若者が集まる街は他にもあるけど…

表参道に「日本進出1号店」が集中するのはなぜ? 歴史的背景とまちづくり方針を学ぶ

社会・政治2018.01.05by 新R25編集部

フランスで人気のモッツァレラサンドイッチ店「Mmmozza」原宿店、世界一のチョコレートケーキを名物とするスペインのパティスリー「bubó BARCELONA」表参道本店など、2017年もたくさんのカフェやショップが海外から日本に上陸!

2017年3月に表参道にオープンした「Mmmozza」。店名の読み方は「ンーモッツァ」

それにしても、なぜ「日本1号店」の多くが表参道・原宿に誕生するのだろうか

流行に敏感な若者が集まっていて話題になりやすいのは分かるけど、その条件を満たす街は他にもあるわけだし…。隠された理由があるかも!? 

かつては『ワシントンハイツ』と呼ばれるアメリカの軍用地が近くにあり、グローバル色の強い街だった

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まずは表参道・原宿の地域メディア「OMOHARAREAL」のプロデューサー・荒井昌岳さんに話を聞いてみると、海外のカルチャーが入り込みやすい街になっていることには「歴史的な背景」もあるとのこと。

「1つ目の背景は、1946~1964年まで、現在の代々木公園や国立代々木競技場などにあたる広大な土地が、アメリカの軍用地『ワシントンハイツ』であったということ。

その影響で表参道・原宿には米軍関係者用のアパートも多く存在し、グローバルな気配の強い街だったんです。1953年には米軍からの依頼を受けて日本初となるスーパーマーケット『紀ノ国屋』が誕生するなど、海外の商店文化を輸入する土壌ができ始めました」

とはいえ、1960年代までの表参道は、カフェやショップもほぼ存在しない住宅街であったという。ではその後、オシャレな日本人が集まる街になったのはなぜ?

通称“クリエイターのトキワ荘”に業界人が集結。「日本初のオープンカフェ」も誕生

「2つ目の背景は、1964年に『ワシントンハイツ』が日本に返還されると、米軍関係者用の共同住宅であった『原宿セントラルアパート』に、勢いのある日本人クリエイターが多数入居し始めたこと。この建物は『クリエイターのトキワ荘』とも呼ばれ、イラストレーターの宇野亜喜良さん、カメラマンの操上和美さん、コピーライターの糸井重里さんなど数え切れないほどのスタークリエイターを輩出しました」

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「原宿セントラルアパート」の跡地には、現在「東急プラザ表参道原宿」がある

「いわゆる“業界人”が集まる街となっていく中で、1972年にオープンカフェ(道に面した壁がないカフェ)の先駆けとして『Cafe de Rope(カフェ ド ロペ)』が、原宿セントラルアパートの向かいに誕生。パリの文化を取り入れた新しいカフェは、時代の最先端にいるクリエイター、そして芸能人、スポーツ選手も集まる場所となり、表参道は『海外カルチャーを受け入れられる、感度の高い人々が集まる街』というイメージが作り上げられていきました」

今の表参道・原宿が持つ“海外カルチャー最先端”なムードには、ワシントンハイツに端を発した歴史的背景があるようだ。

条例によって景観が守られている。外観から作り込める路面店が多いため、イメージ戦略に有利

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美しい景観が保たれている表参道

それ以外にも、表参道に「日本1号店」を作るメリットがあると話すのは、表参道・原宿の歴史を伝える活動を行っているスタイリスト・中村のんさん。

「景観的な観点でも、海外から進出する飲食店やショップは、銀座や六本木、渋谷でなく、表参道に1号店を出店するメリットがあります。このエリアは、表参道ヒルズもケヤキ並木の高さを超えないように設計されるなど、歴史と景観を重視し、高層ビルが乱立しない環境になっています

こういった環境は、地区計画によって守られているのだという。「日本不動産研究所」のレポートでは、下記のように説明されている。

まちづくり方針に基づき、通りに沿っては路線状に商業地域(容積率500%、高さ30m)が、またその裏側には中高層住居専用地域(容積率300%、駅側が第二種(高さ30m)で、反対側が第一種(高さ20m))が指定されており、さらに参道北側の区域には文教地区が(明治神宮を取り囲むように)指定され、これによってキャバレーやホテル又劇場の類いはもちろんのこと、パチンコ店や風俗店の立地も規制され、品のよいまちとなっている。

出典http://www.reinet.or.jp

まち全体的に地区計画が策定されており、参道沿いは高さ30m以下、地階を除く階数を8以下とし、建築物の形態・意匠・色彩は都市景観に、そして1階はディスプレイに配慮すること、とされている。

出典http://www.reinet.or.jp

さらに中村さんはこう話す。

「高層ビルが少ない分、“路面店”が多いんです。同じ条件であれば、内装でしか世界観を作れない施設と、海外で築き上げたブランドイメージを外観から再現できる路面店であれば、後者を選ぶのが当然でしょう」

海外ではいまだに「90年代の原宿ポップスタイル」のイメージが強いので、先進性をアピールできる

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この人の登場も、“先進性”イメージの定着に貢献しました

さらに、海外の人からすると、「表参道・原宿に出店している=世界最先端の“攻めた街”で認められている」という印象になるそう。

「海外の人たちの多くは、いまだに表参道・原宿といえばカラフルなヘアスタイルやファッション、つまり“90年代の原宿ポップスタイル”の街だという印象を強く持っています。日本人の多くが、『ロンドンはパンクの街』『ニューヨークはアートの街』だと思っているのと同じですね。そこに店舗があるという事実は、『世界のなかで最もビビッドな感性の街で認められた』という証になる。そういったブランディグをしやすいことも、表参道・原宿が『日本1号店』の土地として選ばれる理由になっていると思います」

出店することで、日本だけでなく、世界中に自社の先進性をアピールすることができるというわけだ。

歴史、景観、イメージ戦略…。表参道に「日本上陸1号店」が誕生し続けるのには、単に「流行に敏感でオシャレな若者が多い」というだけでない、深い理由があったのだ。

〈取材・文=黄孟志(かくしごと)〉

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