ビジネスパーソンインタビュー
「思いつき」って批判されちゃいそうだけど…
「すぐ動くから、答えにたどり着けるんです」ロンブー淳が“即動力”を重視する理由
新R25編集部
堀江貴文さんの著書『多動力』(幻冬舎)が話題になったのは昨年のこと。
今年11月には、ロンブー・田村淳さんが『即動力』(SBクリエイティブ)という著書を上梓されたようです。
「思いついたらすぐ行動しろ」という本らしいのですが、我々ビジネスマンにとっては、思いつきで動いてたら失敗が多そうじゃない? まわりがついてこなそうじゃない?など疑問が…。
そこで、淳さんを直撃し、執筆した意図をきいてみることにしました!
〈聞き手:天野俊吉(新R25編集部)〉
【田村淳(たむら・あつし)】1973年生まれ。山口県下関市出身。高校卒業後に上京し、お笑いコンビ・ロンドンブーツ1号2号を結成。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。11月6日に『即動力』(SBクリエイティブ)を上梓
「即動力」ってなに?
天野
「即動力」というタイトルの本を出されたということで…そもそも、「即動力」ってどういう考えなんですか?
淳さん
僕の人生の指針になってる「思いついたら、すぐ動く」ということを広めたくて。
ただの行動力じゃなく「今すぐ動く」。思いついたら1秒で動く。圧倒的なスピードが重要なんですよ。
天野
1秒…。すぐに動くと、どんないいことがあるんでしょうか?
淳さん
答えにたどり着けることですよね。
たとえば「人生にめっちゃ悩んでる」とか言ってる人がいたら、僕は「動いてないんじゃないか?」って思っちゃう。
動かないと、悩みってずっとそのままになっちゃうんですよ。そこで今すぐ行動して、見てる世界を変える力っていうのが大事なんです。
天野
ただの行動力じゃダメなんでしょうか?
淳さん
それだけだとまわりに勝てないんですよ。いま、情報はどこにでもあるし、知識量がハンパない人っていくらでもいるから。
でも「今すぐ動く」ことってできない人がとっても多い。誰だって心がけひとつでできるけど、できない人にはずっとできないんですね。
正直、僕みたいな人間が勝つにはこれしかないんじゃないかって、上京したころからずっと思ってました。
起業したり大学受験したりしたことを、「思いつき」って批判されることは多いんですけど、僕は「そのほうが勝てるし成長できるし面白くなる」ってわかってるから、1秒しか考えないですぐ動くんです。
起業、大学受験…淳はこんな「即動」をしてきた
天野
起業や大学受験ってどっちも大変なことだと思うんですが、なぜ1秒で飛びついたんですか?
淳さん
起業したのは、まず自分のマネージャーだった佐藤という男が、夏休みにシリコンバレーに遊びにいったんですね。そいつが、帰国したとたんすぐに吉本を退社して、起業したんです。
天野
えっ。その人も即動で生きてるな…
淳さん
そうなんです(笑)。佐藤はもともとすごく優秀な男だったんで、「これはシリコンバレーには何かあるな」と思って僕もすぐに行きました。
そうしたら「仕事」の概念をくつがえされた。まったく画一的じゃなく、みんなが自由に働いている光景を見たんです。
天野
ふむふむ。
淳さん
シリコンバレーに流れている「起業家マインド」が、面白さの源なんだなと痛感したんですね。
それで、帰国してすぐに、ほかのメンバーと一緒に「Be Blue Ventures」というベンチャー投資の会社を立ち上げました。
天野
はや! ベンチャーへの投資に興味があったということですか?
淳さん
起業家に興味があるんですよ。
もともと僕らみたいなお笑い芸人やテレビタレントって、世間のモラルを逸脱して、皆さんを楽しませてきたじゃないですか。
ところが今ではネットや世間の目に監視されて、大人しくしているしかない。今世間を楽しませてるのって起業家だなと。そういう意味で興味や憧れがあるんです。
淳さん
大学受験をしたのもそうで、昨今のテレビって「コンプライアンス」とかうるさいじゃないですか。
この企画もこの番組もダメなのかよ…ってイラついてるときに、青山学院大に、住吉雅美教授の「『タブーに挑む法哲学』~君はどこまでサルか?~」っていうゼミがあるって知ったんです。調べてみたら授業内容のところに「人はなぜ人前で自慰行為をしないのか」とか書いてある。
めっちゃ気になりません?
天野
気になります(笑)。
淳さん
知ってすぐ、大学受験について調べはじめてましたね。その時点では偏差値32だったんですけど(笑)。
絶対ミスが多くならない? 「即動」による失敗も…
天野
ただ、「そうは言っても即動力デメリット多くない?」と思っちゃうんですよ。
そんなにすぐ行動してたら、失敗しないんですか?
