ビジネスパーソンインタビュー
【ミエルTV】危機感を大きな可能性に。テレビCMを“Web広告化”させた3社の共闘【AJA×ソニーマーケティング×日本テレビ(前編)】
新R25編集部
「テレビCMは効果が見えづらい」「一度出稿したら、結果が出るまで修正できない」。そんな長年の常識を覆すサービスが登場しました。その名も「ミエルTV」。
AJA(サイバーエージェントグループ)、ソニーマーケティング、日本テレビの3社が連携して開発したこのサービスは、テレビCMの効果をリアルタイムに可視化し、WEB広告のように運用することを可能にしました。
なぜアドテク企業、メーカー、テレビ局がタッグを組んだのか? そして、テレビCMはこれからどう変わっていくのか?
プロジェクトの中心人物であるAJAの植松このみさん、ソニーマーケティングの小島悠さん、日本テレビの佐合駿さんに、その画期的な仕組みと開発の裏側を伺いました。
〈聞き手=渡辺将基(新R25編集長)〉
左=小島悠さん(ソニーマーケティング株式会社 事業開発センター 事業推進部)/中央=植松このみさん(株式会社AJA 「ミエルTV」責任者)/右=佐合駿さん(日本テレビ放送網株式会社 営業局 営業戦略センター アドリーチマックス部)
テレビCMの効果を可視化し、リアルタイムに運用できる「ミエルTV」

渡辺
本日はよろしくお願いします。早速ですが、今回3社で立ち上げた「ミエルTV」について教えてください。
ひと言でいうと、どんなサービスなんでしょうか?

植松さん(AJA)
「ミエルTV」は、テレビCMの効果を可視化して、放送中に運用できるサービスです。
これまでテレビCMって、放送した後に「結局どうだったの?」という効果計測が難しかったり、放送期間中にクリエイティブ(素材)を変更したりすることができなかったんです。


渡辺
たしかに。テレビCMは大きな反響が見込める一方で、“やりっぱなし”なイメージがありますね。

植松さん(AJA)
そうなんです。そこを解決するために、日本テレビさん、ソニーマーケティングさんと連携して開発したのが「ミエルTV」です。
「ミエルTV」ならテレビCMの効果がタイムリーに見えて、しかもその数字を見ながらリアルタイムに運用ができます。

渡辺
「運用型テレビCM」という言葉は2020年頃から聞いていた気がするんですが、それとは何が違うんでしょうか?

植松さん(AJA)
今まで「運用型テレビCM」と謳われていたサービスは既存のテレビCM枠の「スポット在庫」を買い付けていたので、結局1〜2カ月前には発注が必要だったんです。
なので、「効果が悪かったから枠やクリエイティブを変えよう」と思っても、実際に変えられるのは1〜2カ月後になってしまう。


渡辺
効果が見えてからクリエイティブや枠を変えようとしても、実際に反映できるまでにはタイムラグがあったと。

植松さん(AJA)
おっしゃるとおりです。
「ミエルTV」は、日本テレビさんが開発した新しい広告枠の取引基盤を使うことで、リアルタイムに近い形でCMの効果を見て、買い付け枠の変更やクリエイティブの差し替えができるサービスになっています。

渡辺
なるほど。事後にデータ分析ができるだけではなく、テレビCMを買い付ける仕組みそのものをWeb広告のように変えたということなんですね。
「このままでは忘れ去られる」日本テレビの危機感から始まった一大プロジェクト

渡辺
このプロジェクトは3社の共同プロジェクトとのことですが、どういったきっかけで始まったんでしょうか?

佐合さん(日本テレビ)
起点は我々(日本テレビ)です。
テレビがこのまま旧来のCMの売り方を続けていたら、いずれ進化していくデジタル広告に完全に置いていかれて、「オールドメディア」として忘れ去られてしまう。
そんな危機感のなか、テレビ局の若手が集まって出てきた案のひとつが「Ad Reach MAX(アドリーチマックス)」という構想でした。


渡辺
その「アドリーチマックス」が「ミエルTV」の土台になっていると伺いました。それはどういったものなんでしょうか?

佐合さん(日本テレビ)
「アドリーチマックス」は、テレビCMの枠をWeb広告のように柔軟に取引できるプラットフォームです。
今までは「一回発注したら決まった通りに流れる」のがテレビCMでしたが、それをリアルタイムビディング(RTB)、つまりオークション形式で柔軟に買えるようにしました。

渡辺
テレビの枠をオークション形式で買う… 放送局がそれを実現させるのは相当大変なイメージがあります。

佐合さん(日本テレビ)
そうなんです。これを可能にするには、放送設備自体を変える必要がありました。
旧来の放送設備には、「この素材をいつ流す」というのが決まった状態でデータが入っていたんですが、今回の構想のために、放送直前で「どの素材を流すか」を決定できるアドサーバーを新しくつくり直したんです。


渡辺
「放送直前」というのは、具体的にどれくらいでしょうか?

