ビジネスパーソンインタビュー
「プレッシャーって、期待なんですよ」
大舞台で“ホームラン予告”をせよ。中田敦彦がR25世代に伝えたい「圧倒的に成長する方法」
新R25編集部
「人生は20代で決まる」
人生の先輩の多くが口にしているこの言葉。20代のうちにいろんなことに挑戦して経験値を積め、というメッセージも込められています。
ただ、新しいことに挑戦するのって簡単にはできないですよね。私福田も「時間がない…」「失敗したら…」って言い訳を作ってしまうダメな20代のひとり。
今回はそんな我々に喝を入れていただくべく、この先輩に登場してもらいました。
【中田敦彦(なかた・あつひこ)】1982年9月27日生まれ。お笑いコンビ・オリエンタルラジオのボケ・ネタ作り担当。RADIO FISHのメンバーとしても活躍。最近はビジネス方面に力を入れ、著書には、『天才の証明』(日経BP社)、『僕たちはどう伝えるか』(宝島社)など
あっちゃんこと、オリエンタルラジオの中田敦彦さんは、20代前半にして「武勇伝」が大ブレイク。2016年にはRADIO FISHとして紅白歌合戦に出場し、最近ではアパレルビジネスにチャレンジするなど、活躍の幅を広げています。
まわりにどれだけ批判されようと果敢に新しいことに挑戦していく中田さんに、自身がチャレンジを続ける理由、そして我々R25世代に伝えたいことなど、とことん語ってもらいました!
〈聞き手=福田啄也(新R25編集部)〉
今回は、ラジオ番組『オリエンタルラジオ中田敦彦のオールナイトニッポンPremium』(ニッポン放送)のオンエア前に取材しました
お笑い以外に挑戦しようと思ったきっかけは、賞レースに固執することへの疑問から
福田
中学生のころからずっとオリエンタルラジオの活躍を見ていたので、今日の取材はかなり気合が入っています。
中田さんといえば、最近は音楽活動やオンラインサロンなど、芸人業以外の活動が目立ちますが、それらの活動を始めるのに何かきっかけがあったんですか?
中田さん
歯に衣着せずに言うと、「M-1」とか「キングオブコント」でグランプリを獲ってもスターになれるわけではないって気づいたからですね。
福田
というと?
中田さん
今テレビで活躍しているのって、「M-1」の“審査員”の方々ですよね。
「キングオブコント」で司会を務めるバナナマンさんやさまぁ~ずさんが、今も前線でバリバリ活躍されている。
でも、本来「M-1」や「キングオブコント」では、新しいスターが生まれるべきなんですよ。
エンタメ業界の台風の目になっているはずなのに、最近はそうなっていない。
福田
たしかに、歴代のM-1優勝者やキングオブコント優勝者を答えられない人は多いかもしれませんね…
中田さん
そうでしょう? でも、人って権威に弱いんですよ。「○○チャンピオン」とか「○○覇者」とか、その冠に執着しがちなんです。
ボクのまわりには、すごく実力があるのに何年もメディアに出れていない芸人も多いんですが、みんな集まったらいつも「今年こそはM-1決勝に出る」みたいな話しかしていません。
それに対してボクは「ちょっと待ちませんか」って言いたい。
中田さん
みんながみんな「年に2つしかないパイを狙ってていいんですか?」と。
もしこれが会社だとしたら、非常に狭いところを狙っている事業計画になるんですよ。もしダメだったら…というリスクヘッジも考えないといけませんし、そのパイを取れたあと、何ができるようになるのかということまで見据えてないといけないんです。
前年度・前々年度の優勝者が今どんな活躍をしているのか、という分析が足りていません。
福田
「チャンピオンになる」だけじゃ甘いってことですね。
中田さん
そうです。一番大事なのは、優勝してチャンピオンになることではなくて、多くの人に自分の表現を伝えることなんじゃないかなって思うんですよね。
その時代にフィットした自分のコンテンツをお金にして、経済的な活動を続けていくべきだと。
そのことを意識しはじめたら、漫才やコントへの執着がなくなりました。
「お笑い」と「音楽」の集客ポテンシャルの違いに気づいたから、ジャンルを飛び越えた
福田
音楽活動を始めたのには、どんなきっかけがあったんでしょうか?
