ビジネスパーソンインタビュー
かわいいから売れるわけじゃない
「草食系も肉食系も関係ない」おのののかが学んだ“売れるビール売り子”の共通点
新R25編集部
記事提供:20's type
※この記事は2015年3月に公開されたものです。
営業マンといえば、ガツガツしてて、泥臭くて、お金に貪欲で、遊び上手…そんなバブルの頃のイメージはすっかり合わなくなっている現代。
“草食男子”や“さとり世代”と呼ばれ、上昇志向や根性論の枠にははまらないイマドキの20代にとって、営業職で活躍するには、何が武器となるのか。
各界の著名人たちの目に映る「イマドキ20代営業マンの強み」とは何か、本人たちも自覚していない、周りの大人たちも分かっていない、彼らの武器を探る。
今回は、「東京ドームのNo.1 ビール売り子」としてトップセールスを誇っていたタレントのおのののかさんに、「売る」を生業にしていた経験と23歳という同年代の目線から、自身を含む現代の20代の武器について聞いた。
【おの ののか】1991年、東京都生まれ。タレントとしてデビューした当初、アルバイトとして東京ドームでビールの売り子を経験。「美人すぎるビール売り子」と話題に。1日で生ビール販売数400杯を記録、その後、年間で1万杯以上を売上げ、サントリーホールディングスから表彰される
「何となく面倒臭いから飲み会行かない」はもったいない!
「昔の若い人たちと比べて、自分の意見を主張しなかったり、反発しなかったりすることが、“草食系”とか“さとり世代”とか言われますよね。でも、それって裏を返せば素直だってことなんじゃないでしょうか」
おのののかさんは自身を含む20代の特徴についてこう話す。
「『最近の若いヤツは上司と飲みに行くのさえ嫌がる』とかもよく聞きますけど、きっと強いこだわりがあって拒否してるわけじゃないと思うんですよ。単に面倒臭いから、とか、その程度の話だと思います。
だから上司の皆さんには、あまり怒らないでほしいし、若手の皆さん自身には、もっと壁を取り払う気持ちを持ってもらいたいと思うんです」
「上の世代の人と飲みに行っていろんな話をしないと、せっかくの素直さも分かってもらえないと思うんですよね」というのが自身もお酒が大好きというののかさん流の分析。
もし上司との飲み会の席を「なんとなく、面倒臭くて壁を作っている程度」なのだとしたら、その壁を壊すのは簡単とも推測する。
「上司だろうとお客さんだろうと、こっちから壁を壊して近づいていければ、素直さを分かってくれるんじゃないかな。多少言いたいことを正直に言っても聞いてくれる大人って多いと思うんです。
だから、まずは“何となく”の壁を取り払ってみる。で、自分がこの場を楽しくしようとしてみる。そういう楽観的っぽい動きもれっきとした武器だと思いますね」
売り子を通して学んだ「楽しむこと」の大切さ
なぜ、ののかさんは「楽しむこと」が武器になると考えるのか。
それは、彼女自身がビールの売り子として、「楽しむこと」が営業活動に良い影響を与えることを体感してきたからである。
「私の接客を気に入ってくれて『じゃあ、買おう』って思ってもらえるんだから、やっぱりウキウキしてきますよね。実際、売れると嬉しいし、楽しいんです。
もちろん、いいことばかりではなくて、イヤなことを言われることもあります。でも喜んでくれるお客さんのおかげで、笑顔でいられる時間の方が多いし、お客さんにしてみても、やっぱりニコニコしている売り子から買いたいじゃないですか。結果としてまた売れて…みたいな良い循環があって、気持ち良かったんですよね」
笑顔のパワーやリアクションが大切だということ。そして、上手に自己主張すれば嫌がられるよりもむしろ覚えてもらえ、さらに仕事が楽しくなるということ。
これら、人と関わる仕事をする上で持っておくべき営業ノウハウといえるものをたくさん学んだという。
「キツイかキツくないかといったら、キツイ仕事だと思います。15kgのビール樽を背負って客席を上り下りするんですから。売れない子は中身が減らないからずっと軽くならない。売れなくて辞めちゃう子だってかなりいました。
でも、売ってる子はみんなニコニコしていましたよ。売るための笑顔というだけじゃなくて、売り子という仕事を楽しんでいたからだと思うんです」
かわいいから売れるわけじゃない。カリスマ売り子の地道な努力
「楽しむこと」を実際に武器にしていたというののかさん。しかし、それだけではもちろんトップにはなれない。
「スタジアムの上から下まで降りていく時、お客さんが飲んでいるカップを常にチェックしていました。ビールが残り少なくなっているお客さんなら、すぐにでも『もう1杯』注文してくれる可能性が高いんです。
そういう人がスタンドのどのあたりにどれくらいいるのかを、目で見て覚え、いつごろのタイミングでどこに行けば売れるかを判断しながら移動していました」
これだけでも十分頭を使わないと売れない仕事だと分かるが、一気に顧客を囲い込む戦略も持っていたという。
「団体のお客さんが来たらすぐに誰が幹事なのかを見極めてお伺いを立てに行っていました。大人数で観戦に来ているので、一人がビールを注文されると、『オレも、私も』となりやすいんです」
大口顧客へのアプローチの方法や、提案のタイミングなど、大人のビジネスマンも顔負けの戦略家だ。
「でも、グイグイ行くべきところでは、かなり図々しい売り込みトークもしましたよ」と笑う。
「毎試合のように応援に来るジャイアンツファンの方もいますし、シーズンシートの方もいますから、顔なじみになってくれるお客さんを獲得できれば、すごく大きいんです。
そういうお客さんの名前を覚えておき、『●●さん、こんばんは! 今日も絶対、私以外から買わないでくださいね!』みたいなご挨拶は当たり前にやっていました。
また、お客さんと共通の話題でお話ができるように、野球のこと、ジャイアンツのこと、ビールのことはとても勉強しました」
トップセールスだったののかさんがビールを売るためにしてきた工夫からも分かるように、ビールの売り子は見た目がよく、若い女性だからといって、ニコニコと笑顔を振りまいて歩いていれば売れる、という甘い世界ではない。
営業マンに置き換えて言えば、肉食系がガツガツ男子だったら売れるわけではないということ。ののかさんいわく、「草食系も肉食系も関係なく、楽しんだ者勝ち」ということだ。
「結局、仕事って最初から楽しいようにはできていないじゃないですか? 会社で働くことになれば、人間関係だって楽しいことばかりじゃないだろうし。だからこそ、そこで『じゃあ、楽しくしちゃおう』って思える人が強くなるような気がします。
辛い仕事でも自分から楽しんで、そこで20代の持ち味の素直さを出せれば、きっと営業マンとしても活躍できると思います」
〈取材・文=森川直樹/撮影=竹井俊晴〉
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