ビジネスパーソンインタビュー
齋藤孝著『頭の良い人がやっている「調べ方」究極のコツ 仕事も人生もうまくいく!大人の探究学習』より
答えにたどり着きやすい「検索」ワードとは? ビジネスで重宝する“正しい情報の調べ方”3選
新R25編集部
「日々刻々と世界情勢が変化する現代においては、正しい情報を調べて、考える事が重要である。この行為こそが、正しく判断するための第一歩となるのです」
そう話すのは、明治大学文学部教授の齋藤孝さん。
齋藤さんの著書『頭の良い人がやっている「調べ方」究極のコツ 仕事も人生もうまくいく!大人の探究学習』では、正しく調べて考えるノウハウを紹介しています。
今回は同書より、ビジネスパーソンに必要な調べ方について一部抜粋。
ビジネスチャンスを見つけたり、新規戦略を立てたりする際に重宝するかもしれません…!
この記事はこんな人におすすめ(読了目安:5分)
・正しい調べる方を知りたい人
・調べる力を大人向けに成長させたい人
・発言に説得力を持たせたいビジネスパーソン
子供も大人も探求学習
新型コロナウイルスやロシアによるウクライナへの軍事侵攻といった激しい時代状況を踏まえ、学校教育の現場では新たな課題として「探究学習」が掲げられています。
文部科学省のホームページには、探究学習について、次のような解説があります。
総合的な学習(探究)の時間は、変化の激しい社会に対応して、探究的な見方・考え方を働かせ、横断的・総合的な学習を行うことを通して、よりよく課題を解決し、自己の生き方を考えていくための資質・能力を育成することを目標にしていることから、これからの時代においてますます重要な役割を果たすものである。
「知識を身に付ければ社会で通用する」という教育法は限界を迎えています。
自分で課題を見つけ、自分で解決するために調べて分析したり、周りの人たちとコミュニケーションを取ったりする力が重視されているのです。
もちろん大人も例外ではありませんし、今から学び直しても遅くはありません。
読者の皆さんは、小学校に通っていた頃などに、さまざまな場面で「調べ方」を学んだ経験をお持ちのことでしょう。
社会科で郷土の歴史を発表し、理科で実験の原理を探り、夏休みに自由研究をする経験などを通じて、おおいに探究心を養ったはずです。
こうした「調べる力」を、大人向けにバージョンアップさせましょう。
自分で課題を設定し、仮説を立て、それが正しいかどうかを調べて検証し、商品の企画や業務の改善に生かしていく――。
そういった新しい知の基本技能、言い換えるなら「大人の探究学習」を提案することが、本書の目的です。
探究学習を通じて「調べる力」が身に付けば、情報を見聞きしたときに、事実と意見をきちんと区別し、正しい事実に基づいて判断できるようになります。
また、調べる力は、調べた情報を発信する行為とも密接な関わりがあります。
今は「1億総コメンテーター」とも呼びたくなるほどに発信が盛んな世の中になっています。
誰もが自由にコメントできるのは喜ばしいことである半面、発信の仕方によっては大きなリスクが発生する可能性があります。
思い込みや偏見で安易に間違った情報を発信すると、人を傷付ける恐れもありますし、非難を受けることにもなりかねません。
正しい情報を確認しておけば、思考が客観的、論理的になって、誹謗中傷や偏見に基づく発信を回避できるようになります。
また、こうして知性のブレーキをかけながら表現活動をコントロールすることで、発信者としての信頼度を高めることもできるのです。
調べ方① 統計データを見る
調べることの基本は「統計データを見ること」です。
統計データに基づいた正しい情報を口にすることで、発言に説得力が生まれます。
また、それをしっかり分析すれば、ビジネスにおいて正しい判断をすることもできます。
ですから、常に統計データを参照し、それに基づいて思考する習慣を身に付けたいものです。
そこで、統計データの読み方について、具体例を挙げながらお話ししたいと思います。
最初に取り上げるのは、日本の犯罪の件数です。
読者の皆さんは、日本で強盗や暴力行為、放火や詐欺といった刑法犯が増えていると感じているでしょうか、それとも減っていると感じているでしょうか。
テレビやネットのニュースを見ていると、無差別殺傷事件やビル放火事件、あおり運転や飲酒運転による死亡事故などが報じられることがあります。
そういったショッキングなニュースを目にすると、「普通に電車に乗っているだけで襲われるなんて怖い。昔はこんな物騒な事件はなかったはず」「最近、凶悪な事件が増えているんじゃないか」と思うことがあります。
しかし、印象だけで発言する前に、統計データに当たってみることが大切です。
刑法犯の件数に関しては、法務省が毎年「犯罪白書」を発表しており、法務省のホームページからダウンロードできます。
