ビジネスパーソンインタビュー
日本の“紙幣”に原因が…!?
主要国でダントツにキャッシュレス化が遅れる日本。なぜ“現金主義”が根強いのか?
新R25編集部
中国のアリババグループが提供する中国最大規模のオンライン決済サービス「Alipay(アリペイ)」。日本でも訪日中国人観光客向けに一部でサービスを開始しているが、来春から日本人をターゲットに本格始動するらしい。
ほかにも電子マネーやスマホ決済サービスは多数存在しているが、日本ではまだまだ現金の利用には遠く及ばないようだ。
主要国でも日本はダントツに現金が流通。都心部でのモバイル決済利用率は、中国98%に対し日本は6%…
データを見ると、日本はいまだ強い現金主義で、世界のキャッシュレス化の波から大きく取り残されていることがわかる。
国際決済銀行のデータを日本銀行が分析した資料によると、2015年時点で日本に流通する現金はGDP(国内総生産)の19.4%。これは主要国のなかでも突出して高く、急速にキャッシュレス化が進むスウェーデンの約11倍だ。
また、『人民網日本語版』によると、都市部に絞ったアンケートで「中国では回答者の98.3%が過去3ヵ月の間にモバイル決済を『利用した』と答えた」というデータも。 対する日本は、「店頭でモバイル決済を行う機能を『利用している』と答えた人」はたったの6%…(日本銀行調査。2016年11月時点)。
こんなにも日本で現金が重要視されているのはなぜ?『電子マネー革命』の著者・伊藤亜紀さんに聞いた。
金融リテラシーが他国よりも低く、現金以外の決済をむやみに恐れてしまっている
「最近では変わりつつあるのですが、日本では、従来からクレジットカードに対して『高額な買い物に使うもの』という意識があります。また、紛失や盗難、パスワード流出など、安全性に不安を感じている人も多いようです。電子マネーにも同様に安全性への不安があるのかもしれません」
クレジットカードは紛失保険や盗難保険が自動的に付帯しているなど、実は使うのを恐れるほどリスクは高くない(むしろ、現金のほうが盗まれてしまったら取り戻せない可能性が高い)。にもかかわらずこのような過剰な反応をしてしまう背景には、日本人の金融リテラシーの低さがありそうだ。
金融広報中央委員会によると、日本人の金融リテラシーに関する問題の正答率はアメリカ人と比べると10%低い(2012年時点)。また、ドイツやイギリスと比較しても約8%低い結果になっている(2010〜2011年)。
お金まわりの知識が希薄であることから、現金以外の支払いをむやみに恐れてしまっている、といえそうだ。
日本は高度な印刷技術により偽札の割合が世界的に少ない(ドルの600分の1)ため、紙幣への信頼が厚い
また、紙幣に対する信頼が厚いことも、現金主義が変わらない理由だろう。
国立印刷局によると、日本はお札の流通量に対する偽札の割合が世界的に少ない。ここ数年で見つかったのは年間数千枚程度で、ユーロと比較すると216分の1、USドルとの比較だと638分の1、さらにポンドに対しては1619分の1という圧倒的な少なさ!
また、日本にいるとなかなか想像できないかもしれないが、中国では偽札の流通が社会問題化しており、ATMから偽札が出てくるなんてこともあるらしい。
日本で偽札がほとんど出回っていない理由は、同局によると「日本は比較的治安が良いことに加え、高度な偽造防止技術がいくつも施されており、偽造しにくいから」とされている。日本の優れた印刷技術は海外からの需要もあり、フィリピンなどへ印刷機の輸出もおこなっているようだ。こうして信頼できる紙幣が流通していることが日本の現金主義に拍車をかけているのだろう。
さらには、「カードや電子マネーに移行する、切羽詰まったニーズも弱い」と伊藤さんは語る。
「日本には銀行やATMがいたるところにあるうえに、現金で支払いができる店がほとんど。不便を感じないので、習慣を変えるほどのニーズがないのです」
ロイター/アフロ
金融リテラシーの欠如、紙幣の信頼性、さらには現金支払いに適応した環境…。コンビニでの支払いなど、電子マネーは一度使ってみるとその便利さを実感するが、日本ではこんな事情から“キャッシュレス社会”実現までの道のりはまだまだ遠そうだ。

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