ビジネスパーソンインタビュー

「つんく♂さんに言われた『苦しい時期にやるべきこと』にハッとした」高橋愛のリーダー論

モーニング娘。は、常に“今”が一番カッコいい

「つんく♂さんに言われた『苦しい時期にやるべきこと』にハッとした」高橋愛のリーダー論

新R25編集部

2019/02/04

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R25世代のなかには、そろそろ初めての管理職に就く人もいるのではないでしょうか。「前任者の実績を抜かなきゃ!」と頑張ろうにも、景気が厳しかったり、競合会社が急成長しているタイミングだったりしたらどうする?

今回は、モーニング娘。OGで6代目リーダーの高橋愛さんにお話を聞きました。「自分はリーダータイプじゃない」と語る彼女ですが、リーダー就任から、組織をどう作り上げていったのでしょうか?

〈聞き手:ライター・小沢あや〉

突然のリーダー任命…ダメ出しにも「昔より今のほうが、絶対にカッコいい!」

ライター・小沢

高橋愛さんと同世代ビジネスパーソンのなかには、心の準備ができないまま、先輩の退職や育休でいきなり管理職になって、悩んでいる人もいます。

高橋さんは前リーダーの脱退を受け、突然リーダーになりましたよね。気持ちは、すぐ切り替えられましたか?

高橋さん

いや、まったく!全然気持ちが追いつかなかったですよ。「リーダーだからしっかりしなきゃ」と、プレッシャーがすごくって。

ライター・小沢

そりゃそうですよね。モーニング娘。は歴史もあるし。

高橋さん

前リーダーの脱退が急だったので、先輩たちが心配して、すぐ連絡くれました。中澤裕子さんも「いままでのリーダーを目指さなくていい。高橋は高橋のスタイルでいい」って言ってくれて、気持ちが楽になりましたね。

ひとりで抱え込まなくてよかったんだ」って。同期もいるし、周囲をきちんと頼ればいいんだ、と落ち着けました。

ライター・小沢

高橋さんがリーダーの時代は、TVの歌番組になかなか出られない時期もありましたよね。リーダーとして悩んだんじゃないでしょうか

高橋さん

たしかに、ガムシャラに頑張ってもなかなか結果がでなくて「なんでだろう」と思うこともたくさんありましたよ。

でも、悔やんでも現実が変わるわけでもない。「いまの私たちに何ができるか、前向きに考えなきゃ」と切り替えました。

ライター・小沢

建設的!

高橋さん

ただ、先輩たちにダメ出しされたときがあって、そのときはやっぱり悔しかったです。昔とは、時代が違う

アイドル業界の状況も変わってライバルも多いし、昔と同じことをやっても成功できるわけじゃないと思ってしまって。

ライター・小沢

ダメ出しって、どんなことを言われたんですか?

高橋さん

グループ内で仲良しこよししていちゃダメ」って。たしかに先輩から見たらそう見えたのかもしれないですけど…

先輩たちとは根本的なところが違うんですよ。

高橋さん

オリジナルメンバーはもともと「ソロボーカリストオーディション」で集まった人たちだけど、私たちは「モーニング娘。」になりたくて入ってきた子たち

だから、根底が違うんですよね。蹴落とすとか、自分だけ目立つ、みたいな思考も、みんなまったく持ってないんです。

ライター・小沢

なるほど。そもそもマインドが違うと。

高橋さん

仲良しこよしに見えていたかもしれないけど、そう言われて悔しかった。

先輩たちのころと比較したらダンスも歌もレベルが上がってたんですよ。「昔より今のほうが、絶対にカッコいい!」って思ってやってました。

ライター・小沢

先輩から昔の話されて困っちゃうの、会社員もあるあるです。

高橋さん

グループって、常に進化して、変わっていくものなんですよね。

だから、初期より私たちのほうがカッコいいし、私たちのころより今のほうがカッコいい。そう思ってやってます。それが当たり前のことなんですよ。

つんく♂の教え「苦しい時期にやるべきは、自分たちのレベルを上げること」

高橋さん

その時期につんく♂さんから言われてハッとしたのが「苦しい時期にやるべきなのは、自分のレベルを上げること。こういう時期だからこそ、レベル上げに時間を使いなさい」って。

それに背中を押されて、「自分たちの“レベル”に向き合わなきゃ」「私たちだからこそできることをしなきゃ」と思えたんです。

ライター・小沢

具体的に、どんなアクションを起こしたんですか?

