ビジネスパーソンインタビュー
「はなおはこうあるべき」を裏切りつづけたい
高学歴YouTuberはなおと振り返る経歴。大学卒業後、大企業の内定を捨てた理由とは
新R25編集部
名門、大阪大学出身の「頭脳派理系YouTuber」として、数学を使った実験や検証など、かしこさを武器にした動画で大人気のはなおさん。
現在、チャンネル登録者数は100万人を超えています。
そんなはなおさんですが、学生時代はYouTuberであることを武器に就職活動をし、某上場企業に内定をもらっていたそうです。しかし、入社3ヶ月前に突如内定を辞退し、YouTuberとして生きていくことを決意。
ただ、それまでの経歴を考えたら、そうカンタンに決心できない選択なはず…。
今回の「新R25プロフ」では、はなおさん本人と自身の高校時代・大学時代を振り返るとともに、YouTuberをはじめたきっかけや、大企業の内定を蹴ってまでYouTuberという道を選んだ本当の理由を聞いてきました。
はなおさんのプロフィール・経歴
名前:はなお
誕生日:1992年8月15日
年齢:26歳(2019年1月現在)
身長:175cm
経歴:
2008年4月某名門高校へ入学
2012年4月大阪大学 基礎工学部へ入学
2014年11月YouTubeへの動画投稿を開始
2016年4月大阪大学大学院 基礎工学研究科へ入学
2018年4月内定を辞退、YouTuber1本で活動を開始
高校時代の心のよりどころは、勉強の気晴らしに見ていたニコニコ動画だった
子どものころからまじめに勉学に励んでいたというはなおさんは、偏差値70超えのエリート高校に進学。高校生活は、大好きなアニメとニコニコ動画、そして勉強にどっぷり浸かった3年間だったそう。
はなおさん
高校時代はとにかく陰キャだったんですよ。友だちから「変わったヤツ」と思われるのが怖くて、なかなか自分の趣味をさらけ出せませんでした。女の子となんて、全然しゃべれなかったですね(笑)。
ライター・小野瀬
そうなんですか! でも今はYouTuberとして有名になって当時の同級生から連絡きたりしませんか?
はなおさん
それが悲しいことに、まったくないんです(笑)。
はなおさん
あ、でも同窓会に参加したときに、高校時代は一度も話したことがなかった女の子に「動画めっちゃ見てる! ファンやねん!」って話しかけられたことはありましたね。ね。めっちゃカワイイ子で、ちょっと好きになりかけましたもん(笑)。
ライター・小野瀬
(いまのピュアエピソードから察するに、これは本物の陰キャだ…)
そんなに友だちがいなかったなら、やっぱり勉強ばっかしてたんですか?
はなおさん
そうそう。本当ね、友だちもいないし、家にこもって勉強ばかりしてると気が重くなってくるんですよ(笑)。
そんな毎日の気晴らしが、ニコニコ動画だったんです。
はなおさん
特に好きだったのは、『佐賀よかでしょう』という番組。
もともと歌うことがすきだったので、歌い手さんにも憧れてました。
そのなかで、「自分でイチから作品をつくり、それをインターネットを通じて多くの人に届け、有名になっていく」というストーリーに憧れていたし、チャンスを感じるようになって。
ライター・小野瀬
YouTuber・はなおの原点ですね。
はなおさん
浪人時代、泣けなしのお金をはたいて買った安物のボイスレコーダーで、カラオケなどを録音して投稿し、遊びの延長でニコニコ動画を楽しんでましたね。
大阪大学へ進学。YouTubeをはじめたのは、「自分の面白さは認められるのか」という挑戦心
高校を卒業したはなおさんは、1年間の浪人生活を経て大阪大学 基礎工学部へ入学。そして大学3年生の頃に、YouTuberとして動画投稿を開始。はなおさんの代名詞となった「東大企画」のヒットを皮切りに「頭脳派理系YouTuber」として頭角を現していきます。
ライター・小野瀬
はなおさんは、2014年の11月からYouTubeへの投稿をスタートされていますが、それまではニコニコ動画に投稿していたんですよね。
はなおさん
はい。高校時代から憧れていた歌い手になりたいという思いを捨てきれず、2回生のときに本格的なマイクと録音ソフトを買ってきて、1人でひっそりと歌ってはニコニコ動画にアップしていました。
知り合いにバレるのが恥ずかしかったので、顔は絶対出さずに(笑)。そのときに、一応Twitterアカウントも開設したんですよ。「でんぶつ」っていう芸名で。
ライター・小野瀬
でんぶつ…?
