

『転職の思考法』著者に聞いた
映画の主人公も、“使命”には途中で気付く。やりたいことがない人のための転職入門
新R25編集部
新R25が8月にお届けする特集「はじめての転職 サバイバル」。
全4回の記事を通じて、読者が自分自身のキャリアを見つめ直すきっかけや、はじめての転職活動で活用できる実践的なノウハウをお届けします!
第3回に話を聞いたのは、就活サイト『ONE CAREER』の執行役員である北野唯我さん。6月発売の著書『転職の思考法』(ダイヤモンド社)も発売わずか1.5カ月で8万部を突破し、大ヒット中です。
「自分のキャリアにモヤモヤしてはいるけど、やりたいこともスキルもないし、転職する自信がない…」
そんなR25世代の等身大の悩みや疑問を、就活のスペシャリストにぶつけてきました!
〈聞き手:宮内麻希(新R25編集部)〉

北野さん
よろしくお願いします! 今日の取材、楽しみにしてましたよ~!
【北野唯我(きたの・ゆいが)】兵庫県出身。就職氷河期に博報堂へ入社し、経営企画局・経理財務局で勤務。その後、ボストンコンサルティンググループを経て、2016年にワンキャリアに参画し、現在執行役員を務める。TV番組のほか、日本経済新聞、プレジデントなどのビジネス誌で「職業人生の設計」の専門家としてコメントを寄せる。初の著書『転職の思考法』(ダイヤモンド社)は発売1ヶ月で6.5万部突破のベストセラーになっている

北野さん
はじめに、僕からひとついいですか?

宮内
なんでしょうか。

北野さん
『転職の思考法』を出版しておいて、さらにこの取材を受けておいてなんなんですが…
読者のみなさんは、そもそも転職なんてしなくてもいいんです。

宮内
えっ。
転職なんてしなくてもいいから、辞表を胸に入れておけ!?

北野さん
ちょっと、ある例を紹介したいんですけど。
とある大企業勤務の男性がいたんですね。でも、大企業での仕事がものすごくつまらなくて、入ったことを後悔したと。
それである日、辞表を書いてそれを胸ポケットに入れたんです。すると不思議なことに、その日から仕事が楽しくなったそうなんですよ。これって、どうしてだと思います?

宮内
こわいものがなくなったから…?

北野さん
そう。彼のなかで「転職する」というカードを手にした瞬間から、会社に対して自分の言いたいことも言えるようになったし、ノーと言えるようになった。

北野さん
最近だと日大アメフト部の事件も、この話に似てます。
彼がもし、“日大はダメになったとしても、法政や関学でプレーできればいいや”って1%でも思えていたら、あそこまで組織にしばられるような不幸な展開にはならなかった可能性もありますよね。

宮内
たしかに…!
ただ、現実的にはそう思うのもなかなか難しい気がします。
組織に愛着もあるだろうし、自分のキャリアとして考えても「まだまだスキルも経験も浅いし」と思ってしまって、転職する選択肢に自信を持てないというか。

北野さん
その反応めっちゃいい! 宮内さんだけでなく、これは多くのR25世代も共通して感じていることです。
実際にするかしないかは一旦置いておいたとして、だれもが “転職する”というカードを持っておくべきということを僕は主張したいんです。
はじめから使命感に燃えまくる映画のヒーローなんていない

宮内
転職カードを持つためには、スキルや経験だけじゃなくて、自分が“やりたい”と強く思えることもないといけませんよね。

北野さん
うん、その反応もめっちゃいいです!
テンプレ的なリアクションを繰り返してすみません

北野さん
突然ですけど、宮内さんは映画って見られます?

宮内
好きですよ!

北野さん
僕、新卒のころに、仕事の合間をぬって趣味でシナリオの勉強をしてたんですよ。そのとき、学んだことなんですけど。
映画のシナリオはいくつかの法則で成り立っているんですよね。そのなかでも鉄板なもので、“主人公は必ず旅の途中で自らの使命に気がつく理論”があるんですけど。

宮内
なんですかそれは。

北野さん
たとえば『ロード・オブ・ザ・リング』。主人公のホビットたちは、物語の序盤は旅に出ることを異常に嫌がるんですよ。

宮内
あ、たしかに『エヴァンゲリオン』のシンジくんもそうですね。『スパイダーマン』もはじめは使命というより“モテたい”からだ!