高橋さん

全体レッスンをもっと入れてください!」と言いました。つんく♂さんの言うように、全体をレベルアップさせなきゃと思って。

グループでやってると、全員が同じ方向を向くのは結構むずかしいんですよ。リーダーとしては、全員でやらなきゃいけない状況をつくるしかないと思ったんです。

ライター・小沢

他のメンバーの反応はどうだったんでしょうか? みんなついてきてくれましたか?

高橋さん

そこはみんなついてきてくれましたね。

もし「イヤだ」みたいなこと言うメンバーがいたら「できないなら、辞めてソロでやれば?」って言ってたかも(笑)。そういう子がいなかったからよかったですね。

ライター・小沢

歌とダンスパフォーマンスのレベルが高くて、高橋さんリーダー時代の「プラチナ期」を評価する人は多いです。

そこに憧れて入ってきた現ハロプロメンバーもたくさんいます。つながっているんですね。

同期の新垣里沙との衝突、中国人メンバーとの文化の違い…リーダー時代は苦悩続き

ライター・小沢

苦手だったというリーダーをやってみて、苦労したことってありますか?

高橋さん

すぐ感情があふれちゃうことですかね(笑)。

引っ張るタイプのリーダーじゃないから、1対1で話し合おうと思って、まず全員と向かい合う時間をつくったんですよ。でも私、言葉にするのがあんまりうまくなくて…泣きながら話すこともありました。

最初は、同期のガキさん(新垣里沙)とぶつかったんですよ。

ライター・小沢

全員と1対1で話し合うってすごいですね…

新垣さんとはどんなことでぶつかったんですか?

高橋さん

彼女のほうがリーダーに向いてるんですよ

頭の回転が早いし、全体を見ることができるから、細かいことによく気がつくんです。私は猪突猛進タイプで、真逆。

ガキさんに任せっきりになっちゃって、メンバーに対して小姑みたいなことを言わせちゃうこともあって。「なんで私が言うことになるの?」「リーダーは愛ちゃんの役目だよ。愛ちゃんから伝えなきゃダメだよ」ってよく言われてましたね。

ライター・小沢

新垣さん、いい人…。サポートしたうえで、役割を考えてちゃんと意見してくれたんですね。

高橋さん

話し合ったうえで、頼れるところは頼るようにしました。

最初から全部自分でやろうとして「なんでもいけます!」って言ってたら、つぶれちゃってたかもしれない。まわりに感謝しています。

ライター・小沢

全部抱え込まないことって大切ですよね…

ほかに、後輩と関わることで大変だったことはありますか?

高橋さん

当時、中国人の留学生メンバーがふたりいたんです。

日本と違うカルチャーで育っているから、また別の大変さがありましたね。

ライター・小沢

ジュンジュンさん、リンリンさんですね。とても真面目そうなふたりでしたが、どんな感じだったんですか?

高橋さん

まず、集合時間に来ない(笑)

「すみません」って謝りながらも、髪の毛が濡れた状態で来たことがあったんですよ。「シャワー浴びる時間あったなら早く来てよ!!」ってなるじゃないですか(笑)。

ライター・小沢

(笑)。ちょっと申し訳なさそうなフリはしてほしいですよね。すっぴんで小走りでくるとか。

高橋さん

そうなんですよ。「スタッフさんにも迷惑がかかるんだよ。印象で、これからのお仕事が変わることもあるんだよ」って丁寧に話しました。

彼女たちが悪いんじゃなく、文化や感覚が違うだけ。でも「日本で活動するなら、こちらのルールを守ろうね」と話しました。彼女たちを理解するために、じっくり時間をかけました。

元アイドルはナメられる…!? 卒業後は舞台で活躍「見てろよ! 本気だから!」

ライター・小沢

卒業後はファッションリーダーとしての地位を確立して、雑誌にひっぱりだこの高橋さん。ネクストキャリアについては、在籍時から考えていましたか?

