ビジネスパーソンインタビュー
「自分を無理やり変えなくてもいいんだって思えました」
同じ格好になれたのは、彼らに恋をしてたから。ヨシダナギがアフリカ人から学んだ人生の教訓
新R25編集部
強いこだわりを持って世界をめぐる人々を取り上げる、TBS系列のテレビ番組 『クレイジージャーニー』で「少数民族と同じ格好で撮影する写真家」として話題になったヨシダナギさん。
しかし、そんな大胆な行動とは裏腹に、幼少期は内気でとてもおとなしい性格だったそう。
今回は、アフリカ人に憧れた幼少期や、挫折を経てカメラを手に取った経験、少数民族との生活などを振り返りながら、彼女が見つけた“楽しく生きていくコツ”について聞いてきました。
〈聞き手:いしかわゆき(新R25編集部)〉
【ヨシダナギ】1986 年生まれ。フォトグラファー。 2009年より単身アフリカへ渡航。以来、独学で写真を学びながらアフリカをはじめとする世界中の少数民族を撮影、発表。唯一無二の色彩と直感的な生き方が評価され、2017年には日経ビジネス誌で「次代を創る100人」、雑誌PEN「Penクリエイター・アワード 2017」に選出される。また同年には、講談社出版文化賞 写真賞を受賞。近著には、写真集『SURI COLLECTION』(いろは出版)、紀行本『ヨシダ、裸でアフリカをゆく』(扶桑社)、エッセイ「ヨシダナギの拾われる力」(CCCメディアハウス)、BEST作品集「HEROES」(ライツ社)がある
「アフリカ人になる」という夢から行き着いたカメラは、“好きじゃない”から続いている
5歳のときにテレビでマサイ族を観たことをきっかけに、アフリカ人に憧れるようになったというヨシダナギさん。
しかし、10歳のときに自身が「アフリカ人になれない」ことを悟り、グラビアアイドルやイラストレーターなどの仕事に就くも、どれも続けられなかったそう。
そんな彼女が23歳のとき、出会ったのが「カメラ」でしたが…
いしかわ
5歳のころの夢は、「アフリカ人になること」だったそうですが、えっと…どういうことですか?
ヨシダナギさん
そのまんまです。「セーラームーンや仮面ライダーになりたい」と同じような感覚で憧れてました。フォルムに惹かれたんです。
いしかわ
フォルム…?
ヨシダナギさん
頭の形、ヘアスタイル、衣装、私にとってはすべてがパーフェクトだったんです。でも、10歳のときに「なれないよ」と親に否定されてしまって。
それ以降、何かになりたいと思ったことが一度もないんです。
いしかわ
でもそのあと、憧れを抱いてる人も多そうな、グラビアアイドルやイラストレーターなどをされていますよね。
ヨシダナギさん
うーん…グラビアアイドルは声をかけてもらってやっただけだし、イラストレーターもグラビアアイドルを辞める口実として逃げるようになっただけ。別に、なりたいものではなかったんですよ。
好きなものは突発的にいつも生まれますが、ある程度まで続けるとつまらなくなっちゃうんです。だから、長く続けていることが本当になくって。
いしかわ
そんななかで写真だけが唯一続いていることなんですね。それはなぜですか?
ヨシダナギさん
まったく好きじゃないからです。
提供画像
こんなに素晴らしい写真を撮っているのに…!?
ヨシダナギさん
もし写真が好きだったら「下手」って言われたとき、悔しいはずですよね。でも、私はボロクソに言われてもなんとも思いません(笑)。
写真が好きじゃないから、うまくないのは当然で知識がないのも当然。そうやって割り切ってしまってるんです。
そんなスタンスだからこそ、「腕を磨いてから写真を出そう」って思いながら出せない人よりは、うまくいってるのかなと思ってます。
いしかわ
今、流行りの「好きなことを仕事にする」の真逆ですね…フリーランスなのに、好きじゃないことを仕事にするなんて、あんまりない気がします。
ヨシダナギさん
カメラマンになったのは、何気なく撮った写真を褒められて、「ボタンを押すだけでお金をもらえるなんて、すごくラクだな」と思ったからなんです(笑)。
いしかわ
そんな軽い気持ちだったとは…(笑)。
ヨシダナギさん
ただ、アフリカの人のことは大好きなので、そこが原動力になっています。好きな人のために、好きじゃないことを仕事にしたんです。
内気な性格でも少数民族と同じ格好になれたのは、勇気があるからじゃない
23歳のとき、少数民族と同じ格好になって撮影をおこなったことが目に止まり、テレビ番組『クレイジージャーニー』でも話題になったヨシダナギさん。
3年間で18カ国、200の部族を写真に収めてきた彼女が、少数民族と同じ格好になったのには、幼少期からブレることのない、まっすぐな愛がありました。
いしかわ
露出度の高いような少数民族と同じ格好になるのは勇気がいると思うんですけど、もともと大胆な性格だったんですか?
