ビジネスパーソンインタビュー
「政治家がカッコよくならないとダメ」
偏った思想の人が増えてもいい!?「若者の政治意識を高める方法」をおときた議員と考えた
新R25編集部
「政治に興味はないけど、知らないことにどこか後ろめたさは感じている」
「現状に不満はないけど、日本の将来になんとなく不安は感じている」
新R25の読者の皆さんには、そんな人が多いのではないでしょうか。
ではなぜ、若者は政治に興味を持てないのか?どうすれば興味を持てるようになるのか?
クラウドファンディング開始から1カ月で1000万円を集め、若い世代に向けた「あたらしい党」を立ち上げた東京都議会議員、おときた駿さんと一緒に考えました。
〈聞き手=渡辺将基(新R25編集長)〉
なぜ若者は政治に関心がないのか?
渡辺
今日おときたさんとディベートしたいのは「若者の政治への関心を高めるにはどうすればいいのか?」というテーマなんですが、若い人たちに政治コンテンツを届けるということに関しては、新R25もこれまで苦戦しています。
まずそもそも、若い人たちの政治意識が低いのはなぜだと思いますか?
おときたさん
基本的に若者というのは古今東西、政治に関心がないものですよね。
やっぱり多くの人が政治に興味を持つタイミングって、初めて子どもが生まれて区役所に行ったときとか、親の体調が悪くなってヘルパーさんが必要になったときとかじゃないですか。
でも20代のときは自分で稼いだお金を自分のために使って人生も楽しいし、両親の介護もまだ先だし、子どもも生まれていない。
要はまだ福祉を必要としていないので、そういった若い人たちの政治への関心が低いのは、ある意味仕方のないことだと思います。
渡辺
若者は特に自分ごと化できる政治イシューがないんですよね。
極端なことを言うと、「戦争が起きる」ぐらいのインパクトがないと(自分ごと化するのは)難しいのかなという気がします。
おときたさん
戦争という例が適切かはわかりませんが、自分たちが社会的危機に直面してるかどうかは大きいですよね。
北欧ってめちゃくちゃ投票率が高いんですけど、僕の仮説では、その要因のひとつは「寒いから」なんじゃないかと思ってます。
寒い国って社会で助け合っていかないと生きていけないので、そういう危機感が国民の政治意識の高さにつながってるじゃないかなと。
渡辺
なるほど。さすがに日本の若い人たちも北朝鮮のことは気にしていますからね。
とはいえ、安倍さんや政府がどういう外交をしているかまでは知らないと思いますが…
興味をもってもらう近道は、政治家がカッコよくなること
渡辺
この現状を打破するにはどうすればいいと思いますか?
おときたさん
僕が大事だと思っていて自分でもやっていきたいのは、政治家がカッコよくなることですね。
今は「政治は腐敗しているもの」というイメージが先行して、政治家は嫌われてるじゃないですか。
でも「こういう人になりたい」と思われる政治家のスーパースターが出てくれば、そういう状況も変わってくるんじゃないかなと思っていて。
渡辺
やはり興味を持たせるには「人」がポイントですか。
おときたさん
それが一番手っ取り早いと思います。
たとえば、20代の人たちも落合陽一さんの言うことには耳を傾けるわけじゃないですか。落合さんが言うから「面白そうだな」とか「新しそうだな」と興味を持つ。
そして、落合さんを通じて「政治家は普段こういうことをやっているんだ」とか、「国会ではこういうことをしているんだ」ということを理解していくと思うので。
渡辺
なるほど。
おときたさん
でもいま、若い人たちに対してそれぐらい影響力を持っている政治家はいないですよね。
渡辺
少し前だと、橋下(徹)さんがそういう存在だったんでしょうか。
おときたさん
そうですね。大阪は一時的にすごく盛り上がりましたし、橋下さんはひとつの成功モデルに近いところまでいったんじゃないかなと思います。
あとは、いま青年市長ブームがちょっときていて。千葉の熊谷(俊人)さんとか、福岡の高島(宗一郎)さんのような首長経験者が国政に来るような流れができると面白いと思います。
渡辺
個人的には、そうやって注目される政治家が出てきた状況で首相公選制(※)を導入すれば、よりみんなの政治への参加意欲が高まると思ってます。
※国民の直接投票で首相を選出するシステム。過去には中曽根康弘氏、小泉純一郎氏、橋下徹氏などが支持していた。
おときたさん
そうですね。ただ、首相公選制は良い意味でも悪い意味でも人気投票になってしまいますし、そもそも憲法を改正しないといけないというハードルもあります。
いずれにせよ、もっと直接的に国民が政治にかかわる手段や機会を増やさないといけないとは思っているのですが。
確固たる思想や理念がなくても、政治家になる人がいてもいい
おときたさん
「人」がポイントになるという意味では、僕はもっといろんな人が政治家になっていいと思ってるんですよね。
渡辺
たとえばどういう人でしょうか?
