スマホアプリが“鍵”になる自転車!

日本上陸のシェアサイクル「モバイク」が中国で大流行のワケ。ビジネスの秘密はGPS!?

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現在、中国で“移動革命”を起こしているという「シェアサイクル」。その新進大手「Mobike(摩拜単車/モバイク)」が2017年8月、ついに日本上陸を果たした。僕たちの生活を変える可能性を秘めている同サービスの魅力や可能性をフカボリしてみたい。

スマホをかざすだけで乗車&乗り捨て可能な手軽さが、スマホ決済大国・中国にハマった

モバイクは2016年4月のサービス開始以降、わずか1年あまりで世界150都市以上に導入された。一気に普及した要因は、従来のレンタルサイクルにはなかった“手軽さ”にある。

モバイクでは、スマートフォンにインストールした専用アプリを“”として利用する。利用登録を済ませれば、自転車の車体に貼られたQRコードを読み取るだけで決済が完了し、即座に乗車可能。返却は指定された駐輪スペースならどこでも乗り捨てOKで、利用料金も30分につき1元(日本円で約17円)とかなり安い。
出典

ロイター/アフロ

いちいち申し込むようなことがあるとめんどくさいけど、スマホ決済ならたしかに便利そう!
この便利さはもちろん大きな魅力だが、中国事情に詳しいITライターの山谷剛史氏によると、シェアサイクルが中国で急速に発展した理由は同国の「インフラ」によるところも大きいと言う。

「そもそも自転車の利用人口が多い中国の都市部では、自転車専用レーンが整備されているほか、街中にも多数の駐輪スペースが設けられています。さらには、日本と比べて圧倒的にモバイル決済サービスが普及している。ユーザーが通常の買い物と同じ感覚で気軽にシェアサイクルを利用できる環境が整っていた、というわけです」

中国のスマホ決済の実情に関してはこちらの記事も参考にしていただきたい。自転車とスマホ決済のインフラが整ったことで、シェアサイクルは中国に“ハマった”といえそうだ。

自転車から収集した移動データを“商品”に!ビッグデータ解析の研究センターも設立

さらに、このサービスは「単なる便利なレンタルサイクル」ではないという…!

モバイクの車体にはGPSが内蔵されており、利用者の移動データを収集できる。そこから得たビッグデータは、さまざまな業種で活用が期待できる貴重な“商品”となり得る。たとえば、移動データをバスなどの交通網の整備効果的な出店計画広告を出す場所の検討などに活用したいと考える自治体や企業に販売するというビジネスが可能になるのだ。

中国では現在多くのIT企業が、拡大するビッグデータ市場に参入しようとしのぎを削っている状態。モバイクでも、集めたデータからユーザーの行動を分析する研究センターを設立しているという。
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写真:ロイター/アフロ

そんなモバイクが、先月から札幌でサービスを開始。果たして、日本国内でも成功を収めることができるのか? 山谷氏はこう分析する。

中国と同じぐらいの成功は、難しいといえるでしょう。自転車の利用環境やQRコードによる電子決済の分野では、日本は中国ほど整備が進んでいません。道幅の狭さや坂道の多さなど、都市部における地理的条件も大きく異なります。とはいえ、それを踏まえた上で日本に進出しているはずなので、何かしらの戦略があるのかもしれませんが」

ビッグデータビジネスの可能性まで含め、気になるところがいっぱいの中国発シェアサイクル。毎日の通勤や移動にストレスを抱えるR25世代にとっての救世主になってくれるかも!?

<取材・文=松原麻依(清談社)>