リニア新幹線の工事をめぐる不正受注が発覚

またも問題視される建設業者の「談合」 企業同士の“話し合い”の何が悪いの?

社会・政治2018.01.24by 新R25編集部

JR東海が発注した9兆円にのぼるリニア新幹線に関連した工事契約の「談合」が問題視されている。「談合」とは企業同士の“話し合い”を指すが、いったい何が問題なのだろう?

談合とは企業同士が結託し、公共事業の入札を“デキレース化”すること。税金の無駄遣いにつながる

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Rodrigo Reyes Marin/アフロ

写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ

多くの公共事業においては、入札制度が採用される。「入札」とは、自治体があらかじめ定めた予定価格を上限に、複数の企業に請負価格を提示させる方法だ。もっとも低い価格を提示した企業に発注することで、自治体は公共事業の費用を安く抑えることができる。

ただ、誰でも参加できる「一般競争入札制度」では、技術力に疑いのある業者が破格の金額で受注するリスクがあるため、多くの場合、自治体が選んだ技術力のある企業数社に入札を行わせる「指名競争入札制度」を採用している。

この「指名競争入札制度」で選ばれた企業同士が結託(けったく)し、各社が持ち回りで公共事業を担当できるよう事前に話し合い、入札額を調整するのが「談合」だ。普通に入札すると価格競争になってしまうが、事前に担当する企業と各社の入札額を決めておくことで、上限ギリギリの設定で受注できる。

自治体にとっては、本来であればもっと安くできたはずの公共事業が高値でしか発注できないことになる。結果として、税金の無駄遣いにつながるというワケだ。

2005年に談合防止のため導入された「課徴金減免制度」は、自首すれば“罰金”を軽くする制度

こうした談合を防ぐために2005年には独占禁止法が改正され、「課徴金減免制度」が導入されることとなった。これは、公正取引委員会が調査を始める前に談合の事実を申告すれば、課徴金が免除ないしは減額になるというもの。

わかりやすくいうと、談合の事実が明らかになる前に自首すれば罰金を軽くしてやる…というようなことだ。最初に申告した1社は課徴金を免除、2番目に申告すれば50%の減額、3番目以降の3社が30%減免になる。

今回のリニア事件では、談合の発覚で課徴金数十億円を科されることを恐れた大林組が自主申告したことで、事件が公になっている。

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リニア新幹線の建設工事をめぐっては「大林組」のほか、「鹿島建設」「清水建設」「大成建設」の大手ゼネコン4社に談合の疑いがかけられている(写真:ロイター/アフロ)

業界では「談合は必要悪」、天下り先の確保で官公庁が黙認。全国で「談合の疑いがある」のは62.5%

しかしこうした対策も完全ではなく、いまだに談合はなくならない。全国市民オンブズマン連絡会議の「2015年度落札率・談合疑惑度調査」によると、談合の疑いがある公共事業は、なんと全国で62.5にものぼるという。

落札額を予定価格(上限価格)で割った数値を落札率といい、この数値が高いほど予定価格と落札額が近いことになり、「談合」の疑いことになる。「談合の疑いがある」としているのは落札率90%以上のもの。

談合がなくならない理由のひとつとして、ゼネコン業界全体に「談合は必要悪」という意識が根深く浸透していることがあるらしい。

談合をしなければ入札はコスト競争となり、そのしわ寄せが子請け、孫請けの業者に及んでしまう。そうならないように談合をして、公共事業の質を高めるべきだという理屈だ。

さらに発注側の官公庁が談合を黙認する見返りとして、ゼネコンに天下り先のポストを確保してもらっているという背景も。

2017
年の震災関連事業をめぐる談合疑惑事件では、公正取引委員会が立ち入り検査をしたゼネコンなど31社の約半数に、農林水産省から天下りしたOBが在籍していることがわかったという。

入札企業を非公開にして談合を抑止。長野県では上限価格に対する落札額の割合が約20%低下

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長野県知事を二期務めた田中康夫氏(写真:Fujifotos/アフロ)

談合を抑止するさらなる対策としては、課徴金を引き上げて制裁力を強める方法のほか、入札企業を非公開にする「一般競争入札制度」を採用して、談合ができないようにする方法が考えられそう。

長野県では、2003年の田中康夫知事時代に、一定の参加条件を満たせば誰でも入札に参加できる一般競争入札を建設工事に導入。入札申請もネット経由で行えるようにした結果、入札予定価格(上限価格)に対する落札額の割合(落札率)は、改革前は談合が疑われる約95%だったのに対し、導入後は一気に75.6%にまで低下したという。

このように一部では対策の効果が見えているものの、談合の問題は根深い。まだまだ根絶への道のりは長そうだ。

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