おときたさん
一般的には、社会に不満があって政治家を志す人なんかが多いと思いますが、「母子家庭で育って…」とか「震災がきっかけで…」みたいなストーリーがなくてもいい。
そこまで確固たる思想はないけど、政治に興味を持って活動して、世間の関心を高めることに貢献する人がいてもいいじゃないですか。
とにかく、(政治家になる)ハードルを上げすぎないことが大事だと思います。
渡辺
なるほど。ちなみに、おときたさん自身が政治に興味を持ったきっかけは何だったんですか?
おときたさん
…女の子にモテたかったからですね。
渡辺
そんな理由で。当時から政治家がカッコいいと思っていたということですか?
おときたさん
というより、社会を変えたいと思ったんですよね。
政治って、いわばルールメイクじゃないですか。資本主義はお金を持っている人がエライけど、共産主義はそうじゃない。そうやって自分の理想の社会になるようにルールメイクする側になりたいと思ったんですよ。
モテない自分を変えるより、自分がモテる社会を作り出そうと。
渡辺
政治家=ルールメイクする人だと思ったら、ちょっとカッコよく思えてきました。
でもそんな入り口から入って、政治家として大きな志を持つようになるとは思えないのですが…
おときたさん
なるんですよ、それが。
渡辺
そういうものなんですね(笑)。
義務投票制を採用し、選挙をイベントとして盛り上げる海外事例
渡辺
ちなみに僕のケースで言うと、メディアを運営するようになったタイミングで政治のことも最低限知らなきゃいけないと思って、必要に迫られて勉強したんです。
それである程度の知識を無理やり頭に入れたら、いつの間にか興味を持てるようになったんですよね。
おときたさん
なるほど。
渡辺
その経験もあって、「強制的に政治に触れさせる」というのも興味を持つきっかけになるのかもと思いました。だいぶ荒っぽいやり方ですが(笑)。
おときたさん
それでいうと、義務投票にしちゃうという方法もありますよね。オーストラリアなんかは、それで投票率が90%ですから。
渡辺
オーストラリアは選挙を楽しく盛り上げてるのがいいですよね。
おときたさん
そうですね。投票後はみんなで大きなソーセージを食べるっていう伝統もあって、みんなそれを楽しみにして投票所に来るんですよ。
おときたさん
また、直接民主制(※)を採用しているスイスでは、住民が広場に何千人と集まって開票するという文化があります。
※代表者を介さずに、国民が直接政治の意思決定に参加する政治制度。
渡辺
日本では、なぜそういう取り組みが進まないんでしょうか?