このデータを見れば、法犯認知件数は平成14年(2002年)をピークに18年連続で減少しており、殺人に限っても近年は戦後最低レベルで推移しています。
「少年の犯罪が増えている」というコメントが間違っていることが一目瞭然でしょう。
印象だけで判断せず、統計データを確かめてみることが重要です。
調べ方② 3つのキーワードで検索
検索で必要な情報を見つけ出すスピードは、実は検索ワードを選択する能力に掛かっています。
たとえば、旅行先で名物のおそばを食べたいとき、私たちは「〇〇(地名) そば 名店」などと検索してお店を探すことがあります。
検索ワードを間違えると、なかなかお店が見つからないことになります。
現代人は日常的に検索をしていますから、検索ワードのセンスがある人とない人では、得られる情報に決定的な差が付いてしまうわけです。
私は現在、仕事中や雑談中を含め、1日に100回くらい検索する生活を送っており、今では検索ワードを選ぶセンスが身に付いて、検索スピードも相当速くなりました。
私の体験から断言できるのは、検索のセンスは誰でもトレーニングしだいで磨くことができる、ということです。
ゲーム感覚でワードセンスを磨く方法があります。
私は大学の授業で、学生たちを4人1組のグループに分けて、「3つのワードを使って、誰が一番質の高い情報を引き出せるか」という課題にゲーム感覚で取り組んでもらうことがあります。
たとえば、学生たちに「重力波の発見について調べてください」というお題を与えて、制限時間を設けて3つのワードで検索してもらいます。
検索を続けるうちに、有益な情報を得て理解を深める学生が特定数で現れます。
そこでその人に「どんなワードで何を検索したか」を共有してもらいます。
すると、「なるほど、そういうワードを使う手があったか」「いいセンスしてるね」などと盛り上がり、学生全員の大きな学びになるのです。
まずは、1つのことについて、興味に任せて片っ端から検索してみましょう。
自分の好きな分野で構いません。
1時間も続けているうちに慣れてきます。
そして、これを続けるうちに検索ワードのセンスが向上して、時間と労力を減らせるようになるでしょう。
調べ方③ ギブアンドテイク
今や情報は、金銭を超える価値を持っています。
自分が持っている情報は開示したくないけれど、他人が持っている情報は手に入れたいというのは、少し虫が良すぎるのではないでしょうか。
自分が持っている情報については、ケチらないでどんどん手渡していくことが重要です。
情報は最上の贈り物にもなりますし、ギブアンドテイクで価値ある情報を与えた人には、感謝のしるしとして相手から別の価値ある情報が返ってくることもあります。
むしろ、最初の頃はギブが先行するくらいでもよいでしょう。
普段から、周りの人に有意義な情報を与えることを習慣付けていれば、「〇〇さん、▢▢のこと知りたがっていたよね。最近、たまたま情報を見つけたんだけど……」などと声を掛けてもらえるようにもなり、良好な人間関係も手に入ります。
情報をやり取りできる人間関係を持っている人は、仕事で大きな成果を上げているのです。
情報をシェアするお手本として、X線を発見したヴィルヘルム・レントゲンの業績をご紹介しましょう。
ドイツの物理学者であるレントゲンは、X線を発見した功績で第1回ノーベル物理学賞を受賞しました。
現代の医療技術の多くは、彼の功績によってもたらされたといってもよいくらいのめざましい業績です。
レントゲンが素晴らしかったのは、科学の発展は万人のためにあると考え、X線の特許は取得せず、個人的な利益を得ようとしなかったことです。
彼はノーベル賞の賞金も大学に寄付しています。
このエピソードを聞いたら、私たちは自分の情報を出し惜しむ気になどなれないはずです。
情報は与える人に返ってくる性質があります。
オープンなマインドで情報をシェアする人のもとには、周りの人からさまざまな情報が集まります。
ですから、調べた情報をシェアするのは自分のためでもあるのです。
国内外へ影響を与えるような人の「調べ方」について学べる本
「知性はスポーツの練習と似ています。練習を重ねればスポーツの技術が向上していくように、探究学習をすればするほど知性は確実に伸びていきます」と話す齋藤さん。
あらゆる情報が行き交う現代において正しい情報をつかむ能力は必須となりますが、その能力は自分で鍛えることができるのです。
同書では、「調べる力」から「データ活用法」まで包括した内容を取り扱っています。この機会に、先人たちの「調べ方」について学んでみてはいかがでしょうか?
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