ヨシダナギさん
いえ、むしろ逆で、昔から自己表現が苦手でした。
学童保育の先生に、「この子は紙とペンがあったら自己表現ができる」って見つけてもらって、ようやく自分の感情を伝えられるようになったくらい内気な性格。だから、全然大胆な性格じゃありません。
それでも「同じ格好」ができたのは、決して勇気があるからじゃない。「恋」をしているからなんですよ。
いしかわ
恋?
ヨシダナギさん
私は、幼少期からアフリカに片思いをしていたので、憧れの人と同じ格好をする感覚なんです。そこに勇気なんていりませんよね。
いしかわ
なるほど…それが結果的に、彼らの自然な姿を写すことにつながったと。
ヨシダナギさん
アフリカの人は、お金を払えば写真を撮らせてもらえることが多いですが、カメラを向けた瞬間、彼らは眉間にシワを寄せるんです。
世の中には内戦や貧困などのイメージが強く、そのステレオタイプな写真が多いことと相まって、幼少期に彼らを支持しても、その良さに共感してもらえませんでした。
「あんな人たちのどこがいいの?」って。
いしかわ
確かに、ムスっとした顔ばかりだったら、あんまりいい印象にはならなさそうです。
ヨシダナギさん
それが、好きな人をけなされたみたいで悔しかったんです。
そうやって実物を見ずに否定する人に、「アフリカの人はかっこいいんだよ!」とシェアしたくて撮った、というのもあります。
いしかわ
すべてはアフリカへの「偏愛」なんですねぇ…
ヨシダナギさん
私はアフリカ人にはなれなかったけど、彼らの一番近くで、その魅力を伝える仕事に巡り会えました。
カメラマンというポジションであれば、仕事という名目で触れ合えるんですよ。もう最高に幸せです。
「あきらめる、受け入れる、拾われる」がモットー。拾われていけば人生がうまくいく
ヨシダナギさん
でも、長くこの仕事をしたいとは思っていないんです。アフリカには関わりつづけるつもりですけど、必ずしも写真が手段でなくていい。
常に「やりたいこと」をやっていたいから、写真がやりたくなくなったらスパッとやめます!
いしかわ
何かに固執せず、思うままに進むというか…
ヨシダナギさん
私のモットーは、「あきらめる、受け入れる、拾われる」なんです。
「あきらめる」ってネガティブな印象ですが、恋愛でいう「別れる」と同じで、あくまで新しい「次」に行くためのステップだと思ってます。
私は「アフリカ人になる」という夢をあきらめたあと、最終的にはアフリカに関われる人生になった。
自分のターニングポイントで拾われそうな機会を見過ごさなければ、人生はうまい方向にいくんですよ。
いしかわ
「拾われる」って新しいですね。 ちなみに「拾われる」コツってありますか?
ヨシダナギさん
ネガティブな発言をしないことです。だって、藁人形みたいな不吉そうなものって拾いたくないでしょう?(笑)
私は、悩んでいてもネガテイブなことを一切口に出さず、ヘラヘラしてきました。そうすると、自然と人が寄ってくるんです。
だから、ツラくても笑っているほうがいいと思いますよ。
アフリカ人から学んだ、ありのままで今を大切に生きる幸せ
いしかわ
憧れだったアフリカと関わるようになって、学んだことはありますか?
