私には動画を作るセンスはなかった
“炎上ツモ”状態を抜け出したきっかけは? 天国も地獄も味わったマックスむらいの現在
新R25編集部
YouTuber・マックスむらい。
この名前を聞いて、どんな印象を抱くでしょうか?
ゲーム実況者として人気YouTuberとなり、自身の会社も上場。世間から大注目されましたが、わずか1カ月半後に、元役員の横領事件を公表して大炎上しました。
一時は「マックスむらいはオワコン」という声も聞こえましたが、最近その評価がちょっと変わりつつあります。
今回はYouTuberとして天国も地獄も味わったマックスむらいさんに、今だから語れることや現在の活動についてお話を聞いてみました。
〈聞き手:ライター・文希紀〉
【マックスむらい】1981年12月11日生まれ。日本で初となるYouTubeのCMに出演した第一世代YouTuber。AppBank株式会社の創業者であり、現取締役CCO。YouTubeのチャンネル登録者数は155万人(2018年12月26日現在)
マックスむらいは全盛期にいくら稼いでいたのか?
ライター・文
早速ですが、マックスむらいさんの最盛期の話から聞かせてください。
いつが一番波に乗っていましたか?
YouTubeでおなじみの“赤”パーカーで登場したむらいさん
むらいさん
やっぱりAppBankが上場したときですかね。「ついにYouTuberの会社が上場したか」みたいな。
そのタイミングがマックスむらいの過去最高のときですね。
ライター・文
チャンネル登録者数100万人以上、さらに会社も上場となると、収入もかなり増えたんじゃないかと思います。
どのくらいだったのか…って教えていただけますか?
むらいさん
実は、YouTuberとしての収入はぜんぶ会社にあげちゃったんですよ。
だから私自身は全然お金持ちにならなかったんです。
ライター・文
えー!! じゃあもし収入がすべて自分の懐に入ってたとしたら、どれくらい生活が変わったと思います?
むらいさん
…もし個人でやっていたら、使える現金は今の100倍ぐらいはあったんじゃないかな。
むらいさんはAppBankの取締役なので、現在も結構な額の役員報酬をもらっていると思うのですが、その100倍って…
31歳でYouTuberとしてデビュー。『パズドラ』の成長とともに急成長した
ライター・文
YouTuberといえば若い人が多い印象ですが、むらいさんは30代から動画投稿を始められていますよね。
どんなきっかけがあったのでしょうか?
むらいさん
もともとは、iPhoneの便利アプリなどを紹介するブログメディアをやっていました。
当時はまだiPhoneが出たばかりで、全然普及していなかったんです。でも、私はきっと1人1台iPhoneを持つ時代が来ると思ってました。
まだその機会が来てないだけだと。
ライター・文
機会とは?
むらいさん
iPhoneでしかできない、夢中で遊べるコンテンツが出ることです。それが登場すれば、爆発的に普及するだろうと思ってましたね。
ライター・文
その期待に応えたのが『パズル&ドラゴンズ』(以下、パズドラ)だったんですね。
むらいさん
そうです。YouTubeやニコニコ動画などがだんだんスマホで見られる時代になり、動画や生放送をやってみようと生まれたのが、“パズドラ攻略”でした。
やるからには、「パズドラをブームにさせてやる」という意気込みで向き合いました。
ライター・文
それで、パズドラが成長すると共にマックスむらいさんの人気も上がっていったと。
むらいさん
はい。とにかくスマホゲーム市場の拡大は凄まじいんですよ。
便利アプリ系と違って、ゲームは課金もある。動くお金がケタ違いなんです。
転落が始まったのは横領事件が発覚したから。でも、ずっと“炎上ツモ状態”だった
ライター・文
そんな急成長を遂げたマックスむらいさんでしたが、AppBankが上場して2カ月も経たないうちに、元役員の横領事件が発覚しましたよね。
むらいさん
そうです。
実はそれを発表したタイミングが、私の誕生日の前日だったんですよ。しかも次の日、地元の石川県で凱旋ファンイベントがあって。
ライター・文
それは、最悪な誕生日ですね…イベントは中止に?
