成毛眞著『人生も仕事も変わる! 最高の遊び方』より
元マイクロソフト社長「3000時間かければプロになれる。楽しく“遊ぶ“なら1000時間がいい」
新R25編集部
平日は朝から晩まで働いて、土日はひたすら寝る。「これ自分の生活だ…」と思った人、多いんじゃないでしょうか?
ビジネスマンにとって仕事に打ち込むことが本分ですが、一個人としてはこのままでいいのか…と思うことも多いはず。
優秀な先輩に目を向けると、仕事だけじゃなくてプライベートも充実している人が多い気がします。
元日本マイクロソフトの代表取締役で、現在は「HONZ」を主宰している成毛眞さんもそのひとり。
成毛さんは、新著『人生も仕事も変わる! 最高の遊び方』のなかで「仕事以外の“遊び”を持っていると、人生が充実する」と話します。
その「遊びの極意」を書籍のなかから抜粋し、2記事にわたってお届けします。
プロにはなるな。アマチュアであれ
ボクが社会人になってから始めた遊びは、スキューバダイビングと乗馬だ。だが、どちらも200本、200鞍で止めてしまった。
これには理由がある。100本だと初心者を抜けたくらいで、物足りない。200本で中級者くらいになれるのだ。
その先は、趣味や遊びの域を超え、プロを目指すようになってしまう。あくまで遊びなので、そこそこまでやって楽しめばいいというのがボクのスタンスだ。
広く浅く、ただ遊びたいのだ。子どもの頃は、面白そうな外遊びができなかったから、色々なことをやってみたいという飢餓感があった。
だから、ひとつだけに絞るなんてことはできなかったのだ。
子育てにおいても同じことが言える。我が家の教育方針は、「何でも好きなことをやらせ、続けることを強制しない」ことだった。
やらせてみないと、何が本人にハマるかわからない。ぴったりハマるものがあれば、やらせればいい。いろんなことを体験させてみても、結局これというものがないかもしれない。
でも、それでいいのだ。年を重ねて、いつかまたやりたくなるかもしれない。体験しておくことは、体験しないことよりも大事なのだ。
よく娘には、「陸海空の遊びを制覇しろ」と言っていた。
例えば、ハワイやグレートバリアリーフなどのリゾートに行ったときに、ぼんやりとホテルのプールにしか入れない人は可哀想だ。
せっかく行ったのなら、ダイビングで魚を見て、馬で草原を駆け、スカイダイビングで島を見下ろすくらいしないと、元が取れない。
そんな彼女が、今ハマっているのは茶道だ。京都の大徳寺に1年間住み込んで、茶道を習っている。
遊びとプロの差というのは、自分の費やしたものを、どうマネタイズするかを考えることかもしれない。
例えばプロの芸術家にしてもそうだ。彼らは単に作品が優れているだけではなく、営業がうまいのだ。
リタイア後に陶芸を始めた知人がいる。元々は彼の奥さんが、例のNHKの文化センターで陶芸をやっていたのだが、彼も一緒にやるようになった。熱心に続けているなと思っていたら、あるとき、ルーブル美術館で個展を開いていた。
「モナ・リザ」や「ミロのヴィーナス」など、誰もが知る美術品を収蔵するルーブル美術館だが、実は貸館スペースがある。近年、某タレントが利用して少し話題になっていた。
そんなことを知らない人に対し、「ルーブル美術館で個展を開いたアーティスト」の作品となれば箔がつく。彼はルーブルでの個展のあと、制作を続け、生徒を集めて教室も開いていたと思う。
決して噓はついていないし、贔屓目なしに彼の作品はすばらしい。自分をどうプロデュースするかは、アーティストにとって最重要事項だ。
プロは3000時間。遊びは1000時間でいい
突き詰めてやる趣味がひとつもない、というのは悪いことではない。
そんな人には、色々なことを試してみるべきだ、と提案したい。というのも、ひとつのことを極めようとしたら、ざっくりとだが3000時間掛かるという説がある。
例えば、英会話がそうだ。アポロ11号の月面着陸時に同時通訳をしていた鳥飼玖美子さんが主張している。日本人が英語を話せない理由は、3000時間を英語の勉強に費やしていないからだという。
小学校〜高校で1200時間ほどしか勉強しないのでは、話せるようにはならない。ボクも同感だ。毎日英語を聞いたり、文法を頑張って覚えたりしなくても、とにかく3000時間費やせば、ほぼ話せるようになると思っている。
外資系に勤めている人間が英語を話せるのは、働いているうちに、英語に接する時間が3000時間を超えるからだ。全然話せなかった人でも、本当に話せるようになる。ボクのかつての秘書は、留学にも国内の英会話学校にも行かずに、ペラペラと話せるようになっていた。
ただ、誰でも話せるようになる、というのは、あくまでビジネス英語のことだ。哲学や文学を語るとなると話は別。語学というのは、背後にある文化を知らなければならない部分がある。
