ビジネスパーソンインタビュー
「とりあえず3年」なんて言われるけど、実際
【座談会】「今月の給料は0円です」ブラック企業を早期退職した人たちはどうなった?
新R25編集部
新R25をご覧のみなさま初めまして、ライターの吉川ばんびと申します。
今年の4月から新社会人になった方は、そろそろ自分が働いている会社の“本当の姿”が見えてくる頃ですね。
「うちの会社、もしかしたら“ブラック企業”なのかも…」と思うことがあっても、明らかでない限りはその線引きは難しく、さらには「とりあえず3年」というフレーズも頭をかすめて動けない人が多いと思います。
かくいう私も、新卒でブラック企業に入社してしまった若者のひとり。入社してから辞めるまで、「続けるべき? 辞めるべき?」とひたすら悩んでいました。
入社してすぐ、ブラック企業の疑いがあった際にはどうすればいいのか。早期退職して、すぐ転職できるものなのか。
今回はリアルな体験をお伝えするべく、ブラック企業を早期で退職した経験を持つ方々にお話を伺ってきました。
▼1人目:おのさん(28歳)
【プロフィール】
現在の職種:コピーライター
ブラック企業での職種:広告営業
在籍期間:7カ月
一言メモ:勤めていた会社がブラック企業だとは思っているが、あまり悪口は言わない優しいタイプ。「もう少し円満に退社できたのでは?」と思うこともあるそう。
▼2人目:カオリさん(仮名)(26歳)
【プロフィール】
現在の職種:Web関連のツール販売
ブラック企業での職種:同じくWeb関連
在籍期間:5カ月
一言メモ:労働基準監督署にブラック企業のことを相談しに行くなど、行動力があるタイプ。顔出しがNGである壮絶な理由がこれから明らかに…。
▼3人目:吉川ばんび(26歳)
【プロフィール】
現在の職種:ライター
ブラック企業での職種:商社の営業事務
在籍期間:5カ月
一言メモ:新卒でブラック企業に入社してしまい、セクハラとパワハラに苦しんだ。ちなみに取材中、ホットティーを注文したらアイスティーが出てきたがそのまま飲んだ。
自分の会社はブラックだ!と気づいたきっかけは?
ライター・吉川
今日はお集まりいただきありがとうございます! さっそくなんですが、おふたりが「この会社はブラック企業かも」と気づいたのはどんなときですか?
カオリさん
入社が決まった後、夜中2〜3時までひっきりなしに連絡があったときですね。
おのさん
僕は、面接のときに「この会社はブラックやで」と面接官から言われました(笑)。
ライター・吉川
え、そんなことある⁉ ブラック企業だとわかって入社したんですか?
おのさん
僕はコピーライターになりたくて、まずは業界で経験を積むために広告会社に入ったんです。だから、ある程度は仕方ないと思っていたというか…
ライター・吉川
なるほど。おふたりとも労働時間は長かったですか?
カオリさん
9時出社から終電まで働くのは普通でしたね…
おのさん
僕もそんな感じです。それでも終わらないから、家でも仕事をしていました。
ライター・吉川
それが当たり前になってしまっているのが怖いですね。残業代は支給されるんですか?
カオリさん
出るわけないじゃないですか!
おのさん
うちもです!
愚問でした
ライター・吉川
やっぱりかー。私が新卒で入った会社でも残業代は当たり前のように出ませんでした。そんな環境に疑問を持った新入社員のひとりが「なぜこの会社は残業代が出ないんですか?」と会長に直接聞きまして…
おのさん
どうなったんですか?
ライター・吉川
会長がおもむろに財布から1万円札を1枚取り出して、「今までの分(残業代)だよ!!!」と怒鳴りながら、1万円札で顔をビンタしてました。
おのさん
ひどいし、そもそも圧倒的に足りない。
カオリさん
足りませんね(笑)。
笑ってはいけないような気もするがつい笑ってしまうふたり
最もブラックだと思ったエピソードは?
