ビジネスパーソンインタビュー
「“食っていく”ってなんですか?」
「今さら“働き方改革”?」ホリエモンとカイシャの議論をしたら生き方の話になった
新R25編集部
記事提供:サイボウズ式
3月30日、ベルサール東京日本橋にて、サイボウズ主催の「チームワーク経営シンポジウム」を株主総会前に開催しました。
これからの時代に求められるカイシャの姿、そして私たちとカイシャとの関係ってなんだろう? そんなテーマをさまざまなゲストと議論した同シンポジウム。
今回は、パネル1「ホリエモンと、語ろう。」の前編の講演内容をお届けします。モデレーターにBUSINESS INSIDER JAPAN統括編集長の浜田敬子さん、パネラーに堀江貴文さんと弊社代表の青野慶久を迎えて、これからの働き方についてディスカッションしました。
イントロダクションでは、アリとキリギリスをはじめ、さまざまな虫たちが繰り広げるワークスタイルアニメーション『アリキリ』の第4話「複(副)業編」を公開。この動画を見て、堀江さんは何を思ったのでしょうか?
就職しても意味ねえな、って
浜田さん
堀江さん、本日はよろしくお願いします。先ほどのアニメ、いかがでした? 以前公開された動画について、Twitterでおもしろいと発言していましたが。
堀江さん
ああいう奴ら、新橋にいそうだなって感じ。あのおやじたちは、僕と大して年齢変わらないと思う。
浜田さん
もし堀江さんが会社に入っていたら、丸の内あたりでああいう風になっているかもしれない…?
堀江さん
まあ、ぜんぜん想像つかないですけど。
堀江貴文(ほりえ・たかふみ)。SNS media&consultingファウンダー。1972年生まれ、福岡県八女市生まれ。現在は、ロケットエンジンの開発や、スマホアプリのプロデュース、会員制コミュニケーションサロン「堀江貴文イノベーション大学校(HIJ)」の運営など、幅広く活動を展開。著書に『99%の会社はいらない』(ベスト新書)、『ゼロ なにもない自分に小さなイチを足していく』(ダイヤモンド社)、『自分のことだけ考える』(ポプラ社)、『多動力』(幻冬舎)など。
青野
そもそも堀江さんって、一度も就職されたことないんですよね。
堀江さん
そうです。就職する意味がわからなくて。もともと学校や就職とか社会のシステムに対して、違和感がありつつも従ってきました。
大学に入学してみて、その意識から解放されたんですよね。大学に行かなくても、誰も怒らないじゃんって。
青野
そこが堀江さんのすごいところですよね。僕なんかは、授業の単位はちゃんと取らなきゃとか、研究室の先輩と同じように就職しないとな、とか思っていました。
堀江さん
いや、一応僕もいろいろと考えてはいたんですよ。僕ら団塊ジュニアって、人口ピラミッドでいうと昭和後期生まれのピークなんです。大学受験も大変だし、就職は氷河期だった。
おまけに、これからどんどん人口が減っていく。企業のポストに対して、団塊世代の人数もすごく多いから回ってこないかもしれないし。年金支給年齢もどんどん後ろ倒しになるだろう、と。
そういったことをいろいろと考えた結果、「大企業に入るのって、全く割に合わないな」と。
青野
現代の学生が言うならまだわかるんですけど、当時の堀江さんがそこまで考えていたって、すごくないですか。
堀江さん
いや、人口ピラミッドを見るなんて、バカでもできることですよ。出生率がすでに下がっている現状を知っているんだから、ものすごく簡単に予測できる未来ですよね。
働き方改革は今さら感がある。仕事がなければ、遊べばいいんじゃないですか?
堀江さん
働き方改革なんて、僕からしたら何言ってるんだろう、って感じ。
青野
堀江さんにとっては、今さら感がある?
堀江さん
今さら感は全体的にありますね。なので、あの動画は風刺としておもしろいな、という感じ。
青野
世の中はまだ、「残業はダメだから減らそう」という段階で、「それって本当に楽しいですか?」と聞きたくなる。
青野慶久(あおの・よしひさ)。サイボウズ代表取締役社長。1971年生まれ。愛媛県今治市出身。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現 パナソニック)を経て、1997年8月愛媛県松山市でサイボウズを設立した。2005年4月には代表取締役社長に就任(現任)。社内のワークスタイル変革を推進し、離職率を6分の1に低減するとともに、3児の父として3度の育児休暇を取得している。著書に『チームのことだけ、考えた。』(ダイヤモンド社)『会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。』(PHP研究所)など。
堀江さん
うん、世の中はそういう段階なんでしょうね。ただ、あの動画の話をしますと、飲み屋でグダッていた3人って、全員必要ないんですよ。
浜田さん
ああいうおじさんたちですね。
堀江さん
いや、あそこにいた若者も含めて。あいつらの仕事って、実質的にはもうないんですよ、本当は。
青野
なくなっていきつつある?
堀江さん
そうではなくて、彼らの仕事はすでにないんです。いなくていいんです、あの人たちは。僕だったら雇わないですよ。
浜田さん
いらない人たちは、どうすればいいのでしょうか。
堀江さん
遊べばいいんじゃないですか? アリとキリギリスだったら、キリギリスになればいい。
恵んでもらおうが働こうが、お金をもらう意味では一緒。みんなが気にする「食っていく」ってなんですか?
浜田さん
遊んでいるだけじゃ、食べていけませんよね。
堀江さん
そう、こういう話をすると、必ず「食っていくこと」について聞かれるんですよ。ちょっと攻撃しますけど、「食っていく」ってなんですか?定義を教えてください。
浜田さん
お給料が入らないと、生活費がないから、食費も家賃も払えない。つまり生活ができない、ということです。
堀江さん
本当に生活できませんか?