当時を思い出しながらどこか遠くを見つめるむらいさん…
むらいさん
いえ、そのまま開催しました。会場にいた人は応援してくれましたけど、心中は全然穏やかじゃなかったです。
スタッフから何度も「顔が引きつっている」と注意されました(笑)。
ライター・文
横領事件を起こした元役員の方は、村井さんとは古い付き合いだったと聞きました。
むらいさん
AppBank以前から10年以上付き合いがある人でした。
もうドン引きですよ。
ライター・文
動画にもアンチコメントが目立つようになったのもその時期からですよね…
むらいさん
すごかったですよ。
毎日動画をアップしているので、発表当日からコメント欄が荒れてました。「マックスむらいは犯罪者だ!」って叩かれまくってましたね。
どんどん辛らつな表情に…
ライター・文
ひどい…むらいさんは被害者なのに…
どうしてそこまで叩かれたのでしょう?
むらいさん
当時のマックスむらいには叩く理由がそろっていたんですよ。
ライター・文
どういうことですか?
むらいさん
「マックスむらいは、ゲームで遊んだり、何かを食べたりしているだけで楽にお金を稼いでる」と思われていたんです。
パズドラやモンスト(モンスターストライク)を自分で作ったわけでもないですしね。
ライター・文
なるほど。
むらいさん
そうなると、やっかみが生まれる。当時はYouTuberが憧れの職業にランクインしはじめた時期でしたから。
振り返ると、叩く理由がすでに揃っていた。“炎上ツモ”状態だったんです。
自己分析が半端ないむらいさん
炎上は続く。でも、会社のためにYouTuberを続けるしかなかった
ライター・文
ちなみに炎上ってどんな感じだったんですか?
むらいさん
たとえば降臨戦(※希少なアイテムやモンスターが手に入る期間限定イベント)で負けた配信では、10分間で4000件「死ね」や「殺す」といった罵詈雑言がコメント欄に書き込まれましたね。
もう何をやってもダメというか、低評価とアンチコメントの集中砲火でした。
でも、無視するわけにはいかなかった。
ライター・文
どうしてですか…?
むらいさん
耳を貸さないと、自分以外のAppBankのYouTuberに被害がおよぶ危険があったんです。
案の定、ちょっと無視したときは、まわりの人にまで被害が広がってしまいました。
ライター・文
動画の更新を休むという選択肢もあったと思います。なぜそうしなかったのですか?
むらいさん
そうですね。今考えると、2カ月間ぐらい動画更新を休むべきだったと思います。
でも当時は、AppBankが上場した1期目で、会社の顔である私が休むわけにはいかないと思ってました。
むらいさん
低評価の嵐のなか、2017年の春先に「もう本当に無理だな」と辞める直前までの気持ちになってしまいました。
それでどうせ辞めるんだったら、最後にこれまで応援してくれた人に会いに行こうと思って、日本縦断を敢行したんです。
ライター・文
実際に全国の人に会ってみてどうでした?
むらいさん
それが、驚くほど温かかったんですよ。「頑張れ」「応援しているよ」と声をかけてくれる人がほとんどで、こんなに応援されているなら、もう少し頑張ろうかなって勇気をもらいました。
ただ、夜に日本縦断の動画を投稿すると、コメント欄では罵詈雑言が飛ぶ。そのギャップにかなり消耗してしまったんです。
だから完全に辞めるとはいかないけど、動画に対する労力はかなり抑えようという結論になったんです。
人気YouTuber・ヒカルの動画で世間の評価がガラッと変わった
ライター・文
日本縦断をした年の夏、人気YouTuberのヒカルさんの動画で横領事件などについて語られていましたね。
なぜこのコラボが実現したんですか?