おときたさん
日本ではまだ選挙が“堅苦しいもの”として扱われているし、依然として政治と宗教の話はタブーみたいな空気感がありますから。投票日にお祭り騒ぎをしようとか、そういう雰囲気はなかなか作れないです。
投票と地域のクーポンを連動させて有権者を呼び込もうと頑張ってるNPOなんかもありますけど、残念ながらメジャーな取り組みにはなってないですね。
渡辺
あとは根本的に、いまの政権は高齢者から支持されて成り立っているので、政府もわざわざ若者の投票率を上げたいとは思っていない、というのもありますよね。
おときたさん
そうですね。特におじさん政治家は、若者の投票率が上がってほしいとは思っていないと思います。ネット投票なんかも、やりたがってるのは若い議員だけです。
政治に興味を持つためには、偏ったり染まったりする経験も必要
渡辺
おときたさんが以前ブログで「政治を身近に感じるためには、たった一人だけフォローすれば良い」という提案をされていたのも興味深かったです。
おときたさん
やっぱり、政治に興味がない人に「新聞を読みましょう」とか「本を読みましょう」って言っても難しいわけですよ。
でも堀江さんのツイートだったら、政治的な内容だとしても敷居が低いじゃないですか。
渡辺
そうですね。堀江さんの投稿や議論はエンタメとしてつい見てしまいます(笑)。
おときたさん
そうですよね。Twitterならスマホさえあればタダで情報収集できるし、僕はそういうところを入り口にするのは間違ってないと思います。
渡辺
ただSNSの世界がコワイのは、はじめはひとりの発信を見ているつもりが、今度はその人がリツイートしている投稿が気になって、そこから辿ってまた別のユーザーをフォローして…という連鎖が起きるじゃないですか。
それを繰り返していると、いつの間にかどんどん入ってくる情報や自分の思想が偏ってくるんですよね。
おときたさん
そうですね。「サイバーカスケード」って言われてる現象です。
渡辺
僕はどちらかというと右寄りの思想なんですけど、以前左寄りの考えを持った知り合いのTwitterのタイムラインを見せてもらったら、流れている情報があまりに違いすぎて驚きました(笑)。
いくら政治に興味を持つ人が増えても、こうなってはダメですよね?
おときたさん
いや、そんなことはないと思います。
渡辺
なぜですか?
おときたさん
僕だって、政治に興味を持ちはじめたきっかけは小林よしのり先生の『戦争論』っていう本で、当時はそこから同じような主張の本ばかり読んで、すごい右寄りの思想になってましたから。
でも、あのとき一度右旋回しなかったら、政治なんかに興味持たなかったかもしれないですよね。
だから学生運動なんかもそうですけど、そうやって政治のエネルギーを浴びたり染まったりするのは、全然悪い経験じゃないと思います。
民主主義は国民の学びを反映し、レベルアップしていける秀逸なシステム
渡辺
たしかに、偏るくらいじゃないと政治に興味を持てないというのは同意です。
ただ、その結果として偏った思想を持つ人が増えてしまうリスクについてはどう考えていますか?
おときたさん
民主主義はとても良いシステムで、大クラッシュが起きないようになっているわけです。
多少誰かが変な方向に染まったところで革命は起こせませんし、4年に一度は間違ったところを正すチャンスが来ます。
どちらかに寄りすぎたと思ったら必ずその反動が来るようになっていて、その度にレベルアップしていく仕組みなんですよね。
渡辺
なるほど。国民の学びを反映するシステム、という感じでしょうか?
おときたさん
そう、国民の学び。僕だって、過去には民主党に投票したこともありますから(笑)。
渡辺
そうでしたか(笑)。
おときたさん
たとえば「SEALDs(シールズ)」を支持していた人なんかも、僕の感覚だと8割くらいは戻ってくるんじゃないかなと。
しかも、政治に関心が高い層として。それはすごい良い傾向だと思っていて。
だから僕は、まずは興味を持って突入することが大事だし、どんな形であれ、政治への関心は高ければ高いほど良いと思っています。
渡辺
苦しい状況ではありますが、若い人たちを政治に近づけるプラス材料もあるなと感じてます。
たとえば、これまではデータ改ざんのリスクがあって導入が進まなかったネット選挙も、民主的に信頼性を担保できるブロックチェーンの仕組みを使えば実現する可能性がありますよね。
おときたさん
まさにそうですね。すでに試験的に導入されている地域もあります。
「あたらしい党」も、公約に掲げている若い力の活用やテクノロジーの規制緩和などを通じて、積極的に若い世代にアピールしていきたいです。
情報に触れることも、発信することもついデリケートになってしまいがちな政治の話題。ただ今回の取材では、「興味を持てるきっかけがあれば、構える必要はない」ということを教えてもらいました。
おときたさんが提案してくれたように、SNS世代の僕らが現実的に政治との距離を縮める第一歩としては、まず気になる人をひとりでもフォローしてみることをオススメします。
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