中田さん
オリエンタルラジオで音楽番組をやっていたころ、まだ大ヒットする前のきゃりーぱみゅぱみゅさんや三代目 J Soul Brothersさんを迎えることがありました。
彼らの集客力って、ボクら芸人とは桁違いですよね。その光景を横で見ていて、我々との違いは何なんだろうって苦しんでたんですよ。
だって生まれたときは、何ら差がない赤ん坊同士だったわけじゃないですか。
福田
そこまでさかのぼります!?
中田さん
これは結局、音楽の世界とお笑いの世界に別れただけで、集客に大きな差が出てしまうということなんです。
その入り口が違っただけで、彼らは1万人のお客さんを楽しませることができ、一方の我々は多くても1000人程度。
福田
お笑い芸人のライブって、アリーナとかでやっているイメージがありませんね。
でもそれって、表現がまったく違うので仕方なくないですか?
中田さん
最初はボクも仕方ないって諦めていました。
でも、興行主の視点からしたら、多くの人を呼んで、多くのチケットをさばけるやつがエラいわけじゃないですか。
中田さん
だったらボクらも1万人を楽しませられるようなパフォーマンスをやりたいってことで、音楽活動を始めたんです。
福田
でも、よく未経験の音楽活動にチャレンジしようと思えましたね。
中田さん
逆に聞きますけど、音楽ってそんな特別な人間がやることですか?
福田
えっ?
中田さん
だって、今の音楽業界って楽器ができなかったり、歌がうまくなかったりするアーティストってたくさんいますよね。
たとえばゴールデンボンバーさん。彼らは面白くて歌が売れているアーティストとして活躍されています。世間で、彼らがエアーバンドだって批判する人はいませんよね?
そんな彼らの存在が、RADIO FISH誕生の大きなヒントになったんです。
福田
なるほど…
中田さん
鬼龍院翔さんはNSCの1期上の先輩なんですけど、歌って踊って人を喜ばせている。その姿にすごく勇気をもらいました。
自分はアーティストじゃないからって言い訳しないで、どんな形でも楽しいことや面白いと思ったことを発信するのが大事なんだって気づかされたんですよ。
中田さん
ボクは世の中に“ウケること”がやりたいんです。
もちろん、自分たちのネタで笑ってもらうことは、ウケることの1つ。でも、ウケるってお笑いだけの言葉じゃなくて、「反応がいい」っていう意味ですよね。
音楽で泣いてくれたり、人がめちゃくちゃ集まったりしたら、それはウケてるってことじゃないですか。
そんなことをこれからもずっと企画していこうと思っています。
働き盛りの男たちにとっての最高のエンタメは「ビジネス」だ
福田
10月からは新たにアパレル事業を始められましたよね。これはどうしてなんですか?
「BRAIN WASH」と書かれたTシャツは、中田さんが始めた「幸福洗脳」というブランドのもの
中田さん
音楽活動をやっていると、物販とかも自分たちで考えないといけないんです。
「今回のライブだとTシャツはこのくらい売れそうだな」とか、「商品の価格っていくらにすればいいんだろう」とか。それを考えていくのがすごく面白くて。
ちなみに、今の30代や40代の男性って、どんな娯楽に一番興味があると思いますか?
福田
えーっと、サーフィンやゴルフとかですかね…
凡庸な回答しか出てこない自分に絶望しました
中田さん
違います。30代~40代にとって、最高のエンターテインメントは「ビジネス」なんですよ。
主婦層がワイドショーを見て、ティーンがSNSを活用している時間って、その世代の男たちは働いているんです。そして、ビジネスがうまくいっていること自体が大きな娯楽になっているんです。
ポップ・アートの巨匠であるアンディ・ウォーホルも、かつて「好調なビジネスは、何よりも魅力的な芸術だ」と言っていました。
福田
なるほど。ビジネスがエンタメであるという発想はなかったです。
中田さん
だからボクは今、「このアパレル事業がうまくいくかどうか」っていうビジネスをリアリティショーとしてお届けしているつもりです(笑)。
これもまた、お笑いとは違った「ウケる企画」の1つだと思ってください。
新しいことに挑戦する理由は 、「レベル1からレベル10に上げるフェーズ」が一番楽しいから
福田
中田さんは、なぜ次々と新しいことに挑戦するんですか?
