ビジネスパーソンインタビュー
「成功してる人って、本能のままの3歳児だよ」
予備校時代のあだ名は“武蔵”だった。箕輪厚介が卒業文集を見て振り返る「熱狂」の源泉
新R25編集部
「卒業文集」といえば、学生時代のその人を端的に表す作文や写真が掲載されているもの…。が、イチローのようなスターか、ヤバイ犯罪を犯した人でもない限り、なかなか陽の目を見ることはありません。
本企画では、SNSなどで世間に大きな影響を与えているインフルエンサーに卒業文集を見せてもらい、どのような学生だったのか? その人の源流はどこにあるのか?を探ります…!
今回お話をうかがったのは、ヒット本を次々と手がける売れっ子編集者としてだけでなく、テレビのコメンテーターなど、どんどん活動の幅を広げているこの方。
【箕輪厚介(みのわ・こうすけ)】1985年生まれ。2010年に双葉社に入社。広告営業などを経て2014年より編集部に異動し、『たった一人の熱狂(見城徹)』『逆転の仕事論(堀江貴文)』などを担当。2015年幻冬舎に入社した後は、NewsPicksBook編集長として『多動力(堀江貴文)』『人生の勝算(前田裕二)』『お金2.0(佐藤航陽)』『日本再興戦略(落合陽一)』などの話題作を生み出しつづける一方、自著『死ぬこと以外かすり傷』が11万部を超えるヒットに
さまざまな大物著者を相手にする編集者・箕輪厚介さんは、どんな作文を書いていたのか?
事前に中高時代の卒業文集を送ってもらったところ、届いたものがこちらの画像です。
「その男は俺に『一緒に温泉を掘ってみねぇーか』と言った」
「あんたは結局うそっぽい。僕から見れば単なる変態さんなのよ」
「俺の机を掃除しないでくれ。いいんだこれが最高なんだ☆」
…ど、独特~!!
それでは、卒業文集を見ながら、箕輪さんに学生時代を振り返っていただきましょう!
〈聞き手:天野俊吉(新R25副編集長)〉
天野
作文読みましたが…めちゃくちゃ個性的な卒業文集ですね。
箕輪さん
まあ、今となんにも変わってないよね。
天野
かなりクセの強い学生だったんですか?
箕輪さん
いや~、普通の家庭で育ったし、勉強も運動もそこそこはできる…普通の子だったと思うんだけどなあ。
でもびっくりしたのは、中学校に入学(※箕輪さんは都内の中高一貫男子校出身です)して最初の保護者面談のとき。“もうすぐ引退”みたいな超ベテランの先生に、「今まで請け持ったなかで、サイテーの生徒です」って親が言われたらしくて。
オレは自覚ゼロだし、なんなら「元気でいい子です」って言われるかと思ってたから、ビックリした(笑)。
村上龍、尾崎豊…中高時代に「異端の編集者」箕輪厚介を作り上げたもの
天野
学生時代に影響を受けたものってありますか?
箕輪さん
なんだろうね…覚えてるのは、小学校の卒業式のあと、同級生と親たちとカラオケに行くみたいな流れになって。
まわりの子はSPEEDの「my graduation」とか歌うなか、オレだけ尾崎豊の「卒業」を歌ってた。
小学生が「支配からの卒業」と…
天野
尾崎…! でもちょっと世代じゃないですよね?
箕輪さん
ちょっと違いますね。たしか、小学生のころに通ってた塾の先生が、オレの作文を見て「お前、尾崎豊みたいなこと書くヤツだなあ」って言ったのね。
それで「尾崎って誰だ?」と思って聴くようになったんだと思う。
天野
たしかに箕輪さんの文章、尾崎のようにストレートに響くところがあるかも…。小学生のころからその片鱗があったのか…
ほかにはどんなものにハマッた学生時代だったんでしょうか?
箕輪さん
中学に入ってからは、村上龍。『愛と幻想のファシズム』『五分後の世界』が好きで、サッカー部の練習試合のハーフタイムにも読んでた。
天野
試合中にベンチで村上龍読んでたんですか?すごい中学生だな…
かなりの読書家だったんでしょうか?
