ビジネスパーソンインタビュー
齋藤孝著『頭の良い人がやっている「調べ方」究極のコツ 仕事も人生もうまくいく!大人の探究学習』より
日本初の地下鉄完成には“豆”が貢献? 国内外の偉人たちが実践した、驚くべき「調べ方」
新R25編集部
プロ野球監督・野村克也、地下鉄の父・早川徳次、東宝創設者・小林一三、看護師・ナイティンゲール。
この方たちに共通することが何かわかりますか?
それは、全員“調べる達人”だったということです。
明治大学文学部教授の齋藤孝さんの著書『頭の良い人がやっている「調べ方」究極のコツ 仕事も人生もうまくいく!大人の探究学習』では、そんな数々の達人たちの調べ方について学ぶことができます。
今回は、厳選した4名の達人について一部抜粋してご紹介。
世界に名を馳せる偉人たちは、調べることの基本を怠りませんでした。
この記事はこんな人におすすめ(読了目安:5分)
・達人たちの調べ方を知りたい人
・発言に説得力を持たせたいビジネスパーソン
達人① データ収集の天才 野村監督
データを記録して日々の仕事に活用したという点で、非常に参考になる達人として挙げたいのが野村克也です。
野村は南海(現・福岡ソフトバンクホークス)、ロッテ、西武の3球団を渡り歩き、実働26年も現役生活を送った日本を代表するプロ野球選手です。
彼はプレイヤーとして華々しい記録の数々を打ち立てつつ、現役時代からプレーイングマネージャーとしてチームを指揮し、ヤクルト、阪神、楽天などの監督を歴任しました。
しかし、もともと打撃面ではカーブなどの変化球を苦手としており、守備面では肩がそれほど強くないという弱点を抱えていました。
それらの弱点を克服するために数々の探究を行ってきたのです。
野村にはメモを取る習慣があり、主に相手打者の長所、短所、投手のクセなどを毎日メモしていました。
投手のクセというのは、たとえば「ワインドアップで帽子のマークが見えないとストレート、見えるとカーブ。はっきりと見える時は100%カーブ。」といったものです。
クセがわかれば、攻略の大きな糸口になります。
特に投手のクセは短期間で変わるので、メモをまとめたノートを見直し、その都度、変更点を書き込んでいたといいます。
ノートに調べた情報をまとめるというのは、非常に良い習慣だと思います。
ルーズリーフを使うのも悪くないですが、私の周りにはノート派の人が多い印象があります。
厚すぎず重すぎないノートを使い、毎回ナンバリングしていくとあとで活用しやすいと思います。
また、一度ノートを取って終わりではなく、情報が更新されたら修正してバージョンアップしていた点も、私たちが学べる重要なポイントといえます。
達人② 自力でデータを手に入れた“地下鉄の父”
自分自身の力で手に入れたデータが力を持つ。
大事業の達成を通じて、これを証明してくれた人物が早川徳次(はやかわ・のりつぐ)です。
早川は、東京地下鉄道の専務取締役として日本で初めての地下鉄開業のために尽力し、「地下鉄の父」と呼ばれた人物です。
当時、東京の路面電車は慢性的に混雑しており、交通機関として十分に機能していない状況にありました。
早川は、この問題を解消する手段が地下鉄以外にないと確信し、東京に地下鉄を建設するという夢を持ったのです。
早川を語る上で第一のポイントは、技術的に先行している海外の交通を学ぼうとしたことです。
2年以上海外で学んだあと、帰国した早川は地下鉄計画実現に向けて動き出します。
路面電車では輸送力増強に限界があり、地下鉄が唯一の解決策であることを説いて回ります。
地下鉄の利点を理解してもらうには、説得材料となるデータが不可欠です。
彼は妻に豆を用意してもらい、自ら交通量調査に取りかかります。
どのような調査かというと、あらかじめ上着のポケットに豆を入れておき、豆をズボンのポケットに移し替えるという方法で、徒歩で移動する人や市電を利用する人、通過した市電や人力車、荷馬車などの数を数えたのです。
カウンターが存在しない時代にあって、なかなか合理的な方法であり、早川の頭の良さがうかがえます。
現代でも、足を使った実地調査は意外に有効ではないかと思います。
自ら動いてデータを集めて回る姿を見せれば、周囲の人にも本気度が伝わります。
足を使えば、ネットでは調べられないオリジナルの情報が手に入ります。
オリジナルの情報こそが説得力を持つのです。
そして、1927年(昭和2年)12月30日、ついに最初の地下鉄(浅草ー上野間)が運行を開始したのです。
達人③ 天才起業家 小林一三
仮説を立てて調べる習慣を身に付ける上でお手本となるのが小林一三(こばやし・いちぞう)の仕事術です。
小林一三は阪急電鉄、宝塚歌劇団、阪急百貨店、東宝株式会社、阪急野球団(現・オリックス・バファローズ)などをつくった実業家であり、天才起業家です。
小林は阪急電鉄の経営が軌道に乗った頃、百貨店経営に乗り出そうと考えます。
