ビジネスパーソンインタビュー

失敗続きで承認されない社員にはどう対応すべき?「褒められたい病」への処方箋

「何もいいところがない人」なんていない

失敗続きで承認されない社員にはどう対応すべき?「褒められたい病」への処方箋

新R25編集部

2019/01/24

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寝てない自慢をする先輩」「飲み会で昔話をする上司」「すぐに折れてしまう新入社員」…などなど、職場にはたくさんの“はたらく問題”があふれかえっています。

そんな職場の問題や働き方改革に切り込んだ、新木曜ドラマ『ハケン占い師アタル』(テレビ朝日)が2019年1月よりスタート。

杉咲花さん演じる派遣社員の的場中(アタル)が、占いの力を使ってまわりの正社員たちが抱える悩みを解決していくお仕事コメディードラマです。

今回は新R25の期間限定連載として、同ドラマとVoicyで配信中の番組「職場の治療室」のコラボ企画が実現!

カリスマ産業医の大室正志さんと組織人事コンサルタントの麻野耕司さんが、『ハケン占い師アタル』を観ながら、ドラマに登場するビジネスパーソンの悩みに効く処方箋を見出していきます。

第2話で語っていただいたのは、「褒められたい病」について。

間宮祥太朗さん演じる目黒円は、父親のコネで入社したお坊ちゃま社員。やる気はあるが、それが空回りして失敗続きで、大した仕事も任せてもらえないまま入社して3年が経ちました。

そんなとき、同僚たちが多忙な時期に大型のコンペに参加することになり、目黒はここぞとばかりに立候補します。

「褒められたい若者」が増えているのはなぜ?

間宮祥太朗さんが演じる目黒円

麻野さん

第2話でフィーチャーされていた目黒くんが悩んでいたように、最近は「褒めてほしい」と思う人が増えている印象です。

これってどうしてだと思いますか?

大室さん

昔に比べて、将来が不確定になってきているからだと思います。

たとえば昔は、「1年目にこれを習得して、2年目にはここまでできるようになろう。そうすれば、ゆくゆくは一人前になって飯が食える」みたいなロードマップが明確にあった。

でも今って、自分の将来がけっこう不透明になってきていると思うんですよね。

麻野さん

なるほど。企業でも同じようなことが言えますね。

昔って「働きつづければ、だんだん出世していく」とか「だんだん給料が上がっていく」ということが約束されていたんですよ。

でも今は、報酬や地位が必ずしも上がりつづけわけではない

大室さん

そうです。

だから、「ダメなときは怒るけど、いいときは何も言わない(褒めない)」というのは、「褒められなくても、コツコツ働いていれば報酬が与えられていた」昭和的な価値観だと言えますね。

一方で現代は、自分のやっていることが正しいのか不安だから、「君は今、これができていたよ!」って自分の現在地を指差しで確認してほしい人が増えているんだと思います。

麻野さん

あとは、そもそも金銭や地位以外の目的で働いている人も増えていますね。

仕事のやりがいや自分の成長、人とのつながりといった、いわゆる「感情報酬」を求める流れになっていると思うんです。

大室さん

たしかにそういう人、増えてますね。

「いいねネイティブ世代」と上司との価値観のギャップとは?

麻野さん

この流れに拍車をかけているのがSNSなんです。

アメリカのHR(人事)では「ミレニアル世代はとにかく承認が大事だ」と言われているんですよ。

なぜならこの世代は、なにかアクションを起こしたら、すぐSNSにアップして、10秒以内に「いいね!」のような反応が返ってくる。

そんな環境に慣れているので、仕事でもすぐにフィードバックがないと前に進めないんだそうです

大室さん

なんだかイルカショーみたいな話になってるね。

「すぐに小魚欲しがるイルカ」みたいな(笑)。

麻野さん

(笑)。

でも、アメリカは「ミレニアル世代の承認文化に合わせていったほうがいい」という風潮なんです。

HRテックといわれる、社内で承認を行うための人事システムもめちゃくちゃ増えていて、「どんどん承認していこうぜ」って流れなんですよね。

大室さん

いいねネイティブ」に合わせていこうってことですね。

ただ、日本だと、まだ「いいねネイティブ」よりも上の世代の方が多いから、「オレらに合わせろ」となってしまう傾向が強いかもしれませんね。今は人口動態的にも若年層が少ないですし。

麻野さん

そうなんです。

日本では、今の20代のことを「ゆとり世代」ってかなり馬鹿にした意味合いで呼ぶじゃないですか。

ゆとり世代に合わせていたらダメだぞ。お前らがオレらに合わせろ」ってスタンスなんです。その世代間の価値観の溝が、今回の「褒められたい病」の原因の一つになっているかもしれません。

サイバーエージェントの事例から学ぶ、「褒める」と「正す」のバランス感

大室さん

ぶっちゃけ、「ボク、褒められて伸びるタイプなんですよ」って自分のトリセツを伝えてくる部下のこと、どう思う?