浜田さん
入ってくるものがなければ、支払えないじゃないですか。
堀江さん
支払わなければいいじゃないですか。恵んでもらえばいい。
浜田さん
それって、実際にどれだけの人が可能かという話もありませんか?
浜田敬子(はまだ・けいこ)。1989年朝日新聞社入社。前橋・仙台支局、週刊朝日編集部などを経て99年からAERA編集部。記者として、女性の働き方・雇用問題、国際ニュースを中心に取材。2014年から編集長。2016年5月から朝日新聞社総合プロデュース室プロデューサーとして新規プロジェクトの開発などに取り組む。2017年に同社を退社し、現職に就任。
堀江さん
あなたは別に社会全体のことなんて考えなくていいんですよ。自分が恵んでもらえるかどうか、とりあえずミクロ経済のことを考えましょうよ。
浜田さん
だとしても、なんだろう。恵んでもらうのって、気分的に嫌なんですが。
堀江さん
え、なんでですか? 僕、おごってもらったら超うれしいですけど。
青野
僕らを阻んでいるのは、心の壁ってことですかね。
浜田さん
労働の対価としてお金をもらうというのがしみついていますからね。
堀江さん
お金をもらうという意味では、投資されようが寄付されようが恵んでもらおうが働こうが、すべて一緒なんですよ。そもそも、お金じゃなくたっていい。
さっき食費の話をしていましたけど、飯はぜんぶおごってもらえばいいじゃないですか。
青野
大胆ですね。
堀江さん
僕の意見はよく極論と言われるのですが、現実的な話をしています。ふつうに一人暮らしをしていくなら、服はファストファッションやメルカリで、すごく安いものが手に入る。
たとえば食べ物も、賞味期限切れ直前の食材を配っているNGOがある。そこまでいかなくても、安く調達する手段なんていくらでもありますよね。
家だって、シェアハウスならすごく安い。家入一真くんがやっている「リバ邸」とか、地方だったらかなり安い。
あと、地域おこし協力隊ってあるじゃないですか。東京から対象となっている地域に行けば、ほぼ無条件に300万円近くがもらえる。食っていくって、簡単ですよ。
みんな、自分が思うほど社会の役には立っていない
浜田さん
うーん…、それでも嫌だと感じるのはなんでだろう。働かないと、やりがいを感じられないとかはありませんか?
堀江さん
遊びでは、やりがいを感じませんか? たとえば僕、7〜8年前にゴルフにはまって、毎日行ってたんですけど、すごく充実してました。
青野
なんでしょうね。働いてお金をもらうのも、種類がありますよね。少なくとも、僕はいま好きなことしかやってない。好きになれなかった事業は、すべて売ってしまったので。
働いてお金をもらっているけど、自分の周りに好きなことしか残していないという点では、通じる部分もあるかもしれません。
堀江さん
僕は12年前に半強制的に会社を辞めさせられたのですが、いい機会だなと思って。すごく自由に時間を作れるようになったので。
ほとんどの人はいやな仕事をしていると思うんですよ。つまらない仕事と思うのであれば、やめちゃえばいい。
浜田さん
でも、なかなか意識って変わらないですよ。やっぱり食べていくために働かなきゃという感覚ってあります。
働いてないとなんとなく罪悪感があるし、世の中の役に立ってないんじゃないか、と思ってしまう。
堀江さん
今でも役に立ってないと思いますよ。ぶっちゃけほとんどの人は、大して貢献していないんです。
浜田さん
(笑)
堀江さん
自分が思っているほど、社会の役になんて立ってない。辞めても困らない。
病気になって会社に行かないと迷惑をかけるんじゃないか、みたいな人いますけど、いなくても別にいい。会社なんて、ぶら下がってる人が多いと思いますよ。
浜田さん
2割くらいの人しか働かないという話はありますよね。でも、サイボウズさんは違うんじゃないですか。
青野
そうだと信じたいですけどね。
堀江さん
いやいや、どんなに素晴らしい組織でもぶら下がっている人は絶対います。それは仕方がない。
個人が会社を“使う”という働き方
堀江さん
僕がいま、働き方としておもしろいなと思っているのは、個人が会社を利用するというやり方。昨年からポンとブレイクした編集者で、幻冬舎の箕輪厚介くんという人がいて、彼はめちゃくちゃ会社を使っているんですよ。
浜田さん
箕輪さん、ヒット作をたくさん出していますね。
堀江さん
彼は「給料がもらえなくても、絶対に辞めない」って言ってるんですよね。
一方で、「幻冬舎は俺を雇っているほうが収益がいいはずだから俺を雇っている」とも。実際、彼は幻冬舎の給料の5倍以上は稼いでると思いますよ。
浜田さん
箕輪さんが会社を使っているのは、どういう部分なんですか。
堀江さん
幻冬舎のブランドと出版流通じゃないですか。組織を自由に使えるんですよ。それはおもしろいなと思って。
青野
主従逆転感がありますね。
堀江さん
個人の働き方として会社のリソースや資金力、ブランド力を使って、生きていくというのもありですよね。というか、そっちのほうがやりやすいじゃないですか、完全に独立するよりは。
青野
会社という組織としても、その働き方はいい影響があるでしょうね。社員一人一人がその意識をもった会社だったら、ものすごくハッピーになる気がします。
「働き方改革」より以前の、「そもそも働く必要ってあるんですか」という根本的な部分で議論が白熱したパネル1。
次回は、パネル1の後編をお届けします。「遊んでる奴が最強の時代」や「小中高で行なう教育の9割は意味がない」などの言葉も飛び出しつつ、新しい働き方をさらに掘り下げます。
〈文=園田菜々/編集=杉山大祐(ノオト)/撮影=栃久保誠〉
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