孫社長も認めた最強の話し方『1分で話せ』より

右脳と左脳を刺激すれば人は動く。相手の頭のなかに「イメージ」を生み出す2つの方法

仕事
ロジカルに話すだけでは、話は伝わらない

Yahoo!アカデミア学長・伊藤羊一さんはそう主張します。「90%の人は、話し方で損をしている」と。

今回は、2019年に読むべきビジネス書第1位(BookLive!調べ)に輝いた伊藤さんの著書『1分で話せ』より、2つの記事をお届け。

ソフトバンクの孫社長も認めた「シンプルに伝える最強の話し方」をご紹介します。

※画像提供:リクナビNEXTジャーナル

正しいことを言うだけでは、 人は動かない

わかりやすければいいのか。理解できればいいのか。自分が賛成する内容であれば人は動くのか。

それは違います

もちろん、ロジカルに考えられたストーリーがないと、聞き手は、あなたの言うことを理解できません。

しかし、ロジカルに考えられた正しいことを聞いて理解するだけでは、人は動きません。

それは皆さんが、何か高価なものを買うときのことを考えてみてください。

たとえば、マイホームがほしい。マンションを買おうかなと思ったとします。

マンションの販売サイトに行き、ある物件を調べてみたところ、色々な説明がありました。あなたはこれをどんどん読んでいきます。

都心から近く、さらに駅から近くて閑静な住宅街にある。

うんうん、いいね。

間取りは、夫婦で小さな子ども1人という家族にうってつけのつくりになっている。

うんうん、これは住みやすそうだ。

そして、値段もちょうどお手頃の価格帯だ。

うんうん、これならなんとか出せそうだ。

でも、これだけでマンションを購入するかということです。

「すべて条件に合う、だから買う」だけではないものがあるはずです。

マンションほどの高価なものでなくとも、自分の条件に合うから買おう…ということだけではなく、何か一歩、えいやと踏み出す何かが必要でしょう。

人はイメージが膨らむと感情を揺さぶられる

買いたい、買おう、失敗するリスクがゼロではないかもしれないが、それでも踏み出したい、どうしても買いたい、ああ、たまらなくなってきた、買おう!

