ビジネスパーソンインタビュー
“本能”って会社員にはピンと来ないけど…
世の中の不条理に抗ってもしょうがない。格闘家・青木真也が提唱する「本能に従う生き方」
新R25編集部
「この世はもともとジャングルだ。弱肉強食の荒野なのだ」
総合格闘家の青木真也さんが2月20日に上梓した『ストロング本能』の冒頭部の一文です。
同書のなかで青木さんは、弱肉強食の社会を生き抜くためには「本能で生きることが大事」と語っています。
…でもみなさん、自分の「本能」って意識したことありますか?
青木さんは格闘技の世界で戦うファイターだから、動物的な本能を意識して生きているのかもしれませんが、普通の会社員からすると、ちょっとピンと来ないのが正直なところなんですよね…(おそらく多くの方も同じはず)。
だとしたら、ボクらはこの弱肉強食の世界では生きていけないのでしょうか? 著者である青木さんに、直接聞いてみました。
〈聞き手=福田啄也(新R25編集部)〉
【青木真也(あおき・しんや)】1983年、静岡県生まれ。パラエストラ東京/Evolve MMA所属の総合格闘家。第8代修斗世界ウェルター級王者。第2代ONE世界ライト級王者。第2代DREAMライト級王者。著書に『空気を読んではいけない』(幻冬舎)、新著『ストロング本能』(KADOKAWA)が2月20日に発売した
「本能で生きる」とは、自分のなかにある快楽欲求に従うこと
福田
青木さんは著書のなかで「本能で生きろ」と主張していますが、もう少しわかりやすく言うと、これはどういうことなんでしょうか?
青木さん
自分の根底にある「快楽欲求」に従えということです。
今の社会に抑圧されている「快楽」を求めて生きるべきことだと思っています。
福田
快楽…それは具体的に言うと?
青木さん
食欲、性欲、睡眠欲といった3大欲求のような、「自分が本当に気持ちいい」と思えることです。
オレの場合は、「誰かをぶっ飛ばしたい」みたいな快楽が強いので格闘技に向き合っています。
めちゃくちゃ爽やかに「ぶっ飛ばしたい」と言われましても…
青木さん
もちろん法律を無視したりするのはダメですけど、今の社会っていろんな欲求が抑圧されていると思うんですよ。
たとえば、「食べる」という快楽を我慢するのって「太りたくない」っていう気持ちがあるからじゃないですか。
でもそれって、「太っている自分」を貶める人たちがいるからなんですよ。
周囲の目を気にしなければ、好きに飯を食って快楽を得られますよね。
福田
なるほど、世間体とか常識にとらわれずに快楽を追い求めろ、ということですね。
青木さん
そうです。
今って暗黙のルールとか人が勝手に作ったマナーとか、法律以外のコンプライアンスがめちゃくちゃ厳しすぎると思うんです。
仕事にしても、朝早くからわざわざツラい満員電車に乗って出社しなくてもいいわけですよ。ちゃんと仕事さえしていれば。
福田
でも、会社にも「就業規則」というルールがあって、それを破るのはちょっと…
青木さん
それはつまり、福田さんはルールを守れる人なんですよ。そういう人はそのままルールに則って生きていけばいいと思います。
いきなり今回のテーマから仲間はずれにされました
青木さん
でも、世の中にはそういうルールを窮屈に感じるヤツがいるんです。
毎朝同じ時間に同じ場所に行くとか、そういう当たり前ができない。それだと白い目で見られるでしょう。
そういう人たちにとって、この社会はすごく生きづらいんです。
「みんな水風呂に入らず、ずっとサウナに入っている」
福田
本能で生きる=自分の快楽を優先して生きる、ということはわかりました。
それができれば社会で生きづらさを感じることがなくなると。
青木さん
はい。
ただ、ストレスを一切なくすのも違うと思うんです。ストレスは「快楽」を引き立たせる“スパイス”なので。
オレ、人生はサウナみたいなものだと思っていて。
みんなサウナ好きだな…
青木さん
生きているときって、基本的にサウナに入っている状態なんです。
ずーっと身体にストレスがかかっている。それってキツいでしょう?
福田
そうですね。ボクはサウナが苦手なので、めちゃくちゃしんどいなって思います。
青木さん
でも、そこで水風呂に入ると最高に気持ちがいい。 「快楽」ってここでいう水風呂のことだと思うんです。
今の社会はみんな水風呂に入らず、ずーっとサウナに入っている状態ですね。
「人生はサウナ」覚えておきます
世の中の不条理はすべて「仕方ない」と捉えるべき
福田
つまり、本能に従って生きるためには、もっとストレスを減らさないといけないんですね。
青木さん
そう。だから、世の中では何事も「仕方がない」って思ったほうがラクに生きられると思うんです。
福田
それは不条理なことがあっても諦めろってことですか?
青木さん
そう。人や社会はコントロールできないじゃないですか。誰かに対して怒ったとしても、結局解決しないんですよ。もしくはすごく面倒で時間がかかる。
今、大麻所持の事件とかで「海外では合法だ!」みたいに騒いでいるヤツって、ボクからしたら意味がわかんないんですよね。
だって、日本の法・ルールが大麻をダメだって決めているわけじゃないですか。それに抗っても仕方ないでしょう?
福田
意外ですね。青木さんはどちらかというと「不条理はぶっ飛ばす」というスタンスだと思ってました。
青木さん
格闘技をやっていると、レフェリーの判定が絶対なんですよ。
明らかに間違っていても、覆らない。小学生のときは「なんでだよ! おかしいだろ!!」って怒ってましたが、この世界で生きていると、ダメな結果も「仕方ない」って諦めることが必要なんだと学びました。
それはオレの根底にある、人生の経験から得た価値観なんですよね。
人には期待しない。人間関係のストレスをなくす距離感
福田
ストレスの代表格といえば、人間関係があげられますよね。
青木さんはどういうスタンスで人と向き合っているんですか?
