ビジネスパーソンインタビュー
部下の「彼氏」にならない…!?
「チャットの発言パターンは5つだけ」家入一真が明かす“人に期待しない”マネジメント術
新R25編集部
昨日公開の記事では、連続起業家・家入一真さんの「期待とは、相手に見返りを求めること。全員を不幸にしかねない」という主張をお届けしました。
それはよくわかったものの…でも…たとえば仕事で「君には期待してるよ!」と言われると、やる気がでますよね?
家入さんは多くの企業に参画したり、出資したりしている立場。メンバーに期待しないで、どうやって組織をマネジメントしているんでしょうか?
普段「マネジメント」なんて語っているイメージのない家入さんの、知られざる「マネジメント術」に迫りました。
〈聞き手:天野俊吉(新R25副編集長)〉
【家入一真(いえいり・かずま)】株式会社CAMPFIRE代表取締役CEO。1978年生まれ、福岡県出身。株式会社paperboy&co.(現GMOペパボ)を創業し、JASDAQ市場へ上場。退任後、クラウドファンディング「CAMPFIRE」を運営する株式会社CAMPFIRE創業、代表取締役社長に就任。他にもBASE、partyfactory、XIMERAの創業、駆け込み寺シェアハウス「リバ邸」の全国展開、ベンチャーキャピタルNOW設立など
天野
家入さんがどうやって多くの組織をマネジメントしているのか?を聞きたいです。
家入さん
それを説明するには、僕が従業員にお金を持ち逃げされた話からしなければならないですね。
…聞かせていただきましょう
家入さん
21歳ぐらいで起業して、ある時期飲食店をいくつか経営していたんですよ。
最初は僕も、お店のことをいろいろ熱心にやっていて。信頼できるスタッフと二人三脚で頑張っていたんです。
天野
カフェやラウンジを経営されてましたよね。
家入さん
それで、「ある程度軌道に乗ったな」と思ったところで、そのスタッフにお店のことをほぼ任せたんですね。
そしたら、ものすごい金額を持ち逃げされちゃって。しかも全部遊びに使っちゃったと。
家入さん
なんでそんなことしたんだよ?ってきいたら、何て言ったと思います?
天野
さあ…もっと給料がほしかったとか。
家入さん
そんな理由じゃないんですよ。
「家入さんが構ってくれなくてさみしかったから」って言ったんです。
驚きましたよね。わけがわからないじゃないですか。
天野
ええ…自分が期待されてないとスネてしまったんですかね。
家入さん
その通りなんですよね。
事業を部下に任せて、ほかの領域に注力してたら「家入さん、最近僕とは会っていないのに、○○とはよく会ってるみたいじゃないですか?」とか言われることってよくあるんですよ。
ん、俺こいつの彼氏だったっけ?みたいな。
「彼氏じゃないよね?」
家入さん
つまり、期待とかコミットメントの量で相手をやる気にさせるマネジメントって、どこかで破綻するということを学んだんですよ。
天野
たしかに、ずっと1人に構ってるわけにはいかないですもんね。
人の痛みなんかわからない。マネジメントなんてできると思わないほうがいい
天野
そこから、マネジメントの仕方を変えたんですか?
家入さん
そうですね。
…というか、そもそも人が人をマネジメントできると思っていること自体が間違いだと気付いた。
「お前のことは俺が一番わかってるから!」なんて大ウソですよね。そんな前提に立つから間違えてしまうんだと。
天野
なるほど…
家入さん
子どものころよく「人の痛みがわかる人間になりましょう」って教えられたけど、そんなものわかるわけないんですよ。
目の前に血を流してる人間がいるとして、それで自分も痛いかって言ったら全然痛くないですよね。でも、血が出てたらやばいなと思って助けるじゃないですか。マネジメントって、そういう感じが一番いい。
わかりあおうとなんて、絶対しないほうがいいです。
家入流マネジメント1「テンションだけ上げる発言をする」
天野
でも、組織のモチベーションを引き上げるのは大事ですよね?
家入さん
それもわかるので、 都度都度たきつけるみたいなことはありますよ。
僕、slack(ビジネスチャットツール。IT業界を中心に、社内でのやりとりに使われることが多い)の発言が5パターンぐらいしかないんです。それを使います。
天野
それ知りたいな! なんて言うんですか?