高橋さん

私、もともとは宝塚に入りたかったんです。ずっと女優になりたかった。だから、そのことは常に考えていましたね。

モーニング娘。でもミュージカルのお仕事があったんですけど、私だけ気合いが入りすぎていて、まわりから見たらおかしかったかも(笑)。

高橋さん

女優の仕事がやりたいから、卒業したいってことは早くから相談してたんですよ。

でもつんく♂さんから「だめだ、今じゃない」と、ずっと言われてたんです。それが「もうちょっと、もうちょっと」で続いていた。

それがあるとき、帝国劇場でやる舞台のお話をいただいて、「どうしてもやりたい。絶対に帝国劇場に出たいので、卒業させてください」と強く伝えました。

ライター・小沢

なるほど。それから“元アイドル”として舞台に出るようになって、苦労したこととかはあるんでしょうか?

高橋さん

言い方は悪いですけど、やっぱり“ナメられる”んですよ(笑)。「元アイドルが、どれだけできるの?」っていうプレッシャーは感じてましたね。ミュージカルって、お客さんだけでなく、スタッフさんの目も厳しいんです。

見てろよ! こっちも本気だから!」って気持ちでやってました。

ライター・小沢

アイドルとしてステージに立つのとは、また別の努力も必要ですよね。

高橋さん

舞台のお仕事で、宮本亜門さん(演出家)とご一緒したとき、強烈なダメ出しがたくさんあったんです。

ハロプロって、歌い方が独特じゃないですか。はたけさんにも「みんな(歌い方が)つんく♂やな」って言われたことがありましたし(笑)。それをツッコまれて

「お前、まだアイドルが残ってる!」って言われたとき、とっさに「アイドルじゃありません!」「私、アイドル嫌いです!」って返したことがありましたね(笑)。

「い」が「ウィ」になるみたいな、通称ハロプロ節

組織から抜けても求められる人になるには「自分の感覚を大事にする」ことも必要

ライター・小沢

アイドルグループのような大きな組織から卒業しても活躍するためには、何が必要だと思いますか?

高橋さん

自分で仕事を作ること」ですかね。

卒業後、一発目は“お披露目”みたいな感じで仕事をたくさんいただくんですよ。でも、それを継続させるには「もう一回、高橋愛にお願いしたい」と思われる人にならなきゃいけない。

ライター・小沢

どうしたらそういう人になれるんでしょうか…?

高橋さん

そうですね…難しいですけど、「自分の感覚を大事にすること」じゃないですかね。

たとえば舞台の仕事なら、いろんな舞台を見てインプットしつつも、それをそのまま取り入れるんじゃなくて自分の解釈を必ず入れる

以前から“演技心がある”みたいに言ってもらえることもあったので、そういう自分のセンスを信じて、他人にはできないことをしなきゃいけないと思ってました。

ライター・小沢

普通は「まわりに合わせて、求められていることをする」って思いがちですが、そこで「自分を信じる」っていうのがすごいですね…!

高橋さん

卒業してからはとくに、責任感から解放されて、自分の感覚を大事にするようになりましたね。トークも気楽になったし、「私、こんなにしゃべれるんだ」と新たな自分に気がつきました。

あ、そういえば、卒業後すぐマネージャーさんに呼ばれて「恋愛解禁です」って宣言されたのも覚えてます。

ライター・小沢

恋愛解禁宣言!

高橋さん

「そんなこと言うんだ!」って驚きました。

ライター・小沢

いろんなお話をお伺いできましたが、最後に、現役時代は「リーダー」として、そして現在まで頑張ってこられたモチベーションの秘訣を教えていただけますか?

高橋さん

現役時代は、ただただ「モーニング娘。を、私たちで終わらせたくない!」という気持ちで頑張ってきました。それぐらいギリギリで、必死だったんですね。

今のモチベーションはいろいろありますけど…やっぱり進化しつづける「モーニング娘。」を見て、「今が一番かっこいいな」と思うのも私の刺激になってますね。

「モーニング娘。'19」が、これまでで一番かっこいいと思ってますよ!

〈取材・文=小沢あや(@hibicoto)/編集=天野俊吉(@amanop)/撮影=飯本貴子(@tako_i)〉

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