淳さん
そりゃしますよ!即動力はミスを誘発するんです。
やっぱりミスが出るんですね。それは困る…
淳さん
でも、失敗はたくさんあるけど、その失敗が血となり骨となるので、損はしないんですよ。次の景色がはやく見られて、対策が練れるというか。
天野
これまでした失敗談を聞いてみたいです。
淳さん
そうだな…
吉本って運転手とか雇ってくれないんですよ。でも、3、4回タクシーで移動したら1万円とか行っちゃう。だから「運転手雇ってくれませんか?」って会社に言ったんです。
淳さん
でも「ウチはそういうのやってないから」という話になって、結局「何かあったら責任とれないから、自己責任でやって」っていうことになったんですね。
それで自分で運転手を雇ったんですが、人間っていいやつと悪いやつがいてね…。いいやつのときはすごくラクでよかったんですよ。
問題なのは悪いやつのとき、ある運転手に、1年間で数千万円レベルの横領をされたんです。
天野
ええ~~~。よくワイドショーでは聞きますが、そんな話本当にあるんですね…
淳さん
もう、「会社の言ってた自己責任ってこれかあ!」と。すぐ動いちゃってますから、面接とかしてなかったんですよ。
まさに即動力の失敗。「ぜひやりたいです!」って言ってくる熱意ある若者だからいいと思ったのに、おれの銀行のカード抜いて、暗証番号調べてるんだもんな…
苦渋の思い出のよう…思い出させてすみません
天野
ガッツリ犯罪じゃないですか。
淳さん
まあ、それ以来人と仕事をするときはちゃんと面接とかするようになりましたし(笑)。失敗データを次に生かせばいいんですよ。
「即動」すると、まわりから情報が集まるようになる
淳さん
あと、「即動」の大きなメリットは、情報が得られることです。
たとえば僕、さっき話した青学受験には失敗したんですけど、「それなら慶應の通信課程がある」とか教えてもらったんです。
でも通信だと卒業が難しくて、卒業率が数%しかないんですって。
仕事を休むわけにもいかないし、どうしよう?と思ってたら、慶應の教授が「淳さんが関心あることだけを学びたいなら、SFC(慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス)の大学院に行けば?」って言ってくれたんですよ。
大学卒業してないのに大学院に入れるって知ってました?
天野
知りませんでした! そうなのか…
(※大学によるが、高卒者などが学力や研究の有益性などの観点から、大学院進学が認められることがあるそう)
淳さん
僕も「そんなことできるの!?」って思いました(笑)。
でも、こういう情報が集まってくるのも、即動してもがいてるからこそなんですよね。頭のなかで考えてるだけじゃ、誰も教えてくれないでしょ。
ツッコミに負けず、「即動」にまわりを巻き込む方法とは?
天野
会社とかで、自分のアイデアをすぐ実行したいんだけど、まわりがノッてくれないときってあるじゃないですか。「思いつきじゃないですか?」とか言われて。
自分の即動に、どうやってまわりを巻き込めばいいんですかね?
淳さん
そういうツッコミ入れてくる人って保守的な人間じゃないですか?保守的な人間に一番効くのは「結果」と「熱量」です。
だからこそ「即動」で、1人でやってまず結果をつくっちゃうのがいいんですよ。
天野
淳さんなんて立場ある人なのに、そんなこと可能なんですか?
淳さん
いやいや、おれは吉本相手によくやってますよ(笑)。
たとえば「淳の休日」っていう個人のネット番組を立ち上げたのもそう。「休日」っていうタイトルなのも、僕の休日に何をやろうが自由でしょっていう言い訳です(笑)。
そのなかでやってる「マスクdeお見合い」っていう企画(※男女がマスクを着けて参加するお見合いイベント)も、「やるなよ、やるなよ」って会社には言われてたけど、勝手にやりましたね。
淳さん
そこから結婚式のプロデュースをする会社もつくったんです。仕事にあぶれてる芸人たちに、司会や営業の仕事をつくれるっていう狙いもあって。
でもそういう狙いとか想いがあっても、行動しないと「熱」は伝えられない。
同じことしゃべるにしても、やっているのといないのじゃ、伝わる温度が全然違いますからね。
天野
これは個人的な意見なんですが、なんでも思いつきで発案してると“仕事できなそう”って思われるんじゃないかと考えちゃうんです…
「仕事できなそう?」
淳さん
いいじゃん! おれはそう思われたいんですよ!
結果がともなってれば、そのほうが後から「できるやつ」って評価されやすいんです。人間って、最初自分が否定してたものが結果出すと、逆に手のひら返して評価するものですから(笑)。
淳さん
おれだって、デビューしてからずっと「チャラそう」とか「なんも考えてなさそう」とかいろいろ言われてきましたけど、結果出せばみんな何も言わなくなったもん。
そういう人に限ってあとから「淳はあのときからいろいろ考えてたもんな~!」とか言ってくるんですよ(笑)。
今だったらどんなマイナスなこと言われても、「あなたがそう思ってるだけでしょ?」って冷静に思えますね。
天野
なるほど…
とはいえ「ほとんどの人ができていない」という即動…なにか「即動できるコツ」があれば教えてほしいです。
淳さん
その場で聞いて「すぐ調べだせたこと」だけやればいいんです。聞いた次の瞬間、何かしら針を動かさないと、あとからじゃもう動けなくなっちゃう。
「明日やろう」と思っちゃった時点でもう“捨て”ですよ。だからこそ、「針」が動くように感度を高くしてないといけないと思います。
まあ、正直これだけ言ってもほとんどの人は「動かない」とは思ってます。でも、即動していろんな波風が起きることを前向きにとらえられる人こそ、「本当に優秀」なんだとおれは思いますけどね。
「即動は99%の人がやってない。だからすぐに動くことは大きなチャンスにつながりますよ」と淳さん。
これまで「思いつきで行動するのは、会社で評価されにくい」と思ってましたが、その考えがひっくり返されました。
ただし、すぐ動くことには失敗がつきもの。もし失敗したらどうすればいいの?との問いには、
「まあそこは、機転が利く人にならないといけませんよね。“この失敗を笑ってもらうためにどうしてやろう”とすぐに思考を変えましょう」
というお答え。
これを読んで思うところがあった方は、1秒後、何かに向けて動き出してみてはいかがでしょうか。
〈取材・文=天野俊吉(@amanop)/撮影=福田啄也(@fkd1111)〉
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