青木さん
オレは誰に対しても、ある程度距離感を持っています。そして相手に期待しない。
たとえば、付き合っているときには気にならなかったことが結婚したら許せなくなる、みたいなことって多いじゃないですか。
それは距離が縮まると、勝手に期待してしまうからなんですよ。それで相手が思い通りにならなかったら、裏切られた気持ちになりますよね。
福田
ああー…それはわかりやすいですね。
青木さん
結局、人に期待しても何もいいことがないんです。
人に期待しない、というのは人間関係で最大の自己防衛手段になると思います。
福田
ただ、苦手な人とコミュニケーションをとらないといけない場面もありますよね。そういうときはどうしているんですか?
青木さん
ちゃんと挨拶はします。ただ、それ以上の会話はしませんね。
福田
それだけでいいんですか!?
青木さん
要は、敵意を向けられなければいいんです。
挨拶は「お前に対して敵意はないよ」という意思を相手に表明することになるので、それだけやって逃げておけば大丈夫だと思いますね。
「押忍!」って言っておけばOKだそうです
青木さん
結論、性格や考え方が合わない人には「こんな考えもあるんだな」と思って接しておけばいいんですよ。
福田
うまく着地点を見つけるわけじゃないんですね。
青木さん
それは本当に不毛でしょう。
意見の食い違いは宗教の違いみたいなもので、受け入れる必要もないと思いますね。
日本人はみんないいところに着地させようとしますけど、両者リングアウトでいいじゃんって。
「お金のためにしんどい思いをするのは、資本主義の奴隷でしかない」
福田
だんだん青木さんが著書で言いたいことがわかってきました。
社会やまわりは変わらない。だから、それをうまくやり過ごして自分の生きたいように生きろ!ってことですよね。
青木さん
そうですね。
福田
でも、それって普通のサラリーマンが実際に行動に移すのって難しくないですか?
たとえば、今我慢して働いている人がそこから抜け出すために仕事をやめるとしても、金銭的な不安がついてくると思います。
青木さん
自分が快楽を感じられるものを見つけて熱中できれば、お金はあとからついてくると思います。
オレは小学校3年生のころから技術的な研究をして、自分の理想とする格闘技を練り上げてきました。
青木流格闘術を追求していくと、今度はそれを教えてくれという人が現れたんです。それがお金になった。
福田
なるほど。実体験があるんですね。
青木さん
でも、そもそもお金って本当にそんなにたくさん必要ですか?
福田
えっ、そうですね。お金はたくさんあればあるほどいいと思いますが…
青木さん
オレも昔は同世代がどんどん稼いでて、うらやましく思ってました。
でも、実際に追求してみてわかったのは、金持ち=幸せではないということです。
青木さん
初めてファイトマネーとして100万円が入ったとき、「すげえ、100万円だ!」ってワクワクしたんです。
でも、自分は今の生活にも満足していたし、それ以上に使いたいこともなかったんです。
結局は、ただ稼ぎたかっただけで。
福田
大金を持っていても、意味がなかったと。
青木さん
そう。「こんなにハードな思いをして稼いだのに、何の意味があったんだろう」って虚しくなりましたね。
つまり、「金の使い方」がわかってないと、ただお金持ちになっても幸福度は変わらないなって気づいたんです。
青木さん
それからは、必要な額以上に頑張る意味はないって思っています。
たくさんお金を稼ぐためにしんどい思いをしているのって、資本主義の奴隷でしかない。
だからまず、自分はどのくらいお金を持っていたら満足かってことを考えたほうがいいですね。
福田
「お金はたくさんほしい」っていう考えに縛られている時点で、本能からは遠ざかっていたんですね…
本能に従って生きると、自分だけの幸せのものさしが手に入る
福田
最後に、青木さんが考える本能に従って生きることの最大のメリットはなんでしょうか?
青木さん
自分だけのものさしが手に入ることでしょうね。
福田
自分だけのものさしというのは…?
青木さん
オレだったら、「毎月食っていくぶんのお金があって、格闘技ができれば幸せだ」というものです。
このものさしは、本能を解放しないと見えてこないんですよ。
福田
たしかに、抑圧されているとまわりに嫉妬したりして、なかなか純粋に自分の気持ちに向き合えないですよね…
青木さん
そう。だからオレは本能で生きてこそ、後悔せずに人生を謳歌できると思ってます。
オレより金や社会的影響力を持っているヤツはいっぱいいるけど、オレほど自分がやりたいことを楽しんでいるヤツはいないと思いますよ。
福田
そこまで清々しく言い切れるのはうらやましいです。
青木さん
人間の最後は死ぬときです。そのときに「よかったな」と思えたら勝ちなんですよ。
社会を変えようとする強者の理論かと思いきや、むしろ変わらない社会とうまく向き合って生きるべきだという青木さんの思想。
✓世の中の不条理は「
仕方がない
」と諦めろ
✓
他人に期待するな
。
人とは適度な距離を保て
✓
お金の奴隷になるな
。
自分のものさしを手に入れろ
これが弱肉強食の社会を生き抜く“青木流”マインドです!
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そんな青木さんが、3月31日に「A NEW ERA 新時代」でONEライト級世界タイトルマッチのエドゥアルド・フォラヤンと対戦します。
「生き方に引退も引き際もないわけで、僕にとっての格闘技はそういうものです」
青木さんにとって格闘技は「生きる」ということ。ぜひ「本能で生きる」青木さんの戦いを生で体感しましょう!
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〈取材・文=福田啄也(@fkd1111)/撮影=長谷英史〉
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