大事なのは、スライドでも話し方でもない

田端信太郎にプレゼン術を聞いたら「ジョブズのプレゼンなんか目指すな!」と一喝された

仕事・ビジネスby 新R25編集部

社会人になると職種を問わず必要とされる、プレゼン力

シンプルなスライド、ロジカルな構築、聴衆を巻き込むスピーチ力に身振り手振りetc.…「身に着けるべきスキルが多すぎるよ!」と、苦手意識をもっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで今回は、新R25レギュラーズの田端信太郎さんに、「ここを押さえれば間違いない!」というプレゼンの必勝パターンをお伺いしたいと思います。

甘ったれた思い込みを叩き壊してくれる「魁! 田端塾」、気を引き締めてご覧あれ!

〈聞き手:サノトモキ(ライター)〉

【田端信太郎(たばた・しんたろう)】株式会社ZOZOコミュニケーションデザイン室本部長。NTTデータを経てリクルートへ。フリーマガジン『R25』を立ち上げ、創刊後は広告営業の責任者を務める。ライブドア、コンデナスト・デジタル、NHN JAPANを経て、2018年3月から現職

サノ

サノ

というわけで今回は田端さんに、「プレゼンの必勝パターン」を教えていただきたいです!

スライドやトーク術、人を引き込む動作のコツなど、いろんな切り口でアドバイスをいただけると…

田端さん

田端さん

あのね、いきなりひっくり返して申し訳ないけど、プレゼンに「必勝パターン」なんてないから!

サノ

サノ

ど、どういうことでしょう…?

田端さん

田端さん

プレゼンは相手ありきのものであって、どんな情報・伝え方をすればいいかなんて聞き手によって違うんだから、「普遍的に正しいプレゼン」なんてないんだよ

なのに、みんなプレゼンと聞くととりあえずスティーブ・ジョブズがスタンフォード大学卒業式でやった名スピーチみたいなのを目指そうとするでしょ? スライドがどうのとかパフォーマンスがどうのとか。

でも、「小さな街工場のオヤジ社長に1対1でプレゼンする」みたいな全然違うシチュエーションでジョブズのプレゼンやったってしょうがないじゃん。

サノ

サノ

たしかに。小手先のスキルさえ磨いておけばいいプレゼンができるってわけじゃないんですね…

田端さん

田端さん

若いうちはマグレで、表面的なうまさだけで通用することもあるかもしれないけど、だんだん それだけじゃ通用しなくなってくるのよ。

今日はそこを突破するために必要な、プレゼンをするうえでのマインドについて話をしましょうか

サノ

サノ

ぜひ、よろしくお願いします!

田端流プレゼンのコツ その1「論破せず、相手に仲間意識を感じさせる」

田端さん

田端さん

まずね、完璧なプレゼンなんて披露しようとしないほうがいいですよ

サノ

サノ

しないほうがいい…?

田端さん

田端さん

おれもこの歳だし、いろんな若者のプレゼンを見ることも多いんだけど、ツッコミどころのない完璧なプレゼンをされると、聞いてる側は手のひらで踊らされてる感じがして面白くないんだよね(笑)

プレゼンされる側、特にエラい人の意識っていうのは、ちょっとどこか文句をつけたいというか、「とにかくなんかひと言言いたい」なんですよ。思い通りに転がされてると感じたら、「イエス」を言いたくなくなっちゃう。

サノ

サノ

ああー、たしかに内容がどれだけ正しくても、 何も言えないとなんかシャクにさわるかも…!

普段プレゼンするとき、つい「完璧感を出そう」と考えてしまいがちだったんですけど、それがかえって裏目に出てたのか…

田端さん

田端さん

やるべきなのは論破じゃなくて、「誘導」。連帯感や仲間意識を感じてもらえるように、相手をこっち側に誘い込むの

プレゼンで相手を論破したり、グウの音も出ないように説得したりしたって、何もいいことはないよ。

どれだけ理路整然とした内容でも、気に食わないと思われたら「なんかピンとこねえんだよな」って言われてはね返されるのが、実際の仕事の現場でしょう。

サノ

サノ

どうしたら仲間意識を感じてもらえるんでしょうか?

田端さん

田端さん

聞き手が指摘できそうな余白をわざと残しておいて、あえてツッコませてあげるんですよ。

エラい人が一番やりたいのは、「もとは85点くらいの内容だったけど自分のアドバイスのおかげで100点になったゾ! どや?」ってやつだから。

そういうときほど、「キミら見込みあるから頑張れ!」って応援してくれるもんなのよね。

「オッサンは『あのプロジェクト、俺のアドバイスでよくなったんだよ!』って言いたい生き物だからさ」

サノ

サノ

なるほど!

聞き手の「とにかくなんか一言言いたい自意識」を解消させたほうが結果的に相手を巻き込みやすいのか…! 策士だ…!!

