、これ以上浮かばないってことがあると思います。
そういうときはどうしたらいいですか?
三浦さん
そういうときは、課題を再定義する。
たとえばメルカリの話なんだけど、メルカリって俺らの世代ではたくさんの人が使っているじゃん。
福田
そうですね。メルカリで買い物をすることに抵抗もないし、当たり前になっています。
三浦さん
そう。スマホを活用している若いユーザーに絞った戦略はこれまでにたくさんやってきている。
じゃあ、もっとたくさんのユーザーを獲得するのはどうしたらいいのか?
三浦さん
そこで、「日本で最大のお買い物のプラットフォームを目指しましょう」っていう新しい課題を再定義したんだ。
そしたら、大手のショッピングモールやコンビニチェーンとかと市場規模が同じになる。
休日に家族でお買い物に行くのがレジャーになっている家族や、ひとりで暮らしている地方のお年寄りみたいなユーザーを獲得するにはどうしたらいいんだろうって、新しい角度からアイデアを考えるようになったのよ。
それでチラシを打とうっていう企画が生まれる。
これがその広告。なるほど…そんな背景があったのか
三浦さん
あとはケンドリック・ラマーの広告を作るとき、「彼を人気のラッパー」って定義しているうちは、音楽関係のプロモーション案しか浮かばないよね。
でも、彼をキング牧師やオバマ元大統領みたいな“世界の歴史を変えた黒人”というレベルで再定義する。
そしたら、社会に対してメッセージを提案するような新しい文脈のプロモーションを生み出すことができるでしょ。
2018年夏に霞ケ関駅に掲載された広告。賛否両論を呼び、大きな話題となりました
【三浦流・アイデアを生む方法③】別の仕事のアイデアを横展開しろ
三浦さん
あとは広告代理店時代の経験なんだけど、まったく違う仕事にヒントがあることもある。
福田
どういうことですか?
三浦さん
当時クルマの仕事をしていて、「若い人にクルマを買わせたい」って課題があったんだよ。
「若者のクルマ離れ」に対してどうやって打ち手を出すか…ってみんな悩んでいた。でも、それってずーっと考えていても浮かばないよね。
福田
今でも効果的な話を聞いたことはないですね…
三浦さん
そう。そしたら、同時に進行していた携帯キャリア会社の打ち合わせで、「親子割」のプロモーションの話が出てきたんだ。
そのとき「あれ?これは若者のクルマ離れに有効なアイディアなんじゃないか…?」って気づいたんだよ。
それで、携帯会社では当たり前だった「親子割」を、そのまま若者にクルマに乗ってもらうための施策としてクルマ会社に提案したら、めちゃくちゃ喜んでもらえたんだよね。
福田
携帯会社で出た話が、クルマのプロモーションの答えになってたんですね!
三浦さん
そう。全然関係がないような仕事でも、どこかでつながっている可能性がある。
違う仕事をしているときこそ、アイデアを拾うチャンスなんだよ。ある意味で、仕事をたくさんすることそのまま最高のインプットになるってこと。
三浦さん
結局、アイデアが思いつくときってほとんど人と話しているときなんだ。
だから、一番効率がいいインプットは人との出会いだって思うんだよね。
たとえば今、ある街の2025年の新しいあり方を考える仕事をしているんだけど…
この後も、三浦さんのためになるお話は夜まで続きました。話が尽きないなあ
アイデアを生み出すために必要なのは、課題意識。
それを意識して生きるだけで、世の中にあるヒントに気づくことができると言います。
ただのロジックの話だけではなく、実体験をもとに具体例を話してくれるから、三浦さんの話は学びにあふれているのだと思いました。
次回の三浦ゼミ(仮)もお楽しみに!
〈取材・文=福田啄也(@fkd1111)/撮影=平山尚人〉
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