票を握っているのは世論ではない!?

稲田朋美氏もダントツ当選!あの“不祥事議員”たちが衆院選で当選できたのはなぜ?

  • 社会・政治
  • 2017.11.02
  • by 新R25編集部

自民党の圧勝で幕を閉じた第48回衆議院選挙。一方、注目を集めた小池百合子都知事が代表を務める「希望の党」は直前に失速して惨敗…。

注目政党の明暗がくっきり分かれた選挙となったが、ところで、今年世間を騒がせた議員たちの結果はどうだったのだろう?

稲田朋美氏、大西英男氏、甘利明氏…失言や不祥事でマスコミに叩かれた議員たちが小選挙区で次々当選

東京都議選の応援での失言や南スーダン国連平和維持活動(PKO)の日報隠ぺい問題で、7月末に防衛大臣を辞任した自民党の稲田朋美氏。今回の選挙ではさすがに苦しんだはず…と思いきや、福井1区で11万6969票の得票数を得て、相手候補の希望の党・鈴木宏治氏(6万4086票)を大きく引き離してダントツ当選

出典

Rodrigo Reyes Marin/アフロ

ほかにも、がん患者について「働かなくていい」と失言した自民党の大西英男氏、週刊文春が報じた建設業者からの現金授受を認めて辞任した前経済産業大臣・甘利明氏、不倫疑惑で民進党を離党、今回の衆院選は無所属で出馬した山尾志桜里氏など、まだ記憶に新しい“不祥事議員”たちの当選が次々に報じられた。

あれだけマスコミにバッシングされていたのに、なぜ再び当選できたのだろう? 選挙プランナーの松田馨さんに疑問をぶつけてみた。

地域ごとに“強い政党”がある。稲田朋美氏が出馬した福井県は自民党7連勝中の「保守王国」

「前提として、日本は非常に恵まれている国なので、多くの方はそれほど政治に不満がないんです。だから投票に行かない人が多いし、だれが当選してもいいと思っている人も多い。さらに、市議選などの地方選挙と違い、衆院選の各選挙区では基本的に各党から1人しか出馬しない。その結果、小選挙区でも候補者というよりその地域の政党の支持で票を獲得できてしまいます

なるほど。やはり稲田氏のケースもそうなのだろうか?

「稲田氏が圧勝した福井1区は、2000年以降、自民党が7連勝しているような選挙区。稲田氏だからというよりも、所属政党の地盤の強さが大きいでしょう。福井県は“保守王国”とも呼ばれ、参議院選挙でも自民党が9連勝中。1955年に今の自由民主党が結党されてから、一貫して自民党が選挙で有利な闘いを展開している地域です。安倍総理のお膝元である山口県や、戦後4人の総理大臣を輩出した群馬県なども有名ですね」

ロッキード事件後の選挙で過去最高得票!有権者はマスコミの報道内容を“直接会った印象”が上書きする

また、政治に強い不満やこだわりがないからこそ、顔を見たことがある人、握手をした人に投票するケースも多いという。

「政治の世界には“金帰火来(きんきからい)”という言葉があります。地方の政治家は火曜日に東京に来て国会で仕事をして、金曜日に地元に帰って土、日、月と地元の行事に出たり、集会で国会の様子を説明して親睦を深める。そうして、次の選挙に向けて継続的な接触を持ちつづけるんです」

特に地方の高齢者は、たとえ支持する候補者がマスコミにバッシングされたとしても、「“東京のメディア”はああ言っているけど、自分たちは生で先生に会って、本当の人となりを知っている」という気持ちになる傾向があるそう。マスコミの報道内容を“直接会った印象”が上書きするのだ。

「そういった地盤の強さが顕著に出たケースは、田中角栄氏がロッキード事件の実刑判決を受けて即日控訴し、3か月後の総選挙に出馬したときのこと。『先生に恩を返すのは今しかない』と後援会が燃え上がり、マスコミからのバッシングで大逆風が吹き荒れるなか、旧新潟3区で過去最高の22万票を集めてトップ当選しました

田中角栄氏の後援会である「越山会」は、選挙区内に300を超える支部を持ち、さらに会員自らが有権者のもとを1軒1軒まわって集票活動を行うという強力な組織を作り上げていたといわれており、政治家にとって地盤づくりがどれほど重要なものかがわかる。

山奥にも訪問、氷の上で土下座…!? 有権者との関係を強固にする議員の活動

そういった地盤づくりに力を入れる政治家は、実際にどのような活動をしているのだろうか?

「2005年の郵政解散選挙のときに民営化法案に反対し、自民党の公認を外され無所属で出馬した城内みのる氏は、刺客として送り込まれた自民党・片山さつき氏に僅差で破れました。しかし、そのあと4年間静岡7区を徹底的に歩き続け、次の選挙では圧勝したんです

城内氏は2012年に自民党に復党、今回の選挙でも静岡7区で65%以上の票を獲得し、ダントツ当選を果たした(※画像は「城内みのる 公式サイト」のスクリーンショット)

「静岡7区というと、過疎地域も含まれるほど非常に広い選挙区ですが、城内氏は人がほとんど住んでいない山奥にも積極的に足を運び、地域のお祭や会合に参加。地元の人たちは『こんなところに先生が来てくれるのははじめてだ』と喜ぶわけです。また、積極的に自身の活動レポートを作成し、それを郵送だけでなく訪問して直接届けるなど、非常に丁寧に関係を築いています」

城内氏はお祭や田植えに参加するなど、地域の人たちとの交流も欠かさない(※画像は「城内みのる Facebook」のスクリーンショット)

「北海道で強い地盤を築いている鈴木宗男氏(今回は落選)にいたっては、非常に寒い地域でも朝早く港や卸売市場までいって挨拶をしたり、わざわざ氷の上で土下座してまで支持を訴えかけていた…なんてウワサもあります」と松田さん。

政治家たちのスキャンダルを目にする機会も多いが、衆院選(小選挙区)において票を握っているのは世論ではなく、あくまで地元の有権者。想像を絶するほどの地道な活動が、ちょっとやそっとでは揺らがない強固な票田を確立しているということだ。

〈取材・文=新R25編集部〉