田端流プレゼンのコツ その2「プレゼンする相手を調べておけば、ツッコミも怖くない」

サノ

サノ

ただ、プレゼン中に上司や取引先から鋭くツッコまれるのって怖いですよね…

何も言えなくなってしまうことがあるんですが、そんなときはどうしたらいいんでしょう?

田端さん

田端さん

言葉に詰まらないようにってこと?

ツッコミって、正直言ってそのほとんどが本当は予測できるものだと思いますよ。

サノ

サノ

予測?

田端さん

田端さん

自分がリクルートでフリーペーパー『R25』の立ち上げに携わってたとき、経営企画の部長だったKさんっておっさんが部活の顧問みたいに何度も助けてくれたんだけど、「ツッコミを予測する能力」がすさまじかった。

おれら若いやつがプレゼンに行く前、その場に来る役員全員の性格を把握してて、「あの人はこういうこと聞いてくるから答えられるようにしとけ。本編のスライドには入れず、聞かれたら後出ししろ」ってアドバイスくれるんですけど、ビックリするぐらいその人の言った通りになるの。

サノ

サノ

デスノートの夜神月みたいだ…

田端さん

田端さん

肉を切らせて骨を断つじゃないけど、 ツッコミを完全に予測してるから、しどろもどろになることがない。それによって信頼を勝ち取れるんですよね。

今思えば、「どんな相手にプレゼンするのか」なんてだいたいわかってるんだから、そこをちゃんと調べて準備しておけば、難しくはないってことだよね。

サノ

サノ

なるほど…

逆に、ツッコまれてどうしてもその場でうまく答えられないときは、正直に「すいません」と謝るべきなんでしょうか?

田端さん

田端さん

わからないときは「わかりません」と正直に言うのがマナー。そこでウソついたりするほうが、よっぽど罪が重い。

でも、「わかりません」ってなるようじゃそのプレゼンは失敗だな。

プレゼンする側はその案件についてずっと考えてきたはずなのに、たかだか数十分聞いて浮かんだ程度の質問に対して準備ができてないって、どんだけ甘いんだよ!?とオレなら思うね。

田端流プレゼンのコツ その3「相手と“対等”だと思って臨め」

田端さん

田端さん

あと、今「謝る」ってワードが出たけど、だいたいみんな「プレゼンはされる側が上で、する側が下」みたいなマインドになってますよね。

プレゼンは、下手(したて)に出たらもうその時点でアウトです。業者マインドで下から懇願してる時点で、対等な関係を築けず相手にのまれちゃってるので。

サノ

サノ

でも実際、そういう上下関係ってあるんじゃないでしょうか…?

決裁権はプレゼンされる側が握ってるわけだし、少なくともぼくは営業時代、取引相手と対等だと思えたことはなかったです。

田端さん

田端さん

そこで対等だと思えないのは、自分のプレゼン内容を、そもそも自分で信じ抜けていないからでしょ。

サノ

サノ

うぐっ…

田端さん

田端さん

心の底から「自分が今から話すことは相手にとって本当に価値があることだ」と思いながらプレゼンしてたら、「受け入れないのは勝手だけど、損するのはおたくッスよ」くらいの対等なマインドでいられるはずなんだよね。

そうなれないのは、自分のプレゼンに「価値がある」と思えてないから。つまり、対等だと思えていない時点で、内容の精度が足りてないんです。

サノ

サノ

心当たりしかない…

田端さん

田端さん

ほとんどの若者は、自分のプレゼンを100%信じ抜ける状態には至ってない気がするね。

ZOZOやLINEすらそういうことは多いよ。「A案、B案、C案、3つのアイデアがあります」とプレゼンされて、「で、お前はどれがいいと思ってるの?」と聞くと、3分の2ぐらいの若者が答えられない

本当はどれを提案していいかわかんない状態でプレゼンしてるというか。

サノ

サノ

ZOZOとかLINEですら…! 自主性が強くて優秀な若手が多いイメージなので、意外です。

田端さん

田端さん

私はAだと思います」と言い切れる時点でだいぶ優秀だと思います。言い切ってくれれば、「Aって言ってるけど本当にそうなの?」って次の話に進める。

プレゼンされる側がどう評価するかはともかく、まずは自分なりの意見を決めてくるのが担当者としてプレゼンするうえでの最低限の出発点だと思うよ。

そこまで準備できれば、相手とも対等な気持ちで向き合えるんじゃないかな。

ちなみに田端さんは、二回り年下の筆者に対しても対等に接してくださる、とても紳士的な方でした

田端流プレゼンのコツ その4「内容は『身体知』にもとづいて決めろ!」

田端さん

田端さん

結局、準備段階で「いろいろ考えたけど、やっぱりこれしかない」って100%思えるかどうかが、プレゼンの半分以上を決めている気がする。

それをわきに置いて、とにかくペラペラ流暢にしゃべれりゃいいんでしょって表面的な練習をしたってダメです。

サノ

サノ

でも、営業しかりプレゼンしかり、「本当にいいと思ってます」って心の底から思うのって、正直かなり難しい気がします…

80%くらいしか信じ抜けていない状態から100%にもっていくためには、具体的にどんなことをしたらいいんでしょうか?