…と思って、私たちは購入の意思を固めていきます。

では、話を理解したあと、「ほしい、ほしい!」と人に思わせるのは何でしょうか。

これがわかれば、プレゼンにおいても、その要素を注入すればいいのです。

ロジカルに考えられたストーリーは理解した。自分も賛成だ。

その状態で、あと一歩、「うん、いいねいいね!」と心を動かすのは何か。

それは、「頭の中に生まれたイメージ」です。

先ほどのマンションの例でいえば、

自分自身が、朝、はつらつと自宅から出て、駅に向かうイメージ、

奥さんが子どもと、敷地内にある公園で、笑顔で遊んでいるイメージ、

共通の友達をパーティルームに呼んで、みんなで談笑しているイメージなど。

こうしたイメージが頭の中に生まれてきて、「ああ、このマンション、買いたいな」と思っていきます。

このイメージは、どのように聞き手に生まれてくるのか。

まずは、ちゃんとロジカルに事実を認識してもらう必要があります。

聞き手が、

「つまり、駅からマンションへの道のりはこんな感じか」

「敷地の中の公園は自由に遊べるんだ」

「部屋はこんな間取りか」

「パーティルームはこういうつくりなのだね」

ということを認識したうえで、そこに自分をあてはめて考えるようになるかどうかです。

そこができれば、もうあとは、聞き手の頭の中でどんどん想像が膨らんでいきます。

伝える側は、その想像が広がるのをサポートすればいいのです。

では、どうしたら自分にあてはめて考えてもらえるか。

それには、2つのアプローチがあります。

1つは、聞き手の頭の中に、ビジュアルなイメージを直接的に描いてもらうアプローチ。

もう1つは、そこに、聞き手をあてはめていく、聞き手にそのイメージの中に入っていってもらうアプローチです。

では、それぞれについて説明していきましょう。

イメージを描いてもらうためにおこなうべき2つのこと

まずは、言葉で理解してもらうだけではなく、イメージを描いてもらう必要があります。

こちらも2つの手法があります。

1つめは、当たり前ですが、ビジュアルでイメージしてもらうために、「ビジュアルを見せる」ということです。

言葉で説明するだけではなく、写真や絵、動画を使えるのであれば、 どんどん使いましょう。

たとえば、「未来都市」について説明しようとします。
こちらの上のように表現するとどうでしょうか。

文字ばかりで、全然イメージが湧きません。

これを、絵で説明すると下のようになります。

断然、絵で説明したほうがわかりやすいですよね。

ですので、写真や絵、動画などで、しっかりと説明しましょう、ということです。

なお、まったく関係ない写真や絵を入れてしまうと、逆にノイズになって理解を妨げるのでやめましょう。

あくまで、「このイメージを聞き手に湧かせたい!」と思うことに関する写真・絵・動画を入れましょう。

先ほどのマンションの例でいえば、ちらしやホームページで、そのマンションの外観や施設などのビジュアルがない、ということはありえません。

プレゼンにおいても、 あなたが理解してほしいと思うことがあれば、さぼらず、資料上に表現しましょう。

もう1つ、ビジュアルで説明できるものがない場合は、言葉で、聞き手にイメージを湧かせる必要があります。これはどうすればよいか。

この時は「たとえば」と言って、具体的な事例を示すことです。

私は、自分が勤めている会社が大好きだ」という例で考えてみましょう。

「私は、自分が勤めている会社が大好きです。理由は3つあります。

1点めは、働きやすい職場だからです。

2点めは、一緒に働いている人たちが素敵だからです。

そして3点めは、仕事にやりがいがあるからです」

こうしたプレゼンをするとしましょう。

これだけで、理解はできます。

聞いている人が、「話し手は、こういうことを言いたいんだな」という枠組みを作り、理解することができます。

ただ、これでは、どのくらい働きやすいか、そして、働いている人がどのくらい素敵か、よくわからない。

イメージが湧かないのです。

ですから、聞き手にイメージを湧かせるために、「たとえば、〜です」といって、補足するのです。

具体例をあげると、 次のような感じです。

1点めは、働きやすい職場だからです。

たとえば、フレックスタイムで自由に働け、また、リモートで自宅でも働くこともできます。

2点めは、一緒に働いている人たちが素敵だからです。

たとえば、人の足を引っ張るような人は、1人もいません。

3点めは、仕事にやりがいがあるからです。

たとえば、会社は常に新規事業に積極的で、チャレンジする機会に恵まれています。

といった感じになると、かなり具体的になります。

もちろん、「たとえば」という言葉を入れるかどうかは文脈次第で、必要であれば入れるし、そうでなければ入れる必要はありません。

結論に対し根拠を3点あげる、しかも短めにとなると、どうしてもその根拠は抽象的になります。

そこで、それをもう少し具体的な言葉で説明するわけです。

そうすると、聞いている人にはわかりやすくなります。

加えて、聞き手は具体的なイメージが湧きやすくなります。

「たとえば」を入れないと、「働きやすい」といっても、具体的にどう働きやすいのかわからない。

それが、例を入れると、「ああ、働きやすいというのは、時間とか場所が自由ということだな」 とわかるわけです。

そうすると聞き手は、相手がフレックスを活用していたり、リモートワークで、オフィスでないところで働いているイメージを、想像するようになります。

聞き手に、イメージの中に入り込んできてもらうために

写真や絵、動画を使えるのであれば、さぼらず使うこと。

また、「たとえば」と言って実例を述べること。

ピラミッドストラクチャーは3段でつくること。

ここまでやると、 聞き手は、大分、具体的なイメージが湧くと思います。

あとは、聞き手に、この自分でつくったイメージに入り込んできてもらえればよいのです。

たとえ1分間の話でも、聞き手がイメージの中で自分の想像を膨らませはじめれば、内容は無限大に広がり、あとは放置していても、勝手にどんどん想像していきます。

ではどのように、聞き手に想像を膨らませてもらうか。

これは、聞き手の色々な経験を、自分が伝えたいイメージと組み合わせてもらい、想像を膨らませるのです。

そのためには、直接、そのイメージに入ってくれるように、お願いするのが一番です。

具体的には、

想像してみてください

あなたがもしこの世界を経験するとしたらどうでしょう

と促す。

そして、「素晴らしいと思いませんか」と方向感を伝える。

これだけでよいのです。

あとは勝手に、聞き手が自分の頭の中で想像を始めてくれるようになります。

たとえば、牛丼の話をするとします。

ファストフードとして牛丼がオススメだと。

あのチェーンの牛丼屋さんが特に素晴らしい。なにせ美味しい。

空腹時にあの牛丼を食べたら、幸せな気分になる。

そんな感じを聞き手に伝えたい。

とはいえ、その牛丼の美味しさは、いくらロジカルに説明してもわかりません。

ですので、想像してもらう。

想像してみてください。空腹のときに牛丼屋さんに入ったときのことを

と言い、写真でも見せてみましょう。

聞き手は、その牛丼を食べた経験がなくても、限られた情報から、

ご飯が美味しそうで、つい、よだれが出てきてしまった体験

空腹のときに、ほかほかのご飯をかきこんだ経験

食べ終わって満足しながらお茶を飲んだ経験

などを思い出し、そこからこの牛丼のことを想像してくれることでしょう。

つまり、その牛丼そのものの話ではなく、相手は自分の記憶の中にある「その牛丼的な要素」から勝手に、その牛丼のことを想像してくれるわけです。

自分の説明を超えて、想像でイメージを膨らませてくれる

つまり、聞き手にイメージを想像してもらうことで、こちらが伝えていること以上に、説得力を持つことになるのです。
さて、前回の記事とあわせて、ここまでで1分で伝える内容を説明してきました。

実はここまでで、すでに相手の左脳と右脳を動かしています

たとえば、吉野家の例で考えてみましょう。

結論は、「吉野家が好き」です。

理由として、「早い」「安い」「うまい」がある。

ここまでが、ピラミッドの2段めですが、これで左脳を動かしています

そして、次に「早い」の理由をあげます。

たとえば、「座ったかどうかのタイミングで店員さんが出してくれる」ということだとします。

この「たとえば」の3段めで右脳(イメージ)を動かします

1つの文章にまとめてみると、こんな感じでしょうか。

吉野家が好きです。

まず、早い。

座ったかどうかのタイミングで、店員さんが牛丼を出してくれますね。

次に、安い。

今時どこで食べても大抵500円はかかります。

最後に、うまい。

想像してみてください。おなかがすいた時に牛丼をかきこんだことを。

だから、僕は吉野家が好きなんです。

これで、1分もかからないでしょう。

でも、「吉野家はおいしいんだな」ということは、伝わってきませんか。

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1分で話せ  世界のトップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術

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1分で話せないような話は、どんなに長くても伝わらない」と主張する伊藤さん。逆に、1分で話すプレゼン術は、会議・交渉・報告・会話、すべてに応用できると言います。

詳しくは、「1分で記憶に残すノウハウ」から「話すときのメンタルセット」まで書かれた伊藤さんの著書『1分で話せ』にて。

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