中田さん
ボク、RPGでレベル1からレベル10に上げていくフェーズがすごく好きなんですよ。
弱いスライムに苦戦しつつも、どんどんレベルが上がっていくのってめちゃくちゃ楽しいですよね。
福田
わかります。新しいゲームを買った日は寝ずにプレイしてしまいますよね。
中田さん
そうです。
逆に、レベルが上がって成長が鈍化していくと、飽きてしまう。レベル45からレベル50に上げるとか。成長の速度が遅くなってくるとつまらなく感じるんです。
だから、何かを極めていくというよりも、新しいことをどんどん始めるのが一番面白いと思うんですよね。
たとえがわかりやすすぎて、どんどん頭に入ってくる中田プレゼン
中田さん
以前、堀江貴文さんにお会いする機会があって、そのとき堀江さんは「R-1グランプリ」に挑戦されていました。
中田さん
堀江さんって、いろんなビジネスに成功しているし、潤沢にお金もある。本を出せば売れるし、やりたい放題じゃないですか。
そんな堀江さんに「なんでR-1なんて出るんですか!?」って聞いてみたら、「うるせえな。やりたいからやってんだよ」って言い返されたんですよ。
福田
堀江さんらしい回答(笑)。
中田さん
堀江さんにとって、お笑いは新しいジャンルへの挑戦だったんでしょうね。だから面白そうに見えるし、やってみたいと思う。
ボクがビジネスに挑戦するのと同じだなと思いました。
新しいことに挑戦すると、スキルの掛け算でイノベーションが起きる
福田
新鮮で刺激的といっても、新しいジャンルに飛び込むことってかなり勇気が必要だと思います。
それに『芸人前夜』(オリエンタルラジオのデビューまでを描いた中田さんの自伝小説)を読むと、大学時代の中田さんは芸人になることにかなり躊躇されていた印象です。
それまでの経験を捨てて新しいことにチャレンジできるようになったのには、何かきっかけがあったんですか?
中田さん
それはお笑いの世界に入ってから変わったんですよ。
当時のボクは受験勉強しかやってこなかったので、新しいジャンルに飛び込むことはすごく怖かった。
ところが、お笑いの世界に入ってみると、受験勉強で培ってきた経験が必ずしも無駄になっていないなって気づいたんです。
むしろ、勉強をたくさんしてきたからこそできた仕事もたくさんありました。
福田
これまでやってきたことがゼロになるわけではないんですね。
中田さん
そうなんです。新しいことを始めるときって、ただのレベル1になるんじゃなくて、違う世界での経験値を持ってこられるんですよ。
むしろ、これまでのノウハウを横に展開すれば、まったく新しい人材になれるんです。
中田さん
それに「イノベーションとは、ゼロから新しい発想を生み出すことではなく、ある発想とある発想を組み合わせることだ」という話を聞いて、「それってジャンルをまたげばまたぐほど起こりやすいじゃん!」ってことにも気づきました。
特にボクは受験勉強からお笑い、お笑いから音楽とジャンルをまたいでイノベーションを起こせた感覚があったので、それ以来新しいジャンルへ挑戦することへの抵抗は一切なくなりましたね。
信頼を積み重ねると、どんどん新しいチャレンジが加速する
福田
最近の中田さんの活動を調べていると、批判意見も見られました。
アパレル事業に関しても「芸人のクセに…」と言われることもあったと思うのですが、逆風は気にならないんですか?
中田さん
うーん、批判したくなる気持ちもわかるんですよね。
ジャンルをまたぐって、やっぱり多くの人にとって勇気のいることなんです。だから、挑戦している人に対して引け目を感じてしまうんじゃないかと。
禁煙を始めたやつをたばこに誘う人っているじゃないですか。ああいうノリに近いんじゃないですかね。
福田
じゃあ批判されても特に気にしないと?
中田さん
そうですね。批判がきているってことは、ボクに対する信頼度がまだまだ足りてないってことかなと思っています。
これまで何度もイノベーションを起こしてきた人だったら、次の新規事業を始めるとき「あいつはまた何かやってくれるんじゃないか?」って期待されるわけですよ。
まだボクにはそこまでの信頼はないということです。
福田
なるほど。そういうふうにとらえているんですね。
中田さん
そうですね。でも、ちょっとずつ成果を出して信頼を積み重ねると、新しいことにどんどん挑戦しやすくなるんです。
ボクも音楽を始めたときより、アパレル事業を始めたときのほうがやりやすかったですから。
いろんな人が、「『武勇伝』も『PERFECT HUMAN』も当てた男」っていう目で見てくれるので、協力者があっという間に増えていきました。
中田さん
もしこれがなにも経験値のない大学生の中田だったら、10月にブランドを立ち上げるといっても、服をすぐに生産したり、乃木坂にアパレルショップを出店したりはできないでしょう。
だから、次に何かをやるときは、もっとやりやすくなるんだろうなって思います。
福田
なるほど。はじめは足取りが重くても、一つひとつ信頼を積みあげていけば、どんどん挑戦が加速していくってことですね。
「頑張る」だけじゃ甘い。「覚悟を決める」から成長する
福田
以前中田さんがテレビで「頑張るのは当たり前だ。大事なのは覚悟を決めること」ってお話されていて、それがすごく印象に残っています。
「新しいチャレンジのときは、いつも覚悟が問われている」ともお話されていましたが、中田さんからすると「頑張る」と「覚悟を決める」って何が違うんですか?