ヨシダナギさん
「今を大切に生きる」ということです。
日本人ってすごく先のことまで考えて悩むじゃないですか。私もアフリカで、帰国後のことを考えてシリアスな顔をしていたことがあるんです。
そしたら「そんなに先のことを考えなくても、今みんなでお腹いっぱいごはんを食べて、眠れるだけで幸せじゃない」と言われてハッとしました。
そうか、今を楽しく過ごしていればいいんだな、って。
ヨシダナギさん
彼らの生きる環境は、国や地域によっては明日の生活も確約されていないこともあります。でも、そんな彼らが「今笑っていられればいいじゃん」と本気で生きている姿を見せてくれたことが、私のお手本になっていますね。
日本人は考えすぎて自分の人生を楽しめない人が多いので、彼らのような考え方が取り入れられたら、すごくストレスが軽減されるのにな、と思いますよ。
いしかわ
先のことを考えて不安になってしまう人や、他人に合わせなきゃと悩んでいる人はたくさんいますよね。
ヨシダナギさん
私も日本では「社会不適合者だ」みたいに言われていました。他の人より飽きっぽかったり。すごく生きづらかった。
でもアフリカの民族は、ニコニコしながら一緒にごはんを食べるだけで受け入れてくれた。
おかげで自分の性格を無理やり変えなくても、「このままでいいんだ」って思えました。大好きなアフリカに救われましたね。
いしかわ
日本だと、「普通」であることが重んじられますからね。
ヨシダナギさん
そうですね。全員が私のような生き方だと大変なことになっちゃうかもしれませんが、もう少し私みたいなのが増えてもいいんじゃないかなって思います。ちょっと変わったものを好きになったとしても、その「好き」を貫いてほしい。
「ありのままの自分で、今を大切に生きる」って想像以上に幸せなことなんですよ。
今までになかったアフリカの人たちの姿を“写真”という形で世界に伝えたヨシダナギさん。
かつて、本当の自分を理解してもらえなかったツラさを知っている彼女だからこそ、フラットな姿勢で彼らと接し、愛を持って彼らのもっとも輝く“ヒーロー”としての姿を引き出せるのだと思いました。
多様性が認められつつある昨今ですが、まだまだ「普通」を求められる世の中。ヨシダナギさんの純粋な愛がたっぷりと詰まった写真は、生きづらさに苦しむ人たちの光になるかもしれません。
お知らせ
ヨシダナギさんによるラジオ番組「野性に還ろう。」がLoveFMで好評配信中。
等身大の彼女の姿と、彼女を動かす「好き」という熱をあなたに届けます。番組タイトルの「野性に還ろう」にちなみ、リスナーのお悩みや「好きが高じて○○してしまった」「ありのまますぎて○○をやってしまった」などの等身大エピソードなども紹介します。
さらに現在、【最大20万円分の旅行券が当たる】 野性に還ろうキャンペーンも実施中。番組公式ツイッターアカウントをフォロー&キャンペーン詳細投稿をリツイートで応募できます。 RT数で下記のように商品が変動!
・3000RT以上5万円×2名
・7000RT以上5万円×3名
・10000RT以上10万円×1名・5万円×2名
旅行券にくわえて、ヨシダナギさん直筆の履歴書もセットで当たる豪華キャンペーン。奮ってご参加ください!
ビジネスパーソンインタビュー
またスゴいことを始めた前澤さんに「スケールの大きい人になる方法」を聞いたら、重たい宿題を出されてしまいました
新R25編集部
【不満も希望もないから燃えられない…】“悟っちゃってる”Z世代の悩みに共感する箕輪厚介さんが「幸せになる3つの方法」を伝授してくれた
新R25編集部
「実家のお店がなくなるのは悲しい… 家業を継ぐか迷ってます」実家のスーパーを全国区にした大山皓生さんに相談したら、感動的なアドバイスをいただきました
新R25編集部
「俯瞰するって、むしろ大人ではない」“エンタメ鑑賞タスク化してる問題”に佐渡島庸平が一石
新R25編集部
社内にたった一人で“違和感”を口にできるか?「BPaaS」推進するkubell桐谷豪が語るコミットの本質
新R25編集部
【仕事なくなる?そんなにすごい?】“AIがずっとしっくりこない”悩みへのけんすうさんの回答が超ハラオチ
新R25編集部