田中研之輔著『キャリア・ワークアウト』より

「35歳以上の転職は難しい」は偏見。行き詰まりを感じる「キャリア・プラトー」からの抜け出し方

仕事
「出世ルートから外れた」「いいポジションにつけない」といった、キャリアの行き詰まり・停滞感から転職を考えている方はいませんか?

しかし、すぐ転職に踏み切るのはもったいないかもしれません。

法政大学キャリアデザイン学部教授であり一般社団法人プロティアン・キャリア協会で代表理事を務める田中研之輔(たなか・けんのすけ)さんの著書『キャリア・ワークアウト』によると、行き詰まりや停滞感から抜け出すためにはキャリアに関する価値観の転換が必要になるそうです。

今回は、キャリアに関する価値観を転換していく方法や考え方について、一部抜粋。考え方を少し変化させるだけで、キャリアに関する悩みを解決することができるそうです。
この記事はこんな人におすすめ(読了目安:5分)
・キャリアについて悩んでいる人
・転職を考えている人

キャリアの行き詰まりや停滞感を感じている

経験を積んでいくうちに、「組織の中で出世して活躍したい」「いいポジションに就きたい」という思いが芽生える人は、少なくないでしょう。

しかし、誰もがそうした機会やポジションを得られるわけではありません。

自分の望みとは反対に、出世のルートから外れることもあります。

この場合に、「キャリア・プラトー(キャリア形成がうまくいかず、行き詰まりを感じている状態)」に陥りがちです。

組織の中で長く働いていると、組織内での昇進や昇格、地位の向上が働く目的となり、その目的が達成できないことに、大きな挫折感を抱くからです。

この状態から抜け出すために必要なのは、キャリアに対する価値観の転換

昇進や昇格が働く目的になるということは、「組織に自分の仕事人生をささげている」と言っても過言ではありません。

本来、キャリアは組織に預けるものではなく、自分で育て、つくり上げていくものです。

昇進や昇格の硬直化が原因で「キャリア・プラトー」に陥っている場合は、キャリアを組織に預けるのではなく、自分で築いていく意志と行動が必要になってきます。

“未来戦略”でキャリア・プラトーから脱却

キャリアに行き詰まったり、停滞感を覚えたりしたときには、自己否定の代わりにやってほしいことがあります。

それが「未来戦略」です。

キャリアに行き詰まった原因を追及して、自分を責めたり後悔したりするのではなく、どうやってその課題を解決していくのか。

「未来志向」「解決志向」で戦略を立てることがすべきことです。

キャリアを組織に預けている「組織依存」の状態から抜け出すためには、これからどう行動するのかを、自分の力で戦略的に考える必要があります。

キャリアに行き詰まったときや、壁にぶつかったときに取り組める「キャリア・ワークアウト」を紹介するので、ぜひ取り組んでみてください。
① 下記ワークシートに、直面しているキャリアの課題を箇条書きで記入。
ex.営業から人事への異動、営業として昇進する道が消えた
きっかけになった出来事や、何が問題でキャリアに行き詰まっているのかなどを考え、キャリアの「ブレーキ」となっている点を書き出す。

② キャリアの「ブレーキ」となっている課題に対して、どう行動すれば自分の気持ちが晴れるのかを考え、今の状況から抜け出すための「アクセル」となる行動を記入する。

②で書き出した行動を実行する
ex.辞令は覆らないだろう。だったら転職? まずは、この異動で何を求められているのかも含めて聞いてみよう

出典 キャリア・ワークアウト

出典

キャリア・ワークアウト

キャリアは自分の意思で決める

行き詰まりをきっかけに転職をすることで、自分のキャリアを切り開く経験をしたほうがいいのではないか。

転職という悩みは、キャリアを重ねていくうちに多くの人が抱える悩みだと思います。

この悩みに対して、「どちらを選ぶのが正解か」を知りたい気持ちは分かりますが、自分で納得をしてキャリアを選択していくことを重視しましょう。

なぜなら、キャリアのオーナーは「自分」です。

自分のキャリアに対して決定権を持ち、誰かの意見ではなく自分の意志に従ってキャリアを築いていくこと──つまり「キャリア・オーナーシップ」を持つことが重要です。

転職は、自分が納得して働くための1つの手段にすぎません。

まずは、世間や誰かの価値観に合わせるのではなく、自分自身の気持ちを軸にキャリアを考えてみてください。

自分を前に進められるものは、自分自身の「納得感」しかないのです。

この考え方を前提として、転職を迷っているときには次の視点で検討してみましょう。

転職するかどうかを見極めるポイントは、「今の会社で得られる資本を、最大限に活用し切ったかどうか」です。

「資本」とは、毎月支払われる給料のことではなく、今の会社で働くことで得られるスキルやネットワークのことを指します。

長期間同じ仕事に携わり、知識やスキルの向上が頭打ちだと感じたり、固定化した人間関係が続いたりすると、「転職」の2文字が頭に浮かぶこともあるでしょう。

その際には、「今の会社で自分が成長できるかどうか」を軸に考え、まだまだ今の会社で獲得したいスキルや築いていきたい人間関係があると判断したなら、どうやってそれを獲得していくのか戦略を練りましょう。

異動願いを出して自ら変化を起こしていったり、新規プロジェクトに立候補したりするなど、今いる会社で獲得できる資本を最大限に活用する方法を考えるのです。

転職は選択肢のうちの1つに過ぎないのです。

キャリア・ブレーキをかけない

また、「キャリア・プラトー」に陥っている場合以外に、年齢から転職を迷う方がいます。

世間に広がる「35歳以上は転職しづらくなる」という意見です。

しかし、「年齢」で「キャリア・ブレーキ」をかけてはいけません。

特に日本は、海外と比べると同質性が高いため、あらゆる意思決定の場面で「年齢」が判断軸となる傾向があります。

例えば、18歳で大学に入学し、就活解禁日に一斉に就職活動がスタート。

そして大学を卒業して22歳で社会人デビューというように、年齢を基準に他の人と歩調を合わせることが当たり前になっています。

少しずつキャリア形成の在り方が多様化しているとはいえ、同学年や同期というグループの大半が、同じ年齢のメンバーによって構成されています。

定年退職制度も同様です。

「上司は◯歳で昇進した。だから自分もそれまでに昇進しなければ」「後輩は◯歳で今のポジションに就いたのに、自分はまだ結果を出せていない」

こうした何気ない思考も、年齢を基準にした「アンコンシャス・バイアス」(=無意識の偏見)だといえます。

「35歳からの転職は難しい」といった通説も、アンコンシャスバイアスの一種。

いつの間にか、私たちは年齢でキャリアを判断しているのです。

子育てや介護のタイミングは人それぞれ。

病気やケガ、事故などによって、働けなくなる期間が生じることもあるでしょう。

私たちは、一人ひとり違う人生を歩んでいます。

大切なことは、自分自身が年齢をどう捉え、どう向き合っていくかです。

「〇歳だからできない」と考えることは、根拠のないバイアスにすぎません。

この機会に、主体的な働き方によって自分で定義していきましょう。

まずは、年齢で自分のキャリアにブレーキをかけないことと、関わり合う人のキャリアを年齢で判断しないことを心掛けてみてください。

年齢に関する無意識の偏見で、キャリアにブレーキをかける必要はありません。

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