麻野さん

昔は「ふざけんじゃねーよ」と思いながらマネジメントしていたこともありました(笑)。

でも、ボクもいろいろ試行錯誤した結果、今は褒めて成果が出るならその方がいいかなと思っています。

大室さん

変化したね。

麻野さん

そうでしょう(笑)。

サイバーエージェントの人事担当取締役の曽山(哲人)さんがおっしゃってたんですが、組織の雰囲気が悪かったときって、「なんでお前これ終わってないんだよ?」とか「なんでこんなに業績悪いんだよ」って、詰めることが多かったらしいんですよ。

そこから、褒める機会を増やしていったら、業績も組織の雰囲気もよくなったそうです

大室さん

褒めることが成果に結びついたと。

麻野さん

そう。ただ、曽山さんは「褒めてばかりもよくなくて、正すことも必要だ」とも言っていました。

そこで、社内に「褒める>詰める」って張り紙をしたらしいんですよ。

正してもいいけど、それと同じくらい、もしくはちょっと多いくらい褒めれば、いい形で仕事が進むから」と。そういうバランス感覚って大事だなと思いましたね。

失敗続きでなかなか承認されない社員にはどうすべき?

大室さん

今回の目黒くんも、「コネ入社で、親は金持ち」という、象徴的な「承認のために働いている人」ですよね。

でも、目黒くんのように、失敗が多いせいでなかなか評価や承認がされないパターンってあるじゃないですか。

こういうタイプを、麻野さんはどう承認します?

麻野さん

ボクはね、あまりマネジメントが上手くいっていなかったときは、「いや結果出せよ。結果出せば承認されるんだから」って思ってました。

でも、結果を出すためには2つのパターンがあることに気づいたんです。1つは「結果を出す→承認される→モチベーションが上がる」というパターンですよね。

でも、今後必要になるのは、もう1つの「承認される→モチベーションが上がる→結果を出す」というパターンなんじゃないかなと。

大室さん

先にその人を承認する、ということですね?

麻野さん

そうです。「何もいいところがない人」なんていないじゃないですか

先にその人の特徴や能力、行動のなかで、「お前のこういうところはいいと思うよ」と思う部分を見つけて承認するのが大事だと思っています。

これを実践するようになってから、ウチの部署もいいサイクルが回り出しましたね。

大室さん

今回の目黒くんに必要だったのは、後者のパターンだったんでしょう。

なかなか仕事でいいサイクルに入っていない人は、1回の承認によって、大きくモチベーションが好転することもあるのかもしれませんね

「褒められたい病」に対する処方箋

麻野さん

というわけで、「褒められたい病」に対しての処方箋を出したいと思います。

ボクからの処方箋は、「あなたにも絶対いいところがある」です。

大室さん

なんか聞いたことあるぞ? (笑)

麻野さん

いやあのね、このドラマ『ハケン占い師アタル』のポスターに書いてあるキャッチコピーが、めちゃくちゃいいなと思ったんですよ。

あなたにも絶対いいところがある」って、まさに今回の処方箋にピッタリじゃないですか。

一人ひとりのいいところをちゃんと見つけて承認するというのが、この病に対する解決策なんじゃないかなと思います。

大室さん

置きにいってるな〜。麻野さんは、「ドラマのプロデューサーに褒められたい病」じゃないですか?(笑)

麻野さん

いやいや(笑)。大室さんの処方箋はなんですか?

大室さん

ボクは、「なんでそんなに褒められたいのか、しっかり考えよう」ですね。

「褒められたい」と感じるときって、自分の心のなかの何かが欠損している場合が多いんです。

なのでその原因にフォーカスしないと、「どれだけ褒められてもたりない」という状況に陥ってしまうこともあるんですよ。

麻野さん

「褒めてもらわないと何もできなくなってしまう」ということですね。

大室さん

そうです。承認欲求が肥大化しすぎて、何かに悪影響を与えるのはよくない。

その場合は、承認欲求を減らしていくことが解決策になっていくわけです。

麻野さん

どうやったら、承認欲求を減らしていけるんですか?

大室さん

自分の存在を肯定してくれる場を複数持つことですね。

たとえば、仕事のキャリアで争っていた女性が、結婚・出産をきっかけに、すごく丸くなる場合ってあるでしょ?

あれって、自分が「子どもを育てる」という役割と責任を担うことによって、人と比べるところから解放されるからだと思うんですよね。

もちろん、だからみんなが子を持とうという話ではないですけど。

麻野さん

ボクの部下にも、結婚したことで変わった社員がいた!

この前、全社でMVPをとった男性社員がいたんですけど、彼はこれまでずっとまわりの目を気にしていて、なかなかパフォーマンスがあがらなかったんですよ。

だけど、結婚してからは、周囲の目を過度に気にしすぎることなく、自分で決断できるように変わったんです

大室さん

今回は結婚を例にあげましたが、別に結婚じゃなくても、会社以外のコミュニティや友人関係で、自分のことを肯定してくれる場を持つことが「褒められたい病」には効くんじゃないかなと思いますね。

〈構成・文=小野瀬わかな(@wakana522)/編集=福田啄也(@fkd1111)〉

次回の放送は2019年1月31日(木)よる9時から!

部長の代々木(及川光博)に、特撮ヒーロー関連イベントの緊急コンペを押し付けられるDチーム。

コネ入社して以来、失敗続きで皆に認められたいお坊ちゃま社員・目黒(間宮祥太朗)が、自分が担当したいと言いだした。

周囲の心配もよそに、張り切りすぎて空回りし、問題をおこしまくる目黒。

そんな彼を手伝うよう、アタル(杉咲花)は上司からお願いされるのだが…!?

「職場の治療室 大室正志×麻野耕司」はVoicyでも配信中!

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