ボクは日本語から英語への同時通訳をほぼ問題なくできるが、あくまでも仕事のときだけで、アメリカ人が集まるパーティーに行ったら、彼らが何を言っているのかきっとわからない。
英語がわからないというのは、話している内容がわからないのだ。カリフォルニア州知事選の話をされても、知らないことはわからない、というわけだ。
語学だけではなく、時間を費やしても、わからないことというのは、かなりある。遊びとプロの差はそこかもしれない。
一方、アマチュアで楽しく遊ぶには、1000時間が目安になる。ダイビングでは200本潜ると、中級者扱いだ。往復の時間を含めて、ちょうど1000時間ほどになる。
ダイビングは減圧症を防ぐために、規定があり、せいぜい1日に2本までしか潜ることができない。1000時間あれば、初心者でもセミプロくらいを目指せるのだ。
3000時間もやればプロ級になってくるが、そうなると面白いことばかりでもないだろう。つまらなさや、しんどいこともついてくる。
遊びであれば1000時間ほどやって、他に面白そうなものがあれば、すぐに移るのをオススメする。無理に苦しい思いをすることはないのだ。
3000時間かければ、英語はペラペラになるかもしれないし、ダイビングのインストラクターになれるかもしれない。
だが、それを本当に目指していたのかを考えてみてほしい。人生の楽しみとして始めたなら、そのあたりで次の遊びを一から始めたほうが、もっと楽しいだろう。
Aマイナーを目指す精神
この1年ほどしている遊びに、「パーティーを開く」というものがある。
参加者は、研究者、一芸に秀でた人、普通のようでとんでもない経営者、ともかく経歴がぶっとんでいる人、出版人など多彩な人たちである。
偉い人が来て、乾杯の前に挨拶をするなんてことはなく、みんな三々五々に集まり、好きにおしゃべりするだけの会だ。
パーティで重要なのは場所と食だ。
このパーティーでは、オフィス内のカジュアルな会議室に、ケータリングを呼んでいる。
ボクがよくお世話になっているのは「PINT CATERING」さんだ。FacebookやInstagramのアカウントがあるので、ぜひ見てほしい。最先端の調理法で作られる料理はアートのようだ。
あるときは、液体窒素が入ったマカロンを出してくれた。このマカロンは、口に入れると、鼻からもくもくと白い煙が出てくる。大盛り上がりだったことは言うまでもない。
シェフは世界一予約の取れないレストランと言われたエル・ブジで働いていた人のもとで修行していた人物だ。エル・ブジのエンターテインメント版と言える。
あるときには、「活美登利」の出張回転寿司を頼んだこともある。会議室に回るレーンを持ち込み、職人が握って、寿司を流してくれる。
きめ細かい気遣いをしてくれて、集まりの名前とモチーフを入れた札まで作ってくれた。
つまみやネタの融通がかなり利くし、何よりリーズナブルだ。寿司そのものがおいしい上に、「回っている」ということで大盛り上がりであった。みんな動画を撮って、SNSにあげていた。
ケータリングの良いところは、良いものを手ごろな値段で楽しめることだ。フード5000円、ドリンク3000円で、夕方から夜中まで過ごせるのだから、安いものだ。
ホテルビュッフェのようなものではなく、目の前でパフォーマンスをしてくれるような、特徴あるケータリング屋さんを選ぶことをオススメする。会社の懇親会だけではなく、地域の集まりでやってもいい。
これからケータリングは遊びの中心になるだろう。時間や他の客を気にせず、勝手知ったる場所で飲み食いできるのは、気持ちが楽だ。
ゲストは好きなときに来て、好きなときに帰ればいい。いい意味でダラダラと過ごせるので、二次会がない。社内でやれば、0時でも3時でも好きな時間までできる。翌朝早く予定があれば、早く帰ればいいし、ゆっくりできるんだったら思い切りそこで飲めばいい。
高級食材を恭しくいただくような、A級グルメを嗜む人たちは好きにすればいい。
B級グルメは面白いが、人をもてなすときには不向きだ。そこで、AでもBでもない、ケータリングや回転するものが最適だ。
ボクは、“Aマイナー”を目指すことをオススメする。自宅かオフィスで、面白くておいしいものを気兼ねなく楽しむのだ。
趣味とは違う、「遊び」を知るための一冊
成毛さんは冒頭で、「遊びと趣味はまったく違う」と主張しています。
「遊び」と「趣味」は同じように捉えられますが、「趣味」は単なる生活の一部で、「遊び」とはかけ離れている、とのこと。
さらには、遊びを極めることで、まわりから「遊び上手」と呼ばれて、仕事とはかけ離れた仲間ができるといいます。
「仕事ばっかりで、人生が充実してるとは言えない」という人は、絶対参考になるはずです。
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