北野さん
そうそう。でも、物語の途中でキャラクターは気がつくんですよ。
「あ、俺の使命ってこれなのか」ってね。

北野さん
映画を観る人の多くは、最初から使命に燃えるキャラクターだと自分とあまりに違って感情移入できず、共感できない。
シナリオの世界で「最初から使命に燃えたキャラクターを描いてはならない」と言われるのはこのためです。よくみると、RPGのストーリーなんかもこの手法が基本ですね。
つまり、“やりたいことがない”“使命がない”なんて、あたりまえなんです。

宮内
この説明、ものすごい納得感があります。

北野さん
そもそもですが、世の中には、自分が心からやりたいと思えることを持っている人間なんて、1パーセントしか存在しません。

宮内
『転職の思考法』のなかでも、“to do型”と“being型”がいると解説されていましたね。
出典 『転職の思考法』(ダイヤモンド社)P.255より・人間には「何をするか」に重きをおくto do型の人間と、「どんな人でありたいか、どんな状態でありたいか」を重視するbeing型の人間がいる
・99パーセントの人間はbeing型である。だから、「心からやりたいこと」がなくても、悲観する必要はまったくない

北野さん
かくいう僕も、大学生のころはずっと“to do型”に対してコンプレックスを持っていました。
だって小さいころから「医者になりたい」と言って、医学部に進んだ人とかってめちゃめちゃカッコよくないですか?(笑)

宮内
自分は“being型”であることを理解せずに、“to do”を求めていると、悶々としてしまうかもしれません。

北野さん
イーロン・マスクとか、ソフトバンクの孫さんとか、偉大な経営者についての本がよく売れてるじゃないですか。そういう本って、ほとんどが一握りの”to do型”が主人公になってるんです。
でも、現実には、世の中の大半は僕みたいな人で、そこに劣等感を感じる必要なんてないんだと気がついた。そこから、とてもラクになりましたよ。
やりたいことがない人が転職カードを持つには…?

宮内
その上で、気になることがあります。
私たち“being型”が転職したいと思ったらどうしたらいいんでしょうか…?

北野さん
現実はRPGとは違って、自分のレベルはどうすれば上がるのか、攻撃力はどのくらいなのかわからない状態で旅を進めなくてはいけない。
じゃあ、知るにはどうすればいいのか? それが、自分のマーケットバリュー(市場価値)を考えることなんです。
出典 『転職の思考法』(ダイヤモンド社)P.245よりマーケットバリュー=技術資産×人的資産×業界の生産性
・技術資産は、他の会社でも通用する技術的蓄積。職種に紐付く「専門性」(例:法人営業)と職種に紐付かない「経験」(例:マネジメント経験)の二つに分けられる
・人的資産は、一言で言えば「人脈」。あなただから動いてくれる人がどれだけいるか
・業界の生産性は、一人あたりの粗利。これが、給料の原資となる

北野さん
今日仕事が終わったらすぐにでも、自分のマーケットバリューの棚卸しをしてください。
主観が入っていいので、今の仕事で、どんなポイントがマーケットバリューになりうるかを上記の3つの視点から書き出して、自分なりのレジュメをつくってみる。

宮内
たしかに、これをすれば自分の攻撃力がわかって、どこが強いからどうやってボスを倒そうとか、ゲームを進められるってことか。

北野さん
やりたいことがない“being型”人間は、まずマーケットバリューを高めるための仕事を選びましょう。
そうすると、自分が市場に対してどれだけの価値があるか見えてきて、いざというときに会社を飛び出したって怖くなくなります。
あるいは、ここをもう少し高めたいから転職しよう、と思うようになるかもしれない。

宮内
つまり、自分のマーケットバリューを知ることが、よい転職のためのファーストステップなんですね。

北野さん
はい。それに、マーケットバリューを意識して仕事をしているうちに、やりたいことや使命の輪郭が見えてくるはずです。僕たちは途中で気がつくんですよ。
…ほらこれ、映画の主人公と同じです。

宮内
そうきたか~!
では、その「マーケットバリュー」を高めて、引く手あまたな人材になるにはどうしたらいいかも教えてほしいです!

北野さん
わかりました。でも少し長くなっちゃうので、そのお話は次回にとっておきましょうか。

宮内
は、はい…! 先生!
「キャリアって本質的には特殊な病なんです。自分と同じ経歴を歩んできた人なんていないから、教科書もない。個人個人が自分なりの処方箋を考えていかなくちゃいけない」
そう教えてくれた北野さん。
読者のなかにも、家や投資、健康のことになると必死に書籍をあさるけれど、転職に関しては周りに話を聞きづらいこともあって、意外と「なんとなく」で決めてしまってた人もいるはず。
次回は、「マーケットバリューを高めるキャリア選択」をテーマにお話いただきます。明日公開の記事をお楽しみに。
〈取材・文=宮内麻希(@haribo1126)/撮影=森カズシゲ〉
より詳しく知りたい方は、『転職の思考法』をご覧ください!
北野さんの発信も要チェックです!
本格的に転職を考えている人はこちらもチェック!
【4日連続公開】特集「はじめての転職 サバイバル」
明日公開する北野さんインタビューの後編では、まだ専門性も人脈もないR25世代のために、「マーケットバリューを高めるキャリアの歩み方」について聞きました。
特集最終回にふさわしい内容になっていますので、ぜひお楽しみに!

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