アマゾンジャパン立ち上げメンバーが伝授

間違いを認める。現場に寄り添いすぎない。アマゾンを最強の組織にした「リーダー論」

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2000年にアマゾンジャパンが立ち上がって以降、すっかり僕らの生活の一部になっている「Amazon」。

今年4月、そんなアマゾンの“組織としての強さ”にフォーカスした書籍『アマゾンのすごいルール』が上梓された。次々と革新的なサービスを打ち出し成功させてきた裏側には、スゴイ組織づくりのノウハウがあるようだ。

同書の著者であり、アマゾンジャパンの立ち上げメンバーである佐藤将之氏に、今回はアマゾンの「リーダー論」について語っていただいた!

〈※聞き手:天野俊吉(新R25編集部)〉

リーダーが信頼を得るために必要なのは「間違いを認めること」

天野

天野

アマゾンでは会社を挙げて「リーダーシップ」をとても重要視しているようですね。
佐藤さん

佐藤さん

はい、「OLP(Our Leadership Principles)」といって、リーダーシップの理念が定められています。部下がいる人だけではなく、全社員が持つべき価値観とされているんですよ。
天野

天野

日本では、「リーダーのレベルが低い」と指摘される会社も多い気がします。
佐藤さん

佐藤さん

日本企業にダメなリーダーが多いというより、能力があっても、それを発揮できる環境がないような印象ですね…

これやって失敗したらどうするんだ?」と言われることが多いから、失敗をすごく怖れるという。
天野

天野

それは日本人の国民性なんですかね? どうやったら失敗を怖れない組織ができるんでしょう?
佐藤さん

佐藤さん

アマゾンの理念のひとつとして「Are right, A lot」というものがあります。直訳すると「多くの場合、正しい」ですが、これは「リーダーの判断は基本的に正しいが、たまに間違うこともあるよ」という意味なんです。

「リーダーが周囲からの信頼を得る」ためには、「間違いを認めること」が必要。それをサポートするために、「正しいけど、間違うこともあるよ」と会社が明言しているんですね。

実際、私がアマゾンで働いていたときに何を大事にしてきたかと聞かれれば、一番は「間違いを認めること」だったと言えます。
天野

天野

具体的なエピソードがあればおうかがいしたいです。
佐藤さん

佐藤さん

立ち上げから数年経って事業が拡大していた時期に倉庫部門のリーダーになったんですが、そのときに天狗になって、すごいエラそうにしてたんですよ(笑)。

ただ、生産性のデータだけを見て、現場を全然見てなかった。それで現場の社員から「あの人わかってねえな」みたいな声が続出するという…

当時の上司にめちゃくちゃ怒られて、メンバーの前で「自分が間違っていた」と謝りました。その後、現場をちゃんと見るために「オフィスにはしばらく戻らない」と宣言して、3週間ぐらい、ずっと倉庫にいましたね

上司と議論し、納得したら100%コミットすべし

天野

天野

アマゾンみたいに良いリーダーがいればいいですけど、ぶっちゃけ自分の上司がイマイチだなと思ったらどうすればいいんでしょうか…?
佐藤さん

佐藤さん

R25世代の人に持っててほしいのは、「Have Backborn ; Disagree and Commit」、つまり「上司と議論を交わし、納得したらコミットする」という意識です。

たとえば上司から指示が出たとして、それが「間違ってる」と思ったら、その時点でちゃんと声を上げて議論してください。ただし、納得して「やろう」となったら、本当に100%コミットしてほしいんです
天野

天野

そこのコミットが100%じゃない人は多そうですね。
佐藤さん

佐藤さん

そうなんです! それは上司との議論が不十分で、自分が納得し切れていないことが原因だと思います。
天野

天野

なるほど。たしかにそうかもしれません。
佐藤さん

佐藤さん

そしてもうひとつ大事なのは、プロジェクトが失敗したときに「ほれ見たことか!」と言わないこと
天野

天野

絶対言っちゃいそう。「だからダメだって言ったじゃないですか」みたいな。
佐藤さん

佐藤さん

“失敗したら言ってやろう”という姿勢でやっていると、その仕事は絶対に失敗します。心のどこかで“傍観者”として見てしまっているんですよね。

そうならないためにも、やはり「納得してから取り組む」ことが必要だと思います。

リーダーになったら「現場の気持ちに寄り添いすぎない」ことも大事

天野

天野

20代後半ぐらいから、現場のチームリーダーを任せられるR25世代も多いと思います。そのときに気をつけるべきことはありますか?
佐藤さん

佐藤さん

現場でバリバリやってた人は、メンバーの気持ちがわかるじゃないですか。でも一方で、「現場に寄り添いすぎない」ことも大事なんです。
天野

天野

どういうことですか?
佐藤さん

佐藤さん

たとえば会社から「売上を10%伸ばせ」という高い目標が示されたとします。現場からは「ムリだろ~」って声が出る。

その時に現場を知ってるリーダーだと、「ムリだよなあ、せいぜい5%だ」と思ってしまう。そして現場にも「ムリ言ってるよなあ、わかるわかる」みたいなことを言ってしまいがちなんです。

ただ、それを言っては絶対にダメ。リーダーはバーを下げてはいけません。
天野

天野

でも、「俺は現場の気持ちが分かってるよ」ってところを見せたい気持ちもあると思うんですが…
佐藤さん

佐藤さん

リーダーが「5%でしょうがないよね」って言った瞬間に5%、いや、3%のアップしかしなくなりますよ

高いバーを提示する姿勢は、リーダーとして絶対必要です。周りより意識・目線の高い発言をするときは“照れ”を感じることもあると思いますが、その心理的ハードルにも勝たないといけない

誰もが「5%だろう」と思っているなかで「10%を目指そう」とすることでイノベーションが生まれる。ビジネスはそういうマネジメントで伸びていくんですよ。
天野

天野

なるほど。アマゾンジャパンを成長させた佐藤さんに言われると、説得力があります!
…ということで、慣れないリーダーポジションに焦っているR25世代の人は、今回のお話をもとに、自分の意識を変えてみてはいかがでしょうか。

佐藤さんが著した『アマゾンのすごいルール』には、ほかにも本質を突いた教えがたくさん! グローバルな成功をつかんだアマゾンの「仕事術」は要チェックです。

〈取材・文=天野俊吉(新R25編集部)〉
アマゾンのすごいルール

アマゾンのすごいルール