はなおさん
僕が「電子物理科学科」にいたから(笑)。
完全に黒歴史かつ自己満足の世界なんですけど、こっそりTwitterアカウント開設して「デビューした感」を味わってました。
動画でも公表していない、初出し情報とのこと
はなおさん
やるからには有名になりたかったので、地道に営業活動もしてました。相互フォローを狙って、片っ端からいろんな人をフォローするんです。2000人フォローして300人からフォローバックされて、それ以外はフォローを外して…の繰り返し。
そういうこっす〜い手口でフォロワーを1800人まで伸ばしたんですけど…
ライター・小野瀬
すごい…けっこう伸ばせるものなんですね。
はなおさん
でもあるとき、「何やってんだろ俺」って虚無感に襲われてやめちゃいました。もともとやりたかったのは、自分のアイデアを作品にすることで、とりあえず有名になろうとするのは本質的じゃないって気がついたんです。
そうこうしているうちに3回生になって、ある日後輩が「瀬戸弘司さんって人がすごい面白いんですよ〜」って見せてくれた動画がYouTubeとの出会いです。
それを見た瞬間、「これだ! これがやりたい!」って即決しました。
ライター・小野瀬
どうして即決できたんでしょうか?
はなおさん
これは陰キャあるあるかもしれないんですけど、僕、内なる欲望がすごく強いんですよ。
はなおさん
表には出さないけど、頭のなかではいろんなアイデアを考えていたり、「何かやってやりたい」みたいな欲望が常にあったりするんですよね。
だからYouTubeを見た瞬間「この想いの行き場を見つけた!」みたいな感動があって。
はなおさん
これは「自分の面白さが世間に認められるのか?」という陰キャの挑戦でもあったんです。
一番最初の動画なんて、ほとんど誰にも見られてません。ただ、自分の頭のなかで考えたものをカタチにして、投稿という形でアウトプットできたときの喜びはハンパなかったです。
ライター・小野瀬
現在ではチャンネル登録者数が100万人を超えていますが、なにかターニングポイントとなった動画はあったんでしょうか?
はなおさん
大きかったのは「東大動画」です。理系企画に目覚めたきっかけの動画です。
ライター・小野瀬
はなおさんにしかできない企画ですよね。すごくおもしろかったです。反響もよかったんですか?
はなおさん
これまでで一番再生された動画ですし、これをきっかけにチャンネル登録者も一気に増えました。
でも、数字的な部分以外にも手応えを感じたんです。
はなおさん
理系動画って、視聴者のみんながコメント欄で持論を展開しはじめて、コメント欄が掲示板みたいになるんですよ(笑)。
その光景を見て、「みんなこれが好きなんだな」って感じられたし、これは理系の自分だからこそつくれる動画なんだって、自信になりましたね。
上場企業から内定をもらうも、就職3ヶ月前に辞退。YouTuberを仕事に
卒業後は、「普通に就職するつもりだった」というはなおさん。YouTuberであることを武器に就職活動に取り組み、某上場企業から内定をもらいます。
しかし、入社まで残り3ヶ月となった2017年12月、突如内定を辞退してYouTuberとして活動することを決意。でも、一体なぜそんなタイミングで? 当時の心境について聞いてみました。
はなおさん
動画クリエイターとして活動していくうちにますますコンテンツづくりが大好きになって、テレビ局やIT企業を中心に面接を受けていました。
まわりも、当然就職するものだと思っていたはずです。
ライター・小野瀬
そこから就職しないという決断をするまでに、なにがあったんでしょう?
はなおさん
これまで僕は、すべてにおいて完璧主義でした。
たとえば動画を編集するにしても、テロップの入れ方から、音を入れるタイミングの0.5秒のズレにまでこだわってしまう。素材のおもしろさを最大限に引き出せないと我慢できないんですよね。
だから、自分のキャリア(学歴や就職)に関しても完璧主義で、上場企業で働くことが当然の流れだと思っていて。
はなおさん
ただ、就職を控えたタイミングでUUUMの忘年会に参加したんですけど、ある人に「はなお、その会社に入っても、多分辞めると思うよ」って言われたんですよ。
そこでハッとなって、改めて「これからどんな人生を歩みたいのか?」と真剣に考えなおしてみたんです。
ライター・小野瀬
はなおさん自身も、心の奥ではYouTubeを続けたいという思いがあったのかもしれませんね。その気持ちフタをしていたというか。
はなおさん
そうかもしれません。
内定承諾書を目の前にひたすら悩みながら出したのが、「人生茶番で生きていきたい」という答えでした。本当は「まわりと同じは嫌だ。変わっているヤツだと思われたい」って昔から思っていたことに気がついたんですよね。
だから、迷ったらまわりからおもしろいと思われる方を選ぼうと。
ライター・小野瀬
高校生のころは「変わっていると思われることが怖かった」とのに、社会人になるときには「変わっていると思われたい」と思うようになっていたんですね。
はなおさん
今も「ビビリの陰キャ」であることには変わりないのですが(笑)、変わったのは環境かな。
高校ってクラスのコミュニティがすべてなので、閉鎖的じゃないですか。だから、「変なヤツだと思われて、ここで失敗したら終わりだ」と他人の目を気にしすぎていたんだと思います。それがYouTubeをはじめて、みんなに動画を観てもらえるようになって、「自分が考えていることをアウトプットしていいんだ」「変なヤツでいいんだ」という自信になったんですよね。
だから、動画の道を選ぶ決断ができたんだと思います。
ライター・小野瀬
ちなみに、YouTuberとして生き残っていくために考えていることはあるんでしょうか?