ライター・吉川
ちなみに、働いていて「この会社はブラックだ!」と一番強く思った出来事はなんでしたか?
おのさん
未経験入社という形で入ったのにほぼ指導されず、「わからない」と伝えても執拗に詰められただけだったことでしょうか。
ライター・吉川
あー、ブラック企業あるあるだ…
カオリさん
私は、Facebookメッセンジャーで「今月の給料は0円です」と社長から連絡が来たことですね。
ライター・吉川
なぜ⁉
思わず身を乗り出してしまった
カオリさん
入社時に「会社負担で社宅を借りてくれる」という話だったのですが、入居当日になって突然、「とりあえず、敷金礼金・家賃などにかかったお金を立て替えてほしい」と言われたんです。
ライター・吉川
ええ…いくら立て替えたんですか?
カオリさん
40万円です。「手持ちのお金では足りない」と伝えると、「じゃあ初任給から天引きで」ということになって、お給料が0円になったんです。
ライター・吉川
それ、立て替えではないですよね? 実質、引越しにかかった費用と家賃はすべて自己負担になってません?
カオリさん
はい、そうです。荷物をすべて新居に運び終わってから言われたため、もう後戻りもできず…
ライター・吉川
なにか行動を起こしたんですか?
カオリさん
はい。その時点で辞めることは決意して、労働基準監督署に行きました。けれど「ヘビーすぎて扱えないから、弁護士に相談するように」とアドバイスを受けました。
ライター・吉川
労働基準監督署がお手上げってどういうことなん…
カオリさん
弁護士に依頼して裁判をする予定なのですが、退職から1年経った今でも、まだ解決してません。
(そりゃ顔出しNGだわ…)
おのさん
吉川さんは?
ライター・吉川
入社1カ月経つか経たないかのときに、会社の役員から沖縄旅行に誘われたんですよ。
カオリさん
社員旅行ですか?
ライター・吉川
社員旅行ではなくプライベートで。「会社には内緒で」と言われました。
おのさん
行ったんですか?
ライター・吉川
さすがに断りました。ただ、そのせいでそれからめちゃくちゃ嫌がらせされましたね。私の所属部署の部長に「あいつにもっと負担かけろ」と指示したらしく、私だけ同期の5倍くらいの仕事量になりました。
カオリさん
うわ〜最低…
ライター・吉川
ムカついたので、朝は早くに出社して、お昼休みも取らずに猛スピードで仕事して定時で帰ってやったんです。そしたら翌日以降、さらに負担を増やされたのでさすがにうんざりして辞めました。
ブラック企業を辞めるのは一筋縄ではいかない?
ライター・吉川
ブラック企業に勤めていても、辞める決断をするまでに悩む人が多いと思うんですが、おふたりも悩まれましたか?
おのさん
僕はあくまでコピーライターになるための足がかりとして入社したところもあります。最初からいつかは辞めるつもりだったので、悩むことはありませんでしたね。
カオリさん
私は悩みました。社長が業界の人に退社した人の悪口をめちゃくちゃに言うのを見ていたので、「同じ業界で転職しづらくなるのでは」と心配でした。
ライター・吉川
社長、笑っちゃうくらい最低ですね。辞めることを会社に伝えたとき、あっさり辞められましたか?
おのさん
いえ。恫喝(どうかつ)されました。
ライター・吉川
恫喝って久しぶりに聞いた。
おのさん
大阪の会社に勤めていたんですが、「ええ加減なことしたら大阪の会社で働けなくしてやるからな」みたいなことを言われまして…
ライター・吉川
うわあ…ブラック企業を辞めると、もれなく“裏切り者”扱いを受けるのってなんでだろう。
カオリさん
裏切り者扱い受けますよね…! 私の場合は、入った会社の社長がSNSに没頭しているタイプで、ひどい目に遭いました。
ライター・吉川
そんなヒマそうな社長いるんですか⁉︎
カオリさん
はい。たとえば「金品を持って逃げた」とSNSにデマを流されましたね。実名まで出されて…
ライター・吉川
さっきから、ひとりだけヘビーすぎませんか?
カオリさん
勤めていたときも、常にSNSを監視されていて。ミスをすればSNSで名指しでネチネチ嫌味を書かれましたし、出社したら社長のパソコンに私のツイッターアカウントのトップページが表示されていたときは、さすがに気持ち悪かったですね。
カオリさんの横綱ブラックエピソードに引いているおのさん
「入社してすぐ辞めると転職できない」という言葉は本当か?
ライター・吉川
一般的に「入社してすぐに辞めると転職できない」と言われていますが、転職活動は難しかったですか?
カオリさん
私は、知り合いが同じ業界の会社を紹介してくれたので問題ありませんでした。
おのさん
僕は普通に面接を受けて転職しましたが、あっさり決まりました。おそらく会社の事情を鑑みて「これは辞めるのも仕方ない」と判断してくださったのかと。
ライター・吉川
ちなみに、転職先の待遇はブラック企業にいた頃と比べて良くなりました?
おのさん
僕は働く時間が短くなりましたし、月給も上がりました。
カオリさん
私もです!お給料は10万円くらい上がったかな。
ライター・吉川
転職大成功じゃないですか! ちなみに、私も5万円ほど月給が上がりました。
おそらくブラック企業では出なかった残業代が加算されたため、みなさんも給料が上がったのだろうと思います。ちなみに早期転職のデメリットは何かありましたか?
カオリさん
私はありませんでした。一概には言えませんが、事情次第だと思いますし、「どうして辞めたのか?」を面接のときにしっかりと説明できるのであれば、問題ないかと。
あとはスキルがあれば、勤続期間は関係ないと思います。
おのさん
僕もデメリットはありませんでした。新しい職場はみんな楽しそうに仕事をしているし、尊敬できる人がたくさんいて、なんだか余裕があるんですよ。
ライター・吉川
あー、たしかにブラック企業ってみんなイライラしてますよね。
ブラック企業を辞めるか悩んでいる人へのメッセージ
ライター・吉川
ブラック企業で働いているときは、心身ともに疲弊してしまって、辞めるかどうかを冷静に判断できなくなってしまうと思うんです。
いま悩んでいる人に向けて、何か伝えたいことはありますか?
おのさん
辞めてみると「あの状況はヤバかったんだな」と思うことがたくさん出てくるんですよ。
長期間ブラック企業で働いていると感覚が麻痺して、自分がどういう状況に置かれているかを考えられなくなってしまいました。
ライター・吉川
本当にそうなんですよね。極限状態のときって、ただただ目の前の仕事や生活をこなすことしか考えられなくなってしまいます。
おのさん
だから、定期的に友達に会って仕事の話をするとか、自分の抱えている負担に気付けるような環境をつくってほしいですね。会社なんか、辞めたって死なないんだし。
カオリさん
もし精神的に追い込まれてしんどいなら、なるべく早めに辞めるべきだと思います。会社は私たちを守ってくれないので、自分の身は自分で守りましょう。
ライター・吉川
ブラック企業は、私たちの人生については考えてくれないですもんね。
今日はいろんなお話が聞けてよかったです。ありがとうございました!
おわりに
ブラック企業を辞めるかどうか悩んでいる方にとって、少しでも参考になったでしょうか。
私もそうですが、早期退職したおふたりが転職に成功していることを考えると「とりあえず3年は続けろ」という言葉が通用した時代は、もう遠い昔のものなのかもしれません。
閉鎖的な空間で長時間労働や精神的ストレスにさらされているとき、人はなかなか冷静な判断をすることができないと思います。だからといって、ひたすら耐えるだけでは、状況を変えることはできません。
もし、今とても辛くて仕方がないのなら、「会社を辞めて転職できる」未来をイメージしてみませんか? ほんの少し前に足を踏み出すだけでも、見える景色が大きく変わるはずです。
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