家入さん
「おおおおお!」と…
天野
「おおおおお!」。
家入さん
「やばい」「すごい」「いいね」「やろう」。
この5パターンですね。
※小学生の語彙ではありません。株式会社CAMPFIRE、NOW株式会社、株式会社キメラなどで代表取締役を務める経営者の発言です
家入さん
定期的にslackに現れて、メンバーの発言に5パターンのどれかで反応してますね。
天野
意味があんまり(というか全然)ないように見えるんですが…
家入さん
それがいいんですよ。ただテンションが上がってるよ!っていうことだけを伝えたいんで…
これなら、「最近構ってくれない」とかは起こらない。
僕がこんな感じだと、だんだんメンバーも発言が似てきて、最近はみんな「おおおお」とかしか言ってないですね。ただお互いのテンションを上げあってる状態。すごくいいですよ。
家入流マネジメント2「どんどん失敗させて、メンバーの決断力を養う」
家入さん
これは、組織が今どのフェーズかにもよるんですよね。
今まさに大きくなっていく、成長していくフェーズの組織って、たくさんの人がどんどん打席に立って、どんどん空振りしたほうがいいんですよ。
そのときにあんまり細かく「こういうフォームで打て」とか言わないほうがいい。
天野
打席に立つというのはどういう意味ですか?
家入さん
「決断する経験を積む」ってことです。
組織が大きくなるってことは、いろんな人に決断の機会が増えるってことですから、それをできる人間をつくっていかないと。
すごい。前編の記事で「イベントに行きたくなくて布団にくるまっている」と言ってた人の発言とは思えませんよね…
家入さん
僕が思う“リーダーの役割”って、メンバーが三振しても三振しても、何度も打席に立たせてあげることなんですよ。
そのためには、やっぱりシンプルに背中を押す言葉だけ発してればいいと思う。
三振したら「何やってんだよ!」ってドヤされるなら、打席に立ちたくないじゃないですか。
家入流マネジメント3「“呪いの言葉”をぶつけないように、メタ認知する」
天野
ということは、メンバーがミスしても何も言わない感じですか?
家入さん
基本言わないですね。さっきも「親の何気ない一言が、子どもの一生をしばる呪いになる」と言いましたけど(前編参照)、“自分の一言が呪いとなりうるんじゃないか?”は常に考えてます。
天野
職場での「呪い」というと…
家入さん
自分はそんなつもりじゃなくても、部下や後輩がミスしたときに言った何気ない言葉が、その人を非常に萎縮させることになる。才能をつぶしちゃうこともあると思いますよ。
天野
家入さんも感情的になることがあるんですか?
なさそうですけど…
家入さん
ありますよ。感情的になってるときは何も言ってはいけないですね。
怒ってることなんて、黙ってても伝わるじゃないですか。
天野
「怒りをこらえる」って、できそうでできないことですよね。
どうやってこらえてるんですか?
家入さん
メタ認知することですよね。ここらへん(頭の上のほう)に自分がもう1人いて「おっと、いま感情的になってるね~」みたいな。
それがひくまでは、絶対口を開かないようにしてます。
天野
なるほど…そういう技術はいつ身につけたんですか?
家入さん
僕は昔からずっと「メタ認知」しているところがあって。やっぱり中学時代から引きこもっていたことが関係してるかもしれない。
たまに家の外に出ると、同級生とすれちがっちゃうことがあるんですよ。「おお家入じゃん」みたいに言われたとき、もう1人の自分が「こういう会話したら変なやつだと思われるから、こう会話したほうがいいぞ」とか、自分にめちゃくちゃ言い聞かせてた。
引きこもり時代のエピソードを話す家入さん。その目は哀しげ…
家入さん
よく「仕事へのモチベーションが上がりません」って不満を言う人がいるけど、それは、誰かに与えられるものではない。ましてや、リーダーが与えてあげるなんてムリです。
だからこそ、どうしたら自発的にモチベーションが出る空気を作り出せるか。あえていうなら、これが僕の“マネジメント術”ですかね。
天野
めちゃくちゃ納得しました…。ありがとうございます!
2日にわたってお届けしてきた、家入さんの「期待しない」論。後編では、家入さんらしく、かつ実践的な教えが得られました!
これは役立ちそうだ!と感じた方は、ぜひこの記事をSNSでシェアしてみてください。
ただし、その際のコメントは「やばい」「すごい」「いいね」だけでお願いします。
〈取材・文=天野俊吉(@amanop)/撮影=福田啄也(@fkd1111)〉
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