はなおさん
反骨精神というか、「UUUMっぽくない」というのは僕のアイデンティティかもしれません。
はなおさん
視聴者からの「はなおはこうあるべき」というイメージに応えすぎないようにしていきたいんですよね。
あえて自分の枠を設けず、グレーゾーンを攻めることで、「はなおってこんなこともやっちゃうんだ!」と視聴者を良い意味で裏切りつづけたいです。
そうじゃないと、絶対飽きられちゃうと思うので。
四六時中企画のことを考えていても、動画制作に飽きたことはない
ライター・小野瀬
はなおさんは普段、どんな風に企画を考えているんですか?
はなおさん
基本的自分1人で考えていて、特に意識しているのは、視聴者にウケる「強いワード」を入れること。僕の場合だと、「理系」とか「東大」とか。
ライター・小野瀬
どれも再生回数の多い動画ばかりですね。
はなおさん
あとは、極端すぎる組み合わせも意識しています。
たとえば、「あらかじめ録音しておいた音声だけでピザを注文する」という企画はすでに他のクリエイターさんたちもやっていたんですけど、そこに「3歳児」という極端なギャップを掛け合わせることで、企画として強くなるんです。
こちらが「3歳児」×「ピザ注文」をかけ合わせて企画した動画。めっちゃ面白いです
はなおさん
こういうのは結構戦略的に再生回数を狙いにいってますが、「たまたま思いついたこと」もすごく大事にしてます。
たとえば、この動画とか。
こちらも大人気動画に
はなおさん
もう、四六時中動画の企画を考えてますね(笑)。
ライター・小野瀬
そこまでYouTubeのことを考えつづけるのって大変じゃないですか?
はなおさん
僕、動画制作に飽きたことがないんですよね。
なんで飽きないんだろうって考えたんですけど、結局、自分が企画して編集した動画を、視聴者さんの誰よりも、自分が一番楽しみにしてるからなんですよ。
ただ、それでもやっぱり反応も気になるので、未だに動画をアップするたびに、Twitterで「はなお 動画」って検索して、感想を確認するんですけど(笑)。
率直に「おもしろい」の一言が何よりうれしいとのこと
はなおさん
登録者数、再生回数、みたいに数字で達成感を得るのはわかりやすいんですけど、永遠にゴールがないからしんどいんですよね。
登録者100万人の次は200万、300万って、終わりがないじゃないですか。
ライター・小野瀬
たしかに、そうですね。
はなおさん
でも、「自分が考えたものに対してどんな反応をもらえるか」は、動画をアップロードするたびに満たされるというか(笑)。
それが楽しいのでずっと動画制作をつづけられるんだと思います。
「陰キャ代表」として自分が成長することで、見てくれる人たちに勇気を与えたい
ライター・小野瀬
最後にお伺いしたいのですが、はなおさんのYouTuberとしての目標ってなんでしょう?
はなおさん
未来の選択肢を狭めたくないので、今のところゴールは設けていません。
ただ、動画クリエイターという活動を通して見せていきたいと思っているストーリーがあって。
ライター・小野瀬
ストーリー、ですか。
はなおさん
「小物と言われている僕でも、ここまでのクリエイターになれるんだぞ!」という自分の成長ストーリーを見せることで、高校時代の僕のように引きこもりがちな人にも、希望をも持ってもらえたらいいなって。
はなおさん
僕の動画を「面白い」と思って見てくれている人って、多分僕に似た人が多いんですよ。
だからこそ、高校では2人1組のペアをつくることすら恐れていた自分が、クリエイターとして成長していく過程を見せることで、誰かが一歩を踏み出す後押しができたらいいなと。
ちょっと偉そうに言ってしまいましたが、僕もまだまだ道半ばなので、そんな風に同じ方向を向いて一緒に成長していけたらいいなと思っています。
取材中、はなおさんが何度も繰り返していたのが、視聴者やチームのメンバーへの感謝の言葉。
常に笑顔だったはなおさんが、クリエイターとしてのこだわりについて話が及んだ途端、真剣な表情に切り替わっていたのが印象的で、芯の強さを感じた取材でした。
「陰キャ代表としてみんなと成長していきたい」とおっしゃるはなおさんが、これからどんな快進撃を見せてくれるのか。YouTubeで描かれるそのストーリーを楽しみにしています!
〈取材・文=小野瀬わかな(@wakana522)/取材・編集=宮内麻希(@haribo1126)/撮影=森カズシゲ〉
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