佐合さん(日本テレビ)
「アドリーチマックス」では、放送の3秒前にオークション処理が始まり、放送する素材を決定しています。

渡辺
ミスや事故が許されないテレビCMで、放送3秒前に…! それはすごいですね。

佐合さん(日本テレビ)
ありがとうございます。開発やテストにはかなりの時間をかけました。
Web広告のような「見える化」を可能にしたソニーマーケティングの技術力


渡辺
その土台の上に、ソニーマーケティングさんとAJAさんが加わって「ミエルTV」ができたわけですね。

佐合さん(日本テレビ)
そうです。「アドリーチマックス」はあくまでもテレビCMの枠を取引できる“プラットフォーム”なので、それ単体でサービスは成立しません。
「ミエルTV」を形にするためには、それに加えて高度な分析や効果測定機能、そしてサービスをお客様に導入するパートナーが必要でした。

渡辺
技術パートナーであるソニーマーケティングさんは、具体的にどんな役割を担っているんでしょうか?

小島さん(ソニーマーケティング)
我々(ソニーマーケティング)は、ユーザーの許諾をいただいたテレビ機器経由で、視聴者がいつ・どんな番組を見ていたかというデータを毎秒単位で大規模に分析できる環境を整えています。
「ミエルTV」においては、その分析結果を見ながらテレビCMをオンラインで運用できるシステムの開発を担当しています。


渡辺
なるほど。そのデータとシステムがあるから、視聴者の“見える化”とテレビCMの運用が実現できていると。

小島さん(ソニーマーケティング)
はい。さらに我々は「アクション指標」も重視していて、Web広告でいうコンバージョンのように、「この番組のCM枠を見た人がどういう行動を取ったか」を計測して、次の番組選びに活かしていただく分析機能も提供しています。

渡辺
そこまで“見える化”できるんですか。
本当にWeb広告に近い分析・運用が可能になっているんですね。
アドテク企業・AJAが「テレビCM」を運用できるようになる意義

渡辺
AJAさんはもともと「インクリー」というサービスでCTV(コネクテッドテレビ)の広告配信に取り組んでいましたが、テレビCMにまで配信先を広げたいという思いは持っていたんでしょうか?

植松さん(AJA)
はい。やはりテレビデバイスで一番市場が大きいのはテレビCMですし、テレビならではの「信頼感」が持つ価値は大きいと思います。
私自身もそうなんですが、「テレビCMをやっているサービスなら安心できるな」という視聴者心理って、いまだに強くあるじゃないですか。


渡辺
たしかに。「テレビで見た」という事実は、ブランドへの信頼に直結しますね。

植松さん(AJA)
それに、テレビCMはWeb広告と違ってスキップされにくいので、しっかり情報を届けられるという強みもあります。
だからこそ、テレビの信頼感とリーチ力はそのままに、Web広告のような運用を実現したかったんです。テレビとWebを横断で運用・評価できるようになれば、広告主にとってすごくメリットがあるんじゃないかと。

渡辺
たしかに。「マスデジ」なんて言葉も流行ってますけど、最近はマス広告とデジタル広告を切り離さずに、それぞれを統合して効率的に成果を出すマーケティングが主流になってますよね。
「ミエルTV」が3社にとってどんな意味を持つサービスなのか、そしてこのサービスにかける本気度がよくわかりました。

テレビCMを「枠を買って流すだけ」のものから、「データを元にリアルタイムで運用するもの」へ。日本テレビの危機感から始まったこのプロジェクトは、ソニーマーケティングの技術力とAJAの運用力が加わることで、テレビ業界に新しい風を吹き込んでいます。
しかし、開発の過程において、大企業同士の連携につきものの「壁」はなかったのでしょうか?
後編では、3社がお互いをどう評価しているのか、そして「ミエルTV」が目指すテレビ広告の未来について、さらに深掘りしていきます。
〈取材・文=渡辺将基(新R25編集長)/写真=柴田将馬〉

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【ミエルTV】危機感を大きな可能性に。テレビCMを“Web広告化”させた3社の共闘【AJA×ソニーマーケティング×日本テレビ(前編)】
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