田端さん

田端さん

僕が強く思ってるのは、自分が手を動かして知った「身体知」のほうが信じ抜けるってことですね。

サノ

サノ

身体知、ですか。

田端さん

田端さん

株で考えてもらえるとわかりやすいんだけど、今いろいろ問題になってる日産が、年明けに新車を出すとするじゃない。

「日産の株が今下がってるから買おう」とロジカルに判断した人と、実際にショールームにいってディーラーと話したり試乗したり、工場を見に行って開発担当者の熱弁を聞いたりしたうえで、「この車、ホンモノだな」と株を買った人がいたとする。

どっちが儲かる可能性が高いと思います?

サノ

サノ

なんとなくですけど…後者、でしょうか。

田端さん

田端さん

その通り。数字だけ見てるやつは、1株1000円で買ったあと900円に落ちたら、「やべえ、売らなきゃ」となりがちなわけです。「誰かが言ってたから」程度の根拠だと、腰が入ったリスクを取りづらい

でも、実際に体感して「自分がいいと思ったから」という根拠を持てると、自信をもって株をキープできるんです。「あれだけの車なんだから絶対上がる」って。

プレゼンもそれと同じで、身体知があると、多少の揺さぶりをかけられても動じない

サノ

サノ

なるほどなあ…

田端さん

田端さん

『R25』創刊前の話に戻るんだけど、社内向けに「フリーペーパーですけど、ちゃんと企業からの広告費が入ります! だから事業にOKをください!」ってプレゼンをしなきゃいけなくて。

どう言おうかな?と思ってたときに、いろんな雑誌の「特集」をずーっと調べてみたのね。たとえばマガジンハウス社の『BRUTUS』とか。

サノ

サノ

…? はい。

田端さん

田端さん

ひたすら広告の内容と掲載日をエクセルにまとめてたら、ハッと気付いたのよ。「『BRUTUS』は毎年3月15日と9月15日発売号で、必ずファッション特集をやってるぞ!?」って。

これはアパレルブランドが新作を発表するタイミングに合わせて、広告出稿が取れそうな「ファッション特集」を狙ってやっていると。

そう気付いて、「どういうことをすれば広告が取れるのか」が一気に理解できるようになったんだよね。

サノ

サノ

ほ~! その内容からヒントを得て、プレゼンもうまくいったんですね。

田端さん

田端さん

そうそう。

これって、もともと広告業界にいた人だったら当たり前に知ってたことかもしれないけど、大事なのは、自分で手を動かして何かしらの法則を発見することと、その感動なのよ。

その原体験や発見の興奮こそが、相手を動かすプレゼンにつながるわけ。

サノ

サノ

伝聞だけじゃなく、自分で体感するとより確信が得られると。納得です。

「まわりの理解の範疇を越えられないプレゼンに価値はない」

サノ

サノ

今日はめちゃくちゃ身になるお話ありがとうございます…

最後にお伺いしたいんですが、自分はけっこうまわりからの意見に左右されてしまうほうなんですが、自分が「いい」と思えている内容でも、まわりのメンバーが全然そうでもなかったりすると自信が揺らいでしまいます。

アイデアを信じ抜く“自信の持ち方”があれば教えてほしいです!

田端さん

田端さん

なるほどね。僕はそういうとき逆に、「チャンスだ!」と自信を持てますね。

「自分は『いい』と信じ抜けているのにまわりはそう思ってない状況」が、むしろ一番おいしいんです

田端さん

田端さん

だって、誰もがすでに知っていることをプレゼンしたって意味がないじゃないですか。相手の理解の範疇を越えられないプレゼンに、まったく価値はありません

準備を重ねるなかで「相手はまだ気づいていないけど、これは絶対に知る価値がある」というファクトを見つけられたら、そのプレゼンはめちゃくちゃ面白くなりますよ。

サノ

サノ

うわ…なんか、今すぐプレゼンがしたくなってきました。

お話を聞いて、今まで自分がどれだけ表面的なことばかり考えていたのか痛感しました…

田端先生、本日もありがとうございました!

スキルやノウハウは、身につけるべき当たり前の基本。

でもその先に、テクニックじゃどうこうできない世界があるのだと知っておくだけでも、プレゼンとの向き合い方は大きく変わってくるのではないでしょうか。

次回の「魁! 田端塾」ではいったいどんな学びが待っているのか…今から待ち遠しい気持ちでいっぱいです。次回もお楽しみに!

〈取材・文=サノトモキ(@mlby_sns)/編集=天野俊吉(@amanop)〉

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