むらいさん
ヒカルさんからお声がけいただいたんです。炎上について話してくれないかと。
この動画で私に対する評価が一気に変わりました。
むらいさん
実はそれまでも、いろんなメディアで真相について語っていたのですが、全然届かなかったんです。どんなに事実を説明しても、アンチコメントの嵐。
ヒカルさんとのコラボ動画でも、収録を終えた段階では「これまで話していることとま基本的には同じだな」と思っていて、何かが大きく変わるとは想像していなかったです。
ライター・文
でも実際に公開された動画は、大反響を呼びましたよね。
むらいさん
そうです。きっと、ヒカルさんが視聴者の代弁者として話を聞いてくれたのがよかったんだろうなと思います。
ようやく私のちゃんとした思いや姿勢が伝わった。
一時はゴミ拾いをしても低評価がついたのに、ヒカルさんとのコラボ後は高評価が90%にまで回復したんです。
ライター・文
ひとつの動画でそこまで…! すごいですね。
むらいさん
逆にいうと、ずっと低評価を押していた人間はどこにいったのかな、と。
これが本当の手のひら返しだな…とインターネットの恐ろしさを実感しましたけどね(笑)。
「踊ってみた」やドッキリ動画。YouTuberっぽい動画にシフトした今
ライター・文
むらいさんの動画って、ここ最近で大きく変わりましたよね。
今年に入ってドッキリ動画が増えたり、2017年には「踊ってみた」にチャレンジしたり(笑)。
むらいさん
ヒカルさんの動画のあと、評価は逆転したのですが、再生数はビジネスとして成り立つレベルまで回復しなかったんです。
「これまで通りの実況動画だけじゃダメだ。何かしないと…」って考えていたのですが、打つ手がなかった。
むらいさん
そんなとき、AppBankの動画ディレクターが、「“踊ってみた”とかYouTuberっぽい動画で一度勝負がしたい」と提案してくれました。
もともとマックスむらいはYouTuberっぽい動画をあげていなかったので。それがウケたんですよ。
むらいさん
ピーク時には劣りますがが、会社として飯を食べられるぐらいには回復しました。
ライター・文
そのディレクターはお手柄ですね!
むらいさん
そうなんですよ。
一度は私が考えてYouTuberっぽい動画を作ってみたんですが、まったくうまくいかなくて…
今はもう彼にマックスむらいチャンネルをすべてお任せしていて、私はドッキリを仕掛けられるおじさんになってます(笑)。
「私には動画を作るセンスがないんですよね~」と落ち込みながら語るむらいさん
YouTuberを今も続けているのは、動画の力を信じているから
ライター・文
AppBankは低迷していた時期を乗り越えて、今は動画・事業ともに上向き傾向にあると思います。
もうYouTuberマックスむらいを引退して、取締役としての仕事に専念するという選択肢もあると思うのですが、今も続けている理由はなんでしょうか?
むらいさん
これまでいろんなことがありましたが、やっぱり動画というメディアが最強だと思っているからですね。
むらいさん
何度もYouTuberを辞めたいと思ってきました。でも、歯を食いしばって続けてきて、底辺からここまで浮上できた。これもきっと動画の力があってこそ。
結局、私は動画コンテンツの魅力に取りつかれているんだと思います。
ライター・文
なるほど…では、YouTuberマックスむらいとしても、まだまだ成り上がっていきたいと思いますか?
むらいさん
もちろん! おじさんですけど、ここから大逆転を目指してもがいていきたいですね。
「自分はゲームも好きだしインターネットも好き。10年後も20年後もこの仕事をしたい」と語ってくれたマックスむらいさん。
YouTuberのCMのキャッチコピーだった「好きなことで、生きていく」を体現しているように見えました。
移り変わりが激しい業界に身を置き、天国と地獄を味わってもなお、挑戦を続ける理由に「好き」以上の原動力はないのかもしれません。
〈取材・文=文希紀(@gigi_kikifumi)/撮影・編集=福田啄也(@fkd1111)〉
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