箕輪さん
いや、別に大して読んでたわけじゃないと思う。サッカー部のなかでは本読んでるほう、ぐらい。
箕輪さん
あ、そうだ。オレ「これに衝撃を受けた」みたいな作品ってあんまりないんだけど、中学のときに友だちに聴かせてもらったTHE BLUE HEARTSは、「なんだこれは!」と思って、めちゃくちゃ聴くようになった。
「少年の詩」っていう曲の「大人たちにほめられるようなバカにはなりたくない」って歌詞がすっごい響いたんだよね。
天野
高校の文集の作文タイトルも「少年の詩」ですもんね。「俺は大人代表のツラしてるあんたが一番嫌いだ」と…
箕輪さん
「大人たちにほめられるような…」のフレーズがめちゃくちゃ気に入ってしまって、文集だけじゃなくて、家庭科の課題にも書いてたもんね。
天野
家庭科の課題のどこにそれ書くんですか。家庭科の先生もびっくりしたでしょうね…
箕輪さん
別に「校舎の窓ガラス壊してやろう」みたいなことは思ってなかったけど、予定調和な空気になった瞬間、ぶち壊したくなるのは昔から変わらないんだと思う。
中学校の卒アル見るとウケるんだけど、みんなは学ラン着てるのに、オレだけなぜか1人で「Fuck the system」ってプリントされたTシャツ着てるんだよね(笑)。
天野
そういった音楽や小説に影響を受けて、箕輪さんの自我が形成されていったと。
箕輪さん
そうですね、文集もそうだし、何らかのアウトプットをして友だちに「箕輪は面白い」みたいに言われてたんですよ。
作家やアーティストの表現をインプットすると、自分のなかに“解像度の低い火種”が生まれるんです。それを言語化することで、その人の人間性が築き上げられていくんだと思う。
自分が発した言葉の方向に、行動や生き方がともなってきて、それが今の仕事につながってると言えるかもしれない。
「be動詞も知らなかった」ストイックに過ごした浪人時代
天野
ただ、不良というわけではなかったんですよね?
箕輪さん
別に悪いこととかはしてないですよ。
天野
授業とかもマジメに出ていた?
箕輪さん
あー、でも1時間目には出てないですね。文集にも「16歳で電車という乗り物を卒業した」みたいなこと書いてありますけど、ラッシュの電車に乗るのが“無理”と思ってしまって。
16歳以降、ほとんど1時間目の授業に出てないんじゃないかな。
文集では満員電車のことを「世界で一番吐き気がする乗り物だ。僕は変態ではないのでその乗り物に乗ることを16歳で卒業した」と表現されています
箕輪さん
結局今でもそうだけど、「やりたくないことをやりたくない」んですよ。
この前も、前田裕二との合同著書サイン会があったんだけど、めんどくさくなって、走って逃げた。
天野
企画する人の気持ちを考えてください…
学生時代、勉強はしてました?
箕輪さん
いや全然。オレ大学受験で1浪してるんだけど、浪人するまで「be動詞」って知らなかったの。
「be動詞ってなに?」ってまわりにきいてた。
天野
マジですか。そこからよく1年で大学合格しましたね…(※箕輪さんは早稲田大学第一文学部に進学されています)
箕輪さん
予備校にいるヤツらとは一切かかわらず、ひとりでひたすら勉強してました。
授業が終わった瞬間に自習室にかけこんで、耳栓して23時くらいまで参考書に向き合う。行き帰りの電車では、録音した授業のテープを聴いて…
天野
めちゃくちゃストイック。
箕輪さん
毎日サンダルとボロボロのジーパンで、ヒゲ伸び放題で教室の一番前の席に座ってたから、予備校で有名人になってたみたいで。
陰で「武蔵」って呼ばれてたらしい。大学の新歓で「キミ武蔵ってあだ名つけられてたよ」って言われた。
武蔵www
箕輪さん
最終的に、早稲田の人科(人間科学部)とかは特待生で受かったもん。上位5位ぐらいまで特待入学できるらしい。
天野
伸び代がすごい。
be動詞すら知らなかったのに、そこまで勉強にハマれたのってなぜですか?
箕輪さん
つまり、「本気で取り組む面白さ」に気付いたんだよね。
1年目は「勉強つまらないけどやらなきゃ」っていうイヤイヤな感じとか、「覚えりゃいいんでしょ?」みたいなナメた気持ちがあった。
浪人して、勉強を本気で好きになろうとやってみた。本気で熱狂した瞬間、努力じゃなくて遊びに変わるんだよね。そこからはゲームやるみたいに楽しくてしょうがなくなる。
天野
著書『死ぬこと以外かすり傷』でも、自分の仕事に対して、「ただ熱狂し、狂う。自分の好きなものに情熱をもってひたすら入れ込む」って書いてましたね。その原体験が浪人時代にあったのか…
「酒ばっかり飲んでた」大学時代。「コミュニティのなかで最初嫌われるんですよ」
天野
大学に入ってからはどんな学生だったんですか?