中田さん
覚悟を決める…確かにボクがよく使う言葉ですね。
人って誰しも大舞台があると思うんですよ。ボクにとっては新しい番組を始めることは大舞台だったし、音楽やアパレルを始めるときもそう思って臨んでいました。
大舞台に上がるときって、必ずプレッシャーがかかりますよね?
福田
「絶対に成功させなきゃ」って気持ちになります。
中田さん
そうです。たとえば4番バッターが9回裏のツーアウト満塁で登場したら、球場は大盛り上がりですよ。「あいつなら必ず打ってくれる!!」って。
これ、本人からしたらとんでもないプレッシャーじゃないですか。
福田
うわぁ…想像しただけで怖いですね…
中田さん
でも、プレッシャーって自分視点の言葉であって、客観的に見ると「期待」なんですよ。
だって、これってマンガだったら最高にヒーローですよね?みんな「あいつならやってくれる!!」って思われるような4番バッターになりたくて野球を始めたんでしょう?
努力してきた人からすると、夢にまで見た舞台なんですよ。
中田プレゼンも佳境に入りました
中田さん
ここで「頑張る」と「覚悟を決める」の違いの話に戻ります。
その場面で打席に立って普通にスイングする。これが「頑張る」です。
じゃあ「覚悟を決める」っていうのは何なのかと言うと…そこで「ホームラン予告」をすることなんです。
福田
自分からハードルを上げるってことですか!?
中田さん
そうです。「覚悟を決める」って言うのは、「ボクならやります」ってまわりに宣言することなんですよ。
「頑張る」って当たり前だから宣言はしませんよね。だからダメでも「すいません」で終わる。まわりも「頑張ったんだからしょうがないよ」ってなります。
一方で「覚悟を決める」っていうのは、すごくリスクがある行為です。だって三振したら、ボロカスに叩かれますからね。ボクだったら泣き叫ぶかもしれませんよ(笑)。
福田
そこまでして、「覚悟を決める」必要性ってなんなのでしょう?
中田さん
覚悟を決めると、確実に成長するんです。
だって周囲に宣言したら、絶対になまけられないですよね? 「お前あれだけのことを言ったんだから、わかってるよな?」って目でみんなから見られる。
そんな人の練習量と、黙って練習している人の練習量は比にならないと思いますね。
福田
なるほど…じゃあ中田さんがよくビッグマウスと言われているのは、覚悟を決めているってことなんですね。
中田さん
はい。今やっているアパレル事業も「原宿に店を出す」って豪語して、絶対にしくじるわけにはいかないって気持ちで臨んでます。
かつては受験勉強に没頭していた男がお笑いでムーブメントを起こし、ミュージシャンとして「NHK紅白歌合戦」に出るという偉業を達成。そしていま、また新しいチャレンジに乗り出しています。
インタビューの最後には、「ボクは“人は何にでもなれる”というのを証明したいんです」と話してくれた中田さん。ラジオでは「一歩を踏み出せない人はオレの姿を見てろ」と勇気づけてくれました。
大先輩がここまで覚悟を持って邁進する姿を見て、ボクらがチャレンジしないわけにはいかないですよね。
〈取材・文=福田啄也(@fkd1111)/撮影=長谷英史〉
お知らせ
中田さんが立ち上げたアパレルブランド「幸福洗脳」。「Tシャツ1枚1万円」という強気の価格設定でどこまでムーブメントを起こせるのか、ということに挑戦中です。
中田さんのチャレンジの現在地、そしてこれからの野望は『オリエンタルラジオ中田敦彦のオールナイトニッポンPremium』(ニッポン放送/毎週水曜日18時~20時30分)で聴くことができます。あなたも歴史の目撃者になりましょう!
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