当時の日本には、すでにアメリカのデパートを真似た百貨店が存在していました。
東京にあるデパートを観察した結果、そこに問題があることを発見しました。
当時の百貨店は客を自動車で送迎するだけでなく、下駄1足でも遠方まで配達していました。
つまり、高額の経費をかけて客を集めていたわけですが、小林には、この集客法が「馬鹿馬鹿しいこと」に思えました。
そこで、小林が着想したのはターミナルデパートです。
自ら経営する阪急電鉄のターミナルにデパートをつくれば、鉄道の集客力を利用でき、お客を集める経費は不要となります。
経費がいらなくなれば、その分、商品を安く提供できるというわけです。
小林が優れていたのは、ただターミナルデパートというビジネスモデルを着想しただけでなく、それを実現するための研究を重視していた点です。
仮説、実験、検証、修正を徹底しているのです。
仮説を立てて実験し、その結果をもとに考えて何らかのアウトプットをするという手法を、私たちは学校の理科の時間に習っています。
しかし、それを自分の人生で実践している人は、意外に少ないかもしれません。
ですから、普段から「こうするとよいのではないか」と思いついたときには、思い込みだけで行動しないように、きちんと検証データを取ることが大切です。
そして、行けると判断したら、万難を排して行動することが肝心です。
成功者は常に勝ち目のあるところで勝負をしているのです。
小林は研究の結果に基づき1927年に阪急百貨店建設に取りかかり、1929年に開店させました。
開業時の新聞広告には「どこよりもよい品物を、どこよりも安く売りたい」のコピーを入れたとされます。
今日ではターミナルデパートは当たり前のものとなっています。
達人④ 統計を駆使した看護師・ナイティンゲール
統計データを活用したプレゼンを行った人物として思い浮かぶのがフローレンス・ナイティンゲールです。
20代になったフローレンスは、病人の世話をすることが自分に与えられた使命だと自覚するようになり、30歳を過ぎて看護師になりました。
そして、陸軍のシドニー・ハーバートから要請を受けて看護団を結成し、トルコにあったイギリス軍基地の病院で働くことになったのです。
病院には数千の負傷兵がおり、適切な処置をすれば助かるような傷でも、感染症にかかって死亡する兵士が後を絶たなかったのです。
それは、病院の建物が不衛生であることに原因がありました。
そこでフローレンスは、私費で調理人や洗濯をする人を雇い、病院の清掃などを徹底。
帰国したフローレンスはビクトリア女王に、陸軍の衛生状態の問題について進言する機会を得ました。
そこで多くの統計データを示しながら改善を訴え、陸軍に助言する役割を担うことになります。
実はフローレンスは、「近代統計学の父」と呼ばれる統計学者アドルフ・ケトレーを信奉し、数学や統計に強い関心を持って学んでいました。
陸軍の衛生状態の改善を訴えるときも、負傷兵の入院時の症状と推移、病床の配置、病室の環境などの詳細なデータを、統計学的な手法を用いて整理して提示しました。
彼女が献身的に看護をするというだけでなく、統計的な視点で看護学をリードしたことは、後世の私たちにとって非常に幸運だったと思います。
統計的な視点で改善を訴えることは、現在の職場においても非常に有効であり、学ぶべきところが大きいといえます。
もう1つ、フローレンスが素晴らしかったのは、統計データの見せ方です。
せっかくデータを集めて提示しても、どのように見てよいのかわからなければ効果的なプレゼンにはつながりません。
彼女はのちに人々から「鶏のとさか(鶏頭図)」と呼ばれたオリジナルのカラー版・円グラフを作成し、兵士の死亡原因を視覚化しました。
これにより感染症による死亡者数の多さが一目瞭然となり、衛生状態の改善が図られたのです。
ただ数字を並べるのと、ビジュアルに訴えるのとでは、訴求力に雲泥の差があります。
私たちはフローレンスに負けないような、インパクトのあるプレゼンを追求することが大切です。
何かを調べて説得するときには、提示の仕方もセットで考えておく習慣を身に付けましょう。
国内外へ影響を与えるような人の「調べ方」について学べる本
「知性はスポーツの練習と似ています。練習を重ねればスポーツの技術が向上していくように、探究学習をすればするほど知性は確実に伸びていきます」と話す齋藤さん。
あらゆる情報が行き交う現代において正しい情報をつかむ能力は必須となりますが、その能力は自分で鍛えることができるのです。
同書では、「調べる力」から「データ活用法」まで包括した内容を取り扱っています。この機会に、先人たちの「調べ方」について学んでみてはいかがでしょうか?
ビジネスパーソンインタビュー
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