箕輪さん
大学生のときは、本当によくいる「酒ばっかり飲んでる学生」でした。
いろんなサークルの新歓に行ってすごい嫌われて、「お前、もう来ないで」って言われてました。
たしかにそういうヤツいたな…
箕輪さん
フットサルサークルに入ったんですけど、そこでも最初すごい嫌われてた。オレ新しいコミュニティだと、だいたい最初は嫌われるんですよ。
5月ぐらいかなあ、サークルで合宿に行ったとき、バスの補助席が出るくらいギュウギュウ詰めなのに、オレの隣には誰も座らなかった(笑)。
天野
めちゃくちゃ嫌われてるじゃないですか…
箕輪さん
オレのハートが強いだけで、あれは端から見ればイジメだと思う(笑)。
「みんな狭そうだなあ」って思ってたけど(笑)。
天野
なんでそんなに嫌われてたんですか?
箕輪さん
クラス替えとか進学とか、新しい環境になるタイミングって、最初必ず「大して面白くないのに仕切りたがるヤツ」が湧いてくるじゃないですか。そういうリーダーみたいなヤツに同調しないから、ずっとつまらなそうな顔してるんだと思うんですよね…
そういうヤツが「箕輪うぜえ」ってなる。
天野
仕切りたがるタイプ、大学のクラスにいた気がする…
箕輪さん
最初はみんなクラスでの居場所ができてないから、仕切りたがるヤツに従ってオレと距離を取るんですよ。
でもだんだんそいつが面白くないってバレてくると、「箕輪って面白いじゃん」ってなってくる。
まあ、今の出版業界と一緒ですよ!
こりゃ嫌われますわ…
天野
ちなみに、大学のときはどれぐらい飲んでたんですか?
箕輪さん
覚えてるのは、コンビニで売ってる氷のボックスに泡盛を注いで大学構内のベンチで飲んでた。上半身裸で。
でもそれを面白いと思ってやってたからね…まあよくいるくだらない大学生ですよ、ホント。
「ずっと3歳児でいるレース」から脱落するな
天野
学生時代と比べて、「大人になってここが成長したな」って部分はありますか?
箕輪さん
ないね。むしろずっと子どものまま。
学生時代の友だちと飲むと、「オレってマジで子どもだな」ってしみじみ思う(笑)。
箕輪さん
大企業にいる友達が「一日中ハンコを押し続けてる」とか、「LINEするときはトイレに行く」とか話してるのを聞くと、そんなに毎日ガマンして働いてるのかよ…って思う。
天野
大体の人って、大学生ぐらいまでは自由に生きられると思うんですよ。でも就活のタイミングで「そろそろ大人にならなきゃ…」ってなるじゃないですか。
そういうことはなかったんですか?
箕輪さん
んー、ない。そっちに引っ張られそうになったら、猛烈な勢いで反発してた。それはむしろ自分を固めるきっかけなのよ。
ホテル会社から内定をもらって、内定者が集まる飲み会があったのね。でも、入って5秒でナシって思った。
みんなオッサンにビール注ぎに行ったりしてて、もう絶対つまんないのよ。それで無理って。
天野
常に本能に従ってますね…
箕輪さん
これ俺は「3歳児レース」って言ってるんだけど。世界は、どれだけ3歳児のままでいられるか?というレースなんですよ。
みんな学生時代まではある程度本能のままに生きられるんだけど、どんどん「3歳児でいるレース」から脱落している。
でも成功してる人って、みんな本能のままの「3歳児」だよ。
天野
成功してる人は「3歳児」。ホントですかそれ。
箕輪さん
ホリエモンなんかそうでしょ。本能と感情のままに生きてる、ピュアな3歳児だから「ロケット打ち上げよう」って思うんだよ。
藤田さん(サイバーエージェント)も…あ、あの人は3歳じゃないかさすがに。
そうなんですか?
箕輪さん
そういう人たちを見てると、「オレももっと子どもにならなきゃ」って日々感じるよね。
天野
最近、大人らしくちゃんと装わなきゃとばかり考えていたので、ちょっとハッとしました…。今日はレアなお話ありがとうございました!
…ということで、箕輪さんに学生時代の話を聞いたら、「常に3歳児だから、基本今も変わっていない」とのお答えが得られました。
とはいえ箕輪さんはセルフプロデュースもうまい稀代の切れ者。取材用にある程度“盛って”話してくれたのかな…と思っていたら…。
今でも上半身裸で歩いてるわ!!!!
まるで成長していない!
最近はトゥクトゥクをマイカーにして東京の街を走るなど、いまだ少年の心を持つ箕輪さん。
「3歳児であれ」のスタンスを貫き続ける彼だからこそ、我々は惹き付けられるのかもしれません。
〈取材・文=天野俊吉(@amanop)&柏木まなみ(@kashimin222)〉
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