公園の公衆便所に新聞紙を敷いて寝たことも

「トランプすれば大富豪になれた」「下を見ろ」野性爆弾が壮絶な貧乏時代を明るく語る

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型破りな芸風で一部のお笑い好きから絶大な支持を集め、今では地上波ゴールデンでも見かけることも増えてきたコンビ・野性爆弾。ふたりは幼稚園児からの幼なじみで、高校を卒業したのち、仲良くNSC大阪校に入学する。やはりというべきか、当時はかなりの貧乏生活を送っていたとか…。

公園の公衆トイレに新聞紙敷いて寝たことも。NSC時代は学費と交通費だけで毎月赤字

ロッシー「地元の滋賀から通っていたんですが、学割効かへんので月々3万円の交通費がかかってたんです。だからちょいちょい友だちとか同期のとこに泊まって」

くっきー「帰れへんときは公園の公衆便所に新聞紙敷いて寝たりとか。掃除の人が朝に来て、ホームレスと間違われてドアをガンガン蹴られたりして」

さらに当時は学費が今より高かったようで、月払いにすると2万5000円かかっていたという。

当然、デビュー間もないころだったので知名度は無に等しく、営業の仕事などほとんどない。バイトに明け暮れる日々を送るのだが、そのバイト先のチョイスがなんとも彼ららしい。

ロッシー「僕のバイトはやっすい配達で、大阪のヤクザの事務所に届け物して震え上がってました」

くっきー「僕は警備員で、最初研修とかするんですよ。2時間くらい話を聞いて軽い実習。それで5000円くらいもらえるから、研修受けては辞め受けては辞め…という“研修費いただきバイト”でしたね」

バイトの収入はそれぞれ3万円程度。交通費と学費ですでに赤字だった

“面白くない”同期が学費を立て替えてくれるも、負の連鎖で借金はそれぞれ200万円以上にふくれあがった

くっきー「同期に“ナナフシ”っていうあだ名のめっちゃ背高いヤツがいたんですけど、そいつがめちゃくちゃ優しくて、すげえ立て替えてくれました。まだ返してないんですけど。面白くなかったんですよ、そいつ」

ロッシー「いやいやいや(笑)。学費払わんかったら退学処分になるんですけど、そこでそいつが『それじゃあかん!お前ら面白いからがんばれ』って言って立て替えてくれて

くっきー「熱くていいヤツでした。何してるんかな。会いたいですよ。面白くはなかったけどな」

当時のNSCの同期は、真面目なナナフシやブラックマヨネーズ、そして不真面目な次長課長や野性爆弾と、ハッキリグループが分かれていたという。さらに「お金借りておごって、次に別のヤツが借りておごって…」という負の連鎖に陥り、彼らの借金はどんどん膨らんでいった。

くっきー「スタートの借金は5万とかですよ。当時は借りると商品券付けてくれる業者がいるという時代で。最終的には200万くらいになってましたね。家賃も滞納して滞納して、ようわからん状態」

ロッシー「僕は300万くらい。朝から晩までパチンコやっちゃう」

トランプでなら“大富豪”になれた。でも、月収3万円が10年続いてさすがに心が折れた

ふたりが貧困生活を送ったのはNSC時代から15年とかなりの長期間に及ぶ。東京に出て、芽が出るまで時間がかかったのが主な理由だ。

くっきー「嫁が医者の娘で金持ってたんですよ。だからそこからちょびちょびつまんでは返済しに行くみたいな。純愛ですよね

その語りぶりからわかるとおり、悲壮感はまったくない。むしろ、毎日楽しかったのだとか。

くっきー「田舎もんやったんでね。トランプの大富豪とか、お金をかけずに時間潰してました」

ロッシー「なんせ“大富豪”になれるんですからね、嬉しかったですよ~!」

のらりくらりとかわす2人。そんな彼らも、一度心が折れかけたことがあったという。

くっきー「折れかけたというか、むしろ一回折れましたね。月3万円くらいの収入が10年くらい続いて。いつまでこれやらなあかんねん…って」

ロッシー「そんな時は『まだわからんからがんばって。いつか楽しいことがあるから』って言ってたんです」

Amazon Primeで冠番組がスタート。ロケは毎回“出たとこ勝負”でやりたい放題

ロッシーが引き留め、野性爆弾は一命を取り留めた。『やりすぎコージー』『アメトーーク!』などへの出演を皮切りに、東京でも徐々に人気が出始め、コアなファンから熱狂的な支持を集めるようになる。今年からはAmazon Primeで冠番組『野性爆弾のザ・ワールド・チャネリング』もスタート。ロケを中心としたバラエティだ。

くっきー「地上波でもいうたら同じようなロケはしてるんですよ。でもガスガスとカットされる。Amazonの場合は全部入ってますから

ほぼ全編、出たとこ勝負のロケ。第一回は矢口真里さんをゲストに迎え、ロケバスを降りた半径100m以内で傍若無人な展開が始まる。レモンをワキの下に塗ったり、彼女の後輩アイドルにヒドい無茶ぶりをしたり…。また別の回では「一流散歩」と題して中尾彬さんご夫妻を迎え、銀座をブラブラという内容なのだが、その間に中尾彬の妻・池波志乃さんを口説いたりと、まさにやり放題だ。

くっきー「どんなフリにも対応する矢口さんは偉大だということがホントわかりました。中尾彬さんのときは、緊張して震え上がりましたよ。テンパってなぜか画廊の主人に『缶ジュースごちそうしてください』と言ってしまいました」

他にも番組内では、25mプールを泳ぎきったロッシーさんに視聴者の質問を答えてもらうなどといったシュールなワンコーナーや、ふたりのコントも収録されている。

くっきー「最近ネットで叩く人もいっぱいいるじゃないですか。だから、そういう人には見てほしくないですね。叩かれるの嫌いなんで、なるたけ優しい頭のおかしい人ばっかり見てくれるといいなって

貧乏時代を乗り切るコツは、「毎晩トランプをすること」「下を見て笑うこと」

「貧乏だったころは、冠番組を持てるなんて夢にも思わなかった」というふたりに「貧乏生活を楽しむコツは?」と聞いてみると、期待を裏切らないどうしようもない答えが返ってきた。

ロッシートランプを毎晩やってれば楽しいと思います。だって“大富豪”になれるんですよ!」

くっきー『下を見ること』ですね。『上だけ見とけ』っていうのはきれいごと。僕らよりもっと稼げないヤツがいるわけですから。そいつら見てヘタヘタ笑ってたら、なんとかなるかなあ」

いかにも野性爆弾らしい答えだが、お金がなくてもそれなりの楽しみ方と、プライドの保ち方はあるということ。貧乏時代の乗り越え方も、“強さ”だけがすべてじゃない。そう思ってもいいというメッセージなのかもしれない。

〈取材・文=吉州正行/撮影=林 和也〉
【野性爆弾】
1994年、ボケのくっきーとツッコミのロッシーで結成されたお笑いコンビ。配信中の『野性爆弾のザ・ワールド・チャネリング』(Amazon Prime)では、ふたりの超ハードコアな鬼才ぶりが届けられている。また10月22日(日)まで、 くっきーの独自すぎる強烈な世界観で作られた様々なアートピースを展示するイベント「『超くっきーランド』×『超渋谷展』」が東京・ラフォーレミュージアム原宿で開催中。