極論、リーダーの仕事はこれだけ。
「それはえげつない独裁ですよ」小籔千豊にリーダーのあり方を相談したら、姿勢を正された
新R25編集部
現在ABEMAで放送中の番組『BAZOOKA!!!』。
「空気を読まないジャーナリズム番組」を標榜しており、「10文字猥談」「放送NG演芸」などエッジの効いた企画を繰り広げています。
新R25では、そんな『BAZOOKA!!!』とのコラボ企画として、「空気を読まない仕事論」を実施。『BAZOOKA!!!』キャストの方々に「これまでの仕事で、空気を読んで良かったこと」などについて聞いていきます。
今回のゲストは小籔千豊さんです。
【小籔千豊(こやぶ・かずとよ)】1973年、大阪府大阪市生まれ。NSC大阪12期生。吉本新喜劇を中心に活動し、2005年より座長に就任。また、2008年から野外イベント「コヤブソニック」を企画・主催するなど幅広いフィールドで活躍中
小籔さんといえば、番組MCはもちろん、音楽フェス「コヤブソニック」の企画運営や「吉本新喜劇」の座長など、各所で活躍する頼れるリーダー。
チームの空気を読むべきか、空気を読まずに自分の意見を主張するべきか…?
リーダーになりたてで悩める筆者が、小籔さんに“リーダーに必要な空気の読み方”を聞いたところ、早速一蹴されてしまいました…。
〈聞き手=福田啄也(新R25編集部)〉
“意識のグラデーション”を探らずにチームを引っ張ろうとするリーダーはただのエゴ
福田
じつは僕、最近リーダーになったばかりなのですが…
メンバーを前にするとつい空気を読んでしまい、チームをまとめることができなくて…自分が思った方向に走れないことにもどかしさを感じています。
小籔さん
…そもそも自分の意見でチームを同じ方向に向かわせようとするのが、エゴやと思いますわ。
えげつない“独裁”ですよ。
福田
独裁…たしかに「みんなで同じ目標を追いかけないと、組織は推進できない」って勝手に焦っていたかもしれません。
小籔さん
まず“空気を読む”の捉え方から間違ってると思います。
空気を読むっていうのは「人に気を遣う」という意味ではなく、メンバーそれぞれのバックグラウンド、現在の状態、将来をちゃんと把握することなんやないですかね。
小籔さん
メンバーのなかには、ほんまに組織のことを考えて働く人もおれば、「家計の足し」として割り切って働く人や「もう3カ月後、嫌やったら辞めんねん」って思ってる人もおる。
意識が違えば当然、「任せる仕事」も全員バラバラですよね。
福田
そうですね…それを全部同じ目線にまとめようとすること自体が間違っているのか…
小籔さん
そうです。メンバーの“意識のグラデーション”を探る。それがリーダーとして最初にやるべきこと。
それもせずに「みんなが同じ方向を向いていない」って悩むのは、傲慢やなって思いますね。
メンバーの“意識のグラデ”…ちゃんと探ろう
「コヤソニではスポンサーに一切迎合しない」みんなの“中間点”を見つける空気の読み方
小籔さん
リーダーって、上からも下からも板挟みになるじゃないですか。
僕の場合だと、吉本の社員でありながら「吉本新喜劇」の座長でもある。
吉本のお偉いさんから「もっとこうせえ」って言われることもあるし、座員からは「こんなんできません」って言われることもある。
福田
わかります…
小籔さん
そのなかでリーダーとして本当に大事な仕事って、それぞれの“中間点”を定めることやと思うんですよ。
小籔さん
これはちょうど「コヤブソニック」を運営していたときなんですけど…
※コヤブソニックとは…2008年〜2014年、2017年〜2019年に開催されていた、小籔さん主催の音楽フェスティバル。音楽だけでなくお笑いにも重点を置き、音楽の合間に芸人がネタを披露するなど、異色の音楽イベント。通称「コヤソニ」
小籔さん
コヤソニって、アーティストさん・お客さん・吉本・スポンサーさんと、とにかく多くの人が関わるんですよ。そして、みんなが好き勝手言うんです。
吉本からは「赤字にせんといてくれ」って言われるし、スポンサーさんは広告費を下げたいし、お客さんはチケットが安ければ安いほどうれしいなんて言う。
福田
まさに板挟みですね…
小籔さん
だからこそ、コヤソニに関わるすべての立場から見たメリットの、ちょうど間を取らなあかんですよね。
みんなにちょっとずつ迷惑かけながらも、「この内容なら、参加してよかったな」って思ってもらえる中間点を見つけるんです。
小籔さん
極論、リーダーの仕事はこれだけなんですよ。
そして、みんなのことをとにかく考えぬいて「これや!」って決めた中間点からは絶対に動かさないこと。決めたあとは誰にも迎合しちゃいけない。
福田
ものすごい巨大スポンサーから「もうちょい値下げしてくれ」と言われても?
小籔さん
NO。
福田
大手事務所から「売り出し中のアーティストを出してくれ」と言われても?
小籔さん
NO。
頑なにNO
小籔さん
揉めてもいいんです。
権力者が私利私欲で「Aにしたい」とか言ってきたとしても、俺がトータルみんなのことを考えてBやと思ったなら「いや、絶対Bやと思います」って言い返さな。
ここで「俺も儲かるからA」って言ってたらあかんのですよ。
福田
強いな…
どうやったら、その境地にいけるんでしょうか?
小籔さん
迷わず「みんなのため」と思う“公の心”を持てるまで、私心をなくす。
リーダーは、天照大御神(アマテラスオオミカミ)と大国主命(オオクニヌシノミコト)に挟まれてると思ってください。
?
小籔さん
神様に「お前、ホンマに自分の利益を考えてへんか?」と聞かれても、「はい、僕の心に嘘偽りないです」って言えるぐらいじゃないといけませんってことです。
そんなレベルに挟まれたら、絶対に嘘なんてつけないでしょう?
独特な自戒の話でした
小籔さん
リーダーは空気を読んで中間点を決める。そして、そこからは空気を読まずに迎合しない。
この使い分けなんでしょうね。
「『すべらない話』にすべりに行った」芸人・小籔千豊の勝負では空気を読まない
小籔さん
ただね、これはリーダーの立場だから言えることで…
一人のプレイヤーとしては、空気を読まずに前に出たほうがいいタイミングもあると思ってるんです。
福田
小籔さんにとって、「空気を読まなくてよかった」と思うタイミングはいつなんですか?
小籔さん
『人志松本のすべらない話』に初めて出演したときですね。
本来テレビに出るからには、お客さんにウケる話をするべきなんですけど…視聴者・フジテレビのことを一切考えずに「松本さんだけに突き刺さる話」で勝負したんですよ。
福田
おお…お客さんが理解できなくてもいいと。
ちなみに、どんな話をしたんですか?
小籔さん
憧れのキョンキョン(小泉今日子さん)から「芸人さんってすごいよね」とホメられて、咄嗟に「アホの坂田師匠とかすごいんですよ」と言ったら…
その直後にテレビで坂田師匠の奇行が映し出されて、キョンキョンが見たこともない形相でそれを観ていたという話です。
小籔さんのその後を大きく変えた話。くわしくは『人志松本のすべらない話 ザ・ゴールデン』のDVDをご覧ください。めちゃくちゃ笑いました
小籔さん
そのころの僕は東京のテレビにほとんど出たことがなかったし、松本さんと仕事したこともなかったんですよ。
なのに突然、『すべらない話』がゴールデン初放送のタイミングで呼ばれた。
出演者はすでに売れてる芸人ばかりで、まったく知名度がないのは僕だけやったんですね。
福田
最初はそんな状態だったんですね…
小籔さん
緊張でガタガタ震えてたんですけど…
だんだん「俺を呼んだフジテレビが悪いやんけ」と腹立ってきて。「松本人志の前でおもろい話してすべらない…いや無理やろ」って。
そこで「俺はすべってええねん」って開き直ったんですよね。
福田
松本さんの前で、すべらないように上手く話せるほうがおかしいと。
小籔さん
そうです。田舎の弱小高校球児が、急に「ヤンキー・スタジアムで打席に立て」って言われたようなもんじゃないですか。
だから、どうせ三振するんだったら、せめて記憶に残るプレーをしようと思って、僕は「松本さんの脳味噌に傷をつけよう」と考えたんです。
たとえがいちいちしっくりくるんだよなあ…
福田
リーダーとしてはめちゃくちゃ空気を読むけど…
いちプレイヤーとしては、空気を読まずにキッカケを掴みにいくのも大事なんですね。
小籔さん
そう思います。
千鳥とかかまいたちみたいに、最初は空気を読まずに前に出るような“ちょっとイタい”ぐらいの芸人じゃないと、売れるキッカケを掴めない。
今は、後輩たちに空気を読まずに前に出てもらうために、空気を読んでるところもありますね。僕も、いっぱい助けてもらった過去があるので。
小籔さんがMCで人の面白さを引き出せる理由が、少しわかった気がする
空気を読む、読まないを抜群のバランス感覚でこなす小籔さん。
本来は空気を読む側の人間であると自認しつつ、芸人として前に出るべき場面を経験してきたからこそ培われてきたスキルなのかもしれません。
空気を読むのも読まないのも、関わるみんなにとっての最適解を探り当てる手段。そんな姿勢を貫く小籔さんに、リーダーとしての在り方のヒントをもらいました。
〈取材・編集=福田啄也(@fkd1111)/文=ケイ・ライターズクラブ/編集=山田三奈(@l_okbj)/撮影=長谷英史(@hasehidephoto)〉
禁断のジャーナリズムバラエティ「BAZOOKA!!!」がABEMAで復活!
2011年から2019年までBSスカパー!で放送され、過激な企画が話題を集めた番組『BAZOOKA!!!』が6月からABEMAで復活。絶賛放送中です。
小籔さんがドラムを担当するスーパーバンド「ジェニーハイ」が誕生したきっかけともなったこの番組。
ABEMA版では小籔さんがMCを務めるほか、くっきー!(野性爆弾)、中嶋イッキュウ(tricot)といったおなじみの面子に加え、新メンバーも参戦。
モデルで女優の“キコキコ”こと水原希子と、復活第1回から生まれたままの姿を晒すことになった格闘家・平本蓮が早速大活躍しています。
名物企画「高校生RAP選手権」をはじめ、ほかでは見られないアブない企画を続々オンエア。放送をお見逃しなく!
小籔千豊さんの「直筆サイン入